
-------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(1) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 3日(木)00時34分38秒 6.王国迷走 ギーガン国制圧戦はライゼーラの国土が少し大きくなっただけでそれほど得るものは 無かった。むかし三国志の時代にある文官が「鶏肋」と言っていたが まさにその通りになってしまったのである。 得る所があるが旨みが少ない・・・・まさにその通りであり ライゼーラにとって良き結果ではなかったと言えよう。 それはベルクファクスとて同じであった。本当なら全土を支配するつもりだったのだが ライゼーラに国印まで取られてしまったのである。 そうしてギーガン国はライゼーラの衛星国としてベルクファクスやガスタブルグの 盾としてその地位を守らなければならなくなった。 だが、南のほうのわずかな部分はベルクファクスに帰属しそれが 両国の関係を気まずいものにさせてしまうのである。。 さらにライゼーラのシャリムは執拗にベルクファクスにいるルシア皇女と その宰相、フラーム将軍の返還を求め、挙句の果てにベルクファクスを 「ガッシュ王を殺し、ギーガン国の民に苦しみを与えているベルクファクスに 天罰を食らわせなければならない。」と再軍備をはじめたのである。 それと同じようにベルクファクスのマクシナス皇子もまた、 シャリムを名指しで批判した。 「国印を勝手に奪い、さらにルシア皇女の許可無くして国土を蹂躙した罪 断じて許し難し。その罪、万死に値する。」 と言って彼もまた再軍備の命を出したのである。 そうして・・・・・両国に緊張が走り始めたのである。 だが・・・・・それを傍観している国があった。 そうガスタブルグである。ギルモアはむしろこの事態を静観し、 軍を動かそうとしなかったのである。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(2) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 3日(木)21時15分15秒 6.王国迷走 ガスタブルグでは朝から非常徴集がかけられ、城内は緊迫した雰囲気に包まれた。 ここは謁見の間・・・・・。まだギルモアをはじめ、王妹ニュクス、ミルル皇女の 姿は無い。 「しかし・・・・・凄いことになりましたな・・・・。」文官の一人が 同じく待機しているデュラハンに話しかけた。 あちこちでは武官と文官が入り混じって話に花をさかしていた。無論 話の話題はベルクファクスとライゼーラのいざこざに終始していた。 「そうですね・・・・。まさに漁夫の利と言う奴でしょうか・・・・。」 デュラハンは答えた。 「まさかこの大陸全土が戦争に突入するのでは・・・・。もしそうなったら 我々は・・・どうなるのでしょう・・・デュラハン殿。」 「我々騎士は剣を殿に捧げましたが罪も無い民が殺されていくのは 気が引ける・・・。それは確かに命令とあらば・・・やるが・・・・。」 「そうですな・・・・。なるべくなら・・・・紛争程度にすませたいものです。」 「しかし・・・・見られよ。あのピサロ公が地上侵攻などと言うものだから 結局こういう事になるということが分からなかったのだろうか・・・。」 別の武官が話の輪に加わった。 「それはそうだが・・・・だが、ピサロがいなければ・・・・。」文官が反論した。 「その結果どうだ、ピサロが勝手にしでかしたせいで我々がこんな世界に押し込められ 挙句の果てにエルフと懇ろの仲になってしまうとは・・・。」 「う〜ん・・・・・。」デュラハンが話をしようとしたとき、ラッパが鳴り 王族たちが部屋に入ってきた。 まずはギルモア、続いてニュクス、そして最後にミルルが入ってきた。 「皆の者、よく集まってくれた。今回の件はお前達も知っているだろうが ベルクファクスとライゼーラの件だ。お前達ならどちらにつくと良いと思うか 意見を申してみよ。」 文官の一人が進み出て進言した。 「ベルクファクスにつくべきなのではないでしょうか。今時勢はベルクファクスにあります。 この機を逃すとあと何年待つのか分からないと思います。それに正当な 相続権を持つルシア皇女がいます。ここでベルクファクスに恩を売っておけば何かと 使えるのではないかと思います。」 「ふむふむ・・・・・・。」ギルモアは頷いた。 「待て。その意見はどうもおかしい。国印がある以上、ライゼーラに援助をするべきだ。 そうすれば民は褒め称えよう。それこそが必要なのだ。 確かに時勢はそちらに傾いているが長期的に見ればライゼーラに恩を売っておけば良いのでは。 それに大義名分が成り立とう。」もう一人の武官が申し出た。 「何の大義名分だ・・・・そんな事をすれば逆にベルクファクスに隙を与えるのではないか。 そうしたらまず北伐をしてくるに決まっている。そうなる前に 二方面から敵の攻撃を受ける前に味方に引き入れるべきだ。」文官が反論したがそれを 機に会議は紛糾した。 「殿はどうお考えですか?」ギルモアのプレーンであるアガレスが尋ねた。 「・・・・・・・余はどちらも利がある。しかしどちらも決め手が無いと見える。」 「決め手が・・・・ですか?ライゼーラが大勢を決しているように見えますが。」 「違うな・・・・・・どちらも利を欠いているためにお互い攻めきれない。 ただ・・・・私が気になる事がある・・・。あのギーガン国が滅びるまえ、 どうしてあんなに時間がかかったのだろう・・・・・。」 「何を・・・・・言っておられるのですか・・・。」 「アガレス、お前はギーガン国の南の砦がどうして落ちなかったと思う?普通なら あれだけの大軍一日ももたず陥落しているだろう・・。」 「殿・・・・・・それについてですが・・・・・どうも・・・あの・・・ ライが生きていたらしいのです・・・それにネロも・・・・。彼らが 加わったに違いありません。」 「そうか・・・・・そういう事だったか・・・・・早く消さないとマズイな・・・。 バガン兄弟を差し向けて消しておこう・・・・・。」 「はっ・・・・。」アガレスは紛糾している会議の中頷いた。 一方・・・・・ここはベルクファクス。その中の一室では・・・・ ライとマリエンに会いに行っていた。 「貴女にお話があって参りました・・・・。」 ライは一番聞こうと思っていたことを話し始めたのだった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(3) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 3日(木)21時47分36秒 6.王国迷走 「貴女・・・・・はマリエンと申されましたな・・・・ネロ君をご存知ですか?」 「ネロ!!どうしてそれを・・・・!!」 「いえ・・・・・私はネロ君の関係者だった者です。」 「それで・・・・今・・・どこにいるのですか?」 「はい・・・・・・ライゼーラにいます。私はここを出て行きますが・・・・ どうでしょう、貴方もここを出奔しライゼーラに下ったほうが・・・。」 「っ・・・・・・・・・。」 「あなたは鳥の籠なのですよ。ここで飛び出さないと。それにネロ君に 会いたがっているのではありませんか・・・・。さあ、早く行きましょう、 ネロ君が待っていますよ。さあ、早く!!」ライは手を差し伸べた。 だが・・・・・・。 マリエンは予想もしない行動に出た。ライの目の前で皮紙を広げ 見せたのだ。 「ライ・タツムネ殿。48時間以内に国外退去を命じる。さもなくば 身の安全は保障しない。これに間違いが無いか。魔剣タツムネは 尚書省(法律制定部)にて預かっている。返還する場合、 マクシナス殿下に申し出る事。 以上。」 「何か質問はありますか?」マリエンはライに話しかけた。 「君はどうして・・・・ネロ君に会いたくないのか?」 「・・・・・・・・・・・・。これはマクシナス殿下から。どうぞお納め下さい。」 ライはマリエンから大金が入っている袋を受け取った。 「これは・・・・何の真似だ!!」 「・・・・・・・・・・・マクシナス殿下は貴方を買っている。どうでしょう、 死にかけた国にいつまでも固執しないでベルクファクスに剣を立てて見ませんか?」 「・・・・・・・忠義心を金で買えと言う事か!!」 「どう取っても構いません。」 「笑わせるな!!オレは友の為、義の為にギーガン国を助けようとしたのだ。 それを金の力で何とかしようだと!!笑わせるな!!オレは、そんなに腐っていない!! 友の為にオレはギーガン国に忠義を立てたのだ。二心はいらぬ。」 ライはマリエンを睨んだ・・・・・。 そして・・・・・・。 「ぷぷぷぷ・・・・・・。」マリエンが笑い始めた。 「何がおかしい!!」 「いえ・・・・失礼。ただライ殿、思ったとおりの方で良かったです。貴方なら そういうだろうと思っていました。」 「・・・・・・・で、貴方はどうするのです・・・・・さあ、ネロ君のところへ・・・。」 「今・・・・貴方は言ったではありませんか・・・。」 「へっ・・・・・・・。」 「二心はいらぬ、と。分かりませんか?私はギアさまに忠誠を立てました。私を 助けてくれた恩人に報いるのが礼儀というものです。」 「・・・・・・・・・・。」 ここでベルクファクスの騎士たちの特徴を言っておこう。彼らの特徴は 徳川家康の下にいた「三河騎士団」のように結束が固かったのである。 このような結束の固さはこの時代例を見ないものだった。 そして・・・・・マリエンもその影響を受けて育ったのである。 「貴方は・・・・・ネロ君がどうなっても良いのですか・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・構いません。殿の安泰こそが我らの役目なのです。」 マリエンのまっすぐな瞳はライをさらに困惑させた。 「・・・・・・・・でも・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・そうですね、なら・・・。」マリエンは ライの手にしていた袋を取ると別の袋に入れ替えた。 「どうしたのですか・・・・何故・・・・そんな・・・。」 「これは私からの報奨金です。ネロ君の情報有難うございました。しかるに この金は私からのお礼金です。ご苦労様でした。」頭を下げたマリエンは部屋を出ていった。 「どうして・・・・なんだよ・・・・・何で・・・・行こうとしないんだよ・・・。」 ライは誰もいなくなった部屋でそんな事を呟いていた。 部屋の外では・・・・マリエンが泣いていた。 「ありがとう・・・・でもね・・・ライ殿、貴方も忠義を立てるというなら 私は・・・・ベルクファクスに忠義を立てたの・・・。」 マリエンは泣きながら自分の部屋に戻っていった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(4) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 4日(金)21時38分47秒 6.王国迷走 どうしてこうなってしまったのだろうか。ライは分からないだろう。 だが、これはベルクファクスの建国に由来している。 まだ、ピサロが生きていた頃、魔界の東方の地は不毛の地として誰の侵入を許さなかった。 ピサロもまたこの東方の地などに価値を見出すわけでなく「捨てられて」あったのだ。 しかもどうなっているのかわからない。当時雅な文化を誇っていた高等魔族たちは そんな所に行こうともしなかった。ましてや鎧や武器を身に着ける事すらなかった 魔族にとってそこに行くのは狂気か重罪人が行くような場所だったのである。 それほど荒んでいたのである、ベルクファクスの地は・・・・・。 だが、ギアの父祖達は中央の圧政から逃れるようにこの地に移民を開始したのである。 しかし・・・・・そこに待っていたのは・・・・自ら武装して戦わないと いけなかった日々であった。そこに住んでいた先住民族(魔族)たちの戦いは凄まじく 高等魔族なのに鎧を身にまとい武器を持って戦っていた。それでも勝敗はつかなかった。 そして・・・・・・自ら先陣をきって戦うようになると貴族という概念を消さなければ ならなかったのである。そして雅な様相など、消えていった。 代わりに出てきたのは主従関係、いや 「封建制度」というものの概念が出てきたのである。 ちなみにギアですら自ら先陣をきりバトル・アックスを片手に戦っていた。 そしてギアの御世になってようやく先住民族と和解を果たした。さらにギア直属の騎士団、 「東方騎士団」は先住民族の戦い方や戦法を学びそことの融合を果たし 「東方騎士団」から「東方武士団」へと変更したのである。さらに「侍」や「忍者」 「北面の武士」と言ったようにオリエンタルな文化を持つようになっていったのである。 昔ライが「ベルクファクス」の文字は読みにくいというのを覚えているだろうか。 あれは・・・・我々の言う所の「漢字」だったのである。つまりやたらと角張った文字 の為、ライにとってこれほど読みにくい文字は無かったのだろう。 ガスタブルグはどうだろうか。 一目で見ればわかるだろう。つまるところガスタブルグは「軍閥」であり それぞれの派閥から兵士を出しているのである。 たとえばガープがいる「ガーディアン族」は大勢の将軍や兵士を輩出し ガープの他にテリオスと言う名前の将軍やタハカンという有能な兵士がいる。 その他にもシャクスがいる「バルログ族」も有能な兵士を出している。 ライゼーラは「帝政」を引いている。もともとライゼーラというのは中央諸国 のなかで昔からあった国だったのである。それが今のライゼーラの地に封ぜられ そこで足場を固めていったのである。だから今でも貴族が雅な文化を誇っている。 そして・・・・ライゼーラとベルクファクスの仲の悪さはここにある。 それはまた今度話すとしよう。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(5) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 8日(火)19時10分17秒 6.王国迷走 それは・・・・・・平安時代の武家と貴族の関係を見てみればわかるだろう。 つまり「田舎侍」と「都にいる貴族」が果たして仲良くなれただろうかと言う事である。 お互いいがみ合っていたりすれば歩み寄ろうという姿勢はなくなる。 それはヨアヒムがライゼーラに来朝した際の態度でわかる。 「ライゼーラの連中が果たしてできるのかな・・?」という挑発が裏にある。 まあ、結果としてライゼーラがギーガン国を制圧したがそれでも旨みの少ない場所 だったことは否めない。 ライは・・・・一人ライゼーラに通じる街道を歩いていた。 背中に背負った魔剣がズシリと重くライは何かを失ったような表情をしていた。 「どうしたら・・・・・オレは・・・一体どこに向かえば良いんだろう・・・・。」 だが、答える者はいない。一人・・・・・歩いていた。 マリエンはマクシナスに報告する為、一人報告書を持って廊下を歩いていた。 廊下は大理石の柱が連なる場所でそこは何か石の冷たさが伝わるような雰囲気があった。 マリエンは柱の一本に寄りかかった。 すぐにその柱の背後に気配が現れた。 「いいの・・・・?ネロ君、貴方探していたんじゃないの?」声の主はマリエンに話しかけた。 「いいの。それに・・いまは殿のほうが大切だから・・・メリル(メリクリウス)。」 「そう・・・・?」 「で、ネロ君は今どこにいるの?」 「ライゼーラと旧ギーガン国の国境にいるみたい。でも何かあったみたいよ。」 「そうなんだ・・・・。」 「助けに行きたいでしょ。本当は?」 「・・・・・・・・。」マリエンは何も言わなかったが頷く気配がした。 「・・・・・・・・・・・・いつか会うよ。どっかで。生きていれば・・・・。」 「ありがとう・・・・メリル(メリクリウス)。」 そっとメリクリウスはマリエンの前に現れた。その姿はピエロのようであり、仮面を 被っていた。だが、声は女性の物であった。メリルはゆっくりと仮面を外した。 そこには・・・・・綺麗な少女の顔があった。 「まあ、元気だしなよ。そうだ、今度仕事が終わったら食事おごるよ。どこか温かいものでも 食べに行こうよ。みんな誘ってさ。」 「うん・・・・。」 メリクリウスはそっとマリエンの肩を叩くとあっという間に見えなくなった。 「ありがとう・・・・・メリル・・・・。」マリエンはそのまま歩き出したのだった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(6) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 8日(火)22時48分07秒 6.王国迷走 マリエンとメリクリウスの出会いはたまたま一緒だったからという呆気ないものだった。 彼女らは小さい頃から短剣を持って練習していたのである。 ベルクファクスの子女はもしもの事を踏まえ、幼い頃から武器の扱いから 短剣の素振りは当たり前であった。 そして・・・・・メリクリウスは忍者として、昔の言葉で言う所の「細作」、「乱波」 というスパイ件忍者として戦う事を教えられたのである。 マリエンは・・・・その「歌」を生かす為、体力トレーニングだけをしていたのである。 「歌」という力を得る為に彼女は苦しい特訓にも耐えたのである。それがどうしてだか、 わからない。でももしかしたらネロ君に会いたいという思いだけでやっていたのかもしれない。 それは彼女だけが知るだけである。 一方・・・・・。 ライはじっと向こうにある山々をじっと見ていた。 あれを越えればギーガン国、いや、今はライゼーラ帝国ギーガン州がある。 ライは途方にくれた目でそれを見ていたが・・・・・。 ひゅん。 ライはそれを避けた。と言っても紙一重だったが・・・・。 「誰だ!!オレを牙王と知っての事か!!出て来い!!」 ライは投げた方をじっと睨んだ。 「ふふふふ・・・・・今は牙王じゃないだろう。根無し草のライだろう。くくっ、 哀れな奴、国にも捨てられ、祖国にも捨てられたのだからな。」 「何っ!!出て来い。」 そして、叢から何か黒い影が出てきたと思ったときにはライの頬にピッと血筋が出来た。 「これは・・・・・バガン兄弟か!!くそっ!!」 ライは間合いを取って構える。 「ふふふふ・・・・・・・死ぬのは貴殿だよ。祝ってやろう、お前の死を!! 悲しんでやろう、お前の惨たらしい死を!!」バガン兄のほうは上に飛び上がって 細かい針のような剣を機関銃のように発射した。 ライはそれを剣で上手く弾くと弟の剣戟を受け止めた。 「くっ・・・・・どうやら剣に毒が・・・・。」ライは受け止めている剣をじっと見た。 剣は紫に輝き普通の剣の色で無かった。 「早く死ぬのだ・・・・・ライ・タツムネよ。お前は殿の機嫌を損ねたのだ・・・・。」 「なにっ・・・それはどう言う事だ!!」 「ふふふ・・・・お前は知る必要はない。それよりも自分のことを心配したらどうだ・・・。」 バガン弟は無気味な笑いを浮かべながらライの剣を受け止めた。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(7) 投稿者:メルトダウン 投稿日: 8月 9日(水)11時37分50秒 6.王国迷走 「くくくくくく…死ねぇっ!」 ベガン兄弟の弟ベゼル・ベガンはライの剣技を受け流すと後方に飛びながら無数の針を投げつけた。 ライはそれを全て叩き落とすと、切りこんでくる兄のグロウ・ベガンの剣技を受け止めた。 「何の目的で俺を狙う!?もう俺はガスタブルグとは何の関りも無い筈だ!」 ライは攻撃を巧みにかわしながら叫んだ。 「クククク…大有りなのだよ…貴様はいらぬことに首を突っ込んだ。」 「呪うならわが身を呪うが良い!」 ベガン兄弟は下卑た笑いでゆがんだ顔をさらに歪ませたように見えた。 「チィ!」 ライは後ろに飛びずさり、懐からナイフを取り出した。 左手の指に挟んで三本…愛刀タツムネを右手のみに構えてアサシンと対峙した。 「たっ!」 動いたのはライが先だった。 そのまま飛びかかるように跳躍すると、三本のナイフを投げつけた。 無論だが、魔界で5本の指に入るアサシンであるベガン兄弟にあたるわけは無く、それらをかわすと今度は2人同時に切りこんできた。 「死ねぃ!」 ライはそれを受け止めたが、なにぶん体勢が悪い、2人に剣を受けては尚更だ。 「はっ!」 兄、グロウ・ベガンの蹴りを腹に受け後方へと飛ばされる。 ライはそのまま這うようにして着地した。 「これで終わりだ!」 2人が飛びかかったのはほぼ同時だった。 2人の脳裏には切り刻まれるライの姿が浮かんだことだろう。 だが、ライもまたそう簡単にはやられなかった。 「メラミ!」 ライの繰り出した魔法をよけるために一瞬2人に隙ができた。 ライはその間に体勢を立てなおし、瞬時に懐から三本のナイフを取り出し弟のベゼル・ベガンに投げつけた。 そのあとすぐに、再び懐から三本のナイフを取り出し、今度は兄のグロウ・ベガンに投げつけた。 2人はその攻撃をかわした瞬間、取り返しのつかないことになっていたことに気がついた。 「しまったっ!」 「気がついたか…だがもう遅い!」 2人の周りには9本の黄色い線が通っていた。 その線は今までライが投げたナイフが通った後に存在していた。 「キバオレに伝わる秘伝…蟷螂呪縛」 「ぬかったか…!」 つまり、2人は閉じ込められたのである。 「結界とともに…朽ち果てるが良い!ベギラゴン!」 高熱の閃光が2人を包み込んだ。 結界のせいでよく見えないが、おそらく2人は直撃を受けた筈だ。 「……!」 その刹那、針がライの腕に刺さった。 「おのれ…よくも!!」 「絶対に生かして返さん!」 そう…ベガン兄弟であった。 服はところどころ焼け焦げ、顔も焼けどでそれ相応のダメージを受けていた。 「チィ!」 彼は再び愛刀タツムネを両手に構えた。 続く。 -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・王国迷走(8) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月10日(木)20時37分37秒 6.王国迷走 一方ここはどこかわからない空間。誰もいないはずなのに気配だけがしている。 誰だろうか・・・・・確かに「人」の気配はするのに・・・・。 そして・・・・「人」はゆっくりと光がしている方向に歩き出した。 世界を混沌に陥れる為に・・・・・。 ライはグロウとべゼルのコンビネーションに苦戦を強いられていた。 グロウの剣戟をライが受け止めるのだがその隙を狙ってべゼルの剣を避けるのに 必死であった。 「くそう・・・・・誰かいれば・・・・助太刀なんていればな・・・・。」 「ふふふ・・・・こんな所にはいないよ。しかもいたところで殺しているがな。」 グロウは答えた。 だが・・・・その時であった。 ライの頭に「話しかけて」くる者がいた。 (助けがいるか?) 「誰だ!!」ライは辺りを見渡したが誰もいない。 「誰だ、答えろ、時と場合によっては・・・・命はないぞ!!」 (なら構わんがその場合お前はそこらへんに散らばっている野晒しの死体のお仲間に なるということだな。) 「何だと・・・・・・。っ!!」ライはグロウの剣を何とか受け止め鍔迫り合いに 縺れ込んだ。 「ふっ・・・・余所見をしているバカがどこにいる?さっきから独り言を言って。頭に でもきたか?」 「くそっ・・・・・分かった!!力を貸してくれ!!誰か知らないが!!」 (わかった・・・・だが交換条件がある。あとで話そう・・・・。) その瞬間であった。いきなり地面が明るくなったと思ったときには 大地を抉るような斬撃がグロウとべゼルに襲い掛かった。 「なんだ!!これは・・・オレの戦闘データにはないぞ!!」 グロウは石礫を避けながら叫んでいた。 そして・・・・・ライの目の前に一人の剣士が立っていた。 あたりには何も無いのに・・・。 しかしライはそれよりもその剣士の格好に驚いていた。黒い鎧に黒い兜、黒い篭手に とにかく黒ずくめだったのである。 「おまえは・・・・・?誰だ?」 「呼んだであろう・・・・我を。助太刀致す。」 「すまない・・・・だが・・・・名前は何と言うのだ?」 「そうだな・・・・・・生憎と名前はない。名乗るほどではないと言う事だ。」 「では・・・・・・。」 「そうだな・・・・黒剣士と呼び給え。さて・・・・・。」 黒剣士と呼ばれた者はじっとべガン兄弟を睨みつけた。いや、「睨みつけた」ように 見えた。 「貴様・・・・何者だ・・・・・・。誰だ・・・・さては俺達を知らんな・・・。」 「・・・・・・・・・グズの兄弟か?それともメリクリウスよりも劣る 兄弟の話なら聞いた事があるが。」 「き、貴様・・・・・・・・・・。」二人の兄弟の顔が紅潮し黒剣士を睨みつけた。 (続く)