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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(1) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 7日(土)10時13分34秒 

                 15.魔竜谷

ここで話は旧ガスタブルグ王国(現エスミル帝国ガスタブルグ州)にとぶ。
ここは魔竜谷。ここには皇竜と呼ばれるグレイトドラゴン達と邪竜と呼ばれる
キースドラゴン族が生息していた。
と言っても彼らはお互い柵か何かを作って入らないようにしているだけだが。
だが、この種族にも独立の気運が高まっていた。そうパーンの子孫であるミルル皇女と
邪竜族の長であったフランツ4世の息子キース・ガルジ6世の
生存が確認され、二つの種族に歩み寄りの姿勢が見られるようになったからである。
だが、二つの種族にとってエスミル帝国はシンパであり、ライやマクシナスは
この魔竜谷に一歩も入る事ができなかった。つまり義理立てをしなければならないため
そうそう独立という考え方はまさに帝国に反旗を翻すものという事になってしまうのである。
ここは皇竜族の神殿。と言っても昔パーンが使っていた住居であるが・・・。

一人の皇竜族の武将が辺りを探していた。
「ミルル姫!!ミルル姫!!ちょっとよろしいでしょうか?」
彼の名はアリテト。パーンの叔父にあたる皇竜の中でも古竜に属する者である。
もともとこの魔界が出来た時竜族はたくさんいたと言われていた。
だが、相次ぐ戦乱や飢饉、いざこざなどで数を減らし、神の力を有する竜族は
古竜族とよばれるようになった。
もちろんミルルやキースはその流れを汲んでいる。血の流れを・・・・・。
古竜族の特徴は・・・・・「自然の力」その物である。だから魔力の篭っている
物やそうした物に恐ろしく反応を示す。つまり彼らには魔力が無い。
限りなくゼロに近い。だが、その代わり肉体再生能力は凄くあっという間に再生をしてしまう。
だから・・・・パーンとギルモアが結婚した時に反対をしたのは
このアリテトだった。彼には分かっていた。夥しい魔力をもつ
「魔王クラス」のギルモアと「竜族の長」たる力を持つパーンでは
生まれてくる子供に先天的な異常があるという事に・・・・。
魔力という物が竜族の子孫には毒であり、自然の力の象徴である竜族には
要らない物であったのだ。だからミルルやキースは魔力を持っていない。

「どうしたの・・・・?アリテト叔父様。」ひょっこりと木の洞からミルルが現れた。
「おお、そこにおりましたか、ミルル姫。そろそろ我々も決起をして
帝国からの独立を果たす頃ではないか思うのです。」
「・・・・・・・・・・・・でもまだ帝国の支配は続くのでしょう、
このまま少し様子を見るというのはどうなのでしょう?」
「それでも構いませんがあのキース殿がレジスタンスに参加し、ボーゼル率いる
精鋭部隊を全滅させたという情報が来ております。」
「あのキースが・・・・・?」
ミルルは最近キースを見る目が変わっていた。確かに帝国の尖兵として戦ったが
この4年でどうだろう、アリテトの話を聞いていると王国再建の為に
頑張っているように見えたからである。
「ミルル姫、そろそろ・・・・・。」アリテトが話を続けようとしたが
ミルルは笑いながら断った。
「まだ早いですよ・・・・。結婚は・・・。」
「ですが・・・我々としてはキース殿と結婚をし、皇竜族だけでなく邪竜族の
子孫を作って欲しいのですが・・・・・。」
「はあ・・・・そうですね。」ミルルは生返事をした。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(2) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 7日(土)20時35分22秒 

                  15.魔竜谷

ライは失意の中ガスタブルグ王国ダルドア城に戻ってきた。結局はベルクファクスに
増援を送る事ができず、部下たち「邪覇隊」の者達を押しのけ私室へと入っていった。
「くそっ・・・・・・どうしてだ・・・・何で・・・いつからこんな事に
なってしまったのだ・・・・。」ライは机の上に置いてあったワインを飲み干した。
乱暴に飲んだせいか、ライの口の回りは赤く染まった。
邪覇隊というのはライが選んだ精鋭部隊のことである。

のちにレコン・キスタと戦う事になるのだが邪覇隊はホルムの計にはまり
全滅の危機におちてしまうのである。敗北の原因はレコン・キスタの戦闘能力を
なめていたからであった。まあ、これはあとで話そう。

「くそ・・・・くそ・・・・・俺は一体・・・・。」
その時である、ノックの音がし若い剣士が入ってきた。彼はライに心酔し
邪覇隊の副長をつとめている男であった。
名前はガルクと言った。
「ライ様、どうしたのです?そんなに荒れて・・・。お身体に・・・。」
「五月蝿い・・・・・・くそ・・・・。」
「我々全員ベルクファクスへの増援準備完了しました。レコン・キスタなど
敵ではありません。ヤゲローの首、取ってごらんにいれます。
あとは・・・6人全員処刑します。」
「・・・・・・・・・・・しなくて良い。」
「はっ・・・・?」
「しなくて良いのだそうだ!!!!!」ライはそう言って部屋を出ていった。
「ライ様・・・・・・。」
ガルクは一人残されたが・・・・机の上に置いてある命令書を読んだとき
彼はその書類を破り捨てた。
「おのれ・・・・・・・ここまでライ様を馬鹿にするとは・・・・こうなれば・・
我々だけで侵攻し・・ヤゲローの首をとってやろう・・・。」
だが、これはガルク自身ヤゲローの恐ろしさを身をもって知る事になるのである。
そう邪覇隊の全滅という・・・・最悪のパターンをもって。
彼らは国内でしか戦闘の体験がなく、彼らはまだ18〜20歳の青年だった事も
災いして戦闘のプロであった彼らレコン・キスタの良い的でしかなかったのである。
そうしてかれら「邪覇隊20名」はライに無許可で出撃するのである。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(3) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 7日(土)21時00分31秒 

                 15.魔竜谷

ライは命令書を一通り読み、部下と話をしていた。そこへスパイがやって来た。
以前から内偵をしていたスパイはライに報告をした。
それは・・・・・竜族に関係している物だったのである。
彼は酒場で酔い潰した若者から竜族に謀反の噂があるという事を聞いて
皇竜、邪竜の代表者であるミルル皇女に出頭命令を出したのである。
だが、そこには彼女ではなく、やって来たのはフセンという邪竜族の武将であった。
「貴様は誰だ?」それがライの第一声であった。
「わしはミルル皇女にお仕えしておるフセンと申す者。今回の件で参上した。」
「私はミルル皇女に出頭してきてもらいたいと言っているのだが?」
「姫様はご多忙ゆえ、今回の申し出は見送らせてもらった。そこでわしを遣わし
ライ殿にきちんと説明せよと仰せになられた。」
「私はここの国の王なのだが・・・・それを「殿」呼ばわりするとは・・・。」
ライの気配が高く昇り、皆恐れおののいた。だがフセンはそんな事
気にもしないでこう言い放った。
「我々はべつにお前の指図は受けんと言っておるのだよ、坊主。」
フセンは髪を靡かせながら不敵に笑った。
「貴様・・・死にたいようだな・・・棺おけは幾つ必要だ・・・。」
ライの目が真っ赤に変わったがフセンはそれを笑った。
「ほほう・・・・貴様は我々がどう言う立場なのかご存知ないようだな。もしここで
我々を殺せばどうなるか、一番貴方が知っているのではありませんかな?」
「くっ・・・・・・。」不意にライの怒りが収まった。どうやらフセンの言った事に
気がついたようだ。
そう、彼ら皇竜と邪竜族の者達はいわばエスミル皇帝から「特権」を貰っているのである。
簡単に言うなら・・・・。

1.不出入の権
これは勝手に入っては行けないという事である。何人も竜の治める領地に
入っては行けないという権利を示している。

2.免税の権
竜族に限り免税がなされ、皇帝自ら課税をする場合、1ヶ月の猶予が必要とされた。
その間にきちんと報告をし、皇帝自ら赴いて説明をする。

これに反した場合、貴君らの命の保障はしないものとする。

つまり・・・・大地を割り、空気を汚したあの竜族に喧嘩を売る事は
自殺行為だったのである。それだけエスミルも気を使っていた。
という事は配下であるライは竜族のわがままを通さなければ
逆に反逆罪としてエスミルはライに大軍を差し向けてくる事になる、と
フセンは言っているのである。

「さて・・・どういたしますか?ライ国王陛下。我々を怒らせたら・・・どうなるか
・・・・それに今ミルル皇女様とキース様の戦闘能力はあのパーン様と
フランツ様をはるかに凌いでおられます。ここで頷いたほうが身のためですぞ。」
「くそ・・・・・・・我々魔族を脅すのか・・・・。」
「いえいえ・・・・平和的手段というものですぞ。宰相殿か
皇帝陛下の印をもって我々と交渉していただきたい。その時はライ陛下
お一人でこちらに来てください。歓迎致しますぞ。」
フセンをそれだけ言うとライの配下に軽く会釈をして去っていった。
だが・・・・それは・・・ライが宰相に願い出ても断られる事が分かっている
という事を示していた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(4) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 7日(土)23時07分26秒 

                15.魔竜谷

ボーゼルの探索は一昼夜続いたがさしたる効果も無く引き上げてくる黒騎士達に
ボーゼルはののしるしかなかった。
その時であった、グザファンが戻ってきたのである。
「おお、グザファン、そちらはどうだった?あのあばれ足鳥亭にレジスタンスの
拠点はあったか?」
「いえ・・・・・ありませんでした。」
「きさま・・・・怪しいと言っておきながら見なかったのか!!もうよい、私が行く!!」
ボーゼルは警護の者と共に城を飛び出していった。
しばらくしてボーゼルはあばれ足鳥亭に辿り着いた。だが、彼は息が上がり
汗まみれになっていた。
「はあ、はあ、ここが・・・・ようし、突入する!!」
「はっ!!」警護の者と共にボーゼルは突入した。

「あら、いらっしゃい!!どちら様ですか?」ちょうど店内にいたのは
シルクであった。
「おい、小娘!!ここにヤゲローがいるという情報が入った。すぐに
出さなければここにいる者全員を逮捕し取り調べを受けてもらう!!」
「はあ・・・・ですが・・・ここにはそのような方いらっしゃいませんが・・・。」
「バカな事を言うな!!分かっているんだ・・・そうだ、どうだ、お前
好きなだけ金をやろう。それでどうだ?」ボーゼルは生臭い息を吐きながら
シルクの肩を抱いた。
「止めてください・・・それならご自分の目で確かめればよろしいじゃありませんか。
それから二階に上がっては駄目ですよ。」
「何故だ・・・?」
「VIP専用ですの。身分の高い方のバーですから。」
「構わん・・・捜索を開始しろ!!おい、小娘、お前もあとで詰所まで来てもらうぞ!!」
ボーゼルはそう吐き捨てると二階へ上がっていった。
「もう・・・・参っちゃうなあ・・・・あんな脂ぎった顔近寄ったら・・・。」
シルクは呆れていたが、後ろからグザファンが来ると目配せをした。
グザファンはそれに応え、目を微かに向こうへやった。
それに気がついた黒騎士たちは言われた通り引き上げた。

ボーゼルは二階に上がった。そこは静かな場所でネクタイを締めた女性と
ライオネックのバーテンダーがいた。
「いらっしゃいませ・・・って何をするんですか!!」
「黙れ・・・ここにヤゲローがいるというのは分かっているんだ!!さっさと
出せ。それとも貴様・・・・彼の一味か!!」
「ちょっと待ってください。どうして私なんです!!」
「黙れ、黙れ、黙れ・・・・・・・!!」マリエン(メリエ)は食って掛かろうとしたが
ボーゼルは大騒ぎをした。
「逮捕しろ、この女、自白剤でも何でも使って・・・・。」
その時であった。向こうのテーブルから客がボーゼルのほうに歩いてきた。
「ボーゼル殿。ここは静かに飲むところです。お静かに!!」
「誰だ・・・貴様は・・・・って内務大臣の・・・・ヴィンセント卿・・・。」
「さよう。ここはこうした大臣の者が飲むところです。貴方はここにいる全員を逮捕すると
申されましたが我々もそうなさるのですか?ボーゼル殿。」
「構わん・・・・。逮捕せよ!!」ボーゼルは命令を出そうとしたが、
控えていた黒騎士たちがボーゼルを抑えた。
「何をする・・・こやつらを・・・きゃつめを捕らえるのだ・・・。」
「何を申されているのです!!ヴィセント卿は国の重鎮でございますぞ、
もしここでヴィンセント卿を捕まえればそれこそこの国はおかしくなってしまいます!!」
「くそっ・・・・・・・。」
「ここにはいないようです。どうやら逃げてしまったのではないのですか?
先ほど店の裏口から誰か出ていった音がしましたがそれがヤゲローとかいう
逆賊なのではありませんか?」
「なにっ・・・それは本当ですか!!」ボーゼルは驚いた。
「私は嘘は申しません。どうぞ・・・。それよりかいつまでもここにいるのは
得策ではありませんぞ。」
「それなら・・・・おい、ここはグザファンに任せ、残りは我に続け!!」
「はっ!!」黒騎士達は降りていった。
そして・・・グザファンが上がってきた。
「一応ここを見張れとのご命令です。ご勘弁を。」グザファンは頭を下げた。
「それよりか・・・・・「例のもの」は?」
「ええ・・・・今ごろは・・・・・城の方へ。それからグロウ殿にも・・・。」
「そうですか・・・ふふふふ。」マリエンは含み笑いをした。
「しかし・・・驚きました。まさかホルム殿からここに来てくれと
言われた時は・・・。」ヴィンセント卿は傍らにあったカクテルを飲み干した。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(5) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 8日(日)12時03分25秒 

                  15.魔竜谷

ライは会議を徴集し、大臣や文武官を集めたがこの「特権」が皇帝である
エスミルと邪竜、皇竜の代表者であるミルル皇女との間に定められた協定である為、
配下であるライやその部下達では条約自体の変更をする事が出来なかったのである。
しかもその条約の改訂をするには最低一ヶ月という時間が必要な為、
竜族に考える時間を与えてしまうのである。

「くそ・・・・・あのミルル皇女がそこまで浅知恵が働くとは思えない。
誰かが後ろで糸を引いたに決まっている・・・。」
「しかし・・・今ここで兵を差し向けても・・・結局は竜の怒りを買うだけです。」
文官の一人が応えた。
「くそっ・・・・・認めろ、という事なのか・・・ミルル皇女め・・・
幼き頃は私が守っていたと言うのに・・・どうしてなのだ・・・。」
文官はさらに言葉を続けた。
「それは・・・・竜族の姫君となられているミルル姫は旧ガスタブルグの姫君でも
あるのです・・・それゆえにエスミル様はライ様よりミルル様に出て来れないように
呪縛をかけたのです。だから竜族と皇帝陛下はそれを守っているのです。」
「分かっている・・・・・どうすれば良いのだ・・・。」
ライはため息をつくしかなかった。

一方・・・・・魔竜谷では・・・・。
ミルルとその一族である皇竜族、それから邪竜族の代表者が集まり
会議をしていた。
ミルルは玉座と言ってもそこは何もないので柔らかい絹の座布団に座り、
他の武将たちもそれに習った。

ミルルはあのライゼーラの時に死んだと思っていたのだろう。
市街地を暴走する「ナタク」と共にと思った人も多いだろう。
それはこういう事だった。
ミルルが気絶した時皇竜族の武将であるアリテトと邪竜族の戦士が
エクリマとミルルを救い出したのである。だが、竜族にとって
必要だったのはミルルであり、共にいたエクリマは近くの病院に預け、
ミルルだけを魔竜谷へ連れていったのである。
ミルルはそこで叔父や一族、さらに邪竜族の者達と出会いここで修行を兼ねるようになった。
そうして4年が経っていた・・・・。

ミルルはより母であるパーンに似るようになった。長い銀色の髪も
ちょっと長くなった。そして額にあった魔法文字が消えていた。
これはたぶん、パーンの心臓を移植した時「完全に」魔力が消えた為、
その証拠が無くなったのだろう。
「どうでしたか?フセン?ライ殿は何か言ってきましたか?」
ミルルは右側に座っている邪竜族の武将に話しかけた。
「言ってみましたがどうですかね。あの坊主(ライ)はこちらの要求を飲まなければ
なりませんし。まあ兵士を率いてくると言う事もありえますから何とも・・・。」
「そうですか。そうなると・・・・またエスミル陛下にお会いして
ライ殿を抑えてもらわなければなりませんね。」
「そうですね。宰相はどうします?」
「あの殿方は権力と金によわいだけですから・・・・そうですね、そこらへんで
産出する琥珀でもプレゼントしなさいな。どうせすぐに通してしまいますから。」
ミルルはクスクス笑った。それにつられて武将や文官達も笑みをもらした。

そう魔竜谷は宝石や鉱石が多く取れる場所でありエスミルはそうした意味で
竜族の叛乱を抑える為にミルルとの間に先ほどの条約を締結したのである。
だが、ミルルは産出される上質の鉱石や宝石に税をかけたため、ライのガスタブルグは
高い通行料を支払なければならなかったのである。
だが、ガスタブルグにしてもライゼーラにしても帝国が定めた税令にしたがっていた為
どういう事になるか分かるだろう。つまり魔竜谷の者の所には通行税の上がりが
舞い込んでくるのである。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(6) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 8日(日)14時46分47秒 

                 15.魔竜谷

魔竜谷の問題はライだけでなくガスタブルグに仕える文武官達を大いに悩ました。
何しろ相手は皇帝のお墨付きをもらっている相手のため、兵を出すにしても
何か法律の改正を求めるにしても本国の意思が必要だったのである。
「・・・・・・・どう致します?ライ殿。」文官の一人がライに申し出た。
「・・・・・・分かった。これは申し送りをしておいてくれ。
あの竜姫め・・・・。あれに竜皇子が加わったら・・・・。そうなると
南伐を主体にヤゲローに圧力をかけていくのが筋だな。」
「ボーゼルはどうします?」
その文官の言葉を聞いたライはきっと睨みつけた。
「そんな事は分かっている。それよりも南伐の編成を頼む。」
その言葉を聞いた文官たちはみな思った。
(もうベルクファクスは落ちたな。だからボーゼルではなくヤゲローの名を挙げている
という事は・・・・・・もうボーゼルは死んだと同じという事か。)

「それでは邪覇隊を全員集め先発隊として南下させよ。」
ライは武官に命を下した。だが・・・・・
「ガルクはどうした・・・・・?」
「えっ・・・・知りませんか?ガルク殿はもうすで出立致しましたが・・・
お耳に入っていませんか?」
「何だと・・・・そんな事・・・知らなかったが・・・。今どこにいる!!」
「はっ・・・・ベルクファクスに侵攻しております・・・・。」
文官は申しなさそうにライに言った。
「早く呼び戻せ!!相手がヤゲローではまず勝利はない。」
「しかし・・・・・・もうすでに・・・・。」
「くそっ・・・・・・若気のいたりという事か・・・。」
ライはすでにガルクの負けが分かっていたようである。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(7) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 8日(日)15時08分27秒 

                 15.魔竜谷

一方、ボーゼルは市街地を探していた。ヤゲローはどこにいる。
そう思い、辺り一面を探してみたがどこにもいない。
「くそっ・・・・・どこにいるというのだ・・・・まさかヴィセント卿は嘘を
ついていたのだろうか・・・。まさかそんなことはない。」
黒騎士達も棒や剣で民衆を脅しながらも捜索は続けられていた。
そんな時である、グロウがやって来たのである。
「どうした!!そんなに慌てて!!どうしたのだ!!」
ボーゼルは息を切らしていた。
「殿!!早くお戻り下さい!!すでにヤゲローはここにいません!!」
「どういう事だ!!」
「ヤゲロー率いるレコン・キスタ軍は「黄鶴都」を制圧致しました。今追っ手が
陛下を探しております。お急ぎください!!」
「何だと・・・・・やられた・・・・という事か・・・・。グザファンに
あばれ足鳥亭にいる女どもを殺してくるように命じろ!!」
「それが・・・グザファン殿も・・・・。」
「なに・・・・・それでは・・・・・・。」
どうやら悟ったようだ、黒騎士団の中や大臣の中に多数の内通者がいるという事に・・・。
「くそ・・・・・・。グロウ・・・お前はどうする・・・・。」
「私はここで追っ手を食い止めます。陛下はガスタブルグに増援を。」
「くそ・・・・すまぬ・・・・。」
だが、ベルクファクスからガスタブルグまで一ヶ月かかるのである。
ボーゼルは何とか馬を見つけると走り出していた。
グロウは一人残っていたが・・・・グロウはいきなり術を解いた。
術が解け、そこにいたのは・・・忍び衆の一人、上忍であった。
「ふふふふふ・・・・もうすでにグロウ殿はこの世にいないのだよ。さきほど我々の
猛攻を受けて黒騎士ともども・・・・・ホルム殿が仰った通りだな。」
上忍はふふふと笑った。
そうボーゼルは死地に向かっていたのである。ベルクファクス軍の正規軍が
待ち受ける場所へ・・・向かっていた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(8) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 8日(日)21時14分08秒 

                 15.魔竜谷

話をちょっと戻そう。ボーゼルが市内を捜索していた間グロウは何処にいたかというと
・・・・・・・。
グロウは城門の処で一部隊を率いて後陣を張っていたのである。
もちろん、城にはまだ黒騎士の部隊がいたが、ここまでレコン・キスタが来るとは
思わなかったのである。
しかし・・・・・・・・・。

「おい、異常はないか?」グロウは近くにいた兵士に話しかけた。
「はっ。異常はありません。ですが本当に来るのですか?レコン・キスタは?」
「来るだろう・・・・彼らはアジトを一つ失っただけで・・・何処から来るのかも
分からないのだから、こうして陣を張り、関所を張りさえすれば連中は来れないはずだ。
それに城内にも戦闘部隊を配置してある。万が一城内から来ても袋のねずみさ。」
グロウは兵士に話した。
「それなら大丈夫ですね。でも・・・・本当に来るのでしょうか・・・。」
「きっと来る・・・。」
グロウは若い兵士から離れようとした。その時であった。
近くに止めてあった部隊専用の馬車にメラゾーマが数発飛び込んできた。
そして爆発、炎上した。近くにいた兵士諸共。
「何だ!!くそっ・・・・正面から来るとは怯むな!!連中は少数精鋭の部隊だ、
丁寧に落ち着いて倒せば大丈夫だ!!」グロウは紫色に輝いた短剣を抜いた。
「くそっ・・・・行くぞ!!」グロウはメラゾーマが放たれた場所に突っ込んでいった。
「死ねえ!!」グロウは笑いながら短剣を繰り出したがそれを簡単に受け止めた者がいた。
「なにっ!!」
「困りますね。貴方の相手はわたくしです。ちょっと遊んであげますよ、ふふふっ。」
そこにいたのは・・・・メリクリウスであった。「傾国」と呼ばれし魔族・・・。
「メリクリウス・・・・・・・。」グロウは剣を構えた。
「悲しんでやろう、お前の死を!!」グロウは飛び掛った。
そして数本の短剣を投げ付けた。そう彼はライの戦い方を真似ようとしたのである。
「蝙蝠呪縛!!」それらはメリクリウスの四方に突き刺さり結界を張った。
だが、メリクリウスは動じない。ただどうなるのか見ているだけである。
「くらえ!!イオナズン!!」グロウは呪文を唱えた。あっという間にメリクリウスが
赤い炎に包まれる。
「やったぜ!!これで俺が最強の暗殺者だ!!」グロウは着地したが・・・。
その瞬間であった。グロウの両腕が「飛ばされた」。
「!!!!!!!!」そしてグロウは叫び声をあげた。
グロウははっきりと見た。炎の中何事もなかったかのように歩いてくるメリクリウスの
姿を・・・・・。それは炎の中を悠然と歩いてくる殺戮を好む少女の姿であった。
「・・・・・・・・・綺麗だ・・・なんと可憐なのだ・・・・私は
裁かれるのか・・・・・・。」それがグロウの最後の言葉であった。

数分後・・・・・メリクリウスの回りには兵士や騎士の死体が広がり彼女を囲むように
倒れていた。そこにはグロウの姿もあった。
「秒殺と言ったところかな・・・・だから言ったのだ、ここを制圧するのに
人手はいらんとな。」メリクリウスは何気なく呟いた。そこへ
上忍が数人現れた。
「遅いな・・・・何をしていた。」
「申し訳ありません・・・・ボーゼルを誘導していましたが、ヴィンセント卿が
うまくやったようです。」
「そうか・・・・あとは城内だな。キースたちは上手くやっているだろうか・・。
これより城内に入る。動く者があればすべて敵だと心得よ。散!!」
「はっ!!」あっという間に気配が消えた。そして彼女も消えていった。
彼女が消えた後には・・・・切り刻まれたグロウという男の死体があるだけであった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(9) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 9日(月)11時31分42秒 

                 15.魔竜谷

城内では黒騎士団の一団が通路の向こうから来る相手と対峙していた。
向こうは霧で何も見えないが斬り込んでいった騎士が戻ってくると言う気配は無かった。
それでも何かの気配はしている。
「来るぞ・・・・・我々は何人生き残っている?」
騎士団長が傍らにいた兵士に尋ねた。
「20人弱です。各個撃破され他部隊との連絡が断たれています・・・。
おそらく城門には忍び衆が待ち構えているでしょう。ここは何としても
ボーゼル様に追いついて・・・。」
「くそ・・・・・その為に戦闘部隊をこっちに配置したと言うのに・・・。」
騎士団長は歯軋りした。逆にレコン・キスタの者はボーゼルの策を読んで
主力部隊を城内に展開したのである。さらにグザファンが叛乱を起こした
黒騎士団を取りこみ、展開した為に油断をさせてしまったのだ。

のちにグザファンはベルクファクスの武士団を率いて帝国と戦うことになり
何度もネロのピンチを救う事になるのだがそれはちょっとした未来の事である。

そして・・・・霧が晴れ現れたのは・・・・一人の少女であった。
神官の服を纏い黒髪がゆっくりと風を受けてなびいている。
「あとは・・・貴方達だけですね。わたくし達とて無益な殺生は好みません。
ヤゲロー陛下に忠誠を誓えば命だけは助けましょう。」
少女はじっと騎士団をみつめていた。
「何を言うか!我々はボーゼル様直属の騎士団、ここで負けることはありえん!!
行くぞ!!」数人の騎士が少女目掛けて斬りかかった。
だが・・・・・・。

「そうですか・・・・・では仕方ありませんね。いきます・・・・。」
急に少女の周りに風が起きた。そして持っていたロッドをくるんと回し
力ある呪文を唱えた。風の中に髑髏や骸骨と言った禍禍しいモノが現れた。
そう呪殺のスペルである。しかもかなり強力な・・・・。
「黒き死神よ・・・・・我が願い奉る・・・虚空に浮かべし死霊の力持て・・・
魂を奪い取らんことを・・・・。」
少女の呪文が完成し・・・・呪文が発動した。
「ザラキーマ!!」すぐに騎士たちを黒い雲が覆い、あっという間に命を奪っていった。
そして・・・・・黒い雲が晴れるとそこは・・・騎士たちの屍骸が広がっているだけで
あった。動いている者は誰もいなかった。
「・・・・・・全滅ですか・・・貴方達が望んだ事ですから・・・闇黒神に
その身を捧げてしまいなさい。もう寝る時間ですよ。永遠の見る夢はどうですか?」
その少女の名はシルクと言った。のちに司祭と呼ばれる事になる魔族である。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔竜谷(10) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日:10月 9日(月)12時01分51秒 

                 15.魔竜谷

そして・・・・どのくらい時間が経っただろうか・・・・。
あちこちにいた騎士団が全滅かあるいは降伏し武装解除したあと、ゆっくりと
本物のヤゲローは「黄鶴都」に入城した。
武装解除された騎士の中にはあれがヤゲローと聞いて斬りかかろうとした
者もいたがヤゲローの剣に追いつかず斬り殺された。

「ふう・・・・・これで一段落ついたな。」ヤゲローはギアがいた玉座の間にいた。
あたりを見渡してみても埃を被り部屋は黒く、掃除が必要な状態であった。
その時であった。ヤゲローのところにボーゼルが囲っていた女性達が
現れた。そう、媚びようとしているのである。
「おめでとうございます、ヤゲロー様。」女性の一人がにこやかに話しかけた。
背後にいる女性達も同じく跪いた。
「・・・・・・・・どうした?」ヤゲローは一瞥すると視線を元にも戻した。
「こうしてボーゼルめを追放したのですから私達も助かりました。つきましては私ども
新たなる君主であらせられるヤゲロー様に服従を誓い・・・・・。」
女性は艶かしい服でヤゲローに擦り寄ったがヤゲローは反応が無い。
だが女性がヤゲローの持っている剣に手を伸ばした途端・・・・。

ひゅん。
いきなりだった。ヤゲローが剣を抜いて女性を斬り捨てたのだ。背後に控えていた
女性たちに血が飛び散った。そして彼女らはパニックになった。
「私はお前達など最初から必要だと思っていない。むしろ蛆虫かその程度としか
見ていないのでな。」
「はああ・・・・・・・助けてください・・・何でもしますから・・・・お許しを・・・。
ヤゲロー様・・そうだ、今度私達の宮にぜひ来てください・・・
そうしたら・・・・。」

だが、それはヤゲローを怒らせるしかないものだった。
「宮・・・・・・ボーゼルめ・・・・予想していたが重税をかけてそんなものを
建築していたとは・・・。」
「どうでしょう・・・?きっと陛下も気に入りますよ。」別の女性が話しかけた。
「焼き捨てろ。」
「えっ・・・・・・・。」
「いらんと言っているのだ。もちろんお前達の命など最初から考えていないがな。
このベルクファクスの面汚しめ!!」ヤゲローから闘気というのか
そう言うものが立ち上った時女性達はヤゲローが本気だとわからなかった。
「まあ・・・ご冗談を。焼き捨てろなんて・・・・。ほほほほ・・・・。」
みな笑い始めたが・・・・ヤゲローは指を鳴らした。
すぐに上忍衆が現れた。
「お呼びで御座いますか、お館様。」
「殺しておけ。こいつらを。」
「御意。」数人の上忍が女性たちのほうに向かったと思ったときあっという間に
女性の首が宙を舞った。
「ここを血で汚すな。瞬殺でかまわん。」
「御意。」
ヤゲローはうしろを向いた。背後では女性達の断末魔の声がしていたが
静かになった。
「終わったか。さて・・・・お前はどうする?」ヤゲローはわざと一人残して
おいたのだ。
「ひいいいいい・・・・・・・。」
「そうだな、こいつらの処分をお前にやってもらう。絨毯の掃除もだ。さっさと処分しろ。」
「は、はいいいい・・・・・。」女性は失禁しながら生きていない女性たちを
次々と運んでいった。
「それから・・・・メリクリウス。」
「はっ。」
「宮をあとでフラームとガンド、グザファンとで焼き尽くせ。」
「はっ。」メリクリウスは頭をさげ、ちょうど後ろに来ていたフラーム、グザファン
ともども頭を下げたのだった。
(続く)