
-------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(1) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月30日(水)22時15分27秒 9.偽天使 しばらくしてネロたちはライゼーラの朝廷に仕えることになったが エクリマは旅をしている最中とあってそのまま出て行こうとした。 だが、シャリムやネロが客人として持て成したいという事でしばらく滞在する事になった。 そうして4人がライゼーラに滞在して数ヶ月が経った・・・・・・。 アクリラはよく寝ネロの前のテーブルにつく事が多くなった。シャリムやメランナは それが何なのか良く知っていたが二人は親しみよく話していると ネロと惹き合わせて良かったと思うようになった。 お互い顔を赤らめながら話しているとエクリマをはじめみなそこにいる者は こう思うようになった。 (ウブだな・・・・・ああ、こいつら世間知らずだ・・・・うぶだな・・・・・。) 何かくすぐったいような甘いような空気が満ちるようになった。 一方エクリマは一人剣の修行に明け暮れるようになったが時々手紙を国元にいるザルトや その両親に送る事が多くなった。 シャリムやメランナ、ホルムは時々手紙の検分を行って手紙の中身を見てみたが なんてことは無いものだった。 ちなみに・・・・・・「ライゼーラのシャリムにお世話になっているから 無用な捜索は必要無い。」とか、「夕食に食ったメシが美味かったので 今度お袋頼むぜ。レシピもらってくる。」とか他愛もないことが書いてあった。 そしてある日の事である・・・・・。 シャリムはエクリマと女官、そして文官とネロ、アクリラを宮殿のシャリムの 私室に呼んだ。そこには宰相と幾人かの将軍が控えていた。 「どうしたんだい?シャリム?」エクリマは何かあったのかと思い剣を持参して やって来た。 「それよりも・・・剣を宰相に預けておいてくれ。」シャリムは不機嫌な表情で エクリマに話しかけた。 「ああ・・・悪い。ほらよ!!」ホルムに剣を渡すと腕を組みなおした。 「うむ・・・・・。」 「何でしょうか・・・シャリム様。」ネロは跪いた。 「ああ・・・・・。ちょっとな。すまないがアクリラに外遊をさせておきたいと 思ったのだ・・・。」 「外遊・・・?」 「そうだ。お前は箱入り娘だからな・・・世間を知っておくには良い機会だと思う。 それに・・いつまでもネロくん、ネロ君、じゃ困る。ネロくんも迷惑しているだろう。」 「いえ・・・・別に・・・・。」ネロは真っ赤になって俯いてしまった。 「アクリラ、お前はベルクファクス王国に行ってこの親書を渡してくるのだ。 2〜3日の旅だがしっかりと勉強をして戻ってきなさい。」 「えっ・・・・でも・・・・。」 「お前はいつまで国家儀礼が分からないつもりだ。それにそろそろ知ってもらわないと いけない。だから、ベルクファクスに行って挨拶だけでもしてきなさい。」 「ベルクファクス・・・・・・。」アクリラは黙ってしまった。 だが、ネロは違っていた。 「お断りします!!どうして・・・・僕が・・・。」 「そうだったな。ギーガン国を実質上滅ぼしたのはベルクファクスだったな。 だが、アクリラを外遊させて勉強させねばならんのだ。いつまでもこの城から 出た事が無い、というのでは困るのだ。もちろんベルクファクスのマクシナス殿下には 話しておいてある。相手からは気楽な気持ちでどうぞ、って言っていた。 客人に最大限の振る舞いをするのがベルクファクスの礼儀なのだそうだ。」 「でも・・・・・。」 「大丈夫だ。あの国は野蛮な国じゃないよ。しっかりしている国だから 知っておきたいのだ。ネロとアクリラに・・・・。」 「えっ・・・・・・・。」 「それは・・・・・・・・。」 「出発は明後日の朝。飛空艇で行く事になる。まあ、行って帰ってくるだけで 2〜3日の旅だ。すぐに着く。きちんと挨拶をしておく事。」 シャリムはホルムに目で合図を送った。ホルムは頷くとアクリラに親書を手渡した。 「これが・・・・・親書。」 「さっ・・・姫様。この箱にお入れ下さい。あとはわたくしめに・・・・。」 「お願いします。」アクリラは頭を下げた。 「では・・・・解散。」シャリムの声と共に4人は部屋を出ていった。 そうして・・・・一行はベルクファクスに行くことになったのである。だが ネロにとって運命の出会いが待っていようとは誰も想像が出来なかったのである。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(2) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月31日(木)00時39分39秒 9.偽天使 ここはライゼーラ帝国帝都「ディープ・シー」から離れた場所にある 飛空艇戦隊部隊の軍港。 ここにシャリム帝、メランナ王妃、それから宰相ホルム、将軍バロール、 遊撃軍隊長ら主要な閣僚が見送っていた。 「では、お父様、お母様、行って参ります。必ず使命を果たしてきます。」 アクリラは両親と抱擁を交わしたあとゆっくりと飛空艇に乗り込んだ。 「私達も行ってまいります。」ネロたちは敬礼をすると飛空艇にアクリラの あとを追うように乗り込んでいった。 そして・・・・・・・何かエンジンというのだろうか、飛空艇はゆっくりと 上昇していった。 外が見える窓からアクリラは手を振っていた。王族や文武官らが手を振り返す中 飛空艇は上昇をかけて見えなくなった。そして・・・・・ゆっくりと出発した。 「大丈夫だろうか・・・・。」シャリムは心配そうに呟いたが バロールがシャリムに耳打ちした。 「陛下。潜行部隊の長から連絡です。ベルクファクス領内に潜行成功した模様。」 「わかった・・・ご苦労。」シャリムはそれだけ言うとすぐに ホルムに耳打ちした。 「これで・・・・・今度はベルクファクスに牽制をかけられるな。」 「そうでございます。何しろ、我々はまんまとベルクファクスの計にのせられ ガスタブルグとは絶縁状態になっています。ここで牽制をかければ今度は 嫌でもガスタブルグが出てくるはずです。そうなれば・・・・・。」 「ふふふふ・・・・・。まさかそうなるとは思っていまい。」 シャリムはほくそえんだ。 ・・・・・・このアクリラの外遊は無事に帰国してくるのだがネロはショックを受けて しばらく外に出ようとしなかったそうである。 ただ部屋からは泣き声と悔しさの入り混じった声が聞こえていたと言われている。 一方・・・・・・飛空艇内では・・・・・。 エクリマと文官が座席で話をしていた。この文官はギーガン国に仕えていたが そのままライゼーラに使える事になった彼であった。 「久しぶりだなあ・・・ベルクファクスに行くのは・・・。」エクリマは 懐かしいような表情をしていた。 「そんなに・・・・?ですがいつ頃行ったのですか?」 「うん?ライさんと一緒に行ったんだよ。ライさんはベルクファクスの文字が読めなくてね、 なんでこんなに読みにくい文字があるんだよ、って叫んでいたっけ。」 「そうなのですか・・・・一体どんな文字なのですか?」 「う〜ん・・・・「漢字」という書体らしい。ただこれしか分からないんだ・・・。 それにあそこには「侍」や「忍」がいるからな。」 「しかし・・・・・このベルクファクスの首都は何と読むのですか?」文官が 尋ねた。 「これか・・・これは・・・俺の記憶が正しければ・・・「おうかくと」って読むはずだ。 「おうかくと・・・・?これで・・・・「黄鶴都」と読むのですか? 奥が深いですね。」 「まあな。あの国は不思議な国だよ。こう何と言うのか・・・面白い国だよ。」 「この黄鶴都の由来というのは知っているんですか?」 「確か・・・・・どこかの異国でのお話らしいんだが昔「中国」という異国に 酒屋を営む商人がいてな・・・そこのお酒を気に入った仙人が蜜柑に鶴の絵を書いたら それが動き始めて・・・あっという間に財を成したそうだ。そうしてその仙人は 蜜柑の鶴にのってどこかにいってしまったらしい、という伝説があったそうだよ。」 「へ〜・・・それが・・・・黄鶴都・・・の由来ですか・・・・。」 「まあな。ってお前達いつからそこに?」エクリマは視線を感じ取ったのか 辺りを見てみるとそこにはネロとアクリラが黙って二人の話を聞いていたのだった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(3) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月31日(木)10時33分29秒 9.偽天使 一方受け入れる先のベルクファクスでは・・・・・・・。 ギアは一人の若い侍を呼んだ。呼ばれた侍は跪いてギアの指示を待っていた。 「ヨアヒムよ、お前をこの度来るアクリラ姫の饗応役に任じる。 ベルクファクスの名に恥じぬようしっかと働いてみせい。」 「御意。この度の任、しかと承りました。切腹する覚悟で 望む所存でございます。」 「うむ・・・・頼むぞ。」 「はっ・・・・・・。」ヨアヒムはそのまま退出していった。 「・・・・・・・・・・・・・・・。帝国は本当に利用するものは何でも使うのだな。 ・・・・・・・・・・・・。」一人残されたギアは軽く目を閉じた。 「ねえ、エクリマ、そのベルクファクスという国はどんな国なの?」ネロが興味津々に エクリマに聞いた。 「聞いていなかったのかよ・・・・・ネロ。」 「だってさ・・・途中から来たから分からないよ・・・・。」 「そうだったな。あの国はもともと中央にいた豪族たちが東の地をもとめ 移民を開始した事から始まったんだ。」 「どうして・・・・・・移民なんて・・?」アクリラがエクリマに聞いた。 「中央の圧力に耐え切れず、故郷を捨てる形で移民を始めたんだ。だが、移民先の 東の地は荒れ果てて、さらにそこの先住民族との戦いの日々だったんだ。 それから・・・・・何十年と戦いを続け、ようやくギア殿のお父上が 先住民族の長と和解を果たして建国したんだよ。そして今まであった 東方騎士団が先住民族の戦い方を吸収して東方武士団と変えたんだ。それが ベルクファクスの由来さ。」 「そうなのですか・・・・ではまだ新しい国ということなのですか?」 アクリラが黙って聞いているネロに代わって聞いた。 「まあ、新しいほうだろうな。」 「そうなのですか・・・・・・。」 アクリラはそう言いながら外が見える窓をちらりと見ていた。 外は雲海が広がり何も見えない。だが・・・・・・・雲の隙間から黒い物体が こちらにまっすぐに向かってきた。 「きゃああああ・・・・あれ、何!!」アクリラは思わず悲鳴をあげてしまった。 「あれは・・・・・・・・。何だ!!」ネロはアクリラをかばっていた。 「おい、おいお二人さん、熱いところを見せてもらうのは良いんだけどさ、 あれは・・・・・ベルクファクスの巡洋艦だよ。どうやら警護してくれている ようだな・・・・。」エクリマは呆れながらネロ達に言った。 「それではブリッジのほうに行きましょう。詳しい事がわかるかもしれませんよ。」 文官がせかしたのでネロたちは部屋を出ていった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(4) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月31日(木)11時10分01秒 9.偽天使 ブリッジでは・・・・船長は始めちょっとした混乱に陥っていた。 そんな時エクリマ達が入ってきた。 「どうしたのですか?」アクリラが船長をつかまえて話しかけた。 「はっ・・・・・姫様。ごらんの通りベルクファクスの巡洋艦に 包囲されていまして・・・・。」 「でも攻撃してきていないのなら大丈夫じゃないのですか?」ネロが 心配そうに尋ねた。 「そうですが・・・いきなり出てきたので我々のほうも混乱してしまって・・・。」 その頃になると船室も静けさを取り戻し静かになった。 「この船は・・・・いったい・・・・。」ネロはベルクファクスの巡洋艦を 見て呟いた。 「あの船は、ベルクファクス王国所属特別潜行艦「瑞鶴」だな・・・・。もう一隻 あるだろ。あっちは特別突撃艦「鋭鋒」だろう。」エクリマが それに応えるかのように応えた。 「どうして・・・分かるんですか?」文官と船長は驚きの声をあげた。 「だって、書いてある。俺でも何とか読めるというところだけどな。しかし嫌な物だな、 敵国の船に囲まれるなんてさ。」 「でも敵国って・・・・・・・・。」ネロとアクリラはそれだけしか言えなかった。 そうして・・・・・どのくらい経っただろうか・・・・東の地の遥か先 水に囲まれた都市が見えてきた。それは自然の要塞に相応しく ところどころライト・アップされており偉観を保っていた。 「あれが・・・・・・ベルクファクス王都「黄鶴都」だ・・・。通称「豊かき王都」 とも言う。ライゼーラの首都と同じくらいの大きさがあるが・・・・。」 「あれが・・・・凄い・・・あんなものが・・・・・。」 ネロは驚きを隠せなかった。と言うのも宮殿の上には4つの空中要塞らしき岩の塊が 浮いておりそれらが四方を固めていたのである。 それにはベルクファクスの文字(漢字)で「北」「南」「東」「西」と書かれてあった。 「あれは・・・・・・?」 「機動要塞群だよ。あれも戦いのときは最前線にたって戦うんだ。」 ネロたちを乗せた船はゆっくりと「北」と「西」と書かれた巨大な機動要塞の 隙間を通り過ぎていきベルクファクスの巡洋艦に導かれるように軍港に着陸した。 「着いたか。何年ぶりだろう・・・・・。」 エクリマはそれだけ言うと船室に戻って荷物を取って来た。 ネロたちもそれに倣う。そして全員下船の用意が整うと船長は ゆっくりとタラップを降ろすように指示を出した。 「では・・・・ごゆっくりと。姫様。ネロ殿、エクリマ殿下、よろしくお願いします。 2日間ここに滞在する事になっています。」船長は頭を下げた。 「ありがとう、船長。では行って参ります。」アクリラは行こうとしたが 女官に止められた。 「お待ち下さい、わたくしも参ります。そう言い付かっております。」 「えっ・・・・でも。」 「駄目です、姫様に何かあったらどうするんですか!!だから私も!!」 「・・・・・・・・・分かりました。儀礼のほう、お願いします。」 「はい、姫様。」そうしてネロ、アクリラ、エクリマ、文官、女官はゆっくりと タラップを降りていった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(5) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月31日(木)16時14分29秒 9.偽天使 5人はタラップを降りて石畳のある軍港に降り立った。 「ふう・・・・ようやく着いた。さすがに疲れたよ。」エクリマは 肩をとんとんと叩いた。 「何かおじさんくさいよ、エクリマ。」ネロが笑いながら話しかけた。 「しょうがないだろう、お前たちのお守をしなくちゃいけないこっちの身にも なってみろ。」 「えっ・・・・・お守・・?」 「だって・・アクリラは僕が守るって・・・・。」 「何言っているんだよ、俺はシャリムからお前達のボディーガードをできたら やっておいてくれって頼まれているんだよ。だから付いて来たんだ。」 「そうだったのか・・・・でもお守はないだろう!!」 「いつもそうだろうが!!お前は特に剣が上手いのか下手なのか全然わからねえじゃねえか。 いくら魔法戦士と言ってもお前の場合成長が遅いのだから誰かが鍛え上げなきゃ 何も出来ないだろうが!!」 エクリマはくってかかった。 「何言って・・・・・。」ネロはそう言いかけた時アクリラが服の裾を ちょいちょいと軽く引っ張った。 「どうしたんだ・・・・。アクリラさん。」 「あれ・・・・・・。お出迎えの方のようです。」 アクリラが指差したほうから一人の侍が近づいてきた。 「あれ・・・?どうして・・・・・。」ネロは首を傾げた。 「気がついたか・・・?」 「ええ・・・どうしてあの人は鎧を着込んでいるのですか。大抵高等魔族は鎧など 着込まないものだと思っていたのに・・・・。」 「それはな・・・・ここには貴族という概念が無いんだよ。」 「えっ・・・・・・・。」 アクリラはエクリマの話を聞いて驚くしかなかった。 そうして・・・・・。侍は彼らの前でとまった。 「ようこそ、ベルクファクスへ。歓迎致します。私は今回の饗応役を仰せつかっております 侍大将のヨアヒム・ウィズドでございます。」 ヨアヒムは頭を下げた。 「しかし・・・・若いですな。普通侍大将ともなれば・・・・。」 文官は驚いていた。 「ふふふふ・・・・若手をどんどん入れるというのがベルクファクスのやり方です。 まあ、ここでお話は何ですからさあ、どうぞ。それから・・・・こちらの方々の お名前をお聞きしたいのですが・・・・。」 「私の名は・・・・・・。」アクリラが挨拶しようとした。 「いえ・・・貴方様はもう・・・・・。」 「俺の名前はエクリマ・ジュダ。」 「ジュダ・・・・・ほう、あの・・・・これはようこそ。いかがですかこちらは・・・・?」 「私は・・・・・・。」文官と女官も続けて挨拶をした。 「君は・・・・?」ヨアヒムはエクリマの後ろにいる少年に気がついた。 「僕は・・・・・・・・ネロって言います。」 「ネロ!!そうか、君がネロか!!なるほどなあ・・・・そうか・・・・。」 ヨアヒムは一人納得した表情を浮かべた。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(6) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月31日(木)20時26分58秒 9.偽天使 アクリラたち5人はそのままヨアヒムの案内で王都「黄鶴都」に向かう事になった。 馬車がさっそく用意され、5人はそれぞれ乗り込んだ。 その馬車での事・・・・・。 ヨアヒムとネロ、それからエクリマ、アクリラは先頭の馬車に乗っていた。 ネロはさっきから気になっていた事があった。 それはまるで自分のことをこの人は知っていたかのような感じだったからだ。 初対面なのに・・・どうしてこの人は自分のことを知っているのだろう・・・・ そうした疑問がネロの頭の中をぐるぐる回っていた。 それにこの人はさっきから自分を見ている・・・・と言うよりも興味があるのか 面白半分で観察しているように見えた。 その視線に気がついたネロはさっきの事も兼ねて聞くことにした。 「あの〜ヨアヒムさん・・・どうして僕のことを知っているのですか?まるで 昔から僕のことを知っているかのような・・・・・。」 「ふふふふ・・・・・まあ、私の知己がね、貴方の事を知っていましてね。」 「えっ・・・・・それはもしかして・・・ライさんでは・・・。」 エクリマが尋ねたがヨアヒムはただニコニコ笑うだけである。 何か知っている・・・・・・・3人はそう思えてならなかった。 だが、それはネロがギアに会い、休憩している時に明らかになるのである。 「遠路はるばるようこそ、ベルクファクスへ。ここはどうですか?それからヨアヒムに 何か失礼な事はありましたか?」マクシナスがアクリラ以外平伏している 4人に話しかけた。自己紹介も終わり、アクリラは何とか挨拶を終わらせる事ができた。 ここは玉座の間・・・。ギアをはじめ、マクシナスやヤゲローが勢揃いし 5人を見つめていた。 「え〜っと・・・・・。」アクリラは固まっていた。そんなアクリラを見て マクシナスは口元をゆがませた。 「まあ、自分の国だと思ってくだされ。さて・・・親書を。」マクシナスは 手を出した。 「あっ・・・はい、ただいま。」アクリラは大切に持ってきた箱をマクシナスに 掲げた。 「なるほど、これですか。ではさっそく拝見致しましょう。」マクシナスはゆっくりと 手紙を読み始めた。 「父上・・・・・。」マクシナスはじっと親書を見ていたが次第に表情が険しい物になって いった。 「あの・・・・私達に何か不備でも・・・それならば・・・幾重にもお詫びを・・・。」 女官が心配そうにマクシナスに尋ねたが、マクシナスは笑って 気にしないで、と答えた。 エクリマがそっとネロに耳打ちした。 (いいか・・・・あそこにいるのが・・・ギアだ。ベルクファクスを統べる王だ。) (あれが・・・・すごい・・・気配だ。獅子のような力と狡猾さを持っているかのようだ。) (当たり前だ。ギア殿は歴戦の勇者でもある。先陣を斬って戦う事を誇りに 思っているぐらいだ。) 二人は耳打ちしながらマクシナスの奥に座っている屈強の戦士をじっと見ていた。 ギアは白い口ひげを生やし年老いても尚屈強の身体を持っている。それは玉座の 傍らにおいてあるバトルアックスが証明している。 そして・・・・ギアが重い口を開いた。 「ご苦労であった。アクリラ姫よ、お父上によろしくと伝え下さい。では 部屋をご用意してある。ゆっくりとしていくが良い。」ギアがそのまま退出していった。 だが・・・・・・ネロにとって運命の時がゆっくりと近づいていた。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(7) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 9月 1日(金)19時19分23秒 9.偽天使 伝説は語る・・・・・古の昔、まだ覇者を名乗る者が闊歩し魔界を統べようと していたとき。その時に魔界に住みし魔竜、王竜が互いに戦いたり。 戦いは月が何回も通り、暗き太陽が月を追いかけるかのように通りぬけ また同じことが繰り返されるまで・・・・・。 殺戮を好む黒き竜の者、古の竜の末裔の黄金の王竜の者を苦しめ 怨嗟の声、次第に大きくなりけり。 争いおき、大地が歪み、大地が荒れ果てて、大地が砂漠に変わり、 大地が汚され、大気が怒の気で膨れ上がった。 魔界の者、多くが死ににけり。救う者助ける者なし。 ただ荒ぶる竜の気凄まじく抑える者無し。 竜の気、大地の気、大気の気・・・すべてが怒を、憤怒を、憎悪を、怨念を含み 救う者無し。穢れ、汚れ、苦しんで憤死していく者、圧死していく者、 数える事叶わず・・・・・。 全て・・・・天を見上げる・・・・。黒き闇の天を・・・・・。 その時・・・・風変わる・・・・銀の髪を持つ王竜の者、出て来たり。 銀の王竜、黒き殺戮を好む竜、一刀のもと倒したり。 その王竜、古の血脈をもつ王竜の者率いて黒き者と戦いたり。 銀の髪をもつ王竜、いと優しき少女なり。 その手糸車をもつに相応しく剣をもつことなど無縁なり。 少女のもつ剣、竜を殺す剣。王竜の長たち流したる血によりて鍛えぬかれた 剛の刀なり。 剛の刀、黒き竜には恐怖の、黄金の竜には希望と勇気の徴となり、 黒き竜、まだ赤子の皇子を残して散ったなり。 のちにこの少女こそ、魔界に生を受けた者は尊敬と羨望のまなざしでこう言う。 「女王竜パーン」と。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(8) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 9月 1日(金)21時48分00秒 9.偽天使 ここはベルクファクス王国黄鶴都宮殿の一室。 ベッドにはパジャマを着こんだ幼い少女が一緒に寝ている少女に昔話を聞かせていた。 「・・・・・・のちに人々はこう言う、「女王竜パーン」と。」 「マリエンお姉ちゃんの昔話、何か難しい言葉が入っていて良くわかんない。でも そのキースの竜の皇子様はどうしたの?」 「う〜ん・・・・わからないの。ごめんね。でも、もしかしたらルシア様が いつまでも起きていたらなんてしていたら来るかもしれませんよ。 綺麗なお嬢ちゃんはどこだ〜なんて言ったりして。」 「うぷぷぷぷ・・・・・変なの・・・。でもお姉ちゃんが言うんだから本当だよね。」 「そうよ。さらいに来るかもしれませんよ、悪い子には。」 「怖いからもう寝るね。一緒に・・・って駄目?」 「う〜ん・・・じゃあ、ちょっとの間いてあげる。それならどうかな?」 「本当!!じゃあ、良い子でいるね。マリエンお姉ちゃん。」 ルシアはそう言ったがあっという間に寝てしまった。 「早いんだ・・・・でも・・・・私にもそんな年頃があったんだ・・・。 そう言えばライゼーラからお客様がきているって言ったけど何だろう?」 一方・・・・・・どことも知らない黒い宮殿では・・・・。 「ぶへっきゅしょん!!あ〜チキショウ、一体どこのどいつだ!!まあ、俺の ファンかな。うん、うん。」キースはクシャミをした。どうも本人は 良い意味で考えているようだが・・・・・。 「お前の場合、どう見てもファンじゃなくて何か悪い場合に使われたような気がするが。」 側にいたボーゼルがツッコミをいれた。 「気のせい、気のせい。俺様に憧れているファンだよ、きっと。」 まさか悪い場合に使われているとは知らないキースであった。この場合本人は知らない ほうが良いだろう。 ネロとエクリマ、アクリラは一室で色々と話し合っていた。と言っても 修学旅行で生徒が思い思いのことを話すと同じでネロとアクリラにとってこうした 体験はうれしいものだった。 「でさ、ライさんったら寝坊して、剣を腰に差しているのも知らないで探していた こともあったんだぞ。」 「へ〜本当ですか!!それって。あのライさんがねえ〜。」ネロが楽しそうに 笑った。アクリラはそんな二人の会話に笑ったりしていたが・・・・・。 その時であった。誰かがドアをノックした。 「うん?誰だ。もしかしたら文官が今後のことでも・・・。」 エクリマはドアを乱暴に開けた。だが、そこにいたのはヨアヒム達であった。 「お前らは・・・・?」 「まあ、年頃も近いので異国の話を聞きたいと思いましてね。お同伴よろしいかな? もちろんお酒も用意してありますよ。寝るまでの時間ちょっと異国の話で 盛り上がりたいと思いまして。」 「そう言う事なら大歓迎ですよ、なあ、ネロ。」 「そうですね。」 「それに・・・・・ネロくんにとても興味がありましてね。貴方・・・この世界に 人間の少女を二人連れてきたそうですね。」 「なっ・・・・何故それを。だってそれを知っているのはギルモアとライさん、それに 今ここにいるエクリマ、アクリラさんだけです。どうして・・・それに・・・。」 「どうしてだか教えてあげましょうか?実はこの国にその少女の一人がいるんですよ。」 「えっ・・・・誰なんです!!教えてください!!」 「エリスという少女はガスタブルグに残っていますね。と言う事は・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・マリエン・・・・・・・。生きていたんだ・・・・ 良かった・・・・・ここで・・・・・。」ネロは泣き始めた。 「今、呼んできてあげましょうか?」 「本当ですか!!お願いします!!」ネロは頭を下げたがこの再会は ネロにとって試練を与えるものだった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(9) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 9月 2日(土)19時55分55秒 9.偽天使 ヨアヒムはマリエンの部屋の前まで来ていた。ネロたちがいる迎賓館と ヨアヒムたちが住んでいる場所とは目と鼻の先であった。 「まあ、いいか。どっちにしても彼女も会いたかったろうし。うんうん、俺って良い奴 もしかして?」などと一人笑いながらドアをノックした。 しばらくして間延びしたかのような声がしてマリエンが出てきた。 「あら?どうしたの?ヨアヒム。もしかして何か急なお呼び出し?」 「いや、今ライゼーラからアクリラ姫がこちらに泊っておられるのだ。 そこにな、聞いて驚くな、ネロ君が来ているんだよ。で、お前の事話したら ぜひ会いたいって。」 「えっ・・・・・・・・・・。本当・・・・・に・・・・。」マリエンは 一瞬声が詰まったが泣き始めた。 「良かった、良かった・・・・・あああああ〜〜〜〜〜〜〜ん・・・。」 マリエンはヨアヒムの胸で泣き始めた。 「い、いやな、それは良いから早く行ってやりな。俺も後から行くから。」 「うん、うん・・・・・・ぐしゅ、ぐしゅ・・・・ちーん。」 「ちょっとまて。俺の服で鼻をかむな・・・・・。」 「あはははは・・・・・気にしない、気にしない。じゃあ、行ってくるね。はい、 ハンカチ。」 「おう・・・・・・・。」マリエンはそのままネロたちが泊っている方に行ってしまった。 一人残されたヨアヒムは苦笑いを浮かべていた。 「俺だって・・・小さい頃からお前の事じっと「見ていた」んだぜ。少しは気がついて欲しい ものだな。メリルよりお前は魅力的で・・・・・さ。でも俺には・・・・ 可愛い妖精に見えたんだ、お前の「羽根」は。」 ヨアヒムはゆっくりと走り出していた。 「ネロ、マリエンってどんな少女なんだよ。俺にも教えろよ。」エクリマが 興味津々で話しかけた。 「そうですわ・・・もしかしたら・・私のライバルに・・・・。あら嫌ですわ、 私はがこんな事を言ってはネロさんにご迷惑を・・・・。」ぽっと顔を赤らめるアクリラ。 「いや、そんな者ではないです。確かに初恋の少女だったんです。でも・・・・ 心臓に病気を持っていて・・・それで・・・・安静にしていなくちゃいけなかったんです。 でも・・・・・・。」 「そうか・・・それでお前の家に行ってギルモアに捕まったんだな。」 「はい・・・・・。エリスは・・・・・精神に異常をきたしていました。何かが 壊れたような・・・・・。」ネロは悔しそうに拳を握り締めていた。 「でもマリエンさんは?」 「マリエンは・・・・僕と一緒に飛ばされたのですが途中気を失った為に お互いの手が離れていってしまって・・・・。」 「そうか・・・・お互い離れ離れに・・・・・。」エクリマは同情していた。 そして・・・・しばらくしてドアを誰かがノックした。 「来たんじゃねえか・・・・。うしししし・・・見てやろうぜ。ネロの初恋の女性をさ。」 「もう・・・・でも忘れないでね。今日はその人にネロ君を貸してあげるだけですから。」 「そんなんじゃ・・・・・・!!」ドアが急に開いて一人の少女が涙を浮かべて 入ってきた。 「ネロくん、ネロ君、良かった・・・本当に生きていたんだ・・・・。」 「マリエン・・・・・ごめんね、心配かけて・・・・。」ネロは優しくマリエンを 抱きしめた。 「ふ〜ん・・・・結構可愛いじゃねえか。これなら・・・・。」 「ちょっとジェラシーを・・・感じますわ。」 「だけど・・・・・。」 「ええ・・・・・・・・。」エクリマとアクリラは感じ取ったようだ。 マリエンが「こちらの世界」の人間、つまり・・・高等魔族に生まれ変っていると いう事に・・・・ネロはそれに気がついていない。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・偽天使(10) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 9月 2日(土)21時59分51秒 9.偽天使 「良かった・・・・でもマリエン、普通に歩いていていいのかい?それに 走り出したりしたら・・・・心臓に・・・負担が・・・。」 ネロは抱いていた手を離した。 「えっ・・・・・・・・。」マリエンはきょとんとした表情を浮かべた。 まるで何を言っているのかわからないという表情である。 「だって・・・・君は・・・確か・・・。」 「ネロ、ちょっと来い。話がある。」 「そうです・・・ちょっと私達に付き合ってください。」 エクリマとアクリラはネロの手を引っ張って部屋の片隅に連れていった。 「あの〜どうしたのですか?」マリエンは・・・・・・悲しそうな表情を 浮かべていた。間違い無く二人の言わんとしている事を理解している。 「ああ、良いんだ、ちょっと友達と話をしてくるから・・・。待っていて。」 そんな事を知らないネロは笑いながらマリエンに言った。 そうして3人は出ていった。 「お前・・・・知っていて言っているのか?」エクリマがネロにたずねた。 ここはテラス。ネロはエクリマとアクリラに連れられてテラスに来ていた。 「えっ・・・・何の事?」 「知らないの・・・・・ですか・・・・・。」アクリラが目を伏せながらたずねた。 「えっ・・・だから何の事だよ。」 「・・・・・・あの子・・・・・・「人間」だと思うか?」 「人間だろ・・・だって心臓に・・・・・。」 「じゃあ、聞くがどうして部屋に駆け込むことが出来るんだ?ベルクファクスの 医療技術が凄いかどうか知らないが・・・・心臓を治す事など 出来るのか・・・それにもし人間だったらどうして成人になるまでここにいるんだ?」 「それは・・・・・・。」 「ネロさん、よく聞いてください・・・・あの子からは・・・私達魔族と同じ匂いが しているんです・・・・・しかも相当高位の・・・・あの子は私と同じ位の 強さが感じられるんです・・・・。」 「魔族・・・だって・・・・それじゃあ・・・・・。」 「そうだよ・・・・あの子、魔族になっているんだよ。いやもうなっているんだ・・・。」 「それが本当なら・・・早く人間に・・・・。」 ネロはテラスを出ようとしたが・・・エクリマに止められた。 「やめとけ・・・・それにもし人間に戻したら・・・心臓が・・・あっという間に 彼女の命を奪っていく。もし失敗したら・・・精神か肉体に重い障害が残ることに なりかねない・・・だから・・・あのままなんだ。あれしかなかったんだよ。」 「そんな・・・・・・じゃあ・・・どうして・・・・・。マリエンは知っているのか・・・。」 「おそらく知っている。」 「えっ・・・・・。」 「お前がテラスに行く時彼女は悲しそうな顔をしていた。おそらく俺達と同じ匂いが している事をネロに話すと思っているのだろう。だから・・・悲しそうな 顔をしたんだ・・・・。」 「そんな・・・・・・・・・。」 ネロは肩の力が抜けたかのように項垂れるしかなかった。 (続く)