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闇の覇者・真王たる者・或る時代(1) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 9月24日(日)09時52分05秒 

               13.或る時代

ここに一冊の書物がある。これは魔界にすむ学者がまとめ、その時の王に
献上したものである。これには昔魔界を二分して戦った魔族たちのことが書かれてある。
その中に名将と謳われたライという剣士、それから名宰相と呼ばれたマクシナス
の事が書かれてあった。だが、二人の評価はあまりにも低いものだった。
やはりライゼーラの件があるからなのだろう、後世の歴史家、学者たちからも
この件に関しては低く、そこから義憤で逃げ出した邪竜王キースこそが戦士としての
誇りと体面をもっていたと評価されていた。
ちなみにライ、マクシナスに共通して言える事は・・・・
「彼らは強いがその為にその己が力に溺れやすい。」という評価であった。
酔いしれてしまうというのだろうか、自分の策、強さに溺れてしまうのである。

だが、それとは逆に王弟ヤゲローの評価は意外と高かった。今となってはわからないが
ギアはマクシナスよりもヤゲローを次期後継者にしたかったのかもしれない。
ヤゲローがマクシナスよりも優れていた面、それは人の心を掴むことが上手かった
と言う事である。自分で蔵書をし、本を出版するなど
手広くやっていたのである。身分など関係無く話しかけるヤゲローに民は皆
安心したのである。それに加えて武芸の達人でもあった。
ヨアヒム、マリエン、メリクリウス、ダール、ガンド(ギーガン国の宰相)、
フラーム・・・全て彼が市井から発掘した人材であった。降伏した将兵にも
手厚くするのも彼だけであった。将兵はその心にうたれ忠誠を誓う者も
逃げ出す者がいても彼は追いかけようとはしなかったと伝えられている。

今でも魔界の学者たちにはヤゲローは人気がある。全国にヤゲローが立てた病院、
その名をとった街、村、さらには彼が立ち寄り疫病で苦しんでいた村人達に
薬を提供し、魔界の歴史を綴った書物を後世の為に残そうとさえしたのである。
「魔界王国史観」という書物は今でも魔界の学者たちには人気があり、様々な角度で
書かれた書物の参考書というべき本が魔界の図書館にしまわれてある。
それだけ人気があった。のちのネロ帝がベルクファクスの地を再興するため
ヤゲロー王を武烈王に任じ、その地を封じたのも彼の人徳があったからであった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・或る時代(2) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 9月24日(日)10時12分20秒 

               13.或る時代(2)

三国の支配も終わり、魔界に住む者たちはこの黒剣士の偉業に拍手をし、
褒め称えた。魔界の者たちはもう戦いをしたくないと思っていた。
それに加え、三国の搾取、中原諸国の国力の低下、など多くの問題が山積みになっていた。
黒剣士はこの三国の人々の力が必要だと考え、仕えていた将兵をあちこちに
配置した。

旧ガスタブルグ王国には魔剣士ライ。
旧ベルクファクス王国には黒騎士ボーゼル。
旧ライゼーラ帝国には魔将軍マクシナス。
そして・・・・・旧ギーガン国には魔人ルナと黒剣士が鎮座することになった。
黒剣士は王国に仕えていた者たちを「狩り」と称して捜索し、その金品を奪っては
民に平等にわけた。その為、多くの知識人や学者、さらには無辜の者たちまで
殺されることになったのである。だが、そうした不満も今まで苦しめられた
魔界の者にとっては取るにたらないことであった。
そして・・・・・・黒剣士は国を建国した。一つの支配による
中央集権国家を・・・・・・。
国の名前は・・・・・・「エスミル帝国」と命名された。そしていつの頃からか、
黒剣士は「エスミル」と呼ばれるようになった。
だが・・・・・・・。

最初は良かった。三国支配から脱した民は黒剣士の偉業を褒め称えたがそのうち
歪みが生じ始めた。ライやマクシナスが治めるガスタブルグやライゼーラは
まだそれほどではなかった。それでもライは「邪覇隊」という剣士だけの組織を
つくり、人々に幅を効かせていたが地方は酷くなっていった。
特にギーガン国では死刑になる者が多く、酷い時には村人全員が死刑になることが
あった。ベルクファクスも同様であった。
マクシナスやライは国を治めようと一生懸命努めたが官民の不平は収まらず、
各地で乱が勃発したが鎮圧されるのがオチであり、余計に死者の数を増やしてしまうだけ
であった。そうして・・・・・・・・4年が経った。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・或る時代(3) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 9月24日(日)12時29分03秒 

                 13.或る時代

               二年。あれから二年が経った。
・・・・・・・・ここは名も知れないひっそりとした牢屋。ここには
一組の男女がまるで死んでいるかのように寝ていた。
彼らはここに連行されてからずっと寝ていた。
牢屋の前には屈強の兵士たちがじっと守り、誰の侵入も許さなかった。
さらに彼らは何か呪いがかけられ、肉体だけでなく精神も封印されている状態だった。
肉体が眠りについている間、彼らの身体は大きくなった。だが、彼らは目覚めようとしない。
しかし・・・・・・彼らが寝ているベッドには何かケーブルのような、チューブの
ような物がついており、それはこの男女の魔力を吸収しているかのようである。
牢屋の前を守っている兵士が隣にいる兵士に話しかけた。
「あいつら・・・・もう何年寝ているんだ?」
「そうだな・・・・・ライゼーラ陥落から二年が経っているが。しかしあいつらの
魔力凄いな。無尽蔵にあるんじゃないか?」兵士はちらっと牢屋の中で
永遠とも言える眠りについている二人を指差した。
「本当に・・・・もし我々ならあっという間に絞り尽くされ、干からびてしまうよ。」
「やりたくないものだ・・・・。」
「だけど・・・・連中がいるからここの牢屋が守られているんだ。あいつらの
魔力が自動的にここを守るシールドの役割を果たしている。あいつらさまさま
だよ。」
「本当に・・・。あいつらがお互いを本能で守ろうとすればするほどここの牢屋の防禦が
完璧になっていくのだから。」
「恋人だったのかな・・・?」
「さあな。でもお互い何か心に傷でもあるんじゃないか。時々さ、俺夢見るんだけど
一人は目の前で信じていた人に殺されかかって、友人も死に、もう一人は目の前で両親が
死んでいくんだ。」
「なんだ?そりゃ?」
「わからん・・・・・だけど何か訴えかけようとしているのだが、俺にはよくわからん。」
「そうか・・・・なら放っておいても大丈夫だろう。」
「そうだな・・・・・。」兵士たちは何か笑いながらテーブルの上においてある
食べ物に手を伸ばした。
「そう言えば・・・・ベルクファクス王国は大変らしいぞ。あそこは未だに反勢力が
健在で俺の友達なんぞ戦場に行ったきり帰ってきてねえ。」
「そうか・・・・・聞いた事がある。あのヤゲローが反勢力の筆頭なんだろう?」
「そうそう。だけど指名手配中だから・・・捕まえれば相当な金がもらえるらしいけど
あそこの民全員がその反勢力を支援しているらしいぞ。」
「そりゃ〜ボーゼル様も大変だろう。」
「ああ・・・・・・それにヤゲローだけじゃないらしいぞ。あそこにはルシアという
小娘が色々やっているらしい。」
「小娘が・・・?」

そうあのルシア、ギーガン国王ガッシュとティルナの娘ルシアが反勢力、つまり
レジスタンスのリーダーを務めているのである。齢12歳という若さながら
王の気質を兼ね備えた皇女に人々は「獣皇女」の敬称をもって接していた。
兵士たちが何か話を続けようとした時、兵士達は途端に強烈な眠気を覚えた。
「くそっ・・・・なんだよ、これは・・・・騎士ともあろうものが・・・・くそっ・・。」
兵士達はあっという間に眠りについていった。そして全員眠ってしまった時
誰かが入っていった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・或る時代(4) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 9月24日(日)16時06分08秒 

              13.或る時代

それは4人の男女であった。と言っても向こう側が透けるので亡霊か幽霊のたぐい
なのだろう・・・。一組の男女は少女のほうに近づいた。
(私だ・・・・わかるか?アクリラ?)男のほうが話しかけたがアクリラと呼ばれた少女は
起きてこない。目を閉じたままである。
(あなた・・・・。どうやら・・・・・。)
(わかっている・・・・無念だ・・・・娘がこんな事に・・・・。)
二人はどうやらシャリム帝とその妻メランナであった者たちである。優しく二人は
少女に触れようとしたがすり抜けるだけでキスする事も出来なかった。
(どうしたら・・・・・それに早くしないと兵士達が起きてしまいます。)
(分かった・・・・・アクリラ・・・良いか、今はどうする事も出来ないだろう。
でも私達は常におまえの側にいる。だから・・・・今はネロ君と一緒に寝ていなさい。
さてと・・・・・・こっちの封印を解いておかないと・・・もう・・・解けているが。)
(そうですね・・・・・・。)二人は悲しそうな顔をした。
アクリラにかけられた封印というのは「言霊」の力であったが二人はそれが悪用されない
うちにアクリラの心の奥底に封印をかけた。二人の死をもって封印は解除される
事になっていたのである。しかしシャリムはそれを心の奥底にもう一回もとに戻した。
今、これが発動すればこの機械はそれをも吸い取ってしまう。だからそれを避ける為に
もう一回元に戻したのである。それでも封印はかけていない。
(さようなら・・・・・今は何もできない娘。父と母はお前の行く末を
信じているからな。隣に寝ている少年はきっとお前を導いてくれる。隣の少年が
まさか・・・・・ピサロの子孫だったとは・・・盲点だった。)
そう言ってシャリムとメランナはとなりを見た。そこには一人の青年とエルフが
立っていた。
(お前が・・・・・・・。私とロザリーの息子・・・。)ピサロはそれきり黙ってしまった。
(ふふふふ・・・・すごく似ていますわ、ピサロ様。)
(ふん。シャリムがどうしても約束事があるというから私達が来たと言うのに
このバカは寝ていやがる。まったく・・・・。だけど女性の好みはどうやら私似
のようだな。まさかシャリムの娘に手を出すとは・・・・。)
(まさか・・・は余計だ。ピサロ。そっちはどうしたのだ・・・?)
(分かっている。今封印を解く。こいつ・・・可哀想だったな。今まで魔力のせいで
剣も魔法も中途半端になってしまって・・・・。)
(ですけど・・・・・あのライという者に向けた力、あれは本物ですわ。貴方が
昔使っていらした奥義に似ていますわ。)ピサロの隣にいたエルフの女性が
クスクス笑った。
(それで・・・・どうなるんだ・・・?)
(まあ、変わらないさ。だけど・・・・・・力や体力、そう言ったものがすべてパワーアップ
する。あとは・・・・覇者の奥義だな・・・・あのエスミルに
対抗しうる奥義を得ることが出来るが・・・それはこいつ次第だ。)
(そう言えば・・・・彼は何者だ。まるでこちらをよく知っていた。)
(・・・・・・・あいつは・・・・・・たぶん・・・・・・。いや、やめよう。
あれはマスタードラゴンと大きく関係があるはずだ。それでも封印は完璧な
はずだ。)
(誰なのだ・・・・・。)
(エスミルが自分で封印を解いたなら・・・・・それは厄介な相手になる。皇邪竜の
力をもってしても・・・・・。)
(ピサロ様・・・・・・・・・・。それでは私の息子は・・・・?)
(わからん・・・・・だけど・・・これからはネロ、お前の時代だからな。
アクリラ姫と仲良くな。ようし、封印解除と。あとは・・・・・・。)
(どのくらいで目が醒める?)
(魔力の分もあるから・・・・2年と言った所だ。あと2年かかる。)
(そうか・・・・・・ではアクリラ、ネロ、お前達にあとは頼むから・・・・
我々は・・・・・・生まれ変る時が一刻一刻と近づいている。お前達に
会えて良かった・・・・・・。)4人はそう言いながら消えていった。
しばらくして兵士たちは目を覚ましたがそこにいつもと変わらない二人が寝ていただけで
あった。