非魔神流こじつけ回文 
by 非魔神

 〜前口上〜

 回文といえば「ダンスが済んだ」「竹やぶ焼けた」あたりが有名である。一方回文作者の中には回文でまとまった物語を作る人もいる。それは、ときには何千文字もの長さになることがある。
 私がそのような長い回文に触れて驚くのは、まず文が支離滅裂にならないでちゃんとまとまっている点、もう一つは読んでちゃんと意味が通る点である。私も暇に任せて長い回文を作ることがある。その際意味の通る言葉を探すのも大変だが、このような部品探しに夢中になると、今度は文全体のまとまりが無くなるような不安に駆られる。例えばいま付け足したばかりの
10文字くらいの部分にとらわれて、文章全体のストーリーが混乱することは、しょっちゅうである。そういうわけで、ちゃんとした物語が作れる回文作者を、私は尊敬する。
 本稿では、私が暇に任せて言葉をいじっていたら、たまたま「できちゃった」長い回文を紹介したい。とはいえ、単に回文だけ紹介しても、読者に意味が通るかどうかは自信が無い。そのかわり、適当に意味をこじつけることで一つの物語としての体裁を整えることとする。この作業によって、回文が支離滅裂であることが回避できていれば、幸いである。
 最後に、回文の紹介の順番について説明する。まず、作った回文を「手を加えずに」紹介する。つぎに、これを漢字・記号交じりの文に改める。この次に、物語として紹介しやすくするため登場人物について説明する。以上の準備を踏まえ、部分ごとに回文の解説をする(この際、わかりにくい語句の意味も説明する)。

 なお、コミケット55にて発表した作品に誤植があったため、字句を修正しました(2003/10/13)

〜原文の紹介〜

うそだとこういとしくかちくでここにいつくなりはたしかといかでげかいいにんこうをそうしこすとういたまてあんたらかいなはきしむはやくそうろはうよじんこうとしかみつたつたからかちいなほいたにいつかたつだめだがたしとうよえきできはいせんせればきれいけのそうくついるいもとひるねひるましがちもきとるれいいあきしかしでまたしかかんちがいせんかいとうらがえつたわしのかくかるてにがつやぬしのるすになうどいなかあちらでのうるくいよきてきげきとつもとむのみくいすこしおまちへりくつきくのたねのらずたいようがちやつぱつりにさまたげてしくかわもでたつもうこんなにてぎわよくいくかいけすこしちよめいなえまかいますにりおいていくきかとたついまにいかりむかしたぬきでもすめたしあすのよるさかきめこいあきらかとひとこときようよほうがちがいあきばれいまこそあるいていくきなげなていだいいくあいつにけいれいしこんまちいさければあとひくぞとてぽちうかれだすまたもやくさつたつかもついはつやだしないだりくかぜはでげかおくれずせんせいするどいあそこどんこうもとまるえきだといういうことはてきかくかにとえびねなぜかつながついそこにでてくるしくなんとふともらすうこんげいだんなりむじんかたみとおもうもおれはめんきよないしのたまつているくるしいすうきなやつでしたけつのまくれないやろうどうかきいれつのつやよきうれたかいくらかなかたにとつたぶんいれてもそんかいかつありとはりあうとそうなるけはいおれやだまけたくないがななあまたまきかえすのかたたつとくよてきをきでつぶしてしまえよまそうだんだうそまよえましてしぶつできをきてよくとつたたかのすえかきまたまあなながいなくたけまだやれおいはけるなうそとうありはとりあつかいかんそもてれいんぶたつとにたかなからくいかたれうきよやつのつれいきかうどうろやいなれくまのつけたしでつやなきうすいしるくるいてつまたのしいなよきんめはれおもうもおとみたかんじむりなんだいげんこうすらもとふとんなくしるくてでにこそいつがなつかぜなねびえとにかくかきてはとこういういとだきえるまともうこんどこそあいどるすいせんせずれくおかげではぜかくりだいなしだやつはいつもかつたつさくやもたますだれかうちぽてとぞくひとあばれけさいちまんこしいれいけについあくいいだいてなげなきくいているあそこまいればきあいがちがうほようよきとことひとからきあいこめきかさるよのすあしためすもできぬたしかむりかいにまいつたとかきくいていおりにすまいかまえないめよちしこすけいかくいくよわぎてになんこうもつたでもわかくしてげたまさにりつぱつやちがうよいたずらのねたのくきつくりへちまおしこすいくみのむともつときげきてきよいくるうのでらちあかないどうなにするのしぬやつがにてるかくかのしわたつえがらうといかんせいがちんかかしたまでしかしきあいいれるときもちがしまるひねるひともいるいつくうそのけいれきばれせんせいはきできえようとしたがだめだつたかついにたいほないちからかたつたつみかしとうこんじようはろうそくやはむしきはないからたんあてまたいうとすこしうそをうこんにいいかげでかいとかしたはりなくついにここでくちかくしということだそう(
1339文字)

〜漢字・記号交じり文〜

嘘だとこう愛しく、家畜でここに居つく。
「なりは確か」
と、医科で外科医委任。功を奏し、コスト浮いた。
「待て、あんたら」
腕は軋む。早く走路這うよ。
人工都市過密、建ったから勝ち。稲穂、板にいつか立つ。
ダメだが、足し、投与。駅で「気」敗戦。競れば綺麗。怪の巣窟要るイモと、昼寝昼間しがちも「気」盗る霊。胃空き、しかしデマ。
――確か「勘違いせんかい」と、裏返ったわしの書くカルテ。
2月、家主の留守担う。ど田舎。あちらでの売る杭。良き敵、激突求む。
「飲み食い少しお待ち」
「屁理屈聞くの?」
「種乗らず、太陽が茶っ葉釣りに、妨げて敷く川面で立つ。」
「もう、こんなに手際よくいく?」
界繋。
「少し著名な絵馬買います。」
2里、置いていく気か」
と発つ。
今に怒り、
「昔タヌキでも住めたし、明日の夜、坂決め、来い。」
「明らか」
と一言。
今日予報が違い、秋晴れ。今こそ歩いて、行く気無げな帝大行くアイツに敬礼し、
「コンマ小さければ、後引くぞ」
とてポチ浮かれ出す。
またもや腐った柄持つ意は、つや出し。
凪いだ陸風、派手。外科遅れず。先生鋭い。
「あそこ、鈍行も止まる駅だ」
という。いうことは的確。
「カニと海老ね」
何故かツナがついそこに出てくるし。
「苦難」
と、ふと漏らす右近、ゲイ。旦那、リムジン形見と思うも、
「俺は免許無いし」
のたまっている苦しい数奇な奴でした。ケツのまくれない野郎。
「どう、かき入れ。角、つや良き。売れたか?」
「幾らかな」
「カタに取った分入れても損かい?」
「勝つ蟻と張り合うと、そうなる気配」
「俺ヤダ。負けたくないがな」
「なあ、また巻き返すのか?祟っとくよ、敵を。「気」で潰してしまえよ」
「ま、相談だ」
「嘘?」
「ま、酔え。まして私物で『気』を着て、欲取った」
鷹の巣、絵、描き、
「また?」
「まあな。…長い泣く竹、まだやれ。…おい、はけるな!」
「嘘いう蟻は、取扱い簡素も、照れ、印。豚、夙に高菜から食い…。」
「語れ、浮世!」
「奴の連れ、行き交う道路…。」
「やい、なれ!」
「熊の付け足しで、つや無き薄い汁来る…。イテ。…妻楽しいな…。」
「預金め、張れ!」
「思うも、音見た感じ、無理難題。原稿すらも、と。布団無く、シルク手で
2個。そいつが夏風邪な。寝冷え−とにかく書き手は、とこういう意図だ。消える的。もう今度こそ」
「アイドル推薦せず、レク?おかげで、はぜか栗台無しだ。」
奴はいつも闊達。
昨夜も玉すだれ。カウチポテト族ひと暴れ。今朝一万個仕入れ、池につい悪意抱いて投げ、泣き、悔いている。
「あそこ参れば気合が違う。保養良きとこ」
と、人から気合込め聞かさる。余の素足、試すもできぬ、確か。無理解にマイッタと書き、悔いて、庵に住い構え、無い目予知し、越す計画。行くよ。和議。手に、軟膏持った。
でも、若くして下駄まさに立派。つや違うよ。いたずらのネタの茎作り、ヘチマ押し、湖水汲み、飲むともっと喜劇的。酔い狂うので埒あかない。
「どう?」
「何するの?死ぬ奴が!」
似てる。
「描く?かの皺断つ絵柄。」
疎い感性が朕描かしたまで。
しかし
「気合入れると気持ちが締まる」
ヒネる人もいる、一句。
嘘の経歴バレ、先生は「気」で消えようとしたが、ダメだったか、ついに逮捕。無い力騙った罪か。死闘根性は、ろうそく屋は無視。「気」は無いから。痰当て、また言うと、少し嘘を右近に言い、影で貝と化した。
張り無く、ついにここで朽ち、客死ということだそう。

〜おもな登場人物の紹介〜

・先生
  帝大生。「気」の使い手を名乗る。やや強引ででしゃばりな性格。身なりは立派なため、ある病院で外科医として雇われる。なお、商売やもの書きにも手を出す。ところが彼の正体は…?
・右近
  商人。先生とは商売上のパートナー。ゲイ。少し弱気な面があり、先生にすがることもある。
・あるカウチポテト族
 先生の、もう
1人の商売上のパートナー。激しい性格のため突拍子も無いことをすることがある。
・語り部
 ある病院を経営する医師。ど田舎で先生と行動を共にしたことがある。偉い人らしい。先生を外科医として雇ったのも彼である。なお、この物語は、「気」の使い手を名乗る先生と、彼をめぐる数々の出来事を語り部が回想する、という設定。

〜回文の解説〜

 ここでは、先に載せた回文を
11のパートに分け、解説をする。なお、解説しやすくするため、文章中で、主語がわかりにくいと思われるところに主語を追加する。付け加えた主語は( )で表示する。

1:先生、外科医として雇われる

 嘘だとこう愛しく、(先生が)家畜でここに居つく。
 (語り部)「なりは確か」
 と、医科で外科医委任。功を奏し、コスト浮いた。

  先生は、たくさんの家畜を以ってここに住んでいた。そんな先生を、語り部は自分の経営する病院に外科医として雇った。決め手は身なり。先生を雇ったのが効いて、病院経営のコストが浮いたらしい。
  なお、「嘘だとこう愛しく」という一句は、この物語の行く末を暗示している。

2:この物語の舞台

「待て、あんたら」
腕は軋む。早く走路這うよ。
人工都市過密、建ったから勝ち。稲穂、板にいつか立つ。

  舞台は過密化の進む人工都市。走路も這わなければ通れないし、建物を建てるにも早い者勝ちという雰囲気。稲穂ですら板に立てたりするほどの過密ぶり。
  それにしても、人心も荒んでいる様子。

 語注:腕(かいな)=「うで」のこと

3:「気」による闘争

ダメだが、足し、(語り部が)投与。駅で「気」敗戦。競れば綺麗。怪の巣窟要るイモと、昼寝昼間しがちも「気」盗る霊。(語り部の)胃空き、しかしデマ。
――確か「勘違いせんかい」と、裏返ったわしの書くカルテ。

  駅で、「気」を用いたケンカが起こった、と語り部は聞いた。物の怪に頼りがちなイモ男と、昼寝しながら「気」を盗る霊との間で。競っている様子も綺麗だったのだろう。
  語り部は、「負けた」というイモ男の手当てをした。おそらく回復する見込みは無かったのだろうが、薬を普段の使用量以上に追加して投与してやった。胃に穴が空くほど緊張していたが、じつはこのケンカの話はデマだと知る。
  以上、「勘違いせんかい」とばかりに、思わず裏返して語り部が書いたカルテの内容。

4:語り部、ど田舎で地主の留守を任される

2月、(語り部と先生は)家主の留守担う。ど田舎。あちらでの売る杭。(語り部が)良き敵、激突求む。
(地元の人)「飲み食い少しお待ち」
(先生)「屁理屈聞くの?」
(地元の人)「種乗らず、太陽が茶っ葉釣りに、妨げて敷く川面で立つ。」
(先生)「もう、こんなに手際よくいく?」
界繋。

 2月、語り部と先生の2人はある地主にど田舎の留守を任される。商品の杭もある。よい商売敵を心待ちにする語り部。
 地元の人に食事を招待された
2人。でも、地元の人が民話を語り出したので、食事はお預けとなった。先生は不満な様子で、いちいち話にケチをつけていた。

 語注:界繋(かいけ)=三界(全ての生けるものが行き来する世界)の煩悩に縛られること(仏教用語)

5:語り部と先生の珍道中

(先生)「少し著名な絵馬買います。」
(語り部)「
2里、置いていく気か」
と発つ。
今に(先生が)怒り、
(先生)「昔タヌキでも住めたし、明日の夜、坂決め、来い。」
(語り部)「明らか」
と一言。
今日予報が違い、秋晴れ。今こそ歩いて、行く気無げな帝大行くアイツ(先生)に敬礼し、
「コンマ小さければ、後引くぞ」
とてポチ浮かれ出す。
(ポチが)またもや腐った柄持つ意は、つや出し。
凪いだ陸風、派手。外科遅れず。先生鋭い。
「あそこ、鈍行も止まる駅だ」
という。(先生の)いうことは的確。
(先生)「カニと海老ね」
何故かツナがついそこに出てくるし。

  引き続き舞台はど田舎。先生は絵馬を買いに旅に出ようとする。道程は2里(8km)。語り部も置いてけぼりにされたくないので旅についていく。しかし先生は金魚の糞のようについてくる語り部に怒り、明日の夜に語り部自身が決めた坂に来るよう言う。語り部は了解した。
  日付が変わって、語り部は先生を追って、旅に出る。
  ポチ(ある人のあだ名)も浮かれだしている。ポチが書いたコンマは小さかったので後々問題になるのじゃないか、という不安がそうさせているのか。つや出しのため、ポチは腐った柄を持っている。
  秋晴れの天気。陸風のやむ様子も派手。外科(先生)は遅刻をしなかった。さすがに先生は鋭い。鈍行の停まる駅も把握しているし、アドバイスも的確だし。それにしても「カニと海老」といったのに何故ツナがそこに出てくるかは謎。

  語注:帝大=帝国大学の略
     凪ぐ=風がやみ、波が静まる

6:右近の性格

「苦難」
と、ふと漏らす右近、ゲイ。旦那、リムジン形見と思うも、
「俺は免許無いし」
のたまっている苦しい数奇な奴でした。ケツのまくれない野郎。

 ゲイの右近は苦労している様子。彼はリムジンが形見なのに免許持ってないことをウジウジ悩む不幸な奴。また、いざというときケツをまくれない根性無し(ゲイだって根性ある奴は大勢いると思う:作者注)。

  語注:数奇=ふしあわせなこと

7:先生、右近と商売をする

(先生)「どう、かき入れ。角、つや良き。売れたか?」
(右近)「幾らかな」
(先生)「カタに取った分入れても損かい?」
(右近)「勝つ蟻と張り合うと、そうなる気配」
(先生)「俺ヤダ。負けたくないがな」
(右近)「なあ、また巻き返すのか?祟っとくよ、敵を。「気」で潰してしまえよ」
(先生)「ま、相談だ」
(右近)「嘘?」
(先生)「ま、酔え。まして私物で『気』を着て、欲取った」
(先生が)鷹の巣、絵、描き、
(右近)「また?」
(先生)「まあな。…長い泣く竹、まだやれ。…おい、はけるな!」
(右近)「嘘いう蟻は、取扱い簡素も、照れ、印。豚、夙に高菜から食い…。」
(先生)「語れ、浮世!」
(右近)「奴の連れ、行き交う道路…。」
(先生)「やい、なれ!」
(右近)「熊の付け足しで、つや無き薄い汁来る…。イテ。…妻楽しいな…。」
(先生)「預金め、張れ!」

 先生は右近に、帳簿の売上高を聞いている。先生は、扱う商品の角のつやの良さに自信を持っている。しかし、あまり売上は芳しくない様子。負けたくない、と駄々をこねる先生。「気」で商売敵を潰せ、とアドバイスする右近。
 先生が「気」で私欲を満たした武勇伝を口にするも、右近は少々呆れている様子。先生はさらに強気に、「泣く竹」をまだ販売するように右近に指示する。右近はついて行けなくなったのか、逃げようとしたり訳のわからないこと(蟻・豚・熊のお話)を口走ったりした。これをたしなめる先生。ついにはもっと預金をはたいて資金を増やせとまで右近に言う。

 語注:夙に(つとに)=以前に。早く。
    なれ=汝。おまえ。
    張る=ここでは(ばくちで)金を賭ける意。

8:先生の、もの書きになる夢

(カウチポテト族)「思うも、音見た感じ、無理難題。原稿すらも、と。蒲団無く、シルク手で2個。そいつが夏風邪な。寝冷え−とにかく書き手は、とこういう意図だ。消える的。もう今度こそ」
(先生)「アイドル推薦せず、レク?おかげで、はぜか、栗台無しだ。」
奴(先生)はいつも闊達。
昨夜も玉すだれ。カウチポテト族ひと暴れ。今朝一万個仕入れ、池につい悪意抱いて投げ、泣き、悔いている。

 カウチポテト族が見た、先生の感想。先生はあまりに無茶しすぎだなぁ。商売も、原稿書きも。先生は蒲団も無く、わずかなシルクを掛けて(?)寝ていたため、夏風邪をひいたり寝冷えにあったりしている。これじゃもう消えるしかないな。
 これに対し、先生はアイドルに推薦されなかったことを怒る(アイドルとは、もの書き仲間内の称号か?)。おかげで、パーティー用に用意していたはぜ(又は栗)が台無しになったではないか。と。
 語り部は、先生の「闊達」さに呆れている。
 ある夜、カウチポテト族は先生の態度に怒ったのか、今朝仕入れた商品
1万個を投げ捨て、泣いて、悔いている。

 語注:音=ここでは、様子のこと
    はぜ=魚の一種
    レク=レクリエーションの略
    闊達=度量が広く、融通が利くこと

9:先生の、「気」を操る道場

「あそこ参れば気合が違う。保養良きとこ」
と、人から気合込め聞かさる。余の素足、試すもできぬ、確か。無理解にマイッタと書き、悔いて、庵に住い構え、無い目予知し、越す計画。行くよ。和議。手に、軟膏持った。

 語り部は、先生が「気」を操る道場をはじめたことを、人づてに知る。はじめは、試す気は無かった。語り部は、先生の無理解ぶりに呆れ、ただ1人庵に住み、いまの住みかを引っ越すつもりだった。だが、道場に出向いて先生と仲直りすることにした。

 語注:庵=隠者などのいる家
    和議=仲直りの評議

10:道場にて語り部が感じた、先生の印象

でも、(先生は)若くして下駄まさに立派。つや違うよ。いたずらのネタの茎作り、ヘチマ押し、湖水汲み、飲むともっと喜劇的。酔い狂うので埒あかない。
(語り部)「どう?」
(先生)「何するの?死ぬ奴が!」
似てる。
(先生)「描く?かの皺断つ絵柄。」
疎い感性が朕描かしたまで。
しかし
(ある人)「気合入れると気持ちが締まる」
ヒネる人もいる、一句。

 語り部は思う。なんだかんだ言っても、身なりは立派だ。若いのに高級な下駄を履いてるし。
 なお、先生はいたずら好きな様子。ただ湖水を飲むと酔い狂うようだ。そのときの様子も回想する語り部。
 また、先生はしわを断つ絵柄がお気に入りらしく、語り部の肖像画もこの絵柄で描いたらしい。まぁ、先生は絵も下手だが。
 先生の道場には、気合が入って喜びのあまり一句ヒネる人もいた。

 語注:朕=天子の自称

11:先生逮捕−嘘をついた報い

嘘の経歴バレ、先生は「気」で消えようとしたが、ダメだったか、ついに逮捕。無い力騙った罪か。死闘根性は、ろうそく屋は無視。「気」は無いから。(語り部が)痰当て、また言うと、(先生は)少し嘘を右近に言い、影で貝と化した。
張り無く、ついにここで朽ち、客死ということだそう。

 先生はこれまで経歴詐称していた。警察が来ると、「気」に頼って逃げようとしたが、そんなことができるはずが無い。結局逮捕される。無い力をさも有るように触れまわった詐欺の罪か。
 ここでの先生の「死闘根性」とやらも、逮捕の様子の一部始終を見ていたろうそく屋に無視される。語り部が軽蔑をこめて痰を先生に当て、問い詰めると、先生は嘘を右近に言って、口を閉ざした。
 結局、先生は気持ちに張りが無くなり、朽ち、死んだと伝えられている。

 語注:騙る(かたる)=あざむいて人を迷わす
    客死=よその土地で死ぬこと

(参考文献) 広辞苑