ニチモ・ミュージックシリーズ |
ニチモ(日本模型)はマジメなメーカーである。 別に他のメーカーが不マジメってんじゃないけどね。子供がプラモを作らなくなった現在では売れない製品を抱えることはどこのメーカーにとっても大変である。手を変え、品を変え(いや、品は変わってないか)デカールを変え、製品バリューを上げて在庫を増やさないような売り方をせねば生き残れない。他の販売業種と一緒である。多品種、多ニーズに応えるべく各社とも知恵を絞っている。 プラモデル黎明期の60年代から70年代かけてニチモは多くの名作を作り出している。艦船シリーズなどはその代表であった。1/200陽炎級やUボート、1/500瑞鶴などプラモ史に残る製品は生産数が少ないながらも今でもちゃんと入手が可能であるし、AFVでは長らく絶版だった1/30のV号/W号戦車が少し前に復刻されている。タミヤのMMシリーズに駆逐されてしまったが、実車の華奢なイメージはこちらの方が良く出来ていた。半端スケールが惜しまれたものである。ボックスアートの多くを高荷義之氏が手がけているのも見逃せない。 1/48の飛行機モデルではスピットMk.\やヘルダイバーのようなバッタモン(モノグラムのコピー)があるかと思えば、時には九九軍偵や屠竜のような名作も出す。やるときはやるのである。70年代前半頃がニチモの最も脂が乗った時代であった。 残念ながらニチモはタミヤやハセガワ等と肩を並べられるほどの競争力は持ち得なかった。ここ数年は新製品開発のアナウンスもあまり聞こえてこない。しかしそれでもニチモは古き良きプラモの気骨を感じる「いぶし銀」のメーカーである。まるでジャイアンツの川相のようではないか。日本のプラモ界を支えて来たのは何も静岡勢ばかりではない。 |
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ミュージック・シリーズ そんなニチモであるが、艦船模型以外に誇って良いシリーズがもう一つある。大概は模型屋の隅の方にあった楽器のプラモデルをご記憶ではなかろうか。1/6〜1/10でモデル化されたギターや管楽器、ドラムや果てはグランドピアノまで、精密さとインテリア性を兼ね備えたニチモの良い面が出たシリーズである。これらは言わばテレビや扇風機など、日用品までがプラモデルと成り得た60年代以前の名残りでもあった。乗り物以外は「ゲテ物」とされる模型界にあって、しかしこのシリーズはニチモの生真面目さが単なるゲテ物にとどまらせなかった。 私はこのシリーズの中で最も高額であった(と思う)グランド・ピアノを親に買ってもらって作ったことがある。黒色パーツはクリアー塗装が施され、ピアノの蓋部分にはちゃんと極少サイズのヒンジ(いわゆるピアノ蝶番)が奢られていた。ただしピアノ内部は厚紙だかシールだかの印刷表現で、内部にオルゴールが仕込まれるようになっており、蓋を開けるとそれが鳴るギミックを持っていた。曲は「荒城の月」だったように思う。 シリーズ1号のドラムスが出たのが’67年。その後70年代初頭にかけて続々とアイテムを増やし、最終的には20種類近くのラインナップに及んだ。この点ではニチモを「世界最大の楽器プラモ・メーカー」と呼んで差し支えなかろう。ただし他に競合メーカーも思いつかないのだが。 ヤングアイドルシリーズ 要するに企画物だが、’74年に一部のアイテムを芸能タレントと組み合わせて売りに出る作戦に出た。「真理ちゃん自転車」と発想は一緒である。ミニ・ブロマイドが付属するのが売りであった。
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他にもあるのかもしれないが判るのはこれ位。リンリンランランがお馴染みのインディアン・コスチュームであるところが発売時期を知るカギ。パッケージ写真はそれぞれがキットの完成品を手に持っているものだったと思う。この5人(組)がセレクトされたのは多分所属プロが一緒だったのだろうと思うが(多分、芸映プロダクション)確証は無い。ギター2本とベースは元々「エレキギタートリオ」という3本セットの製品のバラ売りである。定価は300円程度だったと思うが、ドラムスのみ800円だった。これ以前に既にドラムスはヒット商品であったが、「なぜ浅田美代子とドラム?」と当時でさえ思った記憶がある。 |