2000/12/18

隔月刊ボードゲーム通信3号


  「CANDIDATE」(キャンディデイト) 研究

 
   no.1,2と「エルグランデ」の記事が続きましたが、今回は別のゲームの紹介です。

 

CANDIDATE(キャンディデイト) Avalon Hill, 1991
  RESEARCH & DESIGN: Richard Winter
  GAME DEVELOPMENT: Don Greenwood

 キャンディデイトはアメリカの大統領選挙での、各党の候補指名までの予備選挙を戦うボードゲームで、2〜6人までプレイできます。ゲームはカードプレイを中心に進められます。各候補者は選挙区(1〜3つの州で構成される)となったそれぞれの州に対して、手札を裏向きにして使用します。全員の選挙活動(カードプレイ)が終わった後、州ごとにカードをオープンし、その州に対して最も現金を投入していた候補者が勝利します。全ての州で勝者独占方式が適用されており、第1位の候補者がその州の全代議員(得点)を獲得します。1つの選挙区が終了すると、手札の補充を行い、次の選挙区の選挙活動が始まります。
 全代議員538人のうち過半数である270人以上を獲得した候補者が勝利します。全州の選挙後に誰も270人に達しない場合は、コンベンション(党大会)が行われます。獲得した代議員の最も少ない候補者はそこで脱落し、その候補者の全代議員をかけて、選挙活動を行います。それをいずれかの候補者が270人以上の代議員が獲得するまで行います。
 カードプレイ中心というと、カード運次第という印象がありますが、そんなこともありません。各候補者は順番にディーラーとなり、ディーラーは選挙を行う選挙区を選択することができます。カードのいいときは得点の高い選挙区を選び、悪いときは低い選挙区を行う。また、いいカードを温存して、次の選挙に臨むこともできます。
 選挙活動では相手の裏向きの手札を読み、自分の手札に煙幕をはる心理戦がこのゲームの魅力です。激戦のハイライトは最大の票田カリフォルニア(代議員54人)や東部のニューヨーク・ニュージャージー(33人・15人)となることでしょう。名作というには一歩たりないかもしれませんが、なかなか楽しい好ゲームです。



キャンディデイト・カードリスト

 さて、選挙活動に勝利するためには、やはりカードを知ることが基本でしょう。ボードゲーム通信おなじみのカードリストのコーナーです。
 各カードの日本語名称(「太字」)のところは同志社大学ボードゲーム研究会、今西“分隊長”の和訳ルールより引用しています。この場にて感謝の意を表します。また、当通信社のCANDIDATEは“分隊長”より安価にて譲っていただいたものです。これまた感謝です。

MONEY CARD $10,000. $20,000. $30,000. $40,000. $50,000. $60,000. $70,000. $80,000. $90,000. $100,000  各4枚。
 最も大事な「現金カード」です。1セクション(1つの州)に1枚しか
置くことができません。この金額が一番多かった候補者が勝者です。他候
補者のセクションに置くこともできます。その場合、他候補者自身も置く
と1セクションに1枚より多くなります。$10,000.のような金額は殆ど勝
ち目がないので、自分のセクションで消化しきれないカードは相手の何も
置いていないセクション「ゴミ捨て場」に捨てて、カードの補充を期待す
ることもできます。使えないカードがいつまでも手元にあると非常に戦略
の幅が狭められるので、できるだけ使っていった方が良いかもしれません。

ENDORSEMENT $10,000. $20,000. $30,000. $40,000. $50,000. $60,000. $70,000.$80,000. $90,000. $100,000  各1枚。
 「援助カード」です。単独でも「現金カード」と一緒でも使えます。自
分の1セクションに何枚でも使うことができます。高得点の州は現金だけ
ではなかなか獲得できないことも多いので、このカードの出番です。しか
し$10,000.などの低額の援助はちょっと威力が低くて使いにくい。
 ちなみに各金額ごとの援助内容は……。
$10,000. 全米弁護士協会の支持    $20,000. 企画者の支持
$30,000. 大都市の市長の支持     $40,000. 州最大のテレビ局の支持
$50,000. 大きな労働組合の支持    $60,000. 州最大の新聞社の支持
$70,000. 州知事の支持        $80,000. 合衆国上院議員の支持
$90,000. 前副大統領の支持      $100,000. 前大統領の支持
 強力な圧力団体の全米ライフル協会の支持はありません。 

RUMOR <minus>  $10,000. $20,000. $30,000. $40,000. $50,000. $60,000. $70,000.
$80,000. $90,000. $100,000  各1枚。
 選挙戦では必ず(?)行われるネガティブキャンペーン。相手候補者を
中傷する「噂カード」です。相手のセクションに置くことで、そこに投入
された「現金カード」、「援助カード」の金額をマイナスします。相手の
1セクションにつき1枚ずつしか置くことができません。また「噂カード」
に限らず相手のセクションにカードを置くときはそれぞれのセクションに
1枚ずつしか置くことができません(複数の候補者から置かれると1枚よ
り多くなります)。1対1の戦いではかなり有効な“口撃”が可能ですが、
多数の候補者がいると誰に対して使うか迷ってしまいます。そんな時は
選挙区を選択したディーラーに敬意を表して使いましょう。
 ちなみに各金額ごとの中傷内容は……。
<minus>
$10,000. 利害関係の衝突の噂でいくつかの重要な後援者が支持を撤回する
$20,000. 副大統領候補の選択が不適切との噂
$30,000. 外交政策の態度が変化しているとの噂
$40,000. 誤った財政運営の噂で支持が弱まる
$50,000. 税についての意見が変化しているとの噂で党中道派が支持を撤回する
$60,000. 隠している病気の噂で選挙運動が弱まる
$70,000. 選挙資金の悪用の噂で寄付金が減る
$80,000. 関税についての意見が変化しているとの噂で財界の援助が徐々に減る
$90,000. 以前共産主義者の団体に加入していたとの噂で選挙運動の活動力を損なう
$100,000. ナチス党との関連の噂でイメージが傷つく
 「不適切な関係」はありません。その程度の噂では選挙戦に大きな影響を与えることはできないということかもしれません(笑)。

SQUELCH RUMOR 5枚
 中傷合戦で威力を発揮する「もみ消しカード」です。置かれたセクショ
ンにある「噂カード」を全て無効にします。自分の1セクションに何枚で
も置くことができます。通常は1セクションに1枚でしょうが、ダミー代
わりにも使うことができます。
 これ1枚でどんな噂に対しても使えます(笑)。

ZERO 6枚
 「ゼロカード」。効果なしのダミーカードです。自分の1セクションに
何枚でも置くことができます。心理戦の華ともいえる重要な(?)カード。
また(こちらの方が有効かつ重要な使い方ですが)、2枚の「ゼロカード」
をディーラーの選挙区決定前に使用すると、スパーチューズディとなり、
直ちに2枚のカード補充しディーラーに代わって選挙区の決定を行うこと             
ができます。この際隣接する2つの選挙区を選ばなければなりません。選
挙区決定後に全員3枚のカード補充を行い、最大6つの州でディーラーの
決める選挙区の順番に従って選挙活動を行います。

<PROBLEM>
 以下のカードは全て「問題カード」と呼ばれます。「問題カード」は自分、他候補者の1セクションにつき1枚ずつしか置くことができません。1セクションに複数の種類の「問題カード」が置けないということです。自分のセクションに置く場合は、前ページまでに紹介された「問題カード」以外との併用は可能です。ただし他候補者に置く場合は、カードの種類にかかわらず1セクションに1枚のカードしか置くことができません。

PROBLEM SCANDAL 4枚
 これこそキャンディデイトの真の華、「スキャンダル」です。置か
れたセクションにかかわらず(自分のセクションでも他候補者のセク
ションでも)、その州の全員のカードを捨て札にして、手札を補充せ
ずに、もう一度選挙活動を行います。自分のセクションに1枚もカー
ド(どんな種類のカードでも良い)を置いていない候補者は再選挙に
参加することができません。これで他候補者の勝負手を流して再度勝
負というのはキャンディデイト界の常套手段。伝統の方法で効果も抜
群。このカードを誰が出しているのか読んで、弱いカードを使って力を
温存することは大事ですが、警戒したあげく、誰も「スキャンダル」を
使っていなかった、というケースもあります。あと何枚残っているか
考えておくことも重要です。後述の問題カード「行き詰まり」だけは
無効にすることができません。

PROBLEM PARTY RULING  2枚
 「党の干渉」によりその州の全セクションの全ての「援助カード」
を無効にします。カードの置かれたセクションがどこであっても効果
を発揮します。自分の援助カードであっても無効になるので注意が必
要です。「現金カード」、「噂カード」など「援助カード」以外には
全く影響はありません。「もみ消しカード」と併用することで、「現
金カード」のみの勝負にすることができます。

PROBLEM STATE RULING  1枚
 「政府の干渉」です。上記の「党の干渉」と違い、このカードが置
かれたセクションのみ、全ての「援助カード」が無効になります。そ
れ以外のカードには全く影響はありません。1対1で使いたいところ
ですが、それまで手札で眠らせるのは無駄が大きいでしょう。枚数も
1枚と少ないのであまり活躍の機会がなく、キャンディデイト界随一
の目立たないカードです。

PROBLEM FAVORITE SON 1枚
 「お膝元」の州なので代議員の支持を得ています。他候補者が投入した
金額にかかわらずこの州で勝利することができます。使用した州にはマー
カーを置き誰の地元の州かが分かるようにしておきます。各候補者1回ず
つしか使うことができません。2回目に使った場合は「ゼロカード」と同
じく、全く効果なしです。他候補者のセクションに置くこともできます。
その場合置かれた候補者が自動的勝利を得ます。ただしこのカードは前述
の「スキャンダル」及び後述の「行き詰まり」により無効化されます。
その時でも地元の州は決定し、再び使う時には全く効果がないカードとなります。
いかに「スキャンダル」、「行き詰まり」を避けて高得点の州で勝利できるかが
ポイントです。通称「地元カード」。

PROBLEM DEADLOCK 1枚
 「行き詰まり」です。その州の全てのカードは無効となり、州の選
挙結果は態度未決定となり、誰も得点は得られません。置かれたセク
ションが自分でも相手でも効果に違いはありません。態度未決定の州
は通常の選挙後にまとめて(1つの州として扱って)選挙を行います。
態度未決定の州には他に、選挙結果で現金の値が全員マイナスになっ
た場合や、同点でそれらの候補者がそれ以上選挙活動を行えない場合
があります。
 また、選挙区で最も多く代議員を獲得した候補者は“BANDWAGON EFFECT”
「勝ち馬効果」のマーカーを得て、次の選挙の時に1枚多くカードの補充が
でき、2連勝すれば2枚追加補充され、それ以降も効果は累積していきますが、
「行き詰まり」が使用されるとその効果は消滅します。
 どのカードにも負けない最強のカードですが、自分が勝つこともできない
最後の保険カードです。
 
 
 
 



    唐突に…column ボードゲームの要素について (1)
 
    戦略
 
  ボードゲームで非常に大切な要素です。ほとんどのボードゲームに多かれ少なかれ含まれています。ただ単にさいころを振って出た目の数だけ進むすごろくなら、戦略性はありません。
 しかし分かれ道が1つできるだけで、そのすごろくには戦略の要素が発生します。「右の道の方が道が短いが1回休みのコマが多い、左の道は長い」などなど。(全く同じ道なら戦略は生まれませんが)。
 戦略とは、どのように行動すれば自分に有利で、勝利を得ることができるか、それを考えることと言えます。その考える行為、過程こそがボードゲームの大きな魅力でもあります。戦略を立てるためにはボード上の情報を注意深く観察することが必要です。隣国には100人の兵士、自国に50人の兵士しかいなければ勝ち目がない、といった判断です。それに加えて、ボード上に現れない情報の推測が必要な場合があります。見えない情報には、カードを使用するゲームには相手の手札などがあり、なによりも相手が次に行う行動などもそういったものです。確実な情報を適切に判断できれば勝利は近づきます。確実な情報が得られず、不確かな情報に頼って行動しなければならない場合は賭けということになります。
 戦略について大して書けないまま、次回は「運」の要素についてです。

「隔月間ボードゲーム通信4号予告」

「エルグランデ」研究

 必勝法を伝授します。
 お楽しみに!

発行 ボードゲーム通信社