2001/4/30
隔月刊ボードゲーム通信5号

BOARD GAME NEWS ボードゲームツウシン no.5
FROM BOARD GAME NEWS AGENCY


♪ BOARD GAME ♪ 
EPIC RECORDS, 2001.5.3 :\1,020-
 DOG HAIR DRESSERS


★ 今号のトップを飾るのは、5月3日にリリースのマキシ・シングル『BOARD GAME』 です。世間一般に殆ど知られていない「ボードゲーム」をタイトルにするという、なかなか異色の作品。この曲を歌っているDOG HAIR DRESSERSは5月9日にFM802のフラワー・アフタヌーンにも登場。「ダイヤモンドゲーム」が好きで、メンバーの3人で遊んでいるとのこと。 その様子の写真がジャケットにも使われています。
★ 曲中では♪BOARD GAME 僕等は時間をわざとムダにするのさ♪と歌われています。 時間を無駄にするという行為、これは実はボードゲームの本質ではないでしょうか。実生活の役に立たないからこそ、誰でも楽しめるというところがあります。
それはともかく。
★ この曲を聞いて。そんなふとしたきっかけでボードゲームの楽しさが多くの人に伝わりますように。




DIE HANDLER(ディ・ハンドラー)

QUEEN GAMES, 1999
Wolfgang Kramer & Richard Ulrich


 ディ・ハンドラーは2〜4人まででプレイできるボードゲームです。時は中世、プレイヤーは商人となりパリ、ブリュージュ、ケルン、ウィーン、ジェノア、ジュネーブの六都市を舞台に商品を仕入れ、それを馬車で運び利益を上げます。その利益で自分の地位を上げていき、最終的に最も高い地位にいる商人が勝利します。

 まずは商品をそれぞれ購入し、いずれかの都市の自分の倉庫に配置します。配置の際にはその都市で扱っている商品(各都市3種類)しか置くことができません。それからその商品を馬車に積みます。馬車は3台あり、それぞれ秘密入札が行われます。入札は一回で最も高額の現金を提示した人が運搬権利者となります。運搬権利者は3つまでの同じ商品を積み込むことができます。それ以外の人は運搬権利者との交渉によって運搬権利者とは違う商品を2つまで積み込むことができます(運搬権利者との競合禁止)。この積み込み交渉がまず焦点になります。権利者になった場合、入札に使ったお金の分を積み込み交渉で少しでも取り返そうとするでしょうし、積んでもらう方はできるだけ安くいきたいところ。後述の馬車の移動や能力カードの使用も絡めた交渉に力が入ります。

 その後順番に手持ちの1〜4の移動タイルを使い馬車を動かしていきます。馬車を都市に到着させて初めて商品を売却し利益を得ることができます。商品の売却の際にはその都市で扱っていない商品を売却するとボーナスをもらうことができます。他のプレイヤーとも協力し、時には出し抜いて馬車を進める必要があります。毎ラウンド各商品は価格が変動します。価格変動時に各プレイヤーは円形表示盤を持ち、値上げさせたい商品を2つまで秘密に指定できます。この表示盤を全員一斉に公開し、価格の変動を行います。値上げさせたい商品を選ぶのですが価格が最高値にまでいった商品がさらに指定されると、最も安い価格にまで落ちてしまいます。この点だけは要注意です。価格変動時だけは交渉はしない方が、意外な展開で盛り上がって良さそうです(ルールにはっきり禁止と書いているわけではありませんが)。4人プレイの時は馬車が8回都市に到着したら、そのラウンドの終了をもってゲーム終了となります。

 ラウンドの最後には自分の社会的地位を保ち、さらに向上させなければなりません。高い社会的地位はその維持費用も高額になっていきます。地位を維持できなければ、維持できるところまで地位は下がってしまいます。地位を維持し、まだ余裕のある人は地位の向上ができます。これは1ラウンドに2段階までです。ゲーム終了時、この社会的地位が最も高い人が勝者となります。

 このゲームでは全編を通じてプレイヤー間での交渉が非常に大きなウエイトを占めています。積み込みの際の価格交渉もさることながら、それ以外でも馬車の移動、能力カードを使った脅し、などさまざまあります。交渉の際は、ルールに反しないこと、公開交渉とすること、約束は必ず守ることが決められていますが、それ以外ではかなり自由に行うことができます。有利にするも不利になるも自分の才覚次第というところでしょうか。3台の馬車の入札、運搬権利者との競合禁止、交渉がオープンであること、円形表示盤での価格変動など色々な要素がありますが、協力と対立のバランスが良く、自由度の高い交渉と合わせて楽しいゲームになっています。
 デザイナーのWolfgang KramerとRichard Ulrichは、1996年ドイツゲーム大賞の「エルグランデ」を作った黄金コンビ。エルグランデの姉妹作「エル・カバレロ」(1999)もあり今後も注目の二人です。エルグランデの秘密ディスク、ディ・ハンドラーの円形表示盤を見ると、彼らは丸物好き(?)の性格なのでしょうか。


ディ・ハンドラー カードリスト

<能力カード>カードの名称の前に記しているマークとかっこ内の価格は、能力カード入手の競りをしない場合の組み合わせと能力を得るために銀行に支払うお金です。各プレイヤーはマークごとの4組をランダムに受け取り、それぞれ合計額の1000ギルダーを銀行に払います。

a“速い使者”(800ギルダー)
 フェイズ3で使者を2マスまで移動させることができます。馬車と重ねて移動を終了すると、後述の影響カードを選んで手にいれることができます。影響カードの中には“ボーナス付きの売却”など利益を増やせるカードがあるので、うまく移動させて獲得していきたいところです。自分が取れない場合でも、交渉により他のプレイヤーの望む場所に移動させたりもできます。使者は都市に入ることと1マス進んですぐに元のマスに戻ることはできません。

a“倉庫からの売却”(200ギルダー)
 フェイズ4の価格変動の後、1つの倉庫から3つまでの商品を売却することができます。ただし、受け取れるお金はその時点での購入価格になります。最安値の100ギルダーで買った商品を最高値の400ギルダーで売った場合でも利益は300ギルダー×3個で900ギルダーが最高です。

§“大商館”(800ギルダー)
 フェイズ4で円形表示盤の価格変動後、1種類の商品の価格を1段階だけ上か下かに移動させることができます。また最高値にある商品の場合は最安値にまで落とすこともできます。売却価格を上げた場合の利益は100ギルダー×3個で300ギルダーが最高となります。最高値の商品で売却価格1000ギルダーのものを最安値600ギルダーに暴落させた場合の損失は400ギルダー×3個で最高1200ギルダーにもなります。これは他プレイヤーに対する大きな交渉(恫喝)材料となることでしょう。…ひどい。

§“御者”(200ギルダー)
 フェイズ3で馬車の移動をする際に1マス余分に動かすことができます。この1マスは通常の移動の馬車と同じでも、違う馬車に対しても使うことができます。自分の商品の載った馬車に使い、より多く移動することで移動先の都市を決定づけたり、少しでも早く都市に到着して売却益を確保することもできます。また、他のプレイヤーとの取引で使ってお金を稼ぐ方法も有効かもしれません。

c“有能な御者”(600ギルダー)
 前ページの“御者”と同じく馬車の移動で余分のポイントがもらえ、2マス動かすことができます。この分を複数の馬車に対して使うこともできます。直接的な利益を生み出す能力ではありませんが、余分のポイントが多いことで影響カードの入手もしやすく、ボーナスが得られる都市に方向を定めたりでき、“御者”以上に他プレイヤーとの取引でも有力な材料となります。

c“使者”(400ギルダー)
フェイズ3で使者を1マスだけ移動させることができます。馬車を使者に重ねた場合にも影響カードを入手する事はできますが、やはり使者の移動がなければ困難です。1マスだけというのが物足りないですが、上記の“有能な御者”との組み合わせを持てばかなり強力と言えるでしょう。

¨“有利な買い付け”(600ギルダー)
 商品を購入する時は、購入価格、購入数、種類にかかわらず1回につき100ギルダーで購入できます。購入価格の最高値が400ギルダー×3個=1200ギルダーなので、1ラウンドにつき1100ギルダーまで節約できる可能性があります。

¨“商館”(400ギルダー)
 “大商館”と同様にフェイズ4の円形表示盤での価格変動後に1種類の商品の価格を1段階だけ上下させることができます。しかし、最高値を最安値にする暴落はできません。よって自分の利益を増やす場合は300ギルダーで“大商館”と同じですが、価格を下げた場合の相手に与える損害額は最高でも300ギルダーしかありません。


<影響カード> 各3枚 馬車と使者を重ねたときに、好きな影響カードを1枚もらえます。

“脱輪”
 フェイズ3が始まる前に1台の馬車に対して使えます。カードを使用した人の順番までこの馬車は動けません。その人の順番でその馬車を動かすこともできますし、ラウンド終了時まで動かせないようにすることもできます。しかしここまで敵対行動を取ってしまうと、後の商売に響くので使いにくいです。

“無料の積み込み”
 1台の馬車に対して2つまでの商品を無料で積み込めます。効果的な感じですが「タダほど恐いものはない」といわれるとおり、後でその人の馬車に積み込む機会があれば倍額以上取られてしまうことでしょう。最終近くのラウンドでは有効かもしれません。

“特別売却”
 倉庫の中の商品を1つだけ800ギルダーで売却できます。眠っている商品が売れるのは良いのですが、いかんせん1つしか売れないので利益は少ないです。

“社会的地位の向上”
 1200ギルダーで地位を1段階上げることができます。後半は1段階地位を上げるのにかかる金額が、1500→2000→2500→3000ギルダーと、どんどん上がっていきます。3000ギルダーの時に使うと1800ギルダーの節約になります。後半の必須カード。

“ボーナス付きの売却”
 都市に到着した馬車に対して使うと、自分の商品を全てボーナス付きで売却できます。商品3個を最高のボーナス500ギルダーで売却できると、1500ギルダーも利益を増やすことができます。なかなか使いやすく効果的なカードです。




                          進行チャート


フェイズ1 時計回り            フェイズ2 同時                  フェイズ3 時計回り
<商品の購入>           <馬車の競り>                <馬車と使者の移動>

 →0〜3個まで、商品         →番号順に馬車の競り             →1つの馬車を移動。
 を購入し倉庫に配置          を行う。                      †「御者」「有能な御
 する。                   →運搬権利者は同じ種              者」の能力は複数の
 †その商品のマークの          類の商品を3つまで               馬車に分割可能。
 ある都市にしか配置           無料で積み込む。               †移動の中断は不可。
 できない。                →それ以外の者は運搬             →使者の移動が可能。
                        権利者と競合しない              †それぞれの移動終了
                        商品を、交渉により               毎に同じ位置にいれ
                        2つまで積み込める               ば任意の影響カード
                        (異なる種類でも良               が入手できる。
                         い)。                       馬車と使者の移動は
                                                 †どちらが先でも可。




 

 フェイズ4 同時               フェイズ5 時計回り               フェイズ6 時計回り
<価格変動>             <商品の売却>             <地位の維持・向上>

→円形表示盤による価            →馬車の到着マーカー             →地位の維持費を支払
格の変更を行う。                 を上に移動する。                 う。
→「商館」「大商館」              →商品の売却を行う。              †維持費を支払えない
による価格の変更を               †都市に無い商品には             場合は支払える地位
行う(時計回り)。                 ボーナスが付く。                まで下がる。
→「倉庫からの売却」             →馬車の到着した都市             →地位の向上を行うこ
が可能(購入価格を               のボーナスマーカー               とが可能(1ラウン  
受け取る)。                    を0にする。                    ドに2段階まで)。
                         →馬車の到着しなかっ              →地位が下がったプレ
                          た都市のボーナスマ               イヤーは銀行から借
                          ーカーを1段階右に                金することが可能。
                          移動する。



 *上の進行チャートはコピーして切り抜き、厚紙に貼って使用できます。



ディ・ハンドラーの感想
 活発に行われる交渉ごとが非常に楽しいゲームです。当然のことながら1回目のプレイはゲームの流れ、そして相場が分かっていないためテストプレイに近いですが、中盤にさしかかるとだいぶん分かるようになります。勝利条件が厳しく、地位を1ラウンドからずっと上げていく必要があり、最後の大逆転は難しいように感じました。価格交渉以外にも色々できるので2回目はさらに交渉が活発化しそうな予感です。プレイ時間は1時間ちょっとぐらいでしょうか。
 ボードは美しく、小道具も雰囲気十分。ただ、倉庫の商品や都市のボーナス表示マーカーなどがうっかりすると散らばりそう。






コラムのコーナー ボードゲームの要素について (2)

―運―

 前回の戦略と同様に、運の要素もボードゲームにおいて大きな位置を占めるものです。そして、多かれ少なかれ殆ど全てのボードゲームに存在するものです。ダイスを振る(ダイスロール)、カードを引く、コイントス、じゃんけん、などなど色々なかたちがあります。
 ダイスロール、コイントスの場合は完全にランダムで、どのような結果になるかは確率で判断するしかありません。例えば、ダイスの1〜6の目が出る確率はそれぞれ1/6ずつです。ダイスを2つ振った時の目の合計の数(しばしば2Dと記述されます)では、7が最も出易い数です。時々、神の力(あるいはプレイヤーの意志)で出る目が変わっているのではないか、と思うことがありますが、長い目でみれば確率通りの数値に近づくことでしょう。その「長い目」が1ゲームを過ぎてしまうことは往々にしてあるのですが…。
 山札からカードを引いていく場合には、「残りのカード」の概念があります。例えばAのカードは全カードの中でも1枚しか無く、さっき出たばかりで捨て札の中にある、という情報。Bのカードは全カード中3枚あるのに今まで誰も使っていないので、誰かが手に隠している可能性が高く要注意である、という推測。などなど。
 じゃんけんになると、各人の心理的要素も加わってきます。しかし確実な勝利法があるわけではないのでやはり運次第ですね。
 ところで、全く運の要素の無いゲームはあるのでしょうか。囲碁や将棋にしても先手後手を決める際には、握り、振り駒など運の要素が介在しています。これを考えると、各プレイヤーが公平で、運の要素が全く存在しないゲームは無いように思えます。
 さて、今回も深いところまで考察できないままですが、広く浅くという方針で次回に続きます。



・隔月刊ボードゲーム通信6号予告

  
「操り人形研究」 または 「エル・グランデのエクスパンションセット研究」

発行 ボードゲーム通信社