2001/7/15
隔月刊ボードゲーム通信6号

ボードゲーム通信社
(BOARD GAME NEWS AGENCY)
Ohne Furcht Adel(操り人形)
HANS IM GLUCK, 2000
Bruno Faidutti



 
みなさんこんにちは。今回ボードゲーム通信では初のカードゲームを紹介します。

 操り人形は3〜7人でプレイできるカードゲームです。2000年のドイツゲーム大賞にノミネートされました。遠いところのある王国で、かつて英雄だった者たちが活躍します。しかし彼らは貴族たちに操られているのです。
 貴族たちはお金を手にいれ、そのお金で自分たちの街に建物を建てます。

 各ラウンドの最初にそれぞれのプレイヤーは、そのラウンドに自分が操るキャラクターを順々に、秘密裏に決定します。このパートがこのゲームのハイライトとも言える大事な部分です。まず前回の国王(初回はスタートプレイヤー)が8枚のキャラクターカードを混ぜて、ランダムに1枚のキャラクターカードを選び、裏向きのまま1枚を場に置きます。このカードはこのラウンドは選択できないカードです。さらに3・4人プレイの場合は2枚、5人プレイの場合は1枚をランダムに選び表向きに場に置きます。これもまたこのラウンドでは選択できないキャラクターです。(この中に国王があった場合は選びなおします)。その後、残ったキャラクターカードから自分の“操る”キャラクターを選び、左どなりのプレイヤーに残りのキャラクターカードを渡します。次のプレイヤーもキャラクターを選び、順番に最後のプレイヤーまで回します。7人プレイの場合、7人目のプレイヤーは最初に裏返されたキャラクターカードと最後まで残った1枚とで二択ができます。よってどのプレイヤーも他人のキャラクターについて正確な情報は得られません。
 ラウンドの進行では、次頁のキャラクターリストの順番に国王からコールされ、プレイが行われます。プレイは以下の行動を、好きな順番で行えます。
・「カード オア コイン」を選べます。カードなら山札(建物カード)から2枚取って、1枚を選んで捨てる。コインなら2枚受け取る。
・キャラクターの能力を使用する。
・手札の建物カードに書かれているコストを支払い、建物を建てる(建物はコスト分の価値があります)。

 全キャラクターが行動を終了すると、キャラクターカードを混ぜ、再び国王からキャラクターを選び、次のラウンドを開始します。誰か1人が8つの建物を建てた時、そのラウンドの終了をもってゲームの終了となります。各人の建物の価値を合計して、最も価値の高い建物群を建てた者が勝利します。


<操り人形・キャラクターリスト>

 各キャラクターはそれぞれ、独特の能力を有しています。刻々変わっていく状況に対して毎ラウンド、キャラクターを選んでその能力を駆使していくところが、このゲームの楽しさであり戦略的な点でもあります。

1. Meuchler(暗殺者)
・ 他のキャラクターを指定して暗殺することができる。暗殺されたキャラクターは国王にコールされることなく、そのラウンドは一切行動できない。3人プレイ時にはこのキャラクターは取り除き使用しない。
 〇・とにかく自分は暗殺されることがないので確実に1ラウンドを行える。
   ・1番に行動できるため、複数のプレイヤーが建物7つで並んでいるような場合にも、最初に建物8つを建てた者へのボーナス得点が狙える。
   ・泥棒からお金を奪われることがないので貯金する場合も確実に2コイン貯めることができる。
 ×・暗殺には大抵勝利に近そうなプレイヤーや、当該ラウンドに大儲けしそうなプレイヤーなどを狙って行う。その場合、殺された側もある程度は仕方ないと考えよう。しかし、暗殺には(プレイヤーではなく)キャラクターを指定しなければならないため、しばしば“運の悪い”プレイヤー=キャラクターが間違えて暗殺されてしまう。ターゲットを間違えると、本来の標的は悠々と勝利に近づき、逆に自分は“運の悪い”プレイヤーの恨みをかってしまう恐れがあるため、「狙った獲物は逃さない」は鉄則。
  ・建物収入(後述参考)が無いので、カードもお金も乏しくなると展開が遅れてしまう。

2. Dieb(泥棒)
・1人のキャラクターを指定し、そのキャラクターの手番に所持金を奪うことができる。
 〇・狙い通りに、お金を貯めこんだ相手から奪えると、一気にお金を増やせる。
 ×・盗む相手の手番にならないとお金の入手ができず、そのお金を使えるのが次ラウンド以降になるので展開が遅れがちになり、そのお金を守ることも必要になる。
  ・当然の自衛手段として「宵越しの金」を持たないプレイヤーが多いため、それほどの収入は期待できない。
  ・建物収入がない。

3. Magier(魔法使い)
・自分の手札(0枚でも可)全部を、他プレイヤー1人の手札全部と交換する、あるいは自分の手札を任意の数だけ表向きにして捨てて、同数の建物カードを山札から補充することができる。
 〇・初期の手札の枚数は4枚、建てなければいけない建物の数は最低8つなので、4枚の建物カードをいかに効率良く入手するかはポイントとなる。その際に他プレイヤーとの手札交換能力は非常に有力、且つ相手の展開を遅らせることもできる。
  ・プレイ順番が3番目と、比較的早い。
  ・暗殺者に狙われるリスクがそれほど高くない。
×・建物収入が無い。

4. Konig(国王)
・各キャラクターを順番にコールするという、国王らしい仕事が用意されている。次ラウンドでは最初にキャラクターを選択できる。自分の前に黄色の建物カードがあれば、1枚につきコイン1枚を得る(建物収入)。
〇・建物収入がある。黄色は最低でもコスト3なので、勝利条件的にも充分な建物となる。
 ・次回に、暗殺者という最も安全な職業を選択できる可能性が高い。
×・最初にキャラクターを選択できるのは有利であるが、強い職業をとれば、2番目のプレイヤーには、回ってきたキャラクターカードの残りから、その類推が容易になる。

5. Prediger(伝導師)
・伝導師のプレイヤーの建物は、傭兵によって壊されることがない。自分の前に青色の建物カードがあれば、1枚につきコイン1枚を得る。
〇・終盤に傭兵による破壊工作を避けることができる。もっとも、コールナンバーの若いキャラクターの方が先に8枚を揃えやすいため、最終盤ではどうか?
 ・最も目立たない職業のため、暗殺されるリスクが少ない。
 ・建物収入がある。
×・目立たないということは、やはり他の職業に比べ、能力的に見劣りがする。

6. Handler(商人)
・無条件で1コインの収入がある。また、緑の建物カード1枚につき、コイン1枚の収入を得る。
〇・緑の建物も合わせると、莫大な収入を期待(!)することが可能。
  ・緑の建物は、他の色と比べて格段に多く、コストも安いため、暗殺さえされなければ大儲けできるはず。
×・暗殺される危険性が、最も高い職業の内の1人。

7. Baumeister(建築家)
・無条件で建物カードを2枚もらえる。建物を建てるときには、3つまで同時に建てることができる。
〇・初期の建物カード4枚の他に、最低4枚のカードを入手しなければ、8つの建物を建てることができないので、2枚補充はかなり有利。カード オア コインのコイン2枚も入手できるため、資金面でも強力なキャラクター。
  ・建物の複数建てにより、驚異のラストスパートも可能。最も強力なキャラクターと言える。
×・強力な能力の故に、やはり暗殺のリスクが非常に高い。

8. Soldner(傭兵)
・自分以外のプレイヤーの建てた建物を、その建物の建設コストからマイナス1のコストで破壊できる。
〇・コスト1の建物なら無料で壊せるため、相手の開幕ダッシュを抑えるのに有効。
 ・殺伐とした能力の割には、建物収入を比較的得やすい。暗殺される危険性は中ぐらい。
×・プレイ順が最後のため、最終盤にはいささか不利。



<操り人形・建物カードリスト>

(黄色)計12枚
Jagdschloss(猟城) コスト:3/ 5枚
Scholoss (居城) 4/ 4枚
Palast(王宮)  5/ 3枚

(青色)計11枚
Tempel(聖堂) コスト:1/ 3枚
Kirche(教会) 2/ 3枚
Abtei(修道院) 3/ 3枚
Kathedrale(大聖堂) 5/ 2枚

(緑色)計20枚
Taverne(酒場) コスト:1/ 5枚
Markt(市場) 2/ 4枚
Zunfthaus(ギルド・ハウス) 2/ 3枚
Kontor(営業所) 3/ 3枚
Hafen(港) 4/ 3枚
Rathaus(市庁舎) 5/ 2枚

(赤色)計11枚
Wachturm(監視塔) コスト:1/ 3枚
Kerker(牢獄) 2/ 3枚
Turnierplatz(競技場) 3/ 3枚
Festung(要塞) 5/ 2枚

(紫色)計11枚
Geisterstadt(幽霊都市) コスト:2/ 1枚
Wehrturm(見張り台) 3/ 2枚
Friedhof(墓地) 5/ 1枚
Laboratorium(研究所) 5/ 1枚
Schmiede(鍛冶屋) 5/ 1枚
Sternwarte(天文台) 5/ 1枚
Bibliothek(図書館) 6/ 1枚
Hexenschule(魔術学校) 6/ 1枚
Drachenhort(ドラゴンの守り) 6(8)/ 1枚
Universitat(大学) 6(8)/ 1枚

 以上のように建物カードでは黄色の12枚、青、赤、紫の各11枚に比べて、緑の20枚が突出しているので、緑のカード、中でもコスト1から3にかけてのカードはさほど重要でもなく、魔術師での交換やカードを捨てるときには選び易いと言えます。
 何度かのプレイでは、優勝者の得点は30点を越えるぐらいでしょうか。優勝ラインを32点と仮定すると、32÷8=4、なので、コスト4の建物だと優勝にかなり近づいているはずです。それに加えて、最初に8つの建物を建てたボーナス(4点)、五色の建物を揃えたボーナス(3点)があります。そのどちらも達成できた場合は(32-7)÷8≒3、なので、コスト3の建物でも優勝ラインへ近づけます。
 さてさて、計算上の最高得点はいったいいくらでしょうか。
A Drachenhort 8 紫色
B Universitat 8 紫色
C Bibliothek 6 紫色
D Hexenschule 6 紫色
E Palast 5 黄色
F Kathedrale 5 青色
G Rathaus 5 緑色
H Festung 5 赤色
I any color 5
J 〃 5 (最後の3枚は建築家でプレイする)
First 8 bonus 4
5 colors bonus 3
 合計65点。ありえない最高得点です。IとJを除いたとすると55点。これも不可能ではありますが。

 ついでに最低得点は以下の通り。
A Taverne 1 緑色
B 〃 1 緑色
C 〃 1 緑色
D 〃 1 緑色
E 〃 1 青色
F Wachturm 1 青色
G 〃 1 赤色
H 〃 1 赤色
First 8 bonus 4
 合計12点。さらに建築家なら3ラウンドで終了。理論上の最速勝利。


操り人形  戦術メモ
 
・国王になった後、とりあえず職業選択の上位をキープするとき。暗殺者がいれば彼を選択しターゲットには国王を指定。暗殺者がいなければ国王を選択する。暗殺者の場合はお金を盗まれることもない。(7人プレイでは、最後のワイルドカードが出現するため不可)。



操り人形の感想

 カードゲームはボードゲームと比べて一段低くみられがちに思います。その原因は、勝敗が結局はカードの引き次第(運次第)という要素があること、また、プレイ時間の短さから、人数が揃うまでの時間つぶしにプレイされることも多いということ、などが挙げられます。しかし「操り人形」においてはその戦略性はボードゲームにまさるとも劣らぬものであります。心理戦のかけひき、カードのイラストによる雰囲気、カードゲームという形態でもボードゲーム同様の素晴らしいゲームが作れるということを証明しています。
 プレイ時間は人数にもよりますが1時間前後となってカードゲームならではの手軽さという点は少し(ほんの少し)失われているのかもしれませんが、それ以上の楽しさです。ノミネートされながら2000年のドイツゲーム大賞には惜しくも選ばれませんでしたが、それに匹敵するものです。皆でゲームをするときの“メインディッシュ”になれる希有なカードゲームと言えるでしょう。個人的にはゲーム大賞受賞でもいいのでは、と思いますが。
 まあそんなことはおいといて、とにかく楽しい。私が好きな点は誰が何のキャラクターをやっているのかを考え、暗殺、泥棒を避けて、といった心理戦です。相手の裏をかく職業選択がうまくいったときは本当にうれしいものです。もうそれだけで満足のような……でも負ける時ってそれ以上にひどい目にあってるんですよね。




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ひとりごとのコーナー 〜 talking to myself

 “世の中には二種類の人間が存在する。ゲーマーと一般人である”。
 ゲーマー……彼らはゲームを愛し、己の名誉にしかならないゲームの勝利のために戦う者たちである。一般人においてはゲームの勝利は全く求めるようなものではない。
 ゲームに参加するとき、勝利条件を聞かないゲーマーはいまい。各人によって勝利への熱のいれ具合は異なるところのものではある。どんな手段を使っても勝ちたいプレイヤー、「正々堂々」としたプレイで勝利を目指すプレイヤー、ゲームを楽しむことが一番で勝利は二の次のプレイヤー。スタンスの違いはあるものの、みな勝利を目指すことにかわりはない。
 しかし一般人はゲームの勝利条件=目的そのものに疑問を抱く。「エルグランデ」なら、「なぜスペインを制覇して偉大な大公にならなければならないのか」、「操り人形」なら、「なぜ建物を建てるのか」、などなど。

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コラムのコーナー ボードゲームの要素について(3)

−交渉−
 いくつかのボードゲームには“交渉”の要素があります。「ディ・ハンドラー」では、馬車の権利を持つ者との価格交渉により、いくらで荷物を積み込めるかが決まります。陣取り系のゲームでは、しばしば共同戦線を張って、強力な敵に向かうことがあります。
 交渉をして、相手を説得することがうまい人は、自分の力が少ないときでも、味方を得て有利にゲームを運ぶものです。いかに合理的に交渉し、かつ心情的にも味方を得られるか、口先戦術の見せどころ。
 交渉はコンピュータゲームでは、なかなかうまく表現できない、ボードゲームを盛り上げる、1つの要素です。初対面の人とプレイするときに、少しスムーズにやりにくいのが難点ですが。



・隔月刊ボードゲーム通信7号予告

  
「エル・グランデ エクスパンションセット研究」
発行 ボードゲーム通信社