シェロブの巣

・ゴクリ(「二つの塔下」第一章「スメアゴルならし」より)

 一方、仲間と別れて大河アンドゥインの東岸に降り立ったフロドとサムは、エミン・ムイルの山岳に入り込んでいました。しかし道は険しく思うように進むことができません。そんな二人の後をビルボの前の指輪所持者ゴクリが尾行していました。指輪の魔力に何十年も捕らわれていたゴクリは、ホビットのスメアゴルという元の姿を失い、ただ「いとしいしと」(指輪)を求めるだけの哀れな生き物になっていたのです。サムはゴクリを捕まえて殺そうとしますが、フロドは憐れみをかけて許してやります。感激したゴクリは、モルドールへの道案内を引き受けます。サムは依然としてゴクリを信用しませんが、これによって旅が楽になったことは確かです。

・死者の顔(第二章「沼渡り」より)

 ゴクリの案内でエミン・ムイルの険しい山道から抜け出たフロドとサムは、水の流れる細長い谷間へと入り込みます。この川は死者の沼地へと続いていました。ここは霧深く悪臭立ちこめる沼沢地で、オークたちですらも避けて通るところです。それもそのはず、ここは夜になるとそこかしこで死人の蝋燭と呼ばれる灯がともされ、水の中からエルフに人間、そしてオークたちの顔が旅人を見つめて沼地の中へと誘い込むのです。死者の沼地に接する灰色の平原ダゴルラドでは、その昔エルフと人間の最後の同盟とサウロンの軍勢との合戦が行われました。膨大な死者たちはそのままその地に葬られ、やがて沼地が墓場を飲み込んでしまったのです。

・禁断の池(第六章「禁断の池」より)

 ようやくモルドールの表玄関モランノンすなわち黒門に到達した一行ですが、門から侵入しようとするフロドとサムに、ゴクリがもっといい道を知っていると告げます。影の山脈エフェル・ドゥアスに沿って道を南下すれば、やがてサウロンの警備が手薄な秘密の道が現れるというのです。ゴクリを信じて南への道を取る二人ですが、途中イシリアンでボロミアの弟ファラミアに見つかってしまいます。ゴクリは逃げ出し、フロドとサムはヘンネス・アンヌーンの滝にある隠し砦へと連れて行かれました。なんとかファラミアの信頼を得た二人ですが、後をつけてきたゴクリが禁断の池で魚を取ったため、再び窮地に陥ります。ゴクリの命を助けるために彼を捕まえてファラミアに引き渡すフロドですが、そのためにゴクリからの信頼を失ってしまいます。

・ナズグルの魔王、指輪を探しに現われる(第八章「キリス・ウンゴルの階段」より)

 ファラミアと別れて、再び三人に戻った一行ですが、旅の仲間の信頼には亀裂が入ってしまいました。とはいえ、表面上は従順に振舞うゴクリに先導されて、モルドールへと山道を分け入っていきます。ミナス・モルグルの塔のそばまで来たときのことでした。突然大雷音と稲妻が走り、塔の入り口からサウロンの大軍勢が出てきました。ゴンドールの都ミナス・ティリスを攻める軍でした。その先頭に立つのはナズグルの首領、風見が丘でフロドを一突きしたアングマールの魔王です。幽鬼の王はふと立ち止まり、一行の隠れる谷間を見つめますが、意志の力で指輪をはめることを拒んだフロドを見つけることはできず、行ってしまいました。

・シェロブ出現(第九章「シェロブの棲処」より)

 一行はミナス・モルグルを過ぎてさらに先を目指します。岩に開いた狭い隙間に入り込み、細く長い階段キリス・ウンゴルを登っていきます。何マイルも山を歩いた末に、ゴクリが二人を連れてきたのは悪臭を放つ暗い洞穴でした。中に踏み込んでしばらく経つと、暗闇にまぎれてゴクリは二人の前から姿を消してしまいます。残されたフロドとサムの背後からシューシューという音が聞こえてきました。ガラドリエルからもらった星の玻璃瓶の光に照らし出されたのは、巨大な二つの複眼でした。ここは蜘蛛の怪物シェロブの棲処だったのです。ゴクリは二人をシェロブに始末させて、その後にゆっくりと指輪を手に入れようともくろんだのです。

・シェロブの襲撃(第九章「シェロブの棲処」より)

 トンネルの出口に向かって逃げ出した二人ですが、そこには蜘蛛の巣が張り巡らしてあり、通ることができません。フロドは星の玻璃瓶をサムに渡し、つらぬき丸を抜いて蜘蛛の糸を切り開いていきますが、夢中になりすぎてサムと離れてしまいます。そんなフロドを危惧するサムはオークの気配を感じ、つい隠密行動をするいつもの習慣から玻璃瓶の光を隠してしまいました。その途端、シェロブはサムを飛び越えてフロドに襲い掛かりました。フロドの注意を喚起しようと慌ててサムが叫びかけたそのとき、後ろからゴクリがサムの口を押さえて羽交い絞めにしました。なんとかゴクリを撃退したサムでしたが、ときすでに遅く、フロドはシェロブの毒牙にかかってしまいました。

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