
「で、どこで食べるんだ?」
祐一は舞に尋ねた。
「…あそこ」
舞が指差した先には有名牛丼チェーン店があった。
「聞くまでもなかったな。佐祐理さんも牛丼でいい?」
聞かなくても答えは分かっているのだが、祐一は念のため佐祐理の意向を確認した。
「はい、佐祐理は舞が良ければどこでもいいですよ〜」
「分かりました、あそこに入りましょう」
三人は牛丼屋に入った。
三人はカウンター席に着くと注文を言った。
「並で、ご飯は少な目でお願いします」
佐祐理は自宅で夕食も食べるので、遠慮がちな注文であった。
「…特盛…あと、みそ汁と玉子とお新香」
一方、舞は祐一のおごりと言うことで豪快に注文した。
「…少しは遠慮しろよ」
祐一は薄い財布を見て恨めしそうに言った。
「あ、俺は大盛つゆだくで」
そして最後に祐一は自分の注文を言った。
「お前は本当につゆだくを食いたいのか? お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんか」
するととなり座っていた男が突然祐一に食ってかかってきた。
「うわ、な、なんだ!?」
男の迫力に祐一はたじろいでいた。
「ふぇ〜、喧嘩は止めてください〜」
佐祐理は仲裁に入ろうとした。
「女子供は、すっこんでろ! 牛丼家ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、 刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか!」
しかし逆に男に怒鳴られてしまった。
「はぇ〜」
しょんぼりしている佐祐理の肩に舞の手が置かれた。
「舞?」
佐祐理の問いかけに舞は黙って首を振った。そして親指で外を示した。
二人は店の外に出た。
「祐一さん、大丈夫なのかな…」
佐祐理は殺伐とした店内の様子を外から心配そうに見ていた。
「…大丈夫、別に殴られたりはしない。ただ…」
舞は佐祐理に説明した。
「ただ?」
「小一時間は問い詰められると思う…」
「そうですか…」
二人は祐一を外で待つことにした。
舞の言った通り、小一時間して祐一が店から出てきた。
「…はぁ、疲れた。なんだよ、あの男」
祐一は説教を食らってボロボロだった。
「…コピペにマジレス、カッコワルイ」
しかし舞は疲労感あふれる祐一に開口一番、冷たく言い放った。
「コピペって、なんだよそれ」
不条理な言葉が祐一を連続した襲った。
「…昔気質の常連のあの男がいる所でつゆだくを頼むのが悪い」
状況を飲み込めずに口をぽかんと開けている祐一に舞は説明した。
「だから舞はつゆだくにしなかったのか…。店に入った時に言ってくれれば良かったのに」
祐一はガックリと肩を落とした。
「災難でしたね〜、祐一さん」
哀れみを込めて佐祐理が言った。
「あれ、佐祐理さんもつゆだくにしなかったってことは、あの男のこと知ってたの?」
つゆだくを頼んでいたのは祐一だけだった。
「ふぇ? 佐祐理はあの人のことは知りませんでしたよ」
「じゃあなんで?」
「あははーっ、佐祐理はつゆだくな牛丼よりもつゆだくな舞が好きなんですよ〜」
佐祐理の発言で舞の顔が一瞬のうちに真っ赤になった。
「へ?」
祐一だけが佐祐理の言葉の意味を理解できていなかった。
祐一の時と異なり、舞は佐祐理との時はぐっしょりと濡れるのであった。
(おわり)
このあいだ、近所の吉野家行ったんです。吉野家。
そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。
で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、150円引き、とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。お前らな、150円引き如きで普段来てない吉野家に来てんじゃねーよ、ボケが。
150円だよ、150円。なんか親子連れとかもいるし。一家4人で吉野家か。おめでてーな。
よーしパパ特盛頼んじゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、150円やるからその席空けろと。吉野家ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。
で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が、大盛つゆだくで、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。あのな、つゆだくなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、つゆだくで、だ。お前は本当につゆだくを食いたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんかと。
吉野家通の俺から言わせてもらえば今、吉野家通の間での最新流行はやっぱり、ねぎだく、これだね。大盛りねぎだくギョク。これが通の頼み方。
ねぎだくってのはねぎが多めに入ってる。そん代わり肉が少なめ。これ。
で、それに大盛りギョク(玉子)。これ最強。しかしこれを頼むと次から店員にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前、1は、牛鮭定食でも食ってなさいってこった。