舞・佐祐理SS「大盛、つゆだく」

 放課後、舞と佐祐理と祐一の三人は商店街を歩いていた。
 突然、舞が道の真ん中で立ち止まって腹を押さえた。
「舞、腹が痛いのか?」
 祐一は心配そうに舞の顔を覗き込んだ。それに対して佐祐理はいつもの笑顔だった。
「…お腹空いた」
 腹痛ではなく、ただの空腹だった。佐祐理は舞の表情のわずかな違いでそれを読み取っていたので心配していなかったのだ。
「昼に佐祐理さんの重箱弁当食べて、まだ足りないのかお前は?」
 無駄に心配したのがむかついたのか、祐一は舞に厳しく当たった。
「…重箱って…私は一段分も食べていない」
 舞はむっと頬を膨らませて言った。
「あははーっ、祐一さん今日は舞と佐祐理の分までたくさん食べてましたからね〜」
 追い討ちで佐祐理の冷静なツッコミが入った。不変の笑顔で隠していたが、実は佐祐理も小腹が空いていたのである。
「…俺のせいかよ」
「はちみつくまさん」
 間髪入れずに舞は言った。
「…仕方ないな、おごってやるよ」
 祐一は二人に飯をおごることにした。

「で、どこで食べるんだ?」
 祐一は舞に尋ねた。
「…あそこ」
 舞が指差した先には有名牛丼チェーン店があった。
「聞くまでもなかったな。佐祐理さんも牛丼でいい?」
 聞かなくても答えは分かっているのだが、祐一は念のため佐祐理の意向を確認した。
「はい、佐祐理は舞が良ければどこでもいいですよ〜」
「分かりました、あそこに入りましょう」
 三人は牛丼屋に入った。

 三人はカウンター席に着くと注文を言った。
「並で、ご飯は少な目でお願いします」
 佐祐理は自宅で夕食も食べるので、遠慮がちな注文であった。
「…特盛…あと、みそ汁と玉子とお新香」
 一方、舞は祐一のおごりと言うことで豪快に注文した。
「…少しは遠慮しろよ」
 祐一は薄い財布を見て恨めしそうに言った。

「あ、俺は大盛つゆだくで」
 そして最後に祐一は自分の注文を言った。
「お前は本当につゆだくを食いたいのか? お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんか」
 するととなり座っていた男が突然祐一に食ってかかってきた。
「うわ、な、なんだ!?」
 男の迫力に祐一はたじろいでいた。
「ふぇ〜、喧嘩は止めてください〜」
 佐祐理は仲裁に入ろうとした。
「女子供は、すっこんでろ! 牛丼家ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、 刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか!」
 しかし逆に男に怒鳴られてしまった。
「はぇ〜」
 しょんぼりしている佐祐理の肩に舞の手が置かれた。
「舞?」
 佐祐理の問いかけに舞は黙って首を振った。そして親指で外を示した。
 二人は店の外に出た。

「祐一さん、大丈夫なのかな…」
 佐祐理は殺伐とした店内の様子を外から心配そうに見ていた。
「…大丈夫、別に殴られたりはしない。ただ…」
 舞は佐祐理に説明した。
「ただ?」
「小一時間は問い詰められると思う…」
「そうですか…」
 二人は祐一を外で待つことにした。

 舞の言った通り、小一時間して祐一が店から出てきた。
「…はぁ、疲れた。なんだよ、あの男」
 祐一は説教を食らってボロボロだった。
「…コピペにマジレス、カッコワルイ」
 しかし舞は疲労感あふれる祐一に開口一番、冷たく言い放った。
「コピペって、なんだよそれ」
 不条理な言葉が祐一を連続した襲った。

「…昔気質の常連のあの男がいる所でつゆだくを頼むのが悪い」
 状況を飲み込めずに口をぽかんと開けている祐一に舞は説明した。
「だから舞はつゆだくにしなかったのか…。店に入った時に言ってくれれば良かったのに」
 祐一はガックリと肩を落とした。
「災難でしたね〜、祐一さん」
 哀れみを込めて佐祐理が言った。
「あれ、佐祐理さんもつゆだくにしなかったってことは、あの男のこと知ってたの?」
 つゆだくを頼んでいたのは祐一だけだった。
「ふぇ? 佐祐理はあの人のことは知りませんでしたよ」
「じゃあなんで?」
「あははーっ、佐祐理はつゆだくな牛丼よりもつゆだくな舞が好きなんですよ〜」
 佐祐理の発言で舞の顔が一瞬のうちに真っ赤になった。
「へ?」
 祐一だけが佐祐理の言葉の意味を理解できていなかった。

 祐一の時と異なり、舞は佐祐理との時はぐっしょりと濡れるのであった。

(おわり)


「大盛、つゆだく」後書き
葉鍵板追悼SS(嘘)。牛丼、安くなりましたね。私は松屋に行くことが多いです。つゆだくは頼んだことはありません。
↓このSSの元ネタになったコピペ文を載せておきます。

このあいだ、近所の吉野家行ったんです。吉野家。
そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。
で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、150円引き、とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。お前らな、150円引き如きで普段来てない吉野家に来てんじゃねーよ、ボケが。
150円だよ、150円。なんか親子連れとかもいるし。一家4人で吉野家か。おめでてーな。
よーしパパ特盛頼んじゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、150円やるからその席空けろと。吉野家ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。
で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が、大盛つゆだくで、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。あのな、つゆだくなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、つゆだくで、だ。お前は本当につゆだくを食いたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんかと。
吉野家通の俺から言わせてもらえば今、吉野家通の間での最新流行はやっぱり、ねぎだく、これだね。大盛りねぎだくギョク。これが通の頼み方。
ねぎだくってのはねぎが多めに入ってる。そん代わり肉が少なめ。これ。
で、それに大盛りギョク(玉子)。これ最強。しかしこれを頼むと次から店員にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前、1は、牛鮭定食でも食ってなさいってこった。


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