
「おつかれさまです、涼子さん」
俺は一仕事終えて、涼子さんに挨拶した。
「おつかれさま。今日は新メニューの試食をしてもらいたいの。夕食代が浮くわよ。ランチとデザートがあるけどどっちにする?」
「お腹が空いてるんで、ランチにします」
「それじゃあ、7番テーブルに用意してあるから。日野森さんがいるはずよ」
7番テーブルには新メニューの親子丼が2人分置かれていた。
「相席いいかな?」
「ええ、いいわよ」
「それじゃあ、いただきまーす」
俺たちは早速親子丼を食べることにした。
「うん、うまいっ! これなら明日から店に出しても問題ないな」
「そうね。これなら子供からお年寄りまで食べてもらえそう」
日野森もおいしそうに食べている。
「他にも丼物のメニューを増やすのかな?」
「そうかも知れないわね。あなたは丼物は何が好きなの?」
ちょっと前までは日野森がこんな風に笑顔で俺に話しかけるなんてなかったんだよなあ。
「そうだな、俺は……」
そう、男が好きな丼物と言えばこれしかない。
「俺は『姉妹丼』が好きだな。『親子丼』は母娘だから年齢差が開き過ぎるから」
俺の答えに日野森はぽかんと口を開けていた。だが、すぐに意味が分かったらしく表情が険しいものとなった。
「だ、だめよ、ミーナに手を出しちゃ!」
さっきとは打って変わって厳しい口調で俺に言った。
「じゃあ、お姉さんの方は手を出していいのかい?」
「えっ、そ、それは……」
日野森は俺の言葉を聞いた途端にモジモジとしはじめた。
「いいんだね。それじゃあ今晩、寮の俺の部屋で……」
「何言ってるのよ! ふん!」
日野森は怒って立ち去って行ってしまった。
「待ってくれよ、日野森ぃ〜っ……あ〜あ、行っちゃった。姉妹丼は男のロマンなのに……」
(おわり)