アスピック
XTAL SOFT / PC-6001mkII  

 
 永遠の哀しみ

 衝撃的なゲームとの出会いは、遊び手の現実の物の見方や考え方に、 少なからず刺激を与えます。 それは幸せなことでもありますが、同時に、トラウマのような形となって、 その後の人生に暗い影を落とすことさえあります。 その最たる作品が『アスピック』でした。

 このゲームは、何が人の胸をグッと掴むのか、何が人の脳髄に重く響くのか、 まだ幼い私に教えてくれました。 同時に、もし自分がその作り手になるなら、読み手にそんな鉄槌を打ち込みたい、 それが出来なければ生きている価値など無いのだ、とさえ思わせました。 人の心に鮮烈に残るシナリオとは、読み手の想像を超えること、 そして深い真実性で感動を与えることです。

 80年代、まだ子供だった自分は、 RPGと言えば、世界を冒険して、最後に悪者をやっつけて、 平和なエンディングを迎えるものとばかり信じ切っていました。 実際それが普通だったでしょう。 昔から色々なRPGはありましたが、 それが物語の基本、恒例でした。

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 「アスピック」とは、魔界の頂点に立つ毒蛇の名です。「魔蛇王」とも呼ばれます。 人間界とは別の世界、魔界にそびえ立つ巨大な塔の最上階に住み、魔物たちを牛耳っている。

 ある時、彼の手先によって、人間界の王女が連れ去られます。 悲痛の王様は、「姫を救った者に、その婿(王子)となる権利を与える」とのおふれを出し、 アスピック打倒、愛する姫奪還の勇者を募るのです。 主人公はそうして勇敢にも旅立ちました。

 王様や兵士たちの激励を背に、長い冒険がはじまります。 暗い洞窟に潜り、大海原を渡り、熱い砂漠を越え、苦難の果てに、 魔界はアスピックの塔に辿り着きます。 重い扉を開け、青く光る不気味なフロアを駆け抜け、襲いかかる怪物をなぎ倒し、なぎ倒し、 階段を上へ上へと昇っていく。

 そして最上階、遂に辿り着いた魔蛇王の間。アスピックとの激闘が始まり、 その末に打ち倒す主人公。 「呪ってやる」との蛇の呻き声も尻目に、幽閉された姫を助ける、その歓喜! ああ、これで苦難の冒険も報われる。私は姫と結婚し、王子になれるのだ! (エンディングを迎えたと信じるプレイヤーは、 この時まさに主人公の気持ちと一つになる)

 姫を連れ、悠々と城へ凱旋する。絨毯敷きのフロアを進み、王の間へ向かう。 そして念願の、王との謁見。その後のストーリー。 あまりにむごく、悲しい、真実の物語。

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 同じように衝撃的なシナリオは、スーパーファミコンの「ヘラクレスの栄光掘廚任盡られます。 この作品もまた終盤に、地の底に突き落とされるような出来事が起こり、プレイヤーの 頭を激しく揺さぶるのです。 ゲームという物がこれだけ胸に響く力を持ちうるのだと、教えてくれた作品でした。

 「アスピック」は、今でも、自分の人生と考え方に、 暗い情念の塊を与えてくれた作品として、心の奥に棲み続けています。 色に喩えるなら、赤と青でしょうか、怒りと絶望の淵から立ち上がって至る、 そのあまりに哀しいラストシーンは、 並ぶ物のない至高のエンディングとして、今も脳裏を離れません。


 
 






*この文章は遠い記憶をもとに書かれており、勘違いや美化も含まれていることをご了承下さい。
画像は他WebSiteから転載させて頂いたものです。


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