ファザナドゥ
HUDSON / Family Computer  

 
 不朽の佳作

 『ファザナドゥ』は"不遇"の作品だ。独特の雰囲気ただよう意欲作にも関わらず、巷の評価はどこか冷たい。個人的には、「ヒットラーの復活」や「スウィートホーム」に次ぐ、ファミコンソフトの秀作だと思う。

 このゲームを振り返る時、いつも、「もし題名がオリジナルだったら…」と想像せずにいられない。題名に「ザナドゥ」はいらなかった。それがこのゲームの評価を不当に貶めている。 ……と、これは自業自得だったか。

 '80年代中頃、マイコンを賑わせた大ヒットRPG『ザナドゥ』をファミコンに移植する。で、頭に「ファ」を付けた?しかしこれ、アレンジという枠を遙かに越えて、相当違う作品になっている。ファミコンで憧れのザナドゥを、と期待したユーザーは裏切られ、結果、今も低評価に甘んじている。

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 しかしこの作品に佳作以上の価値があることは間違いない。 何よりその独特の世界観。 中世ヨーロッパ、ゴシックファンタジーの陰鬱な匂い。 城壁、町並み、人、暗い森や塔、俗っぽくグロテスクな怪物たち。

 こうした雰囲気、迷宮を探索していくスタイル、巨大なボスキャラクター等は、本家をそれなりに踏襲している。ライフや魔法、鍵を店で購入するシステム、称号のランクアップなども共通している。大きく違うのは、本作が甚だアクションゲーム的なところだろう。

 会話時の文字が大きく、漢字を含めて読みやすくて良い。 コクのあるグラフィック、セリフにも妙な味わいがある。 そしてBGMが秀逸。耳に残る癖のあるメロディー。 ネットで一度、Midiを探して聴いてみてほしい。

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 主人公は、長旅を終え帰郷したエルフ族の勇士。 城で王から、謎の隕石が落ち、町の泉が枯れてしまったとの報告を受ける。 プレイヤーは人々を救うため、ドワーフの棲む魔宮へ向かうことになる。

 このスタート時の主人公の格好は頂けない。ボロ衣に素手、猫背。ヒーローというより乞食のようで、感情移入しづらい。これも低評価の一因だろうが、 逆手にとって、装備アップへの期待をモチベーションにしていこう。

 ジャンプと剣攻撃によるアクションが小気味よい。 少々当たり判定が不自然だったり、画面切り替え方式による不合理があったり、ストレスが溜まる点もあるが、全体的に完成度は高く、今やっても充分面白い。

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 にしても、ハドソンはなぜ、こういう調理をしたのだろう? 「ファ」は言霊となり、ファンタジー性をより強調させたのか。 ファミコンの特性を知るがゆえの大胆なアレンジか。 本家に幾らか似せてはいるが、 よりディープな、別物と言っていいゲームに仕立て上げられている。

 最近、リバイバル版「ザナドゥ」(Windows用)もやってみたが、さほど面白いとは思えず、すぐに 止めてしまった。時代を乗り越えるまでの力はなかったのか。 アクションRPGの "金字塔"と謳われていたのに。それが今や色褪せ、 皮肉にも「ファザナドゥ」の魅力が浮かび上がってきた。

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 もし興味を持たれたなら、一度プレイしてみてほしい。 みすぼらしい主人公。小さいナイフ。 暗く、ひんやり、湿っぽい空気。そして良質なグラフィックとメッセージ。耳に残る奇妙なBGM。

 そして最後、オープニングを逆回転したようなエンディングに、あなたは達成感よりむしろ、空しい気持ちに襲われるだろう。カーテン越しに見る、日曜日の夕影に似た、ユウウツな脱力感……

 『ファザナドゥ』に光は当たらない。 そうさせない陰鬱さ、妙な半端さ、不遇の匂い、虚ろなカタルシス、 それがこの作品が人を惹き付ける特殊な引力なのだから。


 
 
(C)HUDSON
 オープニング。王国を支える世界樹が枯れ始めている…

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 家の中。住民たちの口からこの世界の状況が語られる。

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 点在する町で武器や防具を整え、冒険を続けていこう。

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 ©HUDSON

*この文章は記憶をもとに書かれており、勘違いや美化も含まれている可能性があります。
画像は他WebSiteから転載させて頂いたものです。


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