逆転裁判
CAPCOM / GBA  

 
 胸元から始まった

 ゲームボーイアドバンスの『逆転裁判』は名作だと思う。 これほど面白いゲームは久しぶりで、嬉しい。 噂には聞いていたけど、画面を見れば大体の見当は付く。 どう見たって、どっかの少年漫画、 「金田一」だ「コナン」だの探偵物に肖ったキャラクターものだ、 と敬遠していたが、いやいや全く、下らない先入観だった。

 これは渾身の、プロの才能と情熱と執念の結集した、傑作である。 やってみれば分かる。本当に面白い。五千円で買う価値がある。 そしてこれが、ゲーム専用に作られたもの、と知って驚いた。 絵からキャラクターから設定から、漫画じゃなくてこれ専用、びっくり仰天。

 あえて先に惜しい点を挙げておくと、終わって 「もっと遊びたい」「早く続きを、次回作を!」と思わせるところ。 もっともこれは、「2」が出ると聞いて安心したが。

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 最初に惹き付けられたのは、女史の胸元だった。男のサガか、そこに目は引き込まれ、 セクシーな目線と台詞に翻弄され、彼女に引っ張られる形で、第一章は進んでいくのだが、 なんと次の章で……。

 信じられぬ。冗談なのか。驚きの展開に、私を引き寄せた胸元は何処へ行く。 しかし取って変わった代役に、今度は「守ってあげたい」と男の保護欲を刺激され、 その子も少しづつ個性的な魅力を発揮していく。

 こうした起伏と抑揚に溢れた脚本は、 練りに練られたまさしくプロのもので、スムースな導入部からクライマックスに至るまで、プレイヤーの喜怒哀楽をうまく引き出し、少しも飽きさせることがない。 それを盛り上げる、グラフィック、サウンド、様々な演出、間の利いたギャグ。 どれも最適なタイミングで挿し込まれる。

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 もちろん、このゲーム最大の醍醐味は、裁判のシーンにこそある。 プレイヤーは2016年の新人弁護士、成歩堂(ナルホド)として、被告を弁護する。 アドベンチャーモードでは、現場周辺を歩き、様々な物を調べ、色々な人から話を聞いて、 役立つ情報を集める。そして法廷モードへ。

 裁判官の木槌の音で始まる、緊迫の時。 被告や証人の証言を元に、タイミングを見計らい「ちょっと待った!」で問い、 「異議ありっっ!」で矛盾をつき、 「これを喰らえっ!」で決定的な証拠を突きつける。

 ここぞ!ズバーーンッ!と放たれるその言葉。続く迫真の弁舌。実に爽快。 対する検察官の厳しい圧力やに妨害に耐えつつ、証人や証言のアラを突き、 繰り返し問いつめ、嘘と真実をあぶり出していく。 ドラクエのボス戦を彷彿とさせるそこに、このゲームの斬新な面白さがある。

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 でも一番面白いのは、キャラクターたちかもしれない。 リアルで肉厚。これは人間観察のたまもので、 オバさんからガキんちょ、若い女に実業家、老若男女多種多彩で、 どれも「こういう人いるいる!」という現実味の上に、 豊かな台詞とアニメーションで表現され、大いに楽しませてくれる。

 生き生きとした、媚びや見栄、身勝手さ、ズルさ傲慢さ、表と裏、 ガキの悪態、隠し事、虚勢に居直り、思い込み…。 清濁含んだ人間らしい、味のあるキャラクター達が、このストーリーを分厚く支えている。

 全4話、というのは少し物足りなく見えるかもしれないが、 想像以上にボリュームがあって、やり応え充分。 1話目は掴みの初舞台、プレイヤーにとっての基礎講座で、所長が手助けしてくれる。 2話目にしてパートナーを変え、続く異色のTVヒーローもの、そして怒濤の最終章へ。 裏ではひそかに伏線が……と、この後はプレイしてのお楽しみ。

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 こういう高い志、情熱、挑戦欲を持ったゲームがもっと多くていいはず、と思うのだけど、 今それが出来るメーカーは少ない。だからプレイしていて、純粋に、複雑に?嬉しかった。 こういう力作が必ずや業界を牽引する。

 エンディングを迎えた時、涙がこみあげてきて、スタッフロールが輝いて見えた。 企画、絵、音楽担当…、そして最後、総指揮「三上真司」、そして「CAPCOM」の刻印。

 『逆転裁判』は愛されるゲームだと思う。特に日本人に。 それはこのゲームに、並々ならぬ愛情が注ぎ込まれているからに他ならないのだけど、 その底に、日本的な"人情"の世界が流れていて、それに触れて、私たちは安心するからだ。 胸元の奥に、日本のハートがあった。


 
 
(C)CAPCOM Co.,Ltd.2001

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 ©CAPCOM Co.,Ltd.2001

*この文章は記憶をもとに書かれており、勘違いや美化も含まれている可能性があります。
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逆転裁判公式サイト(CAPCOM) にて、体験版が楽しめます。


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