
NINTENDO64
そんな中、任天堂は95年秋に向け、ファミコン・スーパーファミコン・ 他社の次世代機とも趣向の違う、独自の思想を持った家庭用TVゲーム機の開発を始める。
【 プロジェクトリアリティ 】
1992年頃から、アメリカのコンピューター会社などから任天堂に、 マルチメディアを念頭に置いた提携や、家庭用ゲーム機の共同開発などの アプローチが来ていた。 任天堂が追求していたのは、「本物のリアルタイム映像」である。 映像を状況・視点に応じて即座に計算し次々と描き出す、それを 本質的に理解していたSGIと手を組んだのだ。
64ビットゲーム機の開発責任者は開発第三部長、竹田玄洋。
任天堂とSGIは如何に変幻自在なハードウェアを作るか、を考える。
そして、竹田は、「64ビットはソフト開発者への贈り物」 との考えから、ソフト開発者が新しい挑戦 (音声認識、AI、波や炎の演算など)をするために十分なハード機能を持たせる。 このゲーム機のCPUには、MIPS社の64ビットRISCプロセッサを。音声・文字・画像処理には、 価格を抑えるため「メディアプロセッサ」という データ統合方式のLSIを採用する。 こうした形で、ハードウェアは可能な限りシンプルに構成し、コストを極限まで削減した。 ソフト媒体にはカセットを選択。 アクセスが速く「リアルタイム表現」に向いている事、 様々なチップをカセットに内蔵することで、新たな仕掛けを組み込む事が出来るため。
そして、アナログ(どれぐらいの強さ)で、360度指示が可能な入力装置を開発する。 加えて、コントローラー裏面上部に、「コントローラーパック」挿入口を付けた。 マシン本体のコントローラー接続口は4つ設け、データの双方向送受信をできるようにした。
【 95初心会山内講演 】
「どうも昨今は、テレビゲームをよく知らない方が色々な事を書いたり喋ったりするので、
業界がおかしくなっています。テレビゲーム本来の姿や実像がかすみ、
テレビゲームの前途が危うくなっています。」
「今のテレビゲームのマーケットを考えてみますと、楽観できない状態なのです。
ソフトメーカーは、種と仕掛けがなくなってきています。ところが、
様々なゲームが市場には溢れており、開発者たちはどうしたらいいのか分からなく
なっています。そうなると、一番安易な道、簡単な道を選ぼうとするのが人間でして、
たくさんの種類のゲームソフトを作ればひとつやふたつはヒットするかもしれない
と考えるのです。しかし、そんなことで目の肥えたユーザーを説得できるだけのゲームは作れません。
ユーザーは拒否反応を見せるだけで、駄作、愚作、つまり
ダメソフトが増えていきます。」
「(様々な)才能と経験が結集されて、はじめて
独創的なゲーム開発が可能になるわけです。しかしチームワークなどの問題もありますから、
ソフト開発チームが増えても、素晴らしいソフトは少しも増えません。
その結果、とにかく大容量を使って、音声と映像を垂れ流し、ゲームに迫力を付けようとするものです。
しかしゲームというものは、その内容が肝心なのです。音声や映像を垂れ流しても、
駄作は駄作、愚作は愚作、
おもしろくないものは、ダメソフトなんです。」
「この間、次世代ゲーム機の注目のRPGという紹介記事を読みました。
次世代ゲーム機とは一体なんなのか?私にはよく分かりません。ソフト主導のマーケットで
次世代のゲームというと、ゲーム=ハードになってしまう。ユーザーが求めるのが
高度なゲーム機なら、それは次世代ゲーム機で結構。でもユーザーが求めているのは、
独創的で今まで体験したことがないような楽しさがあるソフトなんです。
本来、ソフト主導のマーケットであるテレビゲーム市場では、
次世代なんて言葉はそもそもおかしいのです。」
「RPGを作るというと、『ドラゴンクエスト』に似たソフトを作る。
『ドラゴンクエスト』に似たソフトは何度も発売されてきたにも関わらず作る。
しかしユーザーはそれが『ドラゴンクエスト』のマネであることを知っているんです。
すなわち、マネソフトはダメソフトなんです。
マネソフトが洪水のように出てくる
駄作、愚作のある部分を占めているのです。だからこそダメソフトは氾濫してくる」
「ニンテンドー64を何のために発売するのか?当然
テレビゲームマーケットを守るためです。
危うくなってきたテレビゲームマーケットをなんとか守りたい。そのためには、
ソフト開発者のかたがたに、
新しい種と仕掛けを作れる材料を提供しなければなりません。」
「新しいコントローラーの提案は、ゲームソフトに対して新しい種や仕掛けをつけさせる
役割をするものです。直感的に、スポーツゲームではそのコントローラーの特徴により、
いままで出された野球、サッカーゲームとの
質的な違いをユーザーに認めてもらえると確信します。」
「また、ニンテンドー64には、新しいタイプのマスクROMを使います。
ユーザーにとって、ローディングがないという利点がありますが、それよりも
カセットの中にマスクROM以外の半導体を内蔵させることにより、
新しい提案をしたいのです。」
「第一の質的転換は新しいコントローラーだと言いました。
では第二の質的転換とは何なのか?
任天堂は書き込みと読み出しの出来る大容量の磁気メディア
を使うことで、新鮮で、しこも感動的な面白さを実現できると思っています。
磁気メディアを体験していただくことで、多くのユーザーに
テレビゲームソフトの新しいジャンルとして認知してもらえると思っております。
この新しいゲームソフト開発路線を軌道に乗せることで、
テレビゲームマーケットの前途は開けると考えています。」
「この書き込みのできる『ゼルダの伝説』とアダプターを発売することが、
当面の課題であります。任天堂は先見の明のあるソフトメーカーさんとともに、
少数精鋭のソフト開発路線を確立して、
このマーケットを守っていかなければなりません。」
【 ニンテンドウ64 】
同時発売ソフトは
「スーパーマリオ64」「パイロットウイングス64」「最強羽生将棋」の3本。
プレイヤーは3Dスティックを使い、三次元世界を自由自在に動き回れる。
また、カメラを操作し視点を変えることもできる。
「ニンテンドウ64」は発売時は爆発的に売れたが、8月に入ると突如売れ行きが鈍化。 8月14日、日経新聞紙上で任天堂の業績不振(経常益7割減)が報道されると、 任天堂株に売りが殺到、証券取引所では情報の混乱を理由に取引停止騒ぎとなった。 ゲームソフトの不足、不透明なスケジュール、ハード・ソフトの高価格などを理由に、 発売から2ヶ月経たない内に「ニンテンドウ64」のイメージは失墜する。 任天堂の「96年度末までに国内で360万台を出荷する」計画は 頓挫、実際の売り上げは半分の180万台。
1997年3月、任天堂は本体の値段を16800円に引き下げる。が、 中途半端な価格設定がむしろ64ビット機のブランド性を失わせる結果にもなり、 効果は上がらなかった。 「ニンテンドウ64」のソフト作りには、かなりの時間や体力・技術・才能を必要とするため、 任天堂自身もサードパーティもソフト開発に手間取り、未だソフトも少なく質も疎らである。 質の高いソフトはあるが、子供向け・能動性の高いものが多く、一般ユーザーには届かず、 新しく創造的なゲームや人気のRPGも未だ発売されず、様子見状態が続いている。
任天堂は「勝負は98年末」と言い、そこに 焦点を合わせる形で戦略を練り直している。 | ||||||||||