著作権について


近年、著作権(あるいはそれを含む知的財産権)問題への世間の認識が日増し
に高まっています。これは、著作権の存在が一般に浸透してきたと同時に、著
作権に絡むトラブルが裁判に発展し、高額な損害賠償を招く事例が増加してい
ることによるものと考えます。

この問題は、筆者が個人的に制作しているホームページや同人誌にとっても無
関係ではありません。ホームページに他人のデータを無断転載したことを原因
とするトラブルを筆者はいくつか知っていますし、同人誌を頒布する場である
コミックマーケットにおいても著作権に関する問題は毎回のように取り上げら
れています。

幸いなことに、1998年8月現在までに筆者自身が著作権関連のトラブルに巻き
込まれたことはありません。しかしこの問題をきちんと認識していないと、今
後ホームページ制作や同人活動を続けていく上で何らかの社会的制裁を受ける
ことになりかねません。こうした認識は1995年11月のホームページ開設後から
存在し、日増しに強化されていたのですが、1998年の夏コミにおける同人誌頒
布の際に著作権について認識する必要性をとりわけ強く感じたため、これを契
機としてこの文章を執筆するに至りました。

ちなみに筆者は理学部数学科出身で、法律や判例については詳しくありません。
1998年に某企業に入社して以来、知的財産権に関する研修を受けたことはあり
ますが、まだまだ至らない点も多いと自覚しています。この文章についても認
識不足な点があるだろうと思います。お気付きの点がありましたらEメール等
で教えていただければ幸いです。


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著作権に関して、現在の筆者の理解では次のようになっています。

・著作権は、作品が著作された時点で発生する。
・営利目的の販売物に他人の著作物を無断で転載・複製すると……
 1.著作権法違反となり、法の上で処罰される。
 2.不当に営利を得たり、著作者に損害を与えたりした場合には、損害賠償
   をしなければならない。

それでは「営利目的」でない場合はどうなるのでしょうか?


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【ホームページ】
いくつかのパターンが考えられます。
 1.自分のホームページに転載する
 2.自分のホームページからリンクを張る
 3.自分のホームページに引用する

筆者の考えでは、1はほぼアウト、2と3は条件付きセーフです。

1については、他人のデータを自分だけで楽しむ場合(アクセス制限を設ける
場合も含む)は構いませんが、ホームページで公開するとなると不特定多数に
頒布しているわけですから、明らかに著作権の侵害になります。

2については、「リンクを禁止すると明記していない限り、リンクは基本的に
自由である」(逆にリンク先のホームページの宣伝になるという考え方もある)
という考え方がネット上で定着していると考えます。従って「リンク禁止」と
明記していないHPには自由にリンクを張らせて頂いていますし、筆者のHP
にリンクを張って頂いても全く構いません。

3については、「引用したデータの出典を明記する」という必要条件がありま
す。ただし、これだけでは不十分でしょう。出典を明記したからといって、他
人のデータを丸写しということは許されません。そこで、HP掲載にあたって
筆者が取っているスタンスは、「自分の頭を使ったものに関してならOK」と
いうものです。これが正しいかどうかについては議論の分かれるところだと思
いますが(例えば、題材としたゲームそのものの著作権を侵害しているのでは
ないかという考えがある)。

具体例を示します。

ア.DQ6モンスターデータ
……公式ガイドブック等を丸写ししたものは×
……繰り返しプレイと計算により決定したものは○

イ.DQ6低レベル攻略ガイド
……他人のデータを丸写しし、出典を明記していないものは×
……他人のデータを丸写しし、出典を明記しているものは×
……他人のデータを加工し、出典を明記していないものは×
……他人のデータを加工し、出典を明記しているものは○


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【同人誌】
それでは、これが「販売」でなく「頒布」の形を取る、つまり建前では営利目
的でないコミケにも適用されるのでしょうか?

筆者の所属していたサークル、東京大学ゲーム研究会がコミケに初参加(1997
年夏コミ)するにあたり、まず気になったのは、「コミケでゲーム関連の同人
誌を有料販売して利益を得るのは著作権の侵害ではないのか?」ということで
した。そう考え、インターネット上の「業務連絡掲示板」で見解を求めたとこ
ろ、サークルの後輩でコミケでは先輩に当たるs氏より次のような趣旨の返答
を頂きました。
「コミケでの頒布は営利目的でない。そのため著作権についてもある程度許容
されている。」
販売でなく頒布、しかも営利目的でないというのが建前、という点に筆者は納
得し、それ以来ゲーム攻略に関するホームページ制作や同人誌発行を続けてき
ました。また、同人誌制作においてもホームページと同様、「自分の頭を使っ
たものに関してならOK」というスタンスを貫いてきました。

ところが、1998年の夏コミにおいて新たに問題が発生しました。

1.同人誌のビジュアル面を強化する目的と、低レベル攻略が机上の空論でな
  いことを示す目的のため、ビデオキャプチャカードを使って攻略画像を取
  り込み掲載した。特に表紙にはタイトルロゴをほぼそのまま使っている。
  これについて、今回の夏コミでは見本誌提出の手続きを経て無事に頒布で
  きたが、ゲーム攻略をメインに行っている別のサークルの人物によれば、
  「同人誌全体の25%以上がゲーム画像だとだめ」という原則があるらし
  い。

2.さらに、今回は低レベル攻略ビデオを一時的とはいえ頒布した。ところが、
  これはカタログの注意書きに記述のある「ゲーム画像をビデオ録りした形
  での攻略法等」に相当し、著作権の侵害になるらしいということが判明し
  た。ビデオはその時点で撤収した(その間約1時間)。

1については、まず表紙以外の画像は、確かにゲーム画像をそのまま使ってい
るという点では著作権の侵害に当たるかもしれませんが、その画像を得るため
に費やしたプレイは筆者のオリジナルです。従って、営利目的でない頒布なら
ばOKであるというのが筆者の見解です。

表紙については、この見解からすれば著作権の侵害に当たることになります。
(あえて言い訳をするならば、あれは実は「加工品」です。タイトル画面を取
り込んで、雲や都市など余分な背景をペイントで削っています。)しかし現実
には見本誌提出という「著作権問題のチェック」を通過しているのです。とい
うことは非営利目的の頒布であれば認められるのでしょうか?

いずれにせよ、筆者はこの問題が解決するまで、今後の新刊にはタイトルロゴ
を使わないことにします。ただし、ワードアート等で類似品を制作するのは、
上記見解によりOKと考えます。

ちなみに、「同人誌全体の25%以上がゲーム画像だとだめ」という原則につ
いては、次の計算の通り、頒布条件を満たしています。

「ファイナルファンタジー7 低レベル攻略ガイド」は全48ページ中に画像
32枚。1つの画像の大きさは1ページの8分の1以下。従って同人誌全体に
対する画像の割合は((32÷8)÷48)×100、つまり約8%以下。

「ドラゴンクエスト6 低レベル攻略ガイド 改訂第2版」は全76ページ中
に画像88枚。1つの画像の大きさは1ページの8分の1以下。従って同人誌
全体に対する画像の割合は((88÷8)÷76)×100、つまり約14%
以下。

2についても、確かにゲーム画像をそのまま使っているという点では著作権の
侵害に当たるかもしれませんが、その画像を得るために費やしたプレイは筆者
のオリジナルです。従って、営利目的でない頒布ならばOKであるというのが
筆者の見解でした。

一方、「ゲーム画像をビデオ録りした形での攻略法等」というのは、例えばご
く普通にプレイした画像やオープニングをそのまま録画した画像を指すのであ
って、ゲームをやり込んだ結果を収録した「創作物」を指すのではない、と考
えて(曲解して)いました。加えて、この制限が新たに追加された1997年の冬
コミにおいてもビデオを頒布・通販していた事例が見受けられたことから、一
時的とはいえ頒布に踏み切ったのです。(注:他人がやっているから自分もや
っていいということにはならない。この点については要反省。)

またカタログでは、「著しく著作権を侵害する形の発行物」についても、「研
究用小部数の場合など、法的に認められることもある」としています。それな
らば、次のような場合は許されるのでしょうか?

・研究用小部数ならば良いということで、先着若干名限定として有料または無
 料で頒布する。
・研究用小部数ならば良いということで、サークルのメンバーに有料または無
 料で頒布する。
・低レベル攻略ビデオをゲーム雑誌に送り、全国に発表され、賞品としてゲー
 ム機等と交換可能なチケットを受け取る。(採用されればの話ですが……)

これは「研究用」と「小部数」の解釈の問題だと思います。筆者の低レベル攻
略ビデオは、少なくとも筆者にとっては「研究用」であり「研究の成果」であ
って、間違っても「商売用」ではありません(価格についても営利目的になら
ないように配慮している……後述)。ビデオを買ったお客様も、ビデオの内容
から考えて、個人で楽しむか研究に使うことはあっても商売目的で使うことは
まずないでしょう。また、頒布形態についても「先着3名様限定」という形を
取っており、これは一般常識で考えても「小部数」と思われます。

ただし、こういう解釈がゲームやコミケを経験していない一般の人を納得させ
られるかどうかという問題があります。例えば、解釈の一つの基準として発生
したと考えられる「同人誌全体の25%以上がゲーム画像だとだめ」という原
則については、明らかに頒布条件を満たしていません(画像100%!)。

この「25%」制限については、自らコミックマーケット準備会等に確認を取
ったわけではないので詳しくは知りません。ただ、映像が中心であるゲームに
おいては、映像著作権は映像を基にした文章の著作権よりも制限が厳しいとい
うことから発生した原則であろうと推測できます。


表:ゲーム攻略の同人誌の販売もしくは頒布の可能性
  (ただし、自分の頭を使ったものに限る)

     営利  非営利
    (販売) (頒布)
ビデオ   ×    △(「研究用小部数」はOK?)
画像    ×    △(「25%」制限?)
文章    ×    ○


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それから、「営利目的」という言葉が数回出てきたので、この意味をはっきり
させておきたいと思います。コミックマーケットでは非営利目的で頒布するの
が建前ですが、中には営利目的のサークルも存在するようですし、実際問題と
して営利が発生することもあるようです(具体的な事例については筆者は未確
認)。その時、頒布物が著作権を侵害している場合には、営利は不正所得です。
ゲーム攻略の同人誌の場合は、非営利の場合は原作ゲームに対する著作権は許
容されていても、営利が発生するともはや許容されないと考えます。(ただし、
確定申告を必要としない、もしくは納税の対象とならない範囲内の営利ならば
許容されるという考え方もあります。)

それでは、営利目的でないが何らかの原因で営利が出た場合、もしくは、営利
目的だが売上が思わしくなく営利が出なかった場合の扱いはどうなるのでしょ
うか。この場合も営利が出たか出ないかで場合分けして、前者の場合は不正所
得、後者の場合は不正所得でないというのが筆者の考えですが、正確なところ
はどうなのかわかりません。

ちなみに、筆者の個人誌及び東京大学ゲーム研究会は営利目的ではありません。
頒価は基本的に「(製作費用+頒布費用)÷印刷部数、端数は切り捨て、場合
によってはそれ以下」という式で求めていますから、全部売れたとしても営利
は発生しません。ただし、営利が出るかどうかで著作権問題が発生するかどう
か、不正所得と見なされるかどうかを判断している以上、仮に著作者より要求
されたとしたら会計状況を報告する必要が生じるでしょう。


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著作権の問題は、ゲームという著作物を題材としてホームページ制作や同人誌
発行を行う以上、常に考えなければなりません。この文章は筆者がこれまでに
考えていたことを初めてまとめたものですが、今後も加筆・修正を繰り返して
発展させる必要があるでしょう。


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参考文献等

コミックマーケット52 カタログ
コミックマーケット53 カタログ
コミックマーケット54 カタログ (以上 コミックマーケット準備会発行)

ファイナルファンタジー7 低レベル攻略ガイド
ドラゴンクエスト6 低レベル攻略ガイド 改訂第2版    (以上 拙著)

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