パッションフルーツ(キングルビー)

 キングルビーは近年八重山地域で選別されたパッションフルーツである

 キングルビーが選出された背景は、石垣島で加工用パッションフルーツを栽培されていた方が、ブラジル産の黄色種の種子を知人に分けて貰い播種したところ、2鉢だけ果皮が輝くような濃紅色の果実が着果する樹が育ったことに由来する。
 石畑清武(2000)によると、「パッションフルーツとキイロトケイソウとの交雑種では、第1代の果皮は紅色である。形質は両親の中間である。果肉は黄橙色で、酸含量がやや多く、味はキイロトケイソウより美味しい。」とのことで、これらの多くはキングルビーに当てはまると思われる。

 キングルビーの特徴は何と言っても果皮が大きく( 150〜200g程度)、果皮が輝く美しい赤色をしていることである。その見映えの良さは沖縄で栽培されている品種の中では群を抜いて良い。
 ところが酸味が強く、香りが少ない、果皮が比較的薄いため出荷後の店持ちが悪い、という欠点もある。
 樹勢は強く、伸びが良いため結果枝の節間が広くなるので栽培のときには作付方法を検討した方が良いかもしれない。また本品種は自家受粉をしないため、異株受粉を行う必要がある。

 沖縄島での観察では、奄美系のパッションフルーツの花は午前中に開花するのに対して、キングルビーは午後1時〜2時の開花が多かったとの話を聞いたことがある。
 また果実着色期でも本品種は特徴をもち、他の品種は肥大が終わる頃からしか着色しないのに対し、本品種では開花・受粉の翌日程度から着色が始まる。

 キングルビーは選出後に品種登録を行おうとしたことがあり(実際には登録できず終い)、存在は知られるものの挿し木苗の入手は困難であった。
 またパッションフルーツの挿し木は、親樹の枝を剪定してから挿すまでの時間が長くなると、挿し木成功率が激減することなどから「キングルビーの挿し木は難しい」と云うイメージがキングルビー紹介当時にはあった。
 そのため、店頭に出回っていた果実の種子を播き、実生繁殖させる農家、愛好家が多く出た。
 しかしキングルビーの形質は遺伝的に安定したものではなかったらしく、実生繁殖で得られた果実の形質、品質は様々であった。
 現在でもキングルビーの形質、品質は千差万別で、果皮がツヤがある濃紅色で果実が比較的大きなものは全てキングルビーと呼ばれている。
 キングルビーが実生で2鉢だけ得られた果皮がツヤ有り濃紅色タイプの大玉パッションフルーツであることは前述したが、実は初めに得られた2つの鉢も形質がやや異なった。
 異なるポイントは幾つかあるが、まず果型。当初からキングルビーと呼ばれていたものは果型が球形に近く、それに対し卵型の果型を示すタイプの方は「南十字星」と呼ばれていた(現在では南十字星はキングルビーの変異として扱われている)。
 南十字星は果実重量が100g弱とされていたが、その後キングルビーと大差ない大きさで収穫されるものが多くなった。


キングルビーの果実


南十字星の果実

 またキングルビー、南十字星は花にも特徴がある。
 まず柱頭色。多くのパッションフルーツは柱頭は黄緑色だが、キングルビー、南十字星の柱頭は紫色である。ただし今日栽培されている実生選抜のキングルビー等の多くは柱頭が黄緑色である。
 次にトケイソウの特徴である糸状の副花冠(ひげ)の付け根の紫色の部分が、キングルビーでは薄紫色で南十字星では濃紫色となっている。これも実生選抜されたキングルビー等ではそうでないものも多い。
 ただ別系統の花粉を受粉させなければいけないキングルビーでは、この様な花の形態観察で系統を見極める参考となる。


キングルビーの花


南十字星の花

 
○文章中参考文献
 石畑清武.2000.熱帯・亜熱帯果樹生産の新技術(1) −パッションフルーツ −.農業および園芸 第75巻 第1号.

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