第1回 優しい片想い





恋愛において、愛される方と愛する方の分担が出来ちゃうのって、不思議。
どちらか、より相手の事を好きな方が、愛する方になるって事はわかる。
お互いが同じ位の気持ちだったら、そんな分担出来ないハズなのに。
付き合いが長くなっていったり、いろんな人と付き合っていく中で、なぜか私は愛する側に回る事が多い。
恋愛にはまりやすい人…そんな人っているはず。

そして私は、そんなタイプの筆頭なのかも知れないな〜!
いつも私は、追いかけているような気がするから。
追いかけて、そして待って。
う〜ん、パターン化してる自分が怖い〜!
そんな私が、片想いなんかしちゃったらどうなっちゃうか、お話しますね。

 

電話をかけるのも、私から。
遊びにいく誘いも、ほとんど私から。
会いたい、側にいたい、そう思うのは私だけ。
そして私は…彼しか見えなかった。

 

去年の夏、素敵な人と素敵な時間を過ごせました。
お相手の方は、私よりちょっと年下の、某プロスポーツ選手。

背がとても高く、筋肉質の割には着やせして見える彼は、スーツが良く似合う人でした。
私のまわりの男性は、余りスーツに縁のない人が多くて、並んで歩くのがちょっと嬉しかった。

そしてお酒のとても強い人でした。
よく仕事帰りに待ち合わせて、一緒に飲みに行きました。
お酒を飲むと、良く歌を歌ってくれました。
八重歯のある人なつこい笑顔で、
「かずぴょんの好きな歌は何?」
と聞いて、私が意地悪でイギリスのロックグループの名前を言うと、次に会った時に
「CD買って、車の中で練習したんだからね、笑わないでよね」
と言って、あやふやな英語で歌ってくれたりもしました。

彼はワガママを聞くのがとても上手で、さらに断り切れない優柔不断さもあって、私はいつも彼を困らせては楽しんでいました。

友達が多く、無邪気で気さくな彼は、私にはとても新鮮にうつりました。
飲みに行っても、よく彼の携帯が鳴りました。
そんな時、普通の人だったら、隠れて話すのかもしれないけど、
「今ねぇ、かずぴょんって人と一緒」
と堂々と言える、そんな素直さも好感が持てました。

ある時私が、猛烈に歯の痛みを感じ、歯医者に行った時の事。
親知らずが変な向きに生えてきて、あごの骨を圧迫し、抜かなくてはいけないと言われてしまい。
1時間に及ぶ、ほとんど手術と言ってもいいくらいの治療をした時。
数日お酒を止められた私の為に、一緒に禁酒までしてくれました。

 

そんな彼を、何よりも大事に思う気持ちが出てきても、不思議はないですよね。
特に口に出して伝えたわけではなかったけど、私の全身から「大好きフェロモン」は出まくっていたと思います。

そこで彼も私の事を…とくれば、もっと幸せな時間は長く続いたかもしれません。
でもあくまでも、彼は私に対して「異性の友達としての好意」しか、抱いていなかったんです。

車の助手席のドアを開けてくれる優しさも、食事に行って椅子を引いてくれる優しさも、私にだけ向けられた特別な優しさじゃなかった…

そこで冒頭に書いた、恋愛にはまりやすい私の悪癖がでてしまいました。
心の中の恋愛感情を上手に隠して、友達として上手に付き合っていければよかったんですが…
「私の事を好きになってもらえるように頑張るっ!」
なぁんて、思っちゃったりした訳です。

一般に、健気に好きな人の為に頑張る姿は、可愛いと思われるでしょう?
一昔前の少女漫画に出てくる主人公みたいに、ひたむきに頑張っちゃったりして。
漫画では、その想いが通じるものだけど、現実は…?
私も毎日、お弁当の差し入れしてました。彼と同じおかずのお弁当を持って出勤する私の姿を、同僚は微笑ましく見ていた事でしょう。
彼の欲しがっていた物の、プレゼント攻撃までしました。私とお揃いの携帯電話、お財布、システム手帳、etc…

 

でもそれって自己満足だったんじゃないかな?
それは、今だからそう思えるのかも知れないけど。

 

彼にしてみれば、女友達Aからのちょっと便利な好意としてしか、見えなかったんじゃないかな?
例えば、仲のいい男友達に、雨の日に車で駅までお迎えをおねだりするみたいに。
「電話1本で、濡れないで帰れてラッキー☆」
って思うみたいに、彼はきっと、
「昼食代浮いてラッキー☆欲しかった物もらえてラッキー☆」
って思ってたでしょうね。それを私は、
「少しはポイント稼げたかな、えへへ(はぁと)」
なぁんて思っていたのだから…恋する乙女の思い込みとは、すごいものです。
何となく、好きな男の為にオンライン操作する女子銀行員の心境がわかる気分です。

 

こうなると最悪で、そのうちに
「ここまでしてるんだから、いつか彼は振り向いてくれるハズ」
という願望が、
「こんなにしてるのに、どうして振り向いてくれないの?」
と、変わっていくのは必然です。尽くしているだけで満足する女性は、まずいないでしょう。少なくとも私は、そうでした。

 

ここからが最悪です。恋愛における私の一番の欠点
「何で私の気持ちをわかってくれないの?ラビリンス」
に突入してしまうのです。

 

相手に何かしてあげればあげるだけ、どんどん自分が辛くなっていきます。
そして彼も、そんな気持ちを察したのかもしれません。
手っ取り早く私が満足するであろう方法で、そして自分にとって一番簡単に出来るであろう方法で、私にお返しをしてくれました。
それはきっと、彼に出来る範囲の優しさだったのかも知れません。でも、かえって私には切なかった…

酔った勢いで泣きながら、ちゃんと私を見て?と言った事もありました。
だんだん見苦しくなっていく自分が辛かった。
手に入らない宝物なら、背中を向けた方が楽になれる、そう思いました。
でも彼の腕の中にいると、そのひとときの為に、もう少し頑張ってみよう、そう思ってしまうのです。

 

そしてそのひとときが、私にとって魅力がなくなってしまったのが、片想いに終止符を付けるきっかけになりました。
彼にとって私との時間は、罪悪感にすぎないと気付いたのです。
「私の事、嘘でもいいから好きって言って?今だけでいいから?」
私の髪を指で遊ばせる彼にそう言っても、答えは
「ごめんね…」

多分今まで生きてきた中で、2番目に泣いたのは、この時だったと思います。
でも今思うと、嘘でも好きだって言えなかった彼の誠実さで、私は諦めがついたのかも知れません。
頑張っても、どうしようもない事って、あるんだなぁって思いました。
別れを言うのは辛かったので、携帯の番号を変えました。
彼の優しさにもう一度触れたら、またラビリンスに戻ってしまうような気がして…

 

そしてしばらくして。
一度だけ彼の姿を見かけました。長身の彼は、遠くからでもひとめでわかりました。
彼は楽しそうに、男友達数人と歩いていました。
その姿を見て、胸が痛むどころか、ちょっと暖かい気分になれて。
彼の優しさは、今誰のものなのかなぁ〜なんて思ってみたりして。

今でもたまに、ネットの掲示板などで、彼の参加した試合の結果を見たりしています。
影ながら、応援してるからね!頑張ってね!
そしてもっともっと、幸せになってね!

2 Jun 2000

written by Kazupyon



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