第5回ありがとうが言えなくて・前編





今までは、私が好きになった男性とのつながりを通して、自分の恋愛観を語ってきましたが。
今回はちょっと違って、私を暖かい目で見てくれた、とある男性の話をしようと思います。

 

私が彼から学んだ事は
見守るだけの恋もあるんだって事。
そして人との付き合いのもろさ…
最後に想い出すのは、私の笑顔であって欲しかった。
彼から差し伸べられた手を払いのけたまま、
もう彼に会う事はなくなってしまいました。

 

彼は、小・中学を通じての同級生でした。
それほど仲が良かった訳でもありませんでした。同じクラスになった事はありませんでしたし、家も遠かったので、顔と名前が一致する程度の人でした。

そんな彼と親しくなったのは、私が中2の頃。
クラスが変わって、係や委員会を決める時。
一年を通じて一度は委員会に所属しなくてはいけなかったのですが、たまたま私は放送委員会に選ばれてしました。
中学生時代、水泳部に所属していた私は、1学期と2学期は出来るだけ委員会に参加したくなかったのですが。
どういういきさつかは忘れましたが、頼み込まれてしぶしぶと言った感じだった事は覚えています。

そして初めての委員会、委員長や副委員長などを決めている時。
たまたま副委員長になった先輩と、小学生時代仲が良かった為、2学年の副主任に選ばれてしまいました。
その時一緒に副主任をしたのが、彼でした。

いざ委員会に参加してみると、当番の日は昼食から掃除の時間にかけて、放送室にこもっていられる訳で。
掃除がサボれてラッキー☆と言うような感じで、熱心に活動していました。
私はアナウンスを主に担当し、彼はミキサー(と言うのでしょうか?)を主に手がけていました。
お昼の放送や、朝礼や学年集会時のセッティング等、活動はとても楽しく、私は夢中になっていました。下校の放送は、部活があってなかなか手伝えなかったのですが、その分お昼と行事の時は、毎回顔を出すようにしていました。

あまりに熱心に活動していたせいでしょうか。
放送という、ある種専門的な分野という事もあり、経験者が必要という事もあったのでしょう。
結局私は、卒業までの間、ずっと放送委員会に入り続ける事になります。
当然彼も、ずっと委員会を続け、3年生になった時には、お互い副委員長という立場になっていました。

お昼の放送の間、彼と放送室でいろいろなおしゃべりをしました。進路の事や好きな人の話、友達の悪口なんかも。前に書いた、先生のファンである事は有名でしたので、そんな事でからかわれたりもしました。
そして写真に興味があるので、写真部のある学校に行きたいと、私に打ち明けてくれました。
私は高校も水泳を続けたかったので、プールのある学校に行きたいと言うと、
「お前は本当は、運動部向けじゃないよ。水泳のセンスない!」
なんてちょっとキツイ事を言われたりして、かなりへこんだりしていました。
当時の彼は私にとって、言いにくい事でもキッパリと言い放ってしまうところから、ちょっと付き合いにくいものを感じていましたが、それでも本音で話し合える貴重な男友達でもありました。

中学生くらいになると、心にも体にも変化が出てきて、異性に対する興味なんかも沸いてきますが。
そんな人には言えないような話も、彼とだけはしていました。
男の子が「むける」というのは、日焼けして皮がむけるように皮をはがす事だと信じ込んでいた私に、図解で説明してくれたのも彼でした(笑)
逆に、女の子は生理じゃなくても毎日ナプキンをしているの?と聞かれ、大笑いした事も覚えています(笑)

 

卒業式の時、先生と会えなくなるので泣きじゃくる私に、
「誰ももらってくれる人いないから、もらってよ」
と言って、第2ボタンを投げつけてきました。
正直この時、彼の私に対する好意に何となく気付いていました。でも特に告白された訳でもないし、私にとっては友人でしかなかったため、そのまま私の中学時代は幕を下ろしました。

 

彼は地元の商業高校に進学し、念願の写真部に入ったと聞きました。
私はプールのない学校でしたが、それでも何とか水泳部に入り、バイトも始め、多忙な日々を送っていました。
部活とスイミングとバイトでへとへとになっていた夏休み、彼から電話をもらいました。
「文化祭で写真を出すんだけど、モデルになってくれない?」
商業高校なら女の子も多いだろうし、私も毎日忙しいし、一旦は断ったのですが、
「学校でこんな事気軽に頼める女の子いなくてさ、お前なら多少無理も言えるし、見栄えもするし、頼むよ〜!」
なぁんて、ちょっぴりおだてられて、引き受けてしまったのでした。

撮影のテーマは「過ぎ行く夏」との事で、近所の土手で1日がかりで撮りました。
最近雑誌の撮影を経験しましたし、仕事でも取材を何度か受けたりしていますが。この時は本当に緊張もなく、どんな写真になるのか楽しみで、ドキドキしていました。
撮影しながら、中学時代の思い出話などをしました。私がすっかり忘れていたような出来事を、彼はしっかり覚えていて、ずっと懐かしい話で盛り上がっていました。おかげでカメラを意識せず、素の自分でいられました。

出来あがりの写真は、本当に自分かな?と思うような出来で、とても驚きました。土手を振り返りながら、寂しそうな、懐かしそうな表情を浮かべた私の姿は、友達と撮るスナップとは別人で、いつも見ている自分の顔じゃないみたいでした。
そんな写真に、彼も満足してくれたらしく、
「やっぱモデルがいいと、出来あがりも違うわね〜!」
とちゃかすと、
「え?俺の腕じゃないの?」
なんてふざけ合ったりしてました。ちゃっかり
「来年はヌード撮らせてね」
と付け加える事も忘れずに。(もちろん断りましたが)
その写真は、今でも大事に保管してありますが、誰にも見せた事はありません。今回この話を書くにあたって、Web上で公開しようかとも思ったのですが、大事な思い出としてしまっておきたいと思っています。

 

男と女の友情って成り立つのかな?
少なくとも私にとっては、成り立っていたんだけれど
友情が崩れるのが怖くて言えなかったのかも。
それとも彼の中ではもう昇華されていたのかな?
今となってはそれを確かめる術もなく
彼の心を苦しめた事のないよう願うだけですが。  

 

忘れた頃に、どちらからともなく電話をしていましたが。
高校を卒業する頃には、すっかり連絡も途絶えてしまいました。
そして24歳の時、中学の同窓会で、彼と再会する事になります。
その同窓会は通常のクラス単位のものではなく、同窓会名簿の完成を祝して同学年全員が招待された盛大なものでした。

私の恋愛経験を語る上で、24歳と言うのは、はずすことの出来ない年のようです(笑)第4回でも書きましたが、当時私は21歳年上の男性との不倫に破れ、仕事も辞め家に引きこもっていました。
そして気分転換になれば、と出かけてみたのです。

 

そして社会人になった彼と、再会を果たしますが。
彼には思いがけない変化がありました。
そしてそれに、私はまったく気付く事が出来ませんでした。
このお話の続きは、後編で… 

 

7 Jul 2000

written by Kazupyon



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