第8回 最後の恋・前編





ユー・ガット・メールという映画があります。
ただメールをやり取りしているだけの顔も知らない相手と、いつか結ばれてしまう…
それはとっても運命的な、ロマンティックな出会いかもしれない。
だけど。
映画ではすぐ近所だったふたりですが、インターネットと言えば世界レベル。
モニターの向こう側は、もしかしたら地球の裏側かもしれない…
そんな相手に恋心を抱いてしまったらどうなるか?
そんなお話を、今回はしようかなと思います。

かつて私が、インターネットもパソコンもまだ縁のない生活をしていた頃。
確かに巷では、出会い系サイトとかメル友とか、そんな言葉をよく聞きました。
今から思うと、それはものすごい偏見だったのですが。
結婚相手の見つからない、モテない人がお見合いをするような…そんなサエないイメージが、当時の私の中にはありました。
こんな事書くと、すごく傲慢に聞こえるかも知れないけど。
「そんなのに頼らなくたって、相手には困らないもんね〜!」
みたいな気持ちが私の中にあって…本当に、タカビーだと思われたら困るんだけど…最初のイメージって、けっこう根強いものですよね(汗)
だから、絶対自分には縁のない話だと思っていたし、そういう出会い方をしたなんて話を聞くと、モテない同士が傷のなめ合いみたいな…うぅぅ、けっこう危険な発言(汗)
でも、そんな印象を持っていたのが本音ではありました。


私がそう思っていたのは、10年ほど前の「伝言ダイヤル」「ダイヤルQ2」なんかのブームの影響もあるのかもしれません。
当時一人暮らしを始めたばかりの私は(うっ!年齢バレの危険あり…まぁいいか…)自分専用の回線が出来た嬉しさに、毎日長電話友達と延々話し込んでいました(笑)

伝言ダイヤルも、出会いとか援助交際とかってイメージありますが、サークルというのがあったのはご存知でしょうか?
例えば「0840(オハヨー)」とか「5963(ゴクローサン)」なんて、誰でも思い付くような語呂を暗証番号にして、そこに毎日留守番電話のように伝言を残していくのです。
そしてそれを聞いた人がまた、伝言を返していく、というもので…今思うと、何てかったるい事をしていたんだろうとか思いますが(笑)
私が参加していたのは、東京伝言ダイヤルセンターの「9683(クロワッサン)」というサークルで、10名前後の中規模なサークルでした。
その頃から平日休みの仕事をしていた私です。友人と休みが合わず、ひとりで出かける気にもならず、でも伝言を聞けばそこには必ず誰かがいて。
初めてのひとり暮らしの寂しさを、そんな遊びで紛らわせていたのかもしれませんね、今思うと。

そして当時もオフ会なんかやったりしてて、カップルになっちゃう人達もいたりして。
でもやっぱり世間では、援助交際とか話題になってて、「伝言で知り合った」なんて言いにくい雰囲気とかあって。
実際私も、伝言が縁で知り合った人と、ちょっとだけ付き合ったりした事があるんだけど。
何となく「いかがわしい雰囲気」って確かにあって。
多分そういう悪いイメージみたいなものを、ネット恋愛に対してもあてはめていたんじゃないかなーと、自分なりに分析したりしています。


私がインターネットの世界に足を踏み入れたのは、3年ほど前の事。
携帯電話のiモードを利用し始めたのがきっかけでした。
いろいろな情報が、携帯電話だけで得られるので、私は暇さえあればいろいろなサイトを見ていました。
某ゲームサイトで、チャットを通じて全国にお友達が出来ました。
そして、携帯電話でもホームページが作れる事を知り、私は夢中になって毎日テンキーを叩いていました(笑)
そしてセガ・ドリームキャストを経て、パソコンを購入、一気にインターネットに夢中になって行く訳ですが。
私のネット歴は、結婚へ向かう道でも、あったりするのでした。


ドリームキャストを購入した日は、今でも覚えています。それは、前出の伝言サークルで知り合った友人の奥さんのお誕生日だったからです。
若くして結婚した友人は、初めての子供にも恵まれて幸せそうでした。
結婚して初めての奥様の誕生日に、洋服を買ってあげたいと思った彼は、体型の似ている私に見立てをして欲しいと電話をしてきたのでした。
久し振りの電話だったので、お互い近況などを話していたのですが、当時はやっていたゲーム「シーマン」の話になった時に、友人がこんな事を言いました。
「それ、池袋のサ○ラヤで平積みしてあったよ?」
当時私は、職場の近所に引っ越したばかりで、ゲーム屋さんがどこにあるかもよく知らない状況でした。
それにシーマンはどこのゲーム屋さんでも売り切れていて、なかなか買えないという頃だったのです。
じゃぁ池袋で待ち合わせて、シーマンと洋服を買いに行こうという事になり、友人と買い物に行ったのでした。

待ち合わせは喫茶店でした。律儀に時間前に来ていた彼を見つけ、さてどこに買い物に行こうかと相談を始めました。
そして何となく昔話に花が咲いて、伝言ダイヤルの話になった時、彼がこんな事を言いました。
「最近さぁ、伝言はもうやってないんだ。その代わり今はチャットにハマってるよ」
チャットは携帯でしか、やった事はありませんでした。パソコン持ってるの?と聞く私に、彼はいろいろと教えてくれたのです。
「ドリームキャストでも、チャットが出来るんだよ。今日買うんだったら、一緒にキーボードも買ってやってみたら?」
そして私は、彼に教えてもらった通りにドリームキャストの本体とキーボード、そして念願のシーマンとビジュアルメモリーを買いました。
夜11時になったら携帯に電話して、設定とか繋げ方を教えてもらう約束をして、家路についたのです。


そして夜11時ちょうど。
時間ぴったりにコールしたのを、よっぽど楽しみにしてたんだねとからかわれながら、私は本格的にインターネットへの扉を開いたのです。
まさかその扉の向こう側に、自分の人生を左右するほどの出会いがあるなんて。
私は思ってもいませんでした。

26 Aug 2001

written by Kazupyon



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