第11回 私は新米コーダ





あらかじめお断りしておきますが、これはあくまでも私自身が手話を学んでいく上で感じた事を綴った「エッセイ」であります。
ですから、手話のエキスパートの方がコレを読んだら、間違っている点や勘違いしている点がたくさん出てくると思います。むしろツッコミどころ満載でしょう。

具体的に言えば、文法の話に触れていますので、シスコムとか日本手話とか日本語対応手話とか言われちゃうと思うんです。正直言って、私には今自分が使っている手話がどれに属しているのかわかっていません。それぞれがどう違うのかということすらわかっていません。
いずれその事にも触れていく事になりますけど…
強く言いたいのは、手話を勉強している人への参考書を作っている訳ではありません。間違っている事たくさんで、当たり前です。私はまだ新米コーダで、勉強中の身ですから。

繰り返しますが、これは「手話を学んでいる私が、現時点で思っている事」を綴っています。わたしの理解度に合わせて進められていく、現在進行形のエッセイです。3ヶ月程度だとこんな程度の知識なんだな、と生温かく見守っていただけると幸いです。


今回は手話というものについて、何も知らない私がまずイメージした事と、学んでいく上で考えた事を書こうと思います。

「私の名前はかずぴょんです。」という文章があったとします。

もし英語でこれを表すとしたら。
「My name is Kazupyon.」になりますよね。わざわざ書く事でもないと思いますけど(笑)

「私の」にあたる言葉が「my」
「名前」にあたる言葉が「name」
「〜は〜です」にあたる言葉が「is」
「かずぴょん」であたる言葉が「Kazupyon」
…と、ひとつひとつに対応していく言葉がありますよね。

実際は、主語や述語の並び方が文法として違いますが。SVOCとか中学校で習った気もしますね〜!
「対応している言葉が存在する」というのが基本的にあると思います。
実際は「英語にはない日本語表現」またはその逆もあるんでしょうが、まぁ基本的にっていう感じでとらえてください。

では手話で「私の名前はかずぴょんです。」って表現したい場合はどうでしょう。

当然こう思うわけです。

「私」にあたる表現は何?
「の」にあたる表現は何?
「名前」にあたる表現は何?
「は」にあたる表現は何?
「かずぴょん」にあたる表現は何?
「です」にあたる表現は何?

手話をひとつの言語として考えた場合、文法というものが存在していて。
それは日本語と英語で違うのと同じように、音声言語とは異なるものかもしれないけれども。
「ひとつひとつの言葉に対応した手話表現があって、それを手話という言語の文法で表現する」
…ものだと思っていたわけです。ちょっと堅苦しい話ですね、すいません。

ところがフタを開けてみると、手話ではこうなるんです。
「私・名前・かずぴょん・です。」

え?「の」はどこに行っちゃったの?


例えば日本語なら「私」という1人称に「の」という格助詞がついて、連体修飾語になる訳ですが。
例えば英語なら「my」というのは1人称所有格で、「私の」なる訳ですけれども。
手話表現で「私の」あるいは「の」という所有を示す表現はないみたいです。
とか言っちゃって、もしあったらゴメンナサイ(笑)少なくとも今の時点で私は知らないです。

とまぁ、こういう事を思っていた訳ですが。


手話サークルに入って気が付きました。
「手話って、勉強じゃないんだ。コミュニケーションなんだ…」

要は「私」の「名前」が「かずぴょん」である事が、相手に伝わればいい事であって。
「私の名前はかずぴょんです。」であろうと「私はかずぴょんという名前です」であろうと「私はかずぴょんという名前を持っている」であろうと、どれでもいいんです。
格助詞だとか所有格だとか、そんな事はどうでもいい訳なんです。

手話を学んでいく上で、まるで学校の授業で英語を学んでいくような、つまり「知識としての手話」を覚えても意味がないんだって事がわかりました。


そして英語を勉強するやり方で覚えようとしてはいけない事もわかりました。

挨拶を覚えた時の話ですが。
「おはよう」って挨拶があります。朝会った相手に言う挨拶ですよね。
言うまでもなく英語では「Good morning.」
手話では「朝・挨拶」になります。

「こんばんは」は「夜・挨拶」ですし「こんにちは」は「昼・挨拶」です。
ちなみに「はじめまして」は「初めて・会う」です。


これはこれで、手話独特の文法だと思うんですけれども…
私の理解している範囲での、言ってみれば「英語を勉強した時に覚えた文法」で考えるのが、まず間違っているんですよね(笑)
そういうコツ(?)をつかむと言うか、それになじんでいくのに少し「あれ?」って思った気がします。


こんな事がありました。


母の友人が風邪をひいた時に、病院に行って。
今って、医薬分業っていうのかなー?昔と違って、病院でお薬くれなくなったじゃないですか。
処方箋をもらって、病院の外の薬局でお薬をもらう。それって面倒くさいよねぇ〜!という雑談をしていた時のお話です。

「処方箋」という表現が、私には全然分かりませんでした。
その人は「薬・紙」と表現していました。
私はその人に「薬・紙・何?わからない」と聞きました。
その人はもう一度、ゆっくりと表現してくれました。「病院・先生・もらう・薬・紙」…

病院で先生にもらう薬の紙…そう言われてとりあえずの意味はわかって「あぁ〜なるほど!」と思ったんですけど、その表現を見た時に「処方箋」という言葉と結びつきませんでした。

私の中で「処方箋」という言葉は名詞だったので、当然それに対応する手話表現があると思っていたのです。だからと言って英語で何て言うのかまでは知りませんけど(笑)

英語を日本語に翻訳する時に「意訳」ってありますよね。それと同じように「薬・紙」を「薬の紙」と訳さずに「処方箋」と訳す想像力が、読み取る側に必要なんだなぁ〜って思いました。


英語の文法に当てはめちゃいけないとか書きつつ、英語に例えてばかりですけど。


手話を始めたばかりなので、当たり前ですがボキャブラリーも貧困で。
それでも何とか、自分の気持ちを伝えようと頑張っています。
言葉では表現しきれない分、自然に表情も豊かになりますね。
これからも頑張って手話を学んでいこうと思っています。

2 Aug 2004

written by Kazupyon



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