
父方の死んだ爺さんは国鉄の技術者でした。機関車の部品の木型を作るのが仕事だったような話を聞いたことがあります。生前「ネジの曲線を作る計算が難しくてのぉ」といっていたのを覚えています。
その爺さんが婆さんをしかりつけていたのを覚えています。汲み取り便所のふたをするかしないかという話でした。
婆「なんで便器のふたをせんのね」
爺「ふたしたら臭かろうが」
婆「ふたをせんけ臭いんやろうもん」
爺「風がとおらんやないか」
婆「そんなもん煙突からだしよるんやろうもん」(汲み取り式アーキテクチャーでは屋根の位置まで煙突で引っ張り、排気口に特殊な加工をすることで匂いを強制排気していたのだ!)
爺「馬鹿かっ。出口で吸うても入り口をせいたら空気が流れんじゃろうが。そうやろうが」(と、私を見る)
なにしろ明治生まれの九州人ということで女性にも遠慮が無い点はご勘弁ください。とにかく、いきなり話を振られた私は即座に首を縦に振りました。小学校低学年とはいえ、「初歩のラジオ」などをむさぼっていた私には入り口を閉じたら空気が流れないなどという話はあたりまえだと思えたのです。親父が小さかったころに薪でたたいて叱ったという祖父が怖かったからではありません。
さて、ちょいとこちらを見てもらいましょう。星野金属工業のケースです。発表されたときにあまりのかっこよさに買いたくなりました。が、頭を冷やして情報をあつめると、このケース、フロントパネルから空気を吸い込むことができません。普通、フロントから吸い込んだ空気が筐体内を流れて後部から排気されるというのが冷却の定番です。ところが、このケースにはフロントの吸気口がありません。空気の出入り口は電源の排気口(多分排気口でしょう、今のATX電源はそうなっているはずです)とシャーシ後部の排気口しかありません。吸気口はどこに?実は、吸気口と言えるものはありません。このケースをショップで観察した人は知っていることですが、とうてい、二つの排気口に吊り合う吸気口はないのです。WEBサイトにはフロントカバー下部から吸気するようなことが書いてありましたが、幅1mmくらいの隙間があるだけです。こんなもの、電源と背面ファンの二つとつりあいが取れるわけありません。
これだけでも4万円の「高級」ケースとしてはそうとう首を傾げざるをえない製品ですが、恐るべきことにこのケース、フロントファンをつけることができるのです。スケルトンマスクの写真がサイトにありますので良くわかりますね。そしてこのフロントファン、例の前面下部の隙間との間に密閉ダクトを形成していないので横から空気がどんどん回り込み、結局暖かい空気をかき回して、一層暖めているだけです。まぁ、Creative の 3D Blaster ( Voodoo Banshee )のように、ファンレスでめちゃめちゃ熱くなるカードには少しはききますが、やはり吸気を確保できないフロントファンは何か間違っています。
一体何を考えているのやら。これでアパレル産業のように見た目だけで消費者をあおって荒稼ぎする姿勢ならまだ冷笑できますが、のうのうと「理論」などと書いてあるのをみると、ちょっと鼻白んでしまいます。
入り口を閉じてはいくら出口で引っ張っても無駄でしょうに。スリットを入れるなど、デザインを壊さずに吸気を行う手はあったはず。死んだ爺さんに一言コメントを求めたいところです。