最近の話題 200304月26日

1.AMD Opteron正式発表

  ここ2年ほど,ストリップのように少しづつベールを剥いで露出して来たOpteronで ,ここでも2002年5月25日の話題などで何度か取り上げてきましたが,遂に2003年4月22日に正式発表されました。製品として発表されたのは2プロセサ用の1.4GHz,1.6GHz,1.8GHzクロックの3種で,1000個単位のお値段は$283,$690,$794となっています。8CPUまで接続できる800シリーズがこの四半期の内に出荷される予定で,1CPU限定の100シリーズは3Qとなっています。

  この発表で重要なのは,AMDの発表の中でIBMがOpteronベースのサーバを出すと表明したとあることと,MicrosoftがWindows Server 2003とXPのベータ版を今年半ばに出すと言う点です。特にMicrosoftがサポートしたということは,IntelがIA-32の64bit拡張をやるとしたらAMDに合わせる以外の選択がほぼ無くなったということを意味していると思います。IBMのサポートは,実績重視で新参のAMDが入り込みにくい企業向けのサーバ分野にAMDが入り込む上で強力な援軍となり得ます。

  まず,性能ですが,AMDにサイトにサーバ向けのベンチマーク結果を集めたページがあります。これによると,1.8GHzチップでSPECint2000のピーク値は1170,SPECfp2000のピーク値は1219で,何れもXeonの3.06GHzを若干上回っています。但し,SPEC協会のサイトには載っておらず,まだ,正式とはいえません。

  正式発表に伴いOpteronのデータシートErrataが公開されました。これによると電源電圧は1.55Vで最大電流は52A,TDPは84.7Wとなっています。パッケージは910ピンのマイクロPGAで相当ピン数の多いチップです。

  正式発表に伴い,色々なサイトがOpteronの解説とベンチマークを公表しています。AMD ZoneのページAce's HardwareのページTom's Hardwareのページなどが詳しく紹介しているので,ベンチマークに興味のある方は,これらのサイトを見て下さい。サイトの情報を総合すると,半導体プロセスは130nmのSOI,1MB 16wayのL2$を搭載してチップサイズは193m2です。チップ写真を見ると,チップの半分程度がこのキャッシュで占められています。

2.NECがtpc-cでトップ性能を達成…と思ったらHPがその上を

  2003年4月23日にNECはノンクラスタのtpc-c性能でトップの514,034を登録し,2001年8月28日以来トップの座にあった富士通の記録を塗り替えました。サーバはExpress/5800 1320XCですが,今回は1.5GHz 6MBキャッシュのMadisonプロセサ 32個を搭載しています。メモリは512GBでディスクは15Krpm 36GBの1150本を始め合計41.4TBを使っています。Intelも製品としては未発表のチップですから,今すぐに販売するわけは無く,Availabilityは10月22日からになっています。

  コストは,初期の購入価格が約$6M,3年間のメンテが$1.25Mのところを値引きして$5.9Mとなり,結果としてtpmCあたりのコストは$11.5となっています。

  と書いたら翌日の4月24日にHPがSuperdomeに同じ1.5GHz 6MBキャッシュのMadisonを64CPU搭載して658,277を登録してNECの天下は一日で終わりました。HPのシステムは512GBのメモリと15Krpmの18.2GBのUltra320 wideのディスク 1792本を始めとして合計35TBのディスクを使い,購入価格が$9M強,3年のメンテが$1.2MのとことをLarge System Discountでシステム価格として$6.45Mとしています。CPU数はNECの2倍ですが,価格は1割強のアップです。性能は28%アップで,結果としてNECを 越える$9.8/tpmCとなっています。AvailabilityはNECの一日遅れの10月23日となっており,Itaniumの3代目のMadisonのリリースはこのあたりでしょうか。

  どちらのシステムもメインメモリは512GBで,こういうシステムでは32bit 4GBのメモリ空間ではどうにもなりません。

3.SonyのワンチップPS2

  2004年4月21日にSonyは記者会見で,65nm世代に向けて,今後3年間に2000億円を半導体設備に投資すると発表しました。2月8日の話題で紹介したプレステ3やディジタル家電などを見込んだ戦略と考えられますが,まずは90nmプロセスでプレステ2のEmotion EngineとGraphic Synthesizerをワンチップにする計画を発表しました。PC Watchにプレステ2のLSIのロードマップの説明スライドが載っています。ここの図にあるように主要部はワンチップですが,まだ,まわりにチップが幾つもあるのでPS2全体がワンチップというわけではありません。

  発表スライドによると,当初は0.25umプロセスで製造され,EEが240mm2,GSが279mm2とコンシューマ製品としては破格に大きいチップであったのですが,現在のEEは4世代目で0.15umプロセスで73mm2,GSは6世代目で0.13umプロセスで同じ73mm2となっています。それを今度は90nmプロセスでEE+GSで4MBのエンベッデッドDRAMを含んで86m2になるということです。トランジスタ数は53.5M,クロックは294.912MHzで消費電力は8Wだそうです。

大量に生産されているので,当然,チップサイズの縮小はやっているとは思っていましたが,これほど頻繁にコストダウンのための縮小をやっているとは知りませんでした。

  また,東芝もプレステ3のセルコンピュータなどを睨んで大分工場に2000億円を投資するとのことです。セルは半導体プロセスとしては65nmでSOIとDRAM混載がプロセスの鍵と言ったという話が報道されています。

  なお,プレステ3のセルコンピュータは2007年になるという噂が流れていますが,根拠ははっきりしません。上記の投資から見ると,遅くとも2006年にはセルでラインが一杯になるという目論見で投資しているように思えるのですが…

4.Intelの話題 三題 (x86エミュレータ他)

  このところ悪乗りの感もありますが,Intelに関して,また三題噺です。

  その一は,3GHzクロック 800MHz FSBのチップが不具合が見つかったとのことで発表とほぼ同時に出荷停止になったはなしは先週の話題で紹介しましたが,BIOSのパッチで回避できるということで出荷開始となり,また,BIOSのパッチもダウンロード可能となりました。

  私の推測ですが,バス廻りの設計のバグで特定の条件でハングしたり,データ化けが発生するというのは良く経験するバグで,この辺の問題ではないかと思われます。BIOSで直したというのは,設定を変えてバッファをフルになるまで使わないとか,要求の処理順序の最適化でバグが出る 頑張った処理はやらないようにするとかのような変更をしたものと思われます。結果として多少性能が下がっているはずで,誰かパッチの有り無しの性能差を測ってくれると面白いのですが…

  第二の話題は,2003年4月20日にIntelはプロセサの値下げを発表しました。上記の3.0GHz 800MHz FSBのチップが$417なのに,3.06GHz FSB 533MHzのチップが$589ではバランスが取れないので,これを$401に下げました。また,2.5GHzのMobile Pentium 4が$562で先週発表されたので,2.4GHzの製品を$562から$348,また,2.2GHzは$348から$241と大幅に値下げしました。

  第三の話題は,Itanium用のx86エミュレータを3月24日に発表したことです。ご存知のようにItaniumはx86命令をエミュレートするハードを持っていますが,あまりに性能が低く,真面目に使う人が居ない状況です。AMDのOpteronはx86の32bitコードを効率良く実行するのに加えて64bitも出来るのに較べてItaniumが見劣りするのは明らかで,これを多少なりとも埋めようという努力と思われます。

  発表によると1.5GHznのXeon相当のパフォーマンスが出ると書いてあったのをみたのですが,Intelのプレスリリースは勿論,CNETなどのニュースからも削除されてしまっています。あれは何なんだったのでしょう。TransmetaはVLIWでx86のエミュレーションをやっている訳で,同社を買収してCode Morphingのテクノロジを手に入れればItaniumで効率的にx86をエミュレートするのは十分可能だと思います。

5.Yamhillはやはり存在した。

  Prescottの写真を分析しているChip Architectが解析Part-IIでPrescottチップには既に64bit拡張が仕込まれ居ると結論付けています。IDF Springで公開された(クロックスキューの低減を示すブルーの)写真をNorthwoodと見較べるとTLBなどのサイズが大きくなっており,Virtual Addressが拡張されたと考えるのが妥当という説は説得力があります。また,Integer Engineが2系統あるように見えるのは,64bit演算を上下の32bitづつに分けていると考えています。ということでかなり信頼のおける解析です。

  拡大するとボケボケの写真ですが,Northwoodの写真と対比しながら,知識のある人が見ると色々と分かるものですね。スパイ衛星の写真の解析もこんな感じなのでしょうね。

  Intelが将来これを生かすかどうかはItaniumが上手く行くかどうか,AMD64にこれで対抗する必要が出るかなどの将来の競合状況によるわけですが,少なくとも必要になれば直ぐに出せるという保険は抜かりなく掛けているようです。