最近の話題 2004年4月10日

1.メインフレーム40周年を祝う

  IBMがS/360メインフレームを発表したのが1964年4月7日で,今年はメインフレーム40周年にあたります。Dr. Gene Amdahlのアーキテクチャに基づき,$5B(現在の価値では$30B,3.2兆円)という驚異的な開発費を掛けて誕生した最初のS/360は,当時としては驚異的は8MBのメモリを持ち,月額レンタルが$2700〜$11500であったそうです。

  最近では,メインフレームは過去の遺物,恐竜だといわれたのですが,IBMはそれを逆手にとって,ティラノサウルスレックス(T-Rex)というコードネームを付けてz900メインフレームを開発しました。このT-Rexは強力で,IDCの調査によると,2002年には2300システム,$4Bを売上げ,2003年には2700システム,$4.3Bと売上げを伸ばしています。これは$0.5M以上のサーバの売上げ全体の1/3にあたるということで,PCサーバの伸びには遥かに及びませんが,絶滅に向かっているという感じではありません。

  1個のプロセサチップの処理能力という点ではIBMのメインフレームチップも,UnixサーバのRISCチップも,IAサーバのXeonやOpteronチップも大差なく,処理によってはIAサーバはパソコンの方が速いケースが多いくらいです。しかし,サーバを単体CPUの処理能力で選ぶのは,車を最高時速だけで選ぶようなもので,幾らスピードが速いといってもスポーツカーで修学旅行の団体は運べませんし,10トンの貨物も運べません。やはりバスやトラックが必要なように,コンピュータもそれ向きに作られた装置が必要です。

  ハイエンドサーバで重要なのは,マルチプロセサで高い総合性能を提供することもありますが,難しいのは,ダウンしないことと故障でダウンしても短時間で復旧できることです。後者は性能指標などでは見えないのですが,これらを実現するには経験の蓄積と,それに基づく誤り検出,訂正ハードウェアやソフトウェアでのリカバリなどが必要で,お金もかかります。

  メインフレームを買う人は,ダウンによる業務中断のロスに伴うコストが膨大なので,このような安定度を買っている人で,Webホスティングのデータセンターのように処理当たりの単価が利益に直結し,多少のダウンは謝れば済むという人とは180度行動原理が違います。ということで,私は,バスやトラックが必要なように,メインフレームやハイエンドUnixサーバも必要な場所があり,急速に絶滅することは無いと思います。ということで,40年を過ぎてメインフレーム健在というのは当然とは言いながら,40歳の誕生日おめでとうを言いたいと思います。

2.IDF東京で4種のモバイルプロセサを発表

  2004年4月7日にIntelは4種のモバイルプロセサを発表しました。Low Voltageで1.3GHzクロック,TDP 12W,Ultra Low Voltageで1.1GHzクロック,7WのPentium M(aka. Banias),1.4GHz,24.5WのPentium 4系のCeleron Mプロセサ,900MHzクロック,7WのUltra Low VoltageのCeleron Mプロセサです。

  Pentium M系は1MBのキャッシュを内蔵し,Celeron M系は512KBのキャッシュで,マイクロアーキも違うので,単純にクロックが性能指標にはなりません。

  1000個ロットのお値段は,1.3GHzのLV P-Mが$284,1.1GHzのULV P-Mが$262,1.4GHz C-Mが$134,900MHzのULV C-Mが$161となっています。この価格付けが妥当かどうかは,電力と性能のトレードオフをどう考えるかに大きく依存するので,百人百様の意見があると思います。

3.SunがMillennium (UltraSPARC 5)をキャンセル

  4月4日のThe Inquirerが,SunがUS-5をキャンセルという読者の投書を報道しています。それによると,US-5は最近テープアウトされたが,その直後に開発をキャンセルしたと述べています。また,下記の3300人のレイオフの中にUS-5の開発チームも含まれていると噂もあります。

  McNealy会長が「悪の帝国」と呼んだMicrosoftと手を結び,総従業員数の9%にあたる3300人の首を切り,研究開発を含む経費全体を$5.2Bから$4.7Bに約1割削減となると,US-5キャンセル も当然,そして,これを日(Sun)が没する前兆と見る見方もあります。

  筆者も別の筋から,US-5は最近テープアウトしたという噂を聞いており,上記の投書はUS-5のキャンセル,レイオフという状況で頭に来たエンジニアが書いたと いうのはあり得る話で,信憑性があるのではないかと思っています。と4月9日の夜に書いたのですが…

  4月10日の朝のニュースをチェックすると,CNETがSunがMillenniumとGeminiをキャンセルしたというニュースを報道していました。Sunの広報が認めたということですから,間違いありません。

  Millenniumは1996年頃から開始されたプロジェクトで,当初はその名の通り2000年に出荷という目標だったのですが,ズルズルと遅れ,最近では2005年出荷という感じになっていました。これほど時間が掛かってしまうと,最初の設計時の目論見が時代に合わなくなります。Intelの初代ItaniumのMercedもこの例で,一応,製品化したものの性能が悪く殆ど売れませんでした。Millenniumもこういう感じになってしまったのでは無いでしょうか。

  Geminiは今年のISSCCで発表があり2月28日の話題で紹介していますが,US-2コアを2個1チップに集積したものです。ブレード用のCPUとしては良いと思うのですが,何故,キャンセルすることになったのか分かりません。

  これにより,Sunの次期プロセサは2005年はUS-4+で,それに続いて2006年から2007年にかけて8コアx4スレッドのNiagaraとRockと呼ばれる次期ハイエンドプロセサが登場するというロードマップになります。Niagaraと,この時点ではRockという名前はありませんが,US-3の30倍の性能というプロセサは2003年3月8日の話題で紹介しています。

  また,レイオフに関しては,MillenniumとGeminiのエンジニアの多数はSunに残ると述べており,裏を返せば,クビになるエンジニアも相当居そうです。

4.IA32eモードの性能

  Intel Xeonの最初の64bit拡張チップであるNoconaですが,64bit拡張モードの性能は酷いという噂があります。64bit整数になると,32bit整数に較べて一定のキャッシュ内に入るデータの個数は半分になりキャッシュのヒット率が下がります。また,メモリとのデータ転送量も2倍になり時間がかかります。ということで,追加されたレジスタなどを使わないで単純に64bitモード用にコンパイルすると若干性能が下がるのは当然ですが,それよりも大きく性能低下しているとすると問題です。

  3月27日版の話題で64ibt整数演算は2サイクルかかるのではないかとの推測を述べましたが,これが正しいとすると,それだけでSPECintでは10%以上性能が下がる 恐れがあり,このような影響がでている可能性もあります。いずれにしても,NoconaのIA32eモードでのSPECint値が正式登録されるのが待ち遠しいです。

  また,実クロックが低いOpteronは演算が2サイクルになるようなことは無い筈で,64bitモードではAMDとIntelの性能差は更に広がっているのかも知れません。

  なお,IA32eモードでも浮動小数点データのサイズは同じなので,SPECfpの方は64bit拡張を使っても影響は軽微だと思います。