5576-C01
P/N : 66G8362
FRU P/N: 66G8362
EC No. D43557D
Manufactured for IBM Japan Ltd.
Tokyo Japan
Made in USA

不思議な鍵盤です。裏を見ると,IBM Canada Ltd. Registered Userと書いてありつつ,上記のように,Made in USAとあります。上の表記を見ていると,IBM Corp.の子会社としての日本IBMが,鍵盤の設計に関しては独自の権限を持っていた様子がうかがわれます。一見5576-B01のような現代的粗悪キーボードを思わせるデザインですが,持ってみると大変重く,明らかに本物っぽい感じがします。筐体のはめあいも5576系伝統のパチッとしたつくりになっています。

(分解写真をここに載せました。ご参考に。)

5576-C01の正面写真

ケーブルはじか付けで,これ以前の5576鍵盤4種と比べて細く,取り回し性のよいカールコードとなっています。製造番号66G8362のものは先が二股になっており,片方をキーボード用のPS/2端子につなぎ,他方をマウス用の端子につなぎます。

5576-C01の湾曲配位を示す側面写真

下の写真に見えるように,側面にマウスポートがついています。実際にマウスをつけてみると,横に出っ張るのでちょっと邪魔です。筐体が肉厚で,最上段のキーの列が筐体に埋まっているかのような印象です。側面から見ると,キーがU字型に湾曲して配置されていることがわかります。スイッチを支える鋼板がそのような形に作られているからです。私の言うところの湾曲配置というやつです。このフォルムも全体の質感もなかなか堂々とした印象です。

5576-C01のIBMロゴと二股ケーブルの写真

C01にはP/Nが66G8363という派生型も存在します。こちらの型はコードが二股になっておらず,キーボードの印のついたPS/2端子が一本しかありません。したがって通常のPCにおいてはそのままではトラックポイントを使うことができません。みんみん飯場というサイトにも情報が掲載されています。ケーブル以外の相違点は私の知る限りありません。どちらも当然ながらでにA01標準配列で,ちゃんと左Altもあります。キートップはAltとSysReqが緑,他は黒の二色となっています。

2つの5576-C01の比較写真
(上)66G8362,(下)66G8363

スイッチの構造は座屈ばね+薄膜接点です。キーを引き抜いて見ると,enhanced 101と同じく,黒いプラスチックの鞘から座屈ばねが出ているのが見えます。構造は同じなのですが,ばねとしてやわらかく細いものが使われており,enhanced 101系とは明らかに打ち心地が異なります。IBM enhanced 101系鍵盤は,その最終型42H1292に至るまで一貫して同一の機械的特性をもつばねを使いつづけたと考えられているため,本機は鍵盤史上で興味深い標本になっていると言えます。なお,5576系のスイッチは,001002アルプス機械ばね接点003A01が各キー独立の座屈ばね機構+薄膜接点,C01がenhanced 101流の座屈ばね構造+薄膜接点,となっています。本機が,A01トラックポイントをつけたもの,という多分に希望的観測を含む評を目にしますが,事実ではありません。

5576-C01の裏面写真

推測するに,日本IBMは鍵盤をIBM カナダに外注する際,ばねはやわらかいものを使ってくれと注文を出したのではないでしょうか。きっと市場調査で,A01鍵盤は固すぎるとの苦情を多数受け取っていたものと想像します。そのためなのか何なのか,確かに打鍵感は軽いです。しかしばね定数が変わったせいか,ばねの残響音が極めてやかましく,そのつくりの重厚さに反して,大変安っぽい印象を与える結果となっています。打鍵音は文字通りカシャカシャという感じです。ブリキのおもちゃを引っかきながら打鍵しているような気がしてきます。おそらく,本機をIBM「メカニカル」の入門にした人は,その下品な打鍵音に落胆するに違いありません。IBM日本語鍵盤収集サイトとして名高いみみラボでも苦しい評価となっています。

トラックポイント好きの私ではありますが,本機の乾燥したカシャカシャ音が思考をささくれ立たせるのを感じるため,継子扱いのまま今に至ります。カシャカシャやっていると,精神が消耗してくる気がするのです。自分も疲れ,この音を聞かされる周囲の人も疲れ,と2重の意味での消耗を避けるため,オフィスでは使わないことを勧めます。

5576-C01のキー配列の写真

2001年8月現在,新品入手はほぼ不可能ですが,2001年7月に秋葉原にて14800円で数台売られているのを見ました。Yahoo Auctionsでも新品をたまに見ますので,5576のこれ以前の機種よりは新品に当たる可能性は高いのかも知れません。基本的に,「メカニカル」なトラックポイント付きモデルは日本では人気が高いです。状態のいいものだと1万5千円前後にはなると思います。入手の際は,66G8362と66G8363の相違と,上記の打鍵感の特徴にご留意された方がいいと思います。


以上は2001年8月時点での文章ですが、2003年6月になって古い5576-C0を分解してみたのを契機に、66G8363を引っ張り出してThinkPad 235(チャンドラII)につないでみました。最近、布団の上で寝る前などにブラウザやメーラーを見る専用機になっているマシンです。ちょっと前までThinkPadにはPS/2端子がひとつついており、それを鍵盤・マウスの分岐ケーブルを使って分岐させて使うようになっていました。66G8363だと、分岐ケーブルなしにトラックポイントも鍵盤も使えて手軽でいいです。メインマシンでなければカシャカシャ音にも神経質になる必要はなく、たまにつないでその感触を楽しもうかと思っています。
(2003年6月記)
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