ベンチャー革命2004623

                           山本尚利

タイトル: 親米党と愛国党という対立軸の提案

 

1.政党支持率中心の世論調査の行き詰まり

 2004711日の参院選挙を控えて、マスコミの世論調査が活発です。この選挙の後は、小泉首相が衆院解散権を行使しない限り、2年くらい国政選挙がないそうです。もし、今回の参院選挙で自民党が勝利すれば、小泉政権は、これまでの政策が国民の支持を受けたとみなすので、歯止めの利かない半独裁政権に変貌するでしょう。小泉政権を操る勢力にとっては笑いが止まらないでしょう。マスコミもそのことを危惧しているからこそ、競って世論調査を行うのです。さて年金改革法案の強行採決の後、どの世論調査でも、小泉政権支持率が下がっており、50%を割っています。国民の8割が疑問をもつ年金改革を強行採決したわけですから、森政権末期のように、小泉政権の支持率が20〜30%くらいまで暴落してもおかしくありません。だから小泉政権支持率が依然40%台を維持しているのは不思議なくらいです。ところで現在、国民の政党支持率は、およそ3等分されます。(1)与党支持者(自民・公明支持者)と(2)野党支持者(民主党、社民党、共産党など支持者)および、(3)白紙状態の無党派層です。参院選では無党派層をどちらが取り込むかで、勝利の行方が決まるのは明らかです。無党派層は、選挙直近のイベントに大きく左右されます。ところで小泉政権支持率40%台は、元々の与党支持者ならびに無党派層の半数の支持によって支えられていると思われます。つまり、国民の政党支持は真っ二つに割れており、まったく予断を許しません。筆者の分析によれば、無党派層のうち、この与党支持の大半は、消去法での与党支持です。無党派層のなかで、何事につけ保守的発想する人は、与党の年金改革法案には不満をもっていても、未知数の民主党に政権をとらせてみようとは思わない。つまり彼らは、小泉政権の年金改革強行採決には不満をもっていながら、結局は小泉政権の40%台支持率を支える張本人です。彼らには論理的一貫性がない。一方、どちらかといえば与党支持ではない無党派層は、積極的な野党支持でもなく、与党の独走にストップをかけるべきという考えの人が圧倒的であり、必ずしも固定的な野党支持ではありません。都市部有権者の多くはこの無党派層でしょう。ちなみに首都圏に住む筆者もこの部類に入ります。筆者のような無党派層が増えれば、日本の政治はもっと面白くなる。都市部と地方の一票の格差は3倍から5倍ですが、これが均等になれば、自民党はとっくの昔に政権党でなくなっていたはずです。政治の世界にも競争原理が働かなければ、政治がよくなるはずがありません。巨人中心の日本型プロ野球が危機に陥るのは当然でしょう。拮抗しない競争はしらけるのです。

 

2.親米派オア愛国派?

 日本は政官財に渡って、広範囲に米国の支配が浸透しつつあります。小泉政権になって、その傾向がいっそう強まっています。しかしながら、親米の小泉政権は自民党の総意を代表してはいません。これまでの自民党政権に比べて、かなり特異な政権です。ところが参院選挙予測にかかわるマスコミ世論調査は、従来どおり、政党支持率予測中心の調査です。なぜなら、選挙が政党ベースで行われるからです。現在の日本で世論対立軸と政党対立軸が一致していれば問題ありませんが、残念ながら、政党対立の軸が明確ではありません。現在の日本政治では、産業、金融、外交、防衛、法務の政策領域に関して、対米追従の親米主義か、それとも、日本独自の愛国主義(日本の国益重視)かに二分されます。年金問題に関しても、米国型の任意加入か、社会主義的な全員強制加入かの二者択一の議論に集約できます。簡単に言えば、与党か、野党かで捉えるよりも、親米派か愛国派かの軸で政治を捉えるほうが、はるかに、わかりやすい。さて現在の自民党において、小泉政権は明らかに親米派主導ですが、自民党内では少数派であり、愛国派自民党員も数多い。自民党抵抗派と呼ばれる反小泉派は、よくいえば、愛国派であると思います。つまり現在の自民党は事実上、真っ二つに割れているのです。一方、野党第一党の民主党も、自民党脱藩者と社会党残党の混成部隊であり、親米派と愛国派が混在しています。おもしろいことに、日本の右翼も、伝統的な愛国右翼と、新興の親米右翼に分裂しています。ただし、親米左翼というのはさすがに聞いたことがありませんが・・・。

 

3.世論の二項対立軸は?

 現代の日本国民の価値観は深刻な分裂状態が続いており、その亀裂は深まっています。戦後、米国から輸入されたキリスト教的民主主義教育のおかげで、戦前の忠君愛国主義者は影を潜めました。しかしながら、多くの日本人の深層心理において、愛国的感情が消え去ったわけではありません。その程度の差は、戦前派か戦後派か、あるいは個々人の育ちに影響されます。その結果、米国的価値観に抵抗のない日本人と、抵抗のある日本人が、現在の日本に共存しています。つまり、日本世論の対立軸は、親米的か愛国的かで切ることができると思います。ところで現在の自民党支持者には、親米小泉首相を支持する人と、単に、保守主義の自民党支持者が混在しています。自民党が小泉政権を誕生させることによって、政権党の地位を維持している勝因は、公明党との野合もありますが、本質的には保守的支持者の凋落を、親米派日本人の小泉支持で穴埋めすることに成功したからです。一方、自民党の保守主義者には愛国派が多いので、小泉政権の親米主義が強まれば、伝統的自民党支持者の離反を招くリスクを小泉政権誕生以降の自民党は抱えています。その意味で、今の自民党は、決して一枚岩ではなく、親米小泉の後釜を狙う、愛国自民党員が数多く蠢いています。さらに自民党親米派でも、程度の差があり、小泉首相のように対米隷属主義者(日本の国益より、米国の国益を優先する)から、米国の傘を利用するだけの表面的親米派まで実に幅広い。さらに米国に弱点を握られてやむを得ず親米派を装う隠れ愛国派もいます。

 もし、政界をガラガラポンして、自民党と民主党をそれぞれ解党し、親米党と愛国党に再編すれば、おそらく、自民党支持者と民社党支持者を合計した有権者の60%が親米党支持で、40%が愛国党支持となりそうです。この基本構造が、現在の小泉政権支持率に影響を及ぼしているでしょう。有権者の80%が小泉政権の年金改革に不満をもちながら、小泉政権支持率が40%台を維持している「ねじれ現象」は、上記の親米的日本人の存在で説明がつけられそうです。有能な官僚は日本の親米党優勢の支持構造を見抜いており、小泉政権の親米派仮面のウラで、自民党本来の体質である、政官財の封建的癒着構造を温存させ、官僚優位で日本を実質的に動かしていると言えます。

 

4.揺れ動く日本人価値観

 現代日本人の価値観は単純ではなく、同じ人間の中で、親米的価値観と愛国的価値観の葛藤があるでしょう。筆者自身もそうです。現代の日本人は米国価値観に支配されることを受容できるか、受容できないかは簡単に結論の出せる問題ではありません。われわれは二千年の歴史で培われた日本的価値観の伝統に根付く日本人の遺伝子をもったまま、戦後、米国的価値観を植えつけられてきたのは確かです。日本を属国(貢いでくれる国)と認識している米国覇権主義者たちは、日本を支配するには、日本人の価値観を根本的にアメリカナイズする必要があると思っているでしょう。親米派の代表である小泉首相は、好き嫌いを超越して、日本の安全を米国に守ってもらうため積極的に日本をアメリカナイズせざるを得ないと考えているのか、それとも単に、親米主義を米国から強制されているに過ぎないのかは不明ですが、少なくとも表面的には卑屈なほど、対米隷属主義です。憲法改正や日米安保に関して、国民世論が二分する原因は、結局、国民の多数派が米国による日本支配を受容するのか、しないのかにかかっています。ちなみに米国人は日本を友好国とみなしてくれているという錯覚から目覚めていない日本人ほど、残念ながら親米小泉政権に抵抗がないと思われます。ここに小泉政権40%支持率維持の秘密が潜みます。小泉政権があれほど、横暴な強行採決や独断を繰り返したにもかかわらず・・・。

 競争世界において、勝者と敗者が生まれ、支配者と被支配者の二者択一が避けられないという仮定が正しければ、日本にとって長い目でみて米国に支配されることが絶対に悪かどうかは、即断できません。ただし、米国が表面的に過ぎなくても、一応、民主主義国家を標榜する限りの話ですが・・・。日本支配を企む一部の米国覇権主義者がいるとすれば、彼らにとって、もっともてこずるのは、ともすれば反米化しやすい愛国的政治家でもなく、愛国的日本人でもなく、実は日本の官僚機構に巣くう保身的日本人の抵抗でしょう。目下、日本の官僚機構の改革に、直接、米国の強権は及ばず、日本国民が、その代表である政治家を通じて実行するしかありません。日本は政治システム(レジーム)が、表向きイラクや北朝鮮のように独裁国家となっていなく、一応、民主主義政治システムの形態をとっているからです。もし日本がイラクや北朝鮮のような正真正銘の独裁国家なら、米国は軍事力を行使してでも、民主化を強要するような覇権主義国家です。その意味で、米国は今後とも決して官僚天国日本の友好国なんかではありません。

 

山本尚利(ヤマモトヒサトシ)

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