ベンチャー革命200814

                           山本尚利

タイトル: 日本国民はなぜ、貧乏化しているのか

 

1.日本国民の貧乏化の実態

 200814日付けの日本経済新聞の経済教室に、堺屋太一氏の論文が載りました。それによれば、21世紀となって、日本国民の一人当たりのGDP(国民総生産)が急落し、2006年は34000ドルで、OECD加盟国(経済先進国)中18位に下がったとのこと。93年には日本国民は世界一の高所得者であったにもかかわらず・・・。国際比較レベルでは、この10年、日本の国民所得が下がり続けているのです。多くのお人好し国民は毎日、満員電車に揺られ、朝から晩まで働きつめています。それなのに、世界の経済先進国でなぜ、日本のみ国民の貧乏化が進んでいるのでしょうか。堺屋氏によれば、日本国民の知価革命(注1)の遅れとのこと。筆者らはイノベーション論の観点から、日本が脱工業化社会への対応に乗り遅れているためと分析しています(注2)。

 2003年、筆者は自分の専門の技術経営論の観点から、日米技術覇権競争あるいは日米イノベーション競争に日本が見事、敗北したためとも分析しています(注3)。

 このような分析も間違ってはいないと思いますが、それだけでしょうか。

 

2.小泉政権時代から始まった日本国民の貧乏化

21世紀の日本国の政治は小泉内閣で始まり、20014月から20069月まで5年半続きました。ポスト小泉の安倍内閣も現福田内閣も、小泉路線をおおむね踏襲しています。ところで、統計履歴的には日本国民の所得急落は小泉政権になって顕著です。小泉政権時代、国の国民からの借金は5年で262.3兆円(20019月末の565.6兆円から20069月末の827.9兆円の差額)も増えています。

単純に考えれば、小泉政権以降の自公政権は国民からの借金を急激に増やしているわけですから、国民がそれだけ貧乏になるのは当然であると解釈できないこともありません。

財務省統計によれば、小泉政権時代、会計年度で2002年度から2006年度まで5年間の国の一般会計予算に占める国債からの歳入額合計は167.5兆円です。262.3兆円と167.5兆円の差額94.8兆円の多くは財投債発行額に相当します。国債発行残高の推移をみると、2001年度より普通国債に加えて財投債が積みあがっています。小泉政権時代に増えた借金の増分差額94.8兆円という数字は、日本政府の外貨準備残高の約100兆円(200711月末、9700億ドル)とほぼ一致します。つまり日本政府は財投債でドルを購入していると推測されます。それにしても、なぜ、2001年度から突然、国債残高に財投債が上積みされるようになったのでしょうか。200141日「資金運用部資金法等の一部を改正する法律案(2000524日成立)」すなわち財政投融資特別会計法が施行されたからです。郵政民営化をにらんでの法律改正です。このことを知っている国民はどれだけいるでしょうか。当時のマスコミがこの法改正を国民にわかりやすく解説したという記憶はありません。それまで、われわれ国民の虎の子、郵貯、簡保、年金積立金(合計約500兆円)を大蔵省(現財務省)の采配で、国が勝手に(国民に了解なく)特殊法人運営などに流用していたのです。おそらく米国覇権主義者の圧力と思われますが、200116日に財務省に名前を変えてから、それができなくなったのです。その代わりに、財務省官僚はチャッカリ財投債発行を始めたということです。この財投債のつけも結局、国民に回されるわけですから、国民側からみると、国のやっていることは本質的に変わりませんが・・・。

 

3.国民滅びて山河あり

 さて、これまでの議論で、21世紀の日本国民はどんどん貧乏になっていることはよくわかりましたが、それでは、日本国全体も貧乏となっているのでしょうか。

とんでもありません。国家レベルでみると、日本国家は米国連邦政府に巨額のお金を貸している世界一の大金持ち国家(ただし、見かけ上の金持ち国家)です。日本政府あるいは日本の金融機関が米国連邦政府に貸している債権残高は今日まで4兆ドル(500兆円)に上ると推定されています(注4)。

 この額は数十年の長期に渡る日米貿易不均衡(日本の対米貿易収支の万年黒字)から辻褄合わせすれば納得のいく額です。日本がこれだけ巨額の対米債権を抱えていたら、その利子収入だけで年間20兆円超に上ります。日本国家の税収の何と半分近くの利子収入(不労所得)があるはずなのです。本来、日本国民は左団扇だったはずです。ところが、米国連邦政府に対する500兆円分の債権からの利子収入がわが国の国家予算の歳入に当てられていると聞いたことがありません。

 つまり、米国連邦政府の財政は毎年、大赤字ですから日本に米国債の利子すら払っていないのではないでしょうか。お金を貸しているのに、利子すら払わないとすれば、こんなひどい話はありません。それとも、財務省官僚が米政府から支払われた利子を埋蔵金のようにどこかに隠し持っているのでしょうか。もし、後者なら、あの抜け目のない米国覇権主義者が黙っていないでしょう。肝心のこの点が国民に正しく知らされていないことが、今日の日本の最大の問題なのではないでしょうか。本当は、われわれ日本国民はもっと楽をできるはずなのです。

 さらに言えば、現在、財務省が公表している日本政府の外貨準備高9700億ドル(100兆円超)と上記、4兆ドル(500兆円)相当の対米債権推定総額とは大きな食い違いがあります。なぜでしょうか。この500兆円分の対米債権のうち、300兆円分くらいの米国債に関して、2001年の法改正以前、旧大蔵省がわれわれ国民の郵貯、簡保、年金積立金の財布に勝手に手を突っ込んで、それを原資に大量の米国債を購入していて、われわれ国民には公表していないのではないかと考えられます。この単純な秘密がわれわれ国民に暴露されるのを最も恐れているのは日本政府ではなく、むしろ米国政府でしょう。不思議なことに、野党政治家もマスコミもこのことを国民にまったく知らせようとしません。テレビのお笑いコンビ、タカアンドトシの「お前、欧米か!」というギャグのひとつも飛ばしたくなります(笑)。

 

4.踏んだり蹴ったり:原油高騰による物価値上げラッシュが貧乏化国民を追い討ちする

 200814日のトップニュース、それは原油が人類歴史上初めて、100ドル/バーレルと突破したというものでした。統計履歴上、2001911日のあの忌まわしい事件以来、原油価格が急騰しています。2000年と2004年、2回の大統領選挙で執拗な選挙違反までしてブッシュ政権を誕生・続投させた寡頭勢力の真の狙いが何であったか、よくみえてきました。彼らは、ブッシュ政権下、当初の戦略目標(石油利権でぼろもうけ)を達成して笑いが止まらないでしょう。問題は、派生的に、彼らの仮想敵国ロシア(産油国)、中東と中米の反米産油国にも原油高騰の恩恵が渡ることです。それでも、寡頭勢力にとって敵を育成する意味では原油高騰は決して戦略的にマイナスとは言えないわけです。彼らにとって地獄の戦争すらも事業機会ですから・・・。ちなみに敵のいない戦争は成立しません。一方、原油高騰でもっとも被害を受ける代表は、資源のない日本です。そのせいで2008年の日本は物価値上げラッシュを迎えること間違いなしです。また、原油高騰は中国やインドのバブル的経済発展の抑制効果をもっています。このように石油利権の独占を企む白人系の国際寡頭勢力にとって原油高騰の恩恵は計り知れないわけです。彼らにとって、原油高騰は、自分たちの経済的利益の急増と増大するアジア脅威の牽制という一石二鳥の効果があります。金融と軍事・エネルギーの両方に利権をもつ国際寡頭勢力にとって、サブプライムローンの損失も原油高騰でたちまち帳消しされるはずです。現状では原油がどれほど高騰しても、先進世界は石油なしで生活できない社会となっていますから、石油を買わざるを得ません。2008年は石油利権をもたない大多数の世界人民から石油利権をもつごく一部の寡頭勢力への大規模な富の移転が起きる年の始まりです。そのしわ寄せが大津波のごとくわれわれ日本国民(石油利権と無縁)を襲うでしょう。年頭から株が暴落しても決して不思議はありません。

さて、2001年以来、小泉政権が行った、あるいは小泉政権が米国覇権主義者から強制された(?)日本政府の構造改革の代表は、いうまでもなく郵政民営化ですが、その陰で小泉政権が取り潰した特殊法人(現、独立行政法人で、ほとんどの独法は上記の財投債を食いつぶす法人)がふたつあります。それは石油公団と基盤技術研究促進センターです。どちらも旧通産省の天下り型外郭団体です。前者は民族資本による石油資源開発組織であり、後者は通産省主導のハイテク・ベンチャーキャピタルでした。小泉政権は、両法人を税金垂れ流しの悪徳法人と批判しましたが、それなら特別会計や財投債を食いつぶす日本の天下り法人はほとんど、それに該当します。問題は小泉政権が選択的に取り潰した2法人の本来のミッションは日本の国益にとって極めて重要であったという点です。米国覇権主義者の傀儡であった小泉政権であったからこそ、日本の国益に直結する両法人を意図的に狙い打ちさせたとも解釈できます。

以上の議論から結論されるのは、小泉政権は国民の目を郵政民営化に釘付けにしておいて、あろうことか日本の中長期国家戦略として、日本の国益上、もっとも重要な特殊法人のみを選択的に廃止した(自殺行為)、あるいは米国覇権主義者に廃止を強制されたと思います。

この結果、今日の日本は原油価格高騰に対し、まったく打つ手を持たない国家に成り下がったわけです。気がついたら米国覇権主義者に見事に封じ込められていたということです。また資源のない日本が高騰する石油の購買力を確保するためには、高収益の期待できるハイテク製品の技術開発力と販売チャネルを強化するしかありませんが、基盤技術研究促進センターというハイテク投資のための国家リスクマネー供給体制も、小泉政権によって構造改革の名の下に、まんまとぶち壊されているわけです。万事休すとはこのことです。

 忠犬ポチと揶揄された小泉政権の反国益的所業が郵政民営化にあることは多くの愛国派の有識者から指摘されていますが、実は石油公団と基盤技術研究促進センターとセットとなった廃止にこそあることを、今日の日本で誰一人指摘する有識者が見当たりません。まったく情けないことです。なお、われわれ国民の虎の子、郵貯、簡保、年金積立金の相当部分は大蔵省・日銀によって2001年以前から、米国債購入の原資(円高対策の名目で)として当てられ、すでに取り返しのつかない国富の不可逆的移転(日本から米国へのワンウェイの国富移転)が行われていると思われます。マージャンゲームに例えれば、勝者が敗者に、台の下からコッソリ、勝った点棒を戻してゲームを維持させているようなものです。親米官僚はコレによって、初めて日米関係が維持されると信じているわけです。これでは日本国民が豊かになるはずがありません。日本全体に劣化現象がみられるのは当然です。最後に付け加えるならば、小泉政権が強引に進めた郵政民営化とは、食い尽くされて残った残渣的国富をもあらいざらい持っていこうとする肉食猛獣的な米国覇権主義者独特の強欲な所業の一環でしかありません。

 

注1:堺屋太一[1985]『知価革命』PHP研究所

注2:寺本義也・山本尚利『領空侵犯をも辞さない人材流動化によるイノベーションが経済不振を払拭する』早稲田ビジネススクールレビュー7号、200712月、日経BP94ページ

注3:山本尚利[2003]『日米技術覇権戦争』光文社

注4:副島隆彦[2007]『ドル覇権の崩壊』徳間書店、35ページ

 

山本尚利(ヤマモトヒサトシ)

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