■知っておきたいエミュレータと法律■

■エミュレーターは違法?

エミュレーターは違法なのかどうかはけっこう難しい問題です。エミュレーターを作る課程で、ソース、BIOSなどのコピーがない限り、基本的にエミュレーターは違法ではないと言えます。リバースエンジニアリング、いわゆるBIOSなどの解析も合法だとする考え方が一般的です。また、エミュレーターが著作者人格権の侵害かどうかというのも微妙な問題と言えるでしょう。著作者人格権とは著作権法上持っている権利のことで、エミュレーターの場合、クリエーターが想定したクオリティーやスピードで動いていなと第20条の同一性保持権が侵害されると考えられるかもしれません。しかし、そこまではユーザーをしばることはできないのではないかという考え方が強く、そういった判例も出ています。ただ、実際裁判になってみたらどうかわからない言えるでしょう。特に最近では、法律が拡大解釈される傾向があるのでなおさらです。

 

■ROMは違法?

ROMのアップロードは第23条の公衆送信権の侵害にあたり違法です。ただダウンロードはというと一概に違法と言い切れない面もあります。ダウンロードが複製行為にあたることはたしかなのですが、第30条1項の私的使用にあたる複製にあたり合法なのではないかという考えもあります。しかし、この条文がダウンロードという行為をまったく想定して作られていないこと、また、この条文はベルヌ条約を踏まえて規定されているため、ROMのダウンロードのように確実に著作権者に与える経済的損失が大きいことに関してはまず適用されないこと、などの理由からほぼ違法と考えて間違いはないでしょう。ただ、自分が持っているソフトをバックアップ機で吸い出した場合については、コピープロテクトをはずすなどの行為をしない限り、第47条の2第1項にあたり合法なので、安心して下さい。他、色々考えられることを書いてみました。

●自分が持っているソフトのROMをダウンロードした。
違法です。ソフトを他の人にかわりに吸い出してもらったと考えることができると思いがちですが、複製する権利を持っているのはそのソフトの所有者だけなので、当然違法とみなされます。

●ROMをダウンロードしたが一度も遊んでいない。
これも違法です。ダウンロードした時点で違法と判断されます。

●友達の家でエミュレーターで遊んだ。
ROMが違法なものであると知っていた場合は、著作権法113条2項に該当し、違法です。ただ、エミュレーターが何だか知らなかったなどの場合は違法にはなりません。

●ROMをダウンロードしてから48時間以内に消去すれば、大丈夫って聞いたんですが。。
どこからこのような情報が流れたのかは知りませんが、これはまったくのデマ、違法です。

 

■刑罰は?

刑罰はけっこう厳しいです。刑事罰として、最大で懲役三年または300万円以下の罰金、さらに民事訴訟で敗北すると損害賠償額を全部払わなければなりません。損害賠償額は原告側が受けた被害の額もしくは被告側が受けた利益の額が基準であるそうなので、ROMサイトを運営していただけで、一億を軽く超える額を払わなければならないことだってありえるわけです。

 

■実際は逮捕されにくい?

しかし、実際には個人レベルの逮捕者はほとんど出ていません。基本的に著作権法は親告罪で、被害者の告発がない限り、警察は摘発することができません。そのため、企業は一件一件ROMサイトなどを告発していかなければならないわけです。もちろんインターネットの特性上、一つ一つ告発していってはきりがありませんし、なんといっても世界中に広がっていて日本だけでの問題ではありません。第一、エミュレーターは現役のハードが少ないため、メーカーの利益とはほとんど関係もないですし、裁判に至った場合のリスクも大きい。つまり告発する意味も少ないと言えるのです。実際告発に至った場合でも警察はネット犯罪に対する体制もまだよくは整っていない上、普通の捜査では事実確認だの証拠固めだので一年以上の歳月を要する場合が多いです。もちろんその間にもROMサイトはつぶれたり、新たにできたりということが繰り返されているので、摘発自身も難しいといえるのではないでしょうか。

 

■最近の動向

最近になってROMサイトの逮捕者が出てしまいました。なぜこのサイトだけ逮捕されたのか、まあ一種の見せしめと言えるのではないでしょうか。著作権協会の警告を無視したために逮捕されたそうなので、ねらわれたら素直にあきらめることが重要でしょう。任天堂も最近エミュレーターに敏感で、UltraHLE、SNES9X、SNESShoutなどのサイトに圧力をかけたと言われています。また、裁判についてですが、今までのエミュレーターに関する判例を挙げますと、エプソンが開発したDOS用98エミュレーションソフト、98VをNECが訴えた事件はエプソン側の勝訴に終わり、ご存じConecetexが開発したプレステエミュレーター、CVGSをソニーが訴えた訴訟でも一度出荷差し止めの判決がでたものの何とか勝訴している状況、同じくウィンドウズ用のプレステエミュレーターであるBleemも同様です。ただ、フリーウェアやシェアウェアのエミュレーターが訴えられたらどうだかわからないと思います。(訴えられる可能性は少ないですが)いずれにせよ、今後法整備が整えばなんらかの決着がつくと思います。

 

■著作権の条文について

重要な著作権の条文を書いてみます。

●第20条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

●第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

●第23条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

●第30条1項 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
1.公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
2.技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

●第47条の2第1項 プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第113条第2項の規定が適用される場合は、この限りでない。

●第113条2項 プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第47条の2第1項の規定により作成された複製物並びに前項第1号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第1項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。

●ベルヌ条約9条第2項 著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないこと