「国際化プログラミング」の楽しみ

ここでは, 「国際化プログラミング」の本としての特徴をいろいろな 観点から紹介し、本をお持ちの方がいろいろな観点から楽しんでいただける ような情報あるいはそのヒントをお届けします。

こだわりの1冊

長い間 bit 誌の編集長をやっておられた共立出版(株)編集部の 小山 透 氏の "こだわりの1冊" となっています。 最近主流の, 低価格で短期間に大量の部数を売りさばくという本の作りではなく, よさをわかっていただける方々に長期間にわたって利用していただくという 視点で作られた, 見る人が見ればわかる価値ある1冊となっています。

ちょっと目立つ表紙カバー

共立出版の本にしては少々派手めなカバーがついています。 タイトルの「国際化」に合わせて, 国旗や地図を素材として使った デザインになっています。ぱっと目につくブラジルの国旗は, 今年がワールドカップサッカーの行われた年であったことを連想させますが, そういう理由で入っているのかどうかは定かではありません。
ところで, 残念なのは多くの本屋さんでこの本が棚に並べられて しまっていること。せっかくのカバーが見えない。値段が高いのでたくさん 仕入れないでしょうから仕方ないのでしょうが, できれば平積みにして欲しいなあ。
カバーの裏には, 日本語と英語で本の内容が横並びで紹介され, すっきりとまとまっています。"定価 (本体 10,000円+税)" というブルーの 抑えた色の文字が, 控えめながら買う人にとっては存在感がありますね:-)

この表紙カバー, さわってもらうとわかりますが, つるつるテカテカしていません。 他の本と比べてみればよくわかると思います。 この本の初版第1刷発行は8月25日です。そうです。夏に販売開始ということも 考慮し, 触ってもべたつかないような加工を施した表紙になっています。 マットPP と呼ばれる加工だそうで別に特別なものではありませんが, そういったちょっとした配慮が嬉しいじゃないですか。

重いんだこれが

本屋でみかけたら是非手にとってみていただきたい。重いんですよこれが。 CDROM がついているわけでもありません。 最後のページ番号を見ると 480。他のもっと厚い本と比べていただければ わかりますが, 2, 3 割分は薄くなっている感じです。
これは, 上質の紙を使用しローラーで圧縮がかかっているのだそうです。 薄くなっているからといって, 裏のページが透けることもないようです。

さらに細かい配慮が

本の背が丸くなっている, スピン(しおりひも)がついている, 糸かがり綴じ, などなど, この本をしっかりと長く使い込んでいただくための配慮が なされています。その他, 表紙などの紙の種類, 本の背のタイトルの 銀色の文字が印刷でない, などカバーに隠れてわからないところにも ほんのちょっとだけ贅沢をしているところが "こだわり" なんでしょう。 ページをめくってみると, 1行の文字数や配置などページ内の割付も 読みやすさに配慮したものになっています。

やはり内容で勝負

いくら装丁が立派でも問題は中身。もちろん、ぎゅっと濃い内容を 詰め込んでいます。導入編、基礎編、実践編の3部構成に なっていますが、お読みになる方それぞれの知識、興味に応じて 適宜選択して読んでいただくことができます。 特に実践編は、辞書的に必要になった時に必要な部分だけを 読むという活用法が適当でしょう。 その他にもいろいろとうれしいことがあります。 ぱらぱらとめっくていただくとわかりますが、文字だけの ページが非常に少ない! 情報リソースにあげてある文献の数が多い!などなど。

コンピュータのわからない人もOK、導入編

本全体の導入部分として、ソフトウェアの国際化についての 基本的な考え方や用語の解説を行っているのですが、 特にコンピュータ分野に関わりをもっていない人でも おもしろく読むことができるのではないかと思います。 「国際化」という言葉に少しばかりこだわってみた 4つのコラムをまず読んでみるとよいでしょう。 世の中で「国際化」という言葉はいろいろなところで 使われますが、ソフトウェアの世界の国際化は、 具体的な実現手法を含めて議論されながら その意味が形成されてきました。I18N といった場合は、 単に「国際化」という一般の用語に対応するのではなく、 L10N とのペアで考えるのが普通です。
自動車、金融などいろいろな業界の経営者や政治家の方々が 使う「国際化」という言葉、それぞれ意味するところは 違っているはずです。それぞれ、どういう意味なのか 考えてみてもおもしろいと思いますよ。

しっかり身につけよう、基礎編

基礎編となっていますが、ソフトウェアの国際化の歴史を ふりかえりながら基本的な概念の整理を行い、技術的には 少し難しい内容についても解説しています。あまり専門的 になりすぎないように適度に説明は省略してありますが、 規格の意味するところや背景など他の本には書いていないような 記述もちりばめられています。職業としてソフトウェア開発に 携わる人は、入社後の導入教育など早い時期にこの基礎編に 書いてある内容を習得しておくとよいでしょう。「国際化」という 観点にかぎらず、より広い視野をもったソフトウェア開発の マインドを持つための手助けになると思います。

お役にたちます、実践編

実践編では、実際にプログラムを書く上で必要な情報を提供する ことを目指していますが、ページ数の都合から各章の力の入り 具合に差があります。特に9章と10章の UNIX 環境での 国際化プログラミングの説明が充実しています。市販の本で ワイド文字 (wide character) のプログラミングについて これほど大々的にとりあげたものは見かけません。世の中で 流通しているソフトウェアの多くで利用されているにも かかわらず、一般のプログラマにはほとんど知られていません。 基礎編で学んだ先人たちの努力を横目でみながら、ワイド文字で すいすいと国際化されたプログラムを作ってみましょう。 もう、EUC も SJIS も意識する必要はないのです。

インターネット、Java についての説明はあまりに少なすぎるかも しれません。しかし、日々進歩しているこの分野のテクノロジの ある一瞬のスナップショットを本という媒体に入れるのには 抵抗があります。それよりも基本的な技術や概念だけを紹介するに とどめ、最新の情報については雑誌、論文、Web などから入手 してもらった方がよいだろうと判断しました。
Windows については、固有の国際化機能の説明は省略し、 Unicode 中心の説明を行いました。日本のメディアや コンピュータ分野でよく発言される方々の間では非常に評判の よろしくない Unicode ですが、すでに多くの製品で使われたり 使うことが計画されたりしています。Windows および Mac での 国際化に Unicode が果たす役割は非常に大きいと言わざるを えません。いよいよ、Windows の世界にも single binary の 時代がやってきそうです。残念ながらその辺の話は今回の本には 含まれていませんが、もし改訂の機会が与えられれば、書き加える ことになるでしょう。

付録

付録には、関数一覧など便利な表を用意しました。 プログラムを作る際にお役立てください。

情報リソース

その数、212個。(よくも集めたもんだわい。) 最近では Web 上でソフトウェアの国際化に関係する内容の 情報発信をされている個人の方も多いですが、そういったものは 残念ながら含まれていません。 ということはもっと情報源があるってことですね。 集め出すときりがないのだけれど、どこかにまとめてあると 非常にうれしい情報だと思います。是非活用してください。

おまけ

情報リソースといえば、ニュースをひとつ。
9月に San Jose で開かれた Unicode Conference に出席した 著者のうちの二人は、あの「日本語情報処理」の著者である Ken Lunde 氏にお会いし、自分らの紹介はそこそこに 「国際化プログラミング」を紹介したらしい。そして...

...本を手にとった Lunde 氏は、真剣なまなざしで本の カバーを見つめ、しばらく考え込んだ後、すーっと右手を カバーの上に動かしたかと思うと「王手!」とつぶやいた... というのは冗談です。

...本を手にとった Lunde 氏は、真剣なまなざしで本の ページを丁寧にめくっていた。本に関する情報を mail で 送ることを約束して一旦別れたのだが、今度は Lunde 氏が やってきて本をもう一度見せて欲しいという。彼はかばんから ラップトップ・コンピュータを取り出し、なにやらエディタを 立ち上げた。書籍の名前がたくさん並んでいるページを開き、 本のカバーを見ながら、“国際化プログラミング”と かな漢字変換で入力し、その他の情報も加えてひとつのエントリが できあがった。彼が編集していたのは、「日本語情報処理」の 続編にあたる「CJKV Book」と呼ばれている本の原稿そのもの であった。それもほとんど最後の編集を行っている段階であった。 出版したばかりの「国際化プログラミング」が 初めて他の本のリファレンスに載る、その瞬間に居合わせた のであった。重い本をスーツケースに入れてきてよかった。 (実は、アメリカに住んでいる友人などから注文があって、 スーツケースに入って何冊かの本が海を越えてアメリカに渡った のであった。) ...

Lunde 氏の大作「CJKV Book」は、中国語(C)日本語(J) 韓国語(K)ベトナム語(V)をテーマにした本で2、3ヶ月の 間には出版されると思われます。英語の本です。


Last update: October 17, 1998


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