秋月電子温度計を作ろう

初出 2000.05.06
追記 2000.05.15
追記 2000.06.19

「ダイ温度測定に対応したモニタチップとマザー」のところで、「市販のA/Dコンバータを使って温度計を作ることも可能だと思います。しかし、私の技術レベルを超えていると思いますので、手を出すつもりはありません。(少なくとも今のところは。たぶんもしかすると、そのうちに。秋月の電子温度計キットなんか使えそう。)」と書きました。
そう思ったのは、(有)秋月電子通商のページにあるICL7136使用 液晶表示 デジタル温度計キットの説明に次のようなことが書いてあるからなのです。
秋月電子温度計キット ICL7136CPL使用
デジタル温度計キット
■高精度IC温度センサS8100B[SEIKO]使用
◆3・1/2桁ハイコントラスト液晶(LCD)表示
◆測定温度範囲:-40〜+100℃
(ダイオードセンサで150℃迄)
◆専用基板:72×47mm(パネルメータとして使用可能)
◆電源:DC9V(006P 9V電池で連続3ヵ月動作)
◆技術資料・専用基板一式付属
1キット ¥2,000

「ダイオードセンサで150℃迄」という文字を見た瞬間に「何?なにぃ〜!」と思いましたね。もしかするとこれでダイ温度計が作れるんじゃないかとね。

しかし、世の中は広い。同じことを考えた方が何人もいらっしゃいまして、温度計の製作に成功されています。これらの方についてはこのページの一番下にリンクを作っておきますので、是非ごらんになってください。

実を言うと、これらの先人のみなさんのページを見ていただければ、秋月電子温度計キットによるダイ温度計の製作については私が紹介するまでもないのです。
でもまあ、遅ればせとはいいながらせっかく製作したものですから、ちょっとだけ紹介させてください。

秋月電子温度計キットは、ICL7136CPLというA-DコンバータICを使用したキットになっています。秋月電子ではこのICを使用したキットを他にも幾種類か出しています(電圧計、容量計など)。
A-DコンバータICと液晶ディスプレイと、センサ用ICと、抵抗、コンデンサなどがそろっていて、2,000円というのは結構お買い得だと思います(通販の場合、送料600円が必要ですが。)。

まずは、秋月電子温度計キットの回路図を。(この回路図は(有)秋月電子通商様のご厚意により、取扱説明書からの転載を許可いただいています。)

秋月電子温度計 ICセンサ仕様

これが、センサにS8100BというICを使用した標準の回路です。
しかし、今回製作するのは、この回路ではありません。この温度計をダイオード仕様で製作します。
温度計キットの取扱説明書には、「100℃以上測定の場合は、モデルチェンジ前のキット回路で、シリコンダイオードをセンサとしていた物の記載がありますので、こちらを参考にしてください。」とあり、親切にも「参考」としてダイオード仕様の回路も記載してくれています。その上、ダイオード仕様のための部品も同梱されているのです。

これがその回路図です。

秋月電子温度計ダイオード仕様

図の中の丸囲いは私がしたものでICセンサ仕様の回路からの変更点を示しています。
R3:180kΩを1MΩにRT:100kΩを470kΩに交換し、ダイオードと直列の100kΩの抵抗を付け加えるだけになっています。なお、取扱説明書の部品表では、R3が470kΩ、RTが1MΩとなっていますが、これは間違いで、回路図の方が正しいです。

この回路のまま作成しても何の問題もないと思いますが、私の友人で私の弟子を"自称"しているいとうさん(下にリンクがあります)から、「VR2のゼロアジャストがシビアで、非常にやりにくいです。こんなふうに変えた方がやりやすいですよ。」
回路変更部分 と親切に回路図を書いてくれ、その上に抵抗2個と半固定抵抗1個を買ってきてくれました。ありがたいことです。そのとおりに組み立てたおかげで、ゼロアジャストには何の困難も感じませんでした。みなさんにもお勧めです。

もう一つ、私が変更を加えた部分があります。ダイオードに直列にする抵抗です。回路図では100kΩとなっていますが、別に大きな理由はないのですが、組立中の机の上に180kΩの抵抗が余っていたので(ICセンサ仕様の回路で使うR3です。)、180kΩに変更しています。別に100kΩで何の問題があるはずもないのですが、thermal diodeの温度特性の測定結果から、動作電流の少ない方が、温度変化に対する電圧変化が大きく、それだけ温度計としてはいい物になるのではないかと思っただけです。

これで、ダイオードに流れる電流はたぶん12〜13μA程度のはずです。

電子温度計の取扱説明書の後ろにあるICL7136のデータシートによるとV+とCOMMONの間に基準電圧として標準2.8V(最小2.4V〜最大3.2V)が出力されているとあります。私の場合実測で3.06Vでした。3.06Vに180kΩの抵抗を直列にしているのですから、ダイオードの見かけの抵抗が50〜60kΩ位で、電流はだいたい12〜13μAでしょう。

組立にあたっての注意点などをいくつか。

基盤は、電圧計、温度計共通の基盤を使用しています。基盤に書かれている部品やジャンパの位置は、電圧計用のものと、温度計用のものの両方が書かれています。気をつけないと電圧計の回路で組み立ててしまいます。(私は気がついたら、電圧計用のジャンパ配線をしていた。)

半田づけの時に隣のパターンと接触しないように注意してください。

VR2について上のいとうさん方式の変更をするときは、パターンカットをする必要があります。間違えて他の部分をカットしないように。

CPUへの配線は、PPGA-SLOT1変換ゲタへ直接配線しました。回路図にも書いておきましたが、AL31がアノードでAL29がカソードです。そうそう、AL29、AL31の位置はこうなっています。

AL29 AL31の位置

PPGA-SLOT1変換ボードを裏から見たものです。下側がSLOT1端子側です。
PPGA(FC-PGAも)のCPUはピンが欠けている角が2ヶ所ありますが、その2つの角を下にして置くと左の写真の状態になります。分かりますよね。
左の写真の左上隅を拡大したものが、右の写真です。
この状態で、左から3列目、上から4番目がAL31で、上から5番目がAL29です。
端子の間が非常に狭いので、くれぐれも隣の端子と接触しないように半田づけしてください。
PPGA-SLOT1変換カードで、AL31-B14、AL29-B15の配線がある場合は、その配線パターンをカットしておきます。

配線には2芯のシールド線を使用しました。パーツ箱の中にあったCD-ROMドライブとサウンドカードを接続するケーブル(ATAPIケーブル)を流用しました。
シールド外皮は、CPU側は開放、温度計側はAL29からの線と一緒にCOMMONへ接続しています。

小数点の点灯について、取扱説明書には「小数点点灯は簡易的には7136 TEST端子にDP1〜DP3のいずれかを接続することにより点灯可能です。」と書いてありましたので、TEST端子とDP1を接続したところ、うまく点灯しました。

まあ、半田付けのできる方なら、この程度のキットの組立は簡単なものでしょう。これが出来上がった温度計です。

秋月電子温度計の完成

しかし、組み立てただけでは温度計として使用できません。「校正」が必要です。校正は低温側と高温側の2点で行います。実際の使用状態でのCPUの最低温度と最高温度で校正しておけばいいでしょう。
私は、最低温度は室温で、最高温度は60℃付近で校正することにしました。

実は最初、最高温度は70℃で校正しようとしていたのですが、使用したカー用品温度計が最高70℃までしか測定できないものだったため、ちょっと気を抜くと温度計の測定範囲外となってうまく校正が進まなかったので、60℃付近での校正にしたのです。
たまたま、例のクーラボックスの中に20Wの電球を入れてみたところ、電圧調整なしで60℃近辺で温度が安定したことも理由の一つです。
ちなみに、私のCPU温度の最高記録は73℃です。うっかりCPUファンを電源につなぎ忘れて起動してしまい、ふと気づくとその温度になっていたのです。そのときもCPUは正常に動いていました。
まあ、そんな間抜けや、故意にVcoreを上げるといったことをしない限り50℃以上にCPU温度が上がることはないと考えています。

ペルチェを使ってCPUを氷点下まで冷却している方には、低温側の校正に「冷凍庫」をお勧めします。結構簡単に−20℃以下にまで冷えてくれます。

校正の方法は、1、低温側でVR2(zero adjust)を使って表示を基準温度計と一致させる。2、高温側でVR1(scale factor adjst)を使って表示を基準温度計と一致させる。3、1と2を繰り返すという方法で行います。

VR2はゼロ点調整用、VR1は増幅率の調整用です。一方を変化させるともう一方がずれるので何回も繰り返して校正する必要があります。私は、7回目までは数えていたのですが、その後何回やったか分からなくなってしまいました。たぶん15回くらい繰り返したと思います。とにかく製作は簡単ですが、校正には時間がかかりました。

いとうさんが「簡易校正法」を考案してくれました。本当に簡単に校正が進みます。絶対お勧めです。下にいとうさんのページへのリンクがありますので、是非見てください。

校正のために基準温度計として使用したカー用品温度計がどれくらいの精度のものか分かりませんので、あまり神経質に一致させようとする必要はなかったのかもしれませんけどね。
もし、CPUを交換した場合は、もう一度校正をする必要があるでしょう。実際校正に使用したCPUとは別のCPUを差してみたところ、少しですが温度表示がずれました。(コンマ数℃です。気にする必要は無いのかもしれませんが。)

これで、秋月電子温度計キットによるダイ温度計が完成しました。
この温度計を使えば、MBM4などのWindows上で動作するモニタソフトでは見ることのできなかった、電源ONから起動終了までの温度を見ることができます。また、わざと暴走させてその時のCPU温度を見るということもできるようになります。

しかし、完成したのはいいのですが、温度計はまだ裸のままになっています。できれば、パソコンの筐体内に内蔵して5インチベイの蓋に取り付けたいところです。
そこで一つ問題が、

秋月温度計と5インチベイの蓋

今回製作したキットの基盤は5インチベイの蓋の高さよりも5mmほど大きいのです。これでうまく取り付けることができるかどうか。できればもう少しだけ基盤を小さく作っておいて欲しかった。

もう一つ、PPGA-SLOT1変換カードでB14、B15のパターンをカットしたため、MBM4などでのダイ温度測定ができなくなりました。当然のことなのですが、何か寂しいものがあります。もちろん、秋月電子温度計とマザー上のW83782Dの両方からthermal diodeに電流を供給するようなことはできません。しかし、どちらか一方の電流だけを供給して、thermal diodeの両端電圧は両方で測るようにできれば・・・。

つまり、秋月電子温度計を、ダイオードにかける基準電圧を3.6Vにして、30kΩの抵抗を直列にした状態で(つまりW83782Dの場合と同じ動作電流で)校正できないだろうか、と考えているところです。実はそのためにもう一組秋月電子温度計を購入しています。

秋月電子温度計キットの成功者たち

うげ〜さん 1998年11月に秋月電子温度計キットを使用してダイ温度測定に成功されています。たぶん日本で最初の成功者でしょう。最初でないとしても先駆者であることは間違いありません。
四万十川五十歩百歩さん 私が「秋月電子温度計が使えるんじゃないかなぁ〜と考えていた頃に既に製作しておられました。
ヤマキョーさん 秋月温度計だけでなく、Over Clocker's Dreamに掲載されている坂巻さん設計の温度計でも成功されています。
いとうさん 私の友人で、私がダイ温度測定の道に引きずり込んだ人です。そのためか私のことを「師匠」と呼んでくれています。
s5さん 四万十川さんの製作記事を参考にして秋月電子温度計キットに成功されています。

ダイ温度測定に関係はないのですが、最後に秋月電子通商のことについて。別に宣伝ではありません。

有限会社秋月電子通商。知っている人は知っている。秋葉原にあるあのお店です。いつ行っても店の中がお客でごった返しているあのお店です。結構おもしろいものを売っているので、秋葉原に出かけたときは必ず立ち寄るようにしています。創業52年だそうです。でも、昔からずっと「秋月電子通商」という会社名だったわけではありません。私は「秋月電子通商」になる前のあのお店も知っています。ただ、あの時代のお店の名前がどうしても思い出せません。私がまだ子供の頃の話です。

2000.5.15追記 やはり秋月電子通商を昔からご存知の方からメールをいただき、以前の名前は「信越電機商会」だと知らせていただきました。思い出した、そうだった。
秋月温度計の内蔵

2000.6.19追記
秋月温度計を筐体内に内蔵しました。
5インチベイの蓋の高さより大きかったのですが、一番上の5インチベイであれば、その上に余裕がありなんとか入ったので、無理矢理取り付けました。「液晶部分と基盤部分を分離してフラットケーブルでつなぐ」などということは、考えただけで嫌になりましたのでしていません。完成した秋月温度計をそのまま取り付けただけです。
取り付け穴の加工はカッター1本、取り付け方法は両面テープで、「とにかく付けばいいんだ」という手抜き工事です。
左の写真が取り付けた状態ですが、細かい部分が見えると、雑な取り付けが分かって恥ずかしいので、わざとピンボケにしています。

そう言えば、私の愛機の写真を公開するのは初めてですね。これ1台しか持っていません。
恥ずかしげも無く「intel inside」のシールを貼っています。
一番上の5インチベイに秋月温度計です。その奥は空いているわけではなく、しっかり10GBのHDDが収まっています。その下がCD-R、DVD-ROM、FDDです。
FDDの下に口を開けているのは「カードスロット」です。なんのために付けているのかは秘密です。
3.5インチシャドウベイは2個あって、そのうちの1個に20GBのHDDが収まっています。
あと3.5インチシャドウベイが1個しか余っていません。もっとも、これ以上何かを増やそうとしても250W電源では電源容量が足りないようです。ミドルタワーの限界です。かといってフルタワーを置くような場所はないのです。

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