thermal diodeの電圧−電流特性

初出 2000.03.13
改訂 2000.04.08

最初にお断りしておきます。ここからの内容はおもしろくありません。ちょっとだけですが、技術的な内容を含んでいます。それにちょっとだけですが数学の知識を必要としています。最低限オームの法則を知っていることと、expが何であるか程度の知識が必要です。

このホームページの最初の方で「thermal diodeによる温度測定の原理」というものを書きました。その中で、ダイオードの電圧−電流特性として次のような図を紹介しています。

diodeの特性

この図は私が半導体工学の参考図書を見て「こんなもんだろう」というおおざっぱな図として書いたものです。でも、CPU内部のthermal diodeの特性が本当にこんなふうになっているかどうかはわかりません。
わかってもいないものをさも見てきたかのように説明したままにしておくというのは、私の性格には合いません。そこで、測定してみることにしました。

測定にあたって、注意しなければならないことがあります。それは、このダイオードは「thermal diode」であって、温度が変わると特性が変わるということです。したがって、測定は温度一定の条件で実行する必要があります。

しかし、室温での測定はいくらエアコンを使用して温度を一定に保とうとしても限界があります。1、2度程度は簡単に変わってくれます。
そこで、気温が変化しても内部の温度がある程度一定に保たれているような箱を用意して、その中にCPUを入れて測定することにしました。

最初に用意した箱は、住宅用の厚さ2cmの断熱材(壁の中に入れるやつです)で作った30cm角の立方体です。こいつは完全な失敗でした。人間がそばにいるだけで、内部の温度が簡単に2、3度変化します。ストーブなどに近づけようものなら、ぐんぐんと温度が上昇していきます。全くこんなもので部屋の断熱ができるんかいな。

この箱の中にもう一個箱を入れて二重にしようかとも考えたのですが、面倒なので、この方法は断念しました。
そして考えついたのが、釣り用のクーラーボックスです。さすがに保冷を目的として作られているだけあって、一応の断熱効果を示してくれます。何で最初にこれを思いつかんかったんやろ。

とりあえず、この中にCPUと温度計を入れて、温度を監視しながら電圧−電流特性を測定することにしました。

測定回路

測定のために用意した回路はこんな感じです。

1MΩと100kΩの半固定抵抗は電流調整用です。1MΩで概略の調整をして、100kΩで微調整をする考えです。後でわかったことですが、もう一個極微調整用に10kΩの半固定抵抗を追加した方がよかったようです。

1kΩの抵抗は電流測定用です。私のデジタルテスターは電流測定ができないため、1kΩの両端電圧を測定することによってこの回路の電流を測定しています。この抵抗には誤差1%のものを使用しています。1kΩですから電流50μAの時50mVとなります。

電圧計の右にあるスイッチは、1kΩの両端電圧とダイオードの両端電圧を切り替えて測定するためのものです。電圧計が2個あればスイッチなどは不要です。このやり方では、どちらかの電圧が負の値になってしまいますが、何の問題もありません。

結構悩んだのが電源です。ここで使う電源は、リップル(ACをDCに変換したときに生じる電圧の波うち)成分がないこと、ノイズが少ないこと、などの条件を必要とします。パソコンで通常使われているスイッチング電源などはノイズの問題で全く不適当です。そのかわり、最大電流は1mA以下で十分です。

thermal diodeの電圧-電流特性

この問題について5分間ほどの熟慮の結果、選択した電源は単三電池です。化学電池であれば、リップルもノイズも全く気にする必要はありません。電流は小さいですから電池の電圧変動もないはずです。今回は2個直列で3Vの電源としました。
結局この回路で、電流は約3μA程度から700μA程度まで変化させることができました。thermal diodeの動作電流はINTELのデータシートによれば、5μA〜500μAですので、ちょうどいい範囲といえるでしょう。

とりあえず、温度20度でダイオードの両端電圧を10mV毎に変化させ、そのときの電流値を読みとってグラフにしてみました。
測定に使用したCPUは、Celeron 333 99年8週 MALAY製です。
なお、ここから先の測定値は全て、5回の測定を行いその平均値をとっています。

うーん、きれいですね。一発でこういうきれいなグラフが得られるというのは感動です。この測定には20分程度かかりましたが、クーラー内の温度は0.1℃の変化もありませんでした。クーラーボックスの断熱性はいいようです(もっとも、室温に近い温度での測定ですので、変化がないのは当然とも言えますが。)。

この測定方法が有効であることが判明しましたので、いよいよ次の測定に移れます。thermal diodeの温度特性の測定です。

でもその前に、ちょっと気になることがあるのでそちらを先にすませてしまいましょう。

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