スパイク・インターナショナル日本アルペンラリー観戦記

SUBARU ImprezaWRC2001

2001年5月19日,20日に日本初の国際格式ラリー,スパイク・インターナショナル日本アルペンラリーが開催されました.本当は全日観戦したかったのですが,懐が厳しいことと,日程的に難しいため,19日のみの観戦となりました.

ラリーは群馬県の表万座スキー場駐車場をサービスパークとする嬬恋村と草津町を中心とした地域で行われ,全12SSで構成されます.SS区間総距離63.92km,総走行距離428.83kmであり,海外で行われているWRCに比較すると規模は小さいですが,初めの一歩としては十分なものではないでしょうか(詳しくはオフィシャルサイトをご覧下さい).

ただラリーのことだけを書いても良いのですが,ぶっちゃけた話,数行で終わってしまいかねないので(それでも良いって?なにお〜!),その前日の18日,出発のお話から19日のラリー観戦まで,二日間の事を書いていきます.

18日 出発

18日朝,相も変わらずバスの時間ぎりぎりに起きてカップ麺を急いで胃袋へ投入.

「麺が変わったんだ,ソースが変わったんだ」

とか言ってますが,あたしにゃ分かりません,ちゅうか,味わってくうてる暇無いっちゅうねん.

急いでバス停へ向かい,間に合ったかなと思いきや出発時刻を10分間違えてるし.はしらんで良かったですやん.さらに替えの靴下や目覚まし時計を忘れていることに気が付いてショック.カメラとフィルムに気を取られ過ぎたんですわ.その上傘まで忘れました.まぁ,天気予報では晴れやしいらんやろって高をくくったのが運の尽きでしたな.まぁこれは後ほど明らかになりますが.

バスと新幹線,山手線を乗り継ぎ,2phase氏と待ち合わせ場所である秋葉原へ向かいます.久々のアキバ.なんか景色が変わっているねぇ…と思いつつ,パーツ屋には一件も行かずにカメラ屋を梯子.

ああ,流石に明るいレンズは高いねぇ.やっぱり200mm程度の望遠は居るのか,それとも手持ちの28-135mmで大丈夫か…など考えつつ,中古なら何とかなるかも…とショウケースを覗くも値札を見て撃沈.私の薄い財布には明るい望遠レンズはひっくり返っても買えません!!と言ったところで2phase氏から電話が.

「今仕事終わったからそっち行くわ」

18日 万座温泉へ

2phase氏とアキバ駅前にて合流し,氏の寮まで電車で移動.久々の再開なので道中話も弾みますな.そして寮からインテグラtypeRで群馬へレッツゴー!と言いたいところですが,まずは真っ直ぐコンビニへ寄って翌日の昼食の準備を.何故ならば,私たちが申し込んだツアーは18日の夕食,19日の朝食(おにぎり)はでるものの,昼食が出ないのですね.まぁ,ラリー初観戦と言うことで興奮しているでしょうからあまりお腹は空かないだろうとの予測の元,カロリーメイトを二つ購入.

さて,本日の宿である万座温泉ホテルへのルートですが,

国道17号線 −> 関越自動車道(本庄児玉〜渋川・伊香保)−> 361?号線 −> 145号線 −> 144号線 −> 万座ハイウェイ −> 万座温泉ホテル

と,片道で180km程です.4時前に出発しているのでまぁ,8時くらいには着くだろうと思っていたらのっけから渋滞.2phase氏曰く「ここはよく混むねん」

そのまましばらく走ると道路も空いてきて良い感じに.しかしなんとまぁ山の影も形もない事よ.流石関東平野.視界360度真っ平ら.送電線の鉄塔だけが北へ北へと連なりある種異様な景色となっていますな.

そうこうしている内に関越自動車道へ.漸く山並みが見えてきたと思ったらなにやら雲行きが怪しい.まさか雨でも降るんやないやろねぇ?

高速を降りて近くのコンビニでホテルへ電話.時計は6時過ぎを指しており…

「今,渋川・伊香保インター下りまして,そちらに着くのは8時過ぎくらいになりそうなんですが,夕食は大丈夫でしょうか.」

そう,折角18000円/1人払っておいて夕食喰えないと話になりません.温泉場ということもあり,そこそこのものが期待されますし.

「6時には既に作ってしまっているので…取り置きしておくことは出来ますが,生ものなども有りますからそこのところご承知置き下さい」

とのこと.ぎゃふん.参った.5時までに電話いただけたら作るのを待っていたのですがとのお話も.実家が旅館やってたのに何やってんだわしは.そんくらい分かるやろうに.もう背に腹はかえられまへん.多少質が落ちようが,晩飯くえんのでは話にならない.「すんません,お願いします」と言うわけで少しでも良い状態の晩飯を,と路を急ぐことにしました.

万座ハイウェイにつく頃には時計の針は8時を指しており.しかしながらもう少し走ればホテルです.と,料金所が.そう,万座ハイウェイは名前から想像が付くように有料道路なんですな.しかも1050円となかなかのお値段.この有料道路を通らずに万座温泉ホテルに行く道は有るのですが(国道292号線),一刻も早く晩飯にありつくためにはここを通らねばなりません.が,しかし,料金所は真っ暗で人っ子一人おらず.

「ありゃりゃ〜.どうなってんの?」

取り敢えずそこはそのまま通り過ぎ,ハイウェイ出口で請求されたらそこで払おうと言うことで走っていったのですが…どうやらハイウェイの真ん中で料金を払う形式らしく,出口にも入り口にも料金所はなく.と言うことは,さっきの料金所は一体?夜はタダになる有料道路って事ですか?静岡にも浜名バイパスなどは夜中タダなんてとこは有りますが,ここも走らしいですな.ちょっと得した気分.

18日 ホテル到着

そうこうする内に万座温泉のホテル街に到着.ホテルの場所を示す標識を頼りに車を走らせていくと…ありゃ,明かりの点いているテントおおっSTiの文字が!!取材か何かでしょうか?それとも明日から始まるラリーの最終打ち合わせかな?翌日ラリーを見るとはいえ,正直あまりぴんと来ていなかったんですよね.でもこういうのを見ると俄然テンションが上がります.ええ写真撮るでぇ〜〜〜.

ホテルに着くと,駐車場にはランサーエボリューションやインプレッサなど,明らかに明日からのラリーを見るために来たという人たちの車が沢山並んでます.地元群馬ナンバーも有りますが,三重ナンバーもあり遠くから来てはる人も居るようです.その中に車を停め,いざチェックイン,そして飯じゃ!

食堂には人影はなく,ぽつんと私ら二人分の夕食が置かれてあり.席に着くと「只今青みそ汁とおそばをお持ちいたしますので…」おおっ有り難いことに暖かいみそ汁ですな!.感謝しつつすすると…うはぁ味が無茶苦茶濃い.何かそうめんの汁をそのまま温めましたというほど濃い.私が関西出身で小さい頃から薄味になれていたというのもありますがね.

食事を終え,早速温泉へ行きます.実は温泉街には行ったときから硫黄の臭いがどことなくしていたのですが,もう臭いぷんぷんですわ.効用は…あまり覚えてません.皮膚疾患などが書かれてありました.妊婦さんは入っちゃ駄目らしいです.湯は薄い乳白色であったかほかほか,というか,熱い.湯船は木で組まれており,なかなか良い感じです.露天風呂もありまして,標高1800mの高地らしく外は非常に寒いのですが,湯に浸かったときの熱さとのギャップがまた良い感じです.露天風呂は他にもあり,そこは男女混浴と言うことで興味津々だったのですが,100%おばちゃんおっさん等によって占められて居るであろう上,既に夜も10時をまわっていたため,明日に差し支えるといけない(何と5時起きです!!)ため,今度来たときに取っておくと言うことで温泉から上がりました.

さぁ,いよいよ寝て目が覚めたらラリー当日.兎にも角にも寝坊だけは絶対してはならんと,目覚まし時計を探すも…あちゃ〜忘れてるがな.やばいでぇ.と,2phase氏の携帯電話には目覚まし機能が付いているとのこと(私の携帯にはそんなもん付いてないんですね).助かりました〜.とは言え,普段2つの目覚ましとミニミニコンポからの音楽で目を覚ましている私,ちゃんと起きられるかかなり不安.もう気合いで起きるしかない!と頭の中で5時5時5時5時…と念じつつ…ではおやすみなさ〜い.

19日 朝

凍ってる

はっ何時や!!とびっくりして起きたら4時半.もうちょっと寝よ.と次の瞬間には5時まわってました.まぁ,よくあることですな.兎も角顔を洗って観戦に必要なもの,カロリーメイトやゴミ袋,上着,忘れたら困るSS入場チケット,カメラ等をまとめ,それ以外は2phase氏の車へ置かしてもらうことになりました.

屋外に出ると…寒いっす.5月でもここら辺はまだまだ寒いようで,車が真っ白になってます.ホテル前には既に我々を観戦ステージへ運ぶツアーバス(マイクロバスですが)が到着しておりました.荷物を車へ運び終わり,旅館の方からおにぎりとお茶を貰ってバスへ乗り込むと,同じ目的の方々がすでに乗ってはりまして.驚いたことに女性も.恐らく夫婦だと思いますが.

バスはヘッドクォーターが置かれている万座プリンスホテルを横目に一路観戦SS駐車場へ.途中,本日表万座駐車場で行われるレプリカカーイベントに出場するのであろうレガシーB4がスバルのカラーリングを施してこれ見よがしに置かれていました.

バスはまず嬬恋SS駐車場のある表万座駐車場へ行き,そこで観戦客を降ろしてからさらに草津SS駐車場のある天狗山駐車場へ行きます.表万座にはスムースに到着し(着いてから10分ほど待たされましたが)たのですが,草津SSが大変でした.天狗山駐車場へ着くとそこは駐車場へ入るのを待つ車で渋滞が起こっていたのです.バスは駐車場とは反対側の車線を走っていたので入るためには右折しないといけないのですが…道路整理をしている人にバスの運転手が聞くと,どうやら渋滞の最後尾に回って下さいと言われたのでしょうか,そのまま右折せずに直進.しかもバスなのでなかなかUターンできず,渋滞の最後尾からかなり離れてUターン.なんてことだぁ〜〜.で,天狗山駐車場へ着いた頃には30分以上経ってました.

今回,各SSへは直接車で乗り入れることは出来ず,一旦別の駐車場(嬬恋SSは表万座駐車場,草津SSは天狗山駐車場)へ車を停めて,そこからバスで観戦駐車場へ観客をピストン輸送するという形を取っていました.そのため,今度はバスに乗るために並んで待たなくてはいけないのです.10分ほど待ってバスに乗り込み(SS観戦券と引き替えにSpectatorと書かれた紙を首から下げます.何かいよいよ来たって感じですな),漸く草津SS駐車場へ.

草津SS駐車場自体はさほど遠くない位置にあったのですが,駐車場というか,高速道路の小さいパーキングよりも小さい,ただの広場と言った感じでとてもじゃないですが,多くの車をおけるスペースは有りませんでした.これじゃあ前記のような形をとってもなるほどと思います.

19日 草津SS

さて,バスから降りると今度は観戦場所まで歩きます.これも1km以上有りまして,スペクテーターの列が道に沿って長く続きます.途中,道に面した広場でrally-X紙の特販テントがあり,ラリーカーのミニカーや,ポスター雑誌などが売られてありました.今回のラリーのグッズは売られておらず,そのまま何も買わずに道に戻りました.

道は車2台がすれ違いできるぎりぎりの幅で,途中には民家や畑もあります.こんな静かな,普通の,言い方は悪いですが所謂何もない場所をラリーカーが駆け抜けるということが,ラリー開始を数時間後に控えているこの瞬間においても,私にはピンと来ません.

しばらく歩き,と,草津SSのスタート地点&小雨SSのゴール地点となる札が.やっぱりこんな狭い道をかっ飛ばすのか!!と何となくピンときつつ.と,たったったと走ってきたおっちゃんが,なにやら道路に字を書き始めました.「新井」と.書き終えるとたったったと走ってまた書いてます.「新井」と.ラリーっていろんな人が来るんですなぁ.まぁ迷惑にはならんがあまり勧められたもんじゃないですし.ただ,ドライバーがこのような名前の書かれた所謂応援メッセージが目に入ったりするらしいので,「あそこのコーナーで云々」とか面白いかも知れませんな.

さてはてスタート,ゴール地点を過ぎると直ぐにスペクテーターの観戦可能エリアを示す青テープが道の脇の盛り上がった土手部分に,木々を渡して張られてあります.それを見た感想.

「むっちゃ近くで見られるやんけ!!」

ここへ来るまでは,日本初の国際格式のラリーと言うことで,主催者側は「絶対に観客を巻き込む事故を起こしてはいかん!!(何故ならそれによって日本で念願のWRC開催は無くなるだけでなく,国内ラリー競技も消し飛んでしまう可能性があるからです)という意気込みの元,開催準備を行っていると考えていたため,きっと道路からかなり離れた場所にテープが張られたいるのだろうなぁと予想していたのです.

が!!確かに安全のために道路から1m程盛り上がった土手の上にテープが張られてあるとは言え,ほんとに目の直ぐ前で観戦が出来る環境じゃないですか!!道から1メートルと離れていない場所でっせ(勿論,コースの状況によってテープがかなり奥に張られている場所もありましたが).嗚呼,200mmや300mmの大ズームを買わなくて良かった…じゃなくて,F1やカート,GTレースでは味わえない(ちゅうか,そっちには全く興味ないですけど…失礼ながら,同じコースぐるぐる回って何が面白いんだろうって思うので)ラリーならではの観戦!!こんな近くで見られるなんて…来て良かったですわ.ほんっと.

ずんずん歩いていくと,このSSの目玉とも言える三連ヘアピンが姿を現します.が,そこには既に数多くの観客が.そう,今更ながらなんですが,思っていた以上に人が多い!正直なところ,ラリー好きや,レース好きのおっさんや兄さんぐらいしか来ないだろうと高を括っておったんですが,無茶苦茶人居るんですわ.先に車が渋滞していたとか書きましたが,本当に人一杯.しかも女性や年輩の方も居まして意外や意外.もしかしたら全国のラリー好き集ったのかも知れませんが…

結局三連ヘアピンは諦め,その代わりそのヘアピン手前の直線部分の道路脇土手に陣取りました.ここならSS2,3ではヘアピンへ向けブレーキングを始めるラリーカーを,SS5,6ではヘアピンを立ち上がってくるラリーカーを観戦できます.

観戦場所の確保は出来た!後はラリーが始めるのを待つだけですが…時計は未だ10時前.SS2の始まる12:08にはまだまだ時間が…あたしゃ寝ます…

19日 うぉー

11時半頃からマーシャルが動き出します.

「もうすぐスタートなので場所を移動しないようにして下さい.」

とのこと.要所要所に待機しているマーシャルに笛を渡して行きます「車が来たら吹いて!」そんなのあらかじめ渡すようなもんやんか,と思ったりもしますが…それまで椅子に座ってしゃべっていたり,私のように寝転がっていたり,思い思いに時間をつぶしていた観客はもうすぐ始まるレースへの期待感から立ち上がり,カメラやビデオの準備を始めます.むろん,私もカメラのチェック,ファインダーを覗いて車が走ってきてどこでシャッターを切るか,振り抜き(流し撮りですからね)の練習などします.

そうこうしている内に遠くからサイレン音が聞こえてきます.コース内に障害物などが無いかを確認するための000号車(三菱FTO)です.車の天辺には黄色い,所謂パトランプが付けられて有りました.普通にゆっくり走ってくるかと思いきや,結構な速さで目の前を通過していきます.そして5分の間隔を置いて00号車,0号車(2台ともスバルインプレッサ)がけたたましくサイレンを響かせながらコース内を走り抜けていきます.この2台も相当なスピードを出しており,その豪快な走りに観客からも歓声が湧きました.

しかし,本番はこれから.0号車の通過後,いよいよ待ちに待ったラリーカーの登場です.そしてトップを切るのは,今年からスバルワークスシートを得た新井敏弘.駆るは当然スバルインプレッサWRC2001.日本で初めてワールドラリーカーが公道を走る,その瞬間を,今か今かと待ちかまえる観客からは声が消え,コースは沈黙に支配されます.

スバルインプレッサWRC2001

やがて遠くからエンジンの爆音,バックファイアの音が聞こえてきました.その音は大きく,小さく揺れながら,しかしだんだんとはっきりと聞こえ出します.

「来るか,来るか」

と,全ての人が息をのんでその瞬間を待っていた刹那,前方から歓声が聞こえたかと思うと,轟音と共に猛烈なスピードで新井選手の運転するインプレッサWRC2001が!! 唸るエンジン,パッパッとストップランプが点滅,スキール音そして轟然と響くエンジン音.暫くして漂うタイヤの焦げる臭い.

インプレッサWRCが通り過ぎ,一瞬の沈黙の後に歓声が.みんなが興奮しています.

音,スピード,迫力,その前にはもう沈黙しかないです.何とも言えない衝撃.こればかりはもう,実際に見ないと分かりません.私の拙筆では表現のしようのないものです.雑誌の写真からも,ビデオからも,この迫力,衝撃は伝わらないです.もう,すごいの一言.

「見に来て良かった〜」

恐らくそこにいた全ての人がそう思ったでしょう.ほんっとに来て良かった!!

19日 雨…

興奮も冷めやらない間に田口選手の運転する三菱ランサーエボリューション6を始め,次々とラリーカーが爆音を響かせコーナーに突っ込んでいきます.ヘアピンで豪快にドリフトを決めるラリーカーや堅実にコーナーをクリアしていくラリーカー.それぞれが観客を楽しませ,観客もそれに歓声で応えます.そうそう,車体No.は忘れましたが(エボでした),目の前を通り過ぎ,コーナーに入る寸前に,目の前で

バンッ

と凄い音と共に排気管から炎が吹き出る,所謂「バックファイア(で合ってるんでしょうか?)」を見たときはびっくりしました.実際に本物を目の前で見たのは初めてですからね.

「今の撮った?」

「いや,撮ってない」

嗚呼,もったいないことしたなぁ.と思うことしばし.

今回のラリーでは国外からもエントラントがあり,お隣韓国からはヒュンダイクーペを駆るジュンヨン・パク選手,ジャマイカのラリーチャンピオンであるダグラス・ゴア選手(三菱ランサーエボリューション),フィリピンからはセルジオ・Jr・イサダ選手(スバルインプレッサ)など.他に,頭文字Dで人気のカローラレビンや,軽ながらエボを喰った走りを見せた船木選手運転するスバルビビオなど.変わり種としては山中知之選手運転するトヨタヤリスが出場しています.日本名で言うヴイッツですね.これは某雑誌の企画で参加したもので,秋に開催予定のインターナショナルラリー・イン・北海道にも出場するようです.

全てのラリーカーが走行を終えると,最後にスウィーパーがサイレンを鳴らしながら走行しSSが終了します.今の今まで目の前で,ホントに手を伸ばせば届きそうな近くを走っていったラリーカーについて,思い思いに話す声があちこちで聞こえます.しかしその声も,000号車のサイレン音でかき消され,再び観客は林道の先を注視し,ラリーカーの登場を待ちます.

SS2での興奮も醒めやらぬ間にSS3が始まり,新井選手を先頭に次々とラリーカーが爆音を轟かせ,車両二台が並んで一杯一杯の林道を,普通の人には到底出来ないようなスピードで駆け抜けていきます.私もそれらラリーカーに向けてシャッターを切りまくります.と,ぽつぽつと何やら冷たいものが空から.そうです.晴れるだろうと,何の準備もしていなかった私に山をなめるなと言わんばかりに雨が降り出してきたのです.この雨が,その後にこの場で起こる出来事の原因の一つとなるのです.

雨はSS3の途中から降り始め,SS3終了後に止みます.しかし空は,一面が雲で覆われ,何時降り出してもおかしくない天気です.

SS5が始まる迄は2時間ほどの余裕があるため,林道出口付近の観戦場所へ移動する人達が道を歩いていきます.帰りのバスも混雑が予想されるので,いち早くバスへ乗りたいという人達でしょう.最悪の場合,雨の中バスを待つ事になりますからね. 私と2phase氏は,コーナーから立ち上がってくるラリーカーを少しでも近くで見ようと場所を少し移動しました.

SS5が始まる直前から雷鳴を伴う雨が降り出しました.路面は完全にウェットで,ドライターマック仕様のタイヤを履いている各選手には辛いSSとなります.特にWRC仕様のドライターマックを履いている選手は.

SS5,トップを切って走る新井選手は,豪快なドリフトをきめ(たらしく,背後のヘアピンで見ている観客から大歓声が上がってました)て,流石ワークスで走っている人間は違うって言うのを見せつけます.次は田口選手です…が.

19日 スタック,そして激論

コースオフした田口,リンガー両選手

遠くからエンジンの音が聞こえてきます.私たちの居る観戦場所の後背に当たる三連ヘアピンの入り口からマーシャルの吹く笛の音が鳴ったかと思うと,急にエンジン音が大きく聞こえ,その直後に「おお〜」という観客のどよめきが.と,エンジン音が小さくなったと思ったら,今度は断続的にエンジンを吹かす音が.

「コースアウトしたか!?」

その場から走って現場であるヘアピンを上から見下ろせる場所まで来たとき,コースオフし,スタックしたまま自力で抜け出せないランサーエボリューション6が目に入りました.スタックしたのはヘアピンのアウト側.コース上に車体の左半分を出して動けずにいます.コ・ドライバーのリンガー選手が助手席から両手を上に挙げて「来い!来い!」と観客に助けを求めます.WRCの世界で有れば,観客はそれに応えてわらわらとコース上へ飛び出し,スタックした車を押してコースへ復帰させる場面となるのですが…

リンガー選手のジェスチャーを見て,エンジンを吹かし,何とか出ようともがくランサーを救おうと,8名程の観客が規制テープを乗り越えコースへ向かいます.しかし,それを見たマーシャルは

「危険ですからコースへ出ないで下さい!!」

と叫び,飛び出した観客の前に立ちふさがり,押し返します.仕方なく規制テープの内側へ戻る観客.

なお必死にコースに戻ろうとする田口選手.コ・ドライバーのリンガー選手は助手席から出て「みんな押してくれ!!」と観客にアピールします.対して観客は静まり返ったまま動きません.マーシャルもただ状況を見守っているだけです.

耐えかねた観客(先程と同じ観客かどうかは分かりません)が,再びコースへ.再びマーシャルが「危険ですから!!」と押し返します.急にエンジン音が聞こえてきます.田口選手と同じ,ADVAN-PIAAラリーチームの奴田原選手のランサーエボリューション7がやってきたのです.マーシャルはランサーのやってくるコーナーへ向かって走りながら大きく両手を振ってスローダウンを指示します.ランサーはスピードを落としつつマーシャルの脇をすり抜け,ゆっくり(と言っても十分速いですが)と田口選手のランサーの横を通り過ぎると全開で続くヘアピンへ突っ込んでいきます.パク選手の乗るヒュンダイクーペも田口選手の横をすり抜け,走っていきます.

マーシャルは助手席から田口選手へ話しかけています.何をしゃべっているのかは分かりませんが…車を降りるようにとの指示なのでしょうか?暫く話して田口選手が車を降り,道路脇へ退避します.

田口選手がスタックしてから2〜3台のラリーカーがコースを走ってから,競技は中断しました.観客から声が出ます.

「車を出してやれ!」

「どうして車を出さない!」

「危ないというのなら,マーシャルが出してやれ!」

「ヘアピンのアウト側に車があったら他のラリーカーが危険だろう!」

「どうして出さない!!」

マーシャルからはどういう返答があったのかは記憶にありませんが,「危険だから」の一点張りであった気がします.

その間にオフィシャルカーがやって来てスタックしているランサーの横へ…停まるのかと思いきや,そのまま通り抜けて行きます.恐らくコースのどの地点でスタックしたのか,スタックしたままラリーは続行可能かどうかを確認しに来たのでしょう.暫くすると再びラリーカーのエンジン音が遠くから聞こえ始め,田口選手のランサーはスタックしたまま再開されました.

何とか車を出そうとするリンガー選手

SS5が25分程遅れて終了します.

観客から

「次のSSはどうするの?中止なの?」

という声が.このとき,その場のマーシャルを仕切っている偉いさんが拡声器で状況の説明を始めました.

「ラリーは続行します」

再び観客側がマーシャルに言います.

「どうして車を出さない!」

「他の車が全開でコーナーに来るのに危険でしょう?」

「どかさないと全開走行が出来無いじゃないか!」

「マーシャルが出せ!」

「手を出せないのならレッカーで移動させろ!」

対するに彼は

「レッカーは呼ばない.」

「ラリーを中止しても良いのか?」

と.これに対して観客の一人が

「マーシャルは帰れ!」

という言葉に

「お前こそ出ていけ!」

とのマーシャルの怒声(その後,某掲示板や雑誌で,マーシャルが観客の胸ぐらを掴んでどうのこうのという状態になっていたことを知りました.)が.ステージは一時騒然となります.

観客側(?マーシャルかも)からも,マーシャルに向かって口汚く罵る観客の一人に

「そんなに騒いで楽しいか?」

との声が飛び,私の近くにいた女性のマーシャルは携帯電話で「こっち来れない?やばい状況なんだけど…」と助けを求めるほど,その場の雰囲気は非常に悪いものになってしまいました.

この間にもリンガー選手は車を出そうと近くに落ちていた小さい丸太を使って車を出そうとしています.見ていて哀れというか,なんというか.手を貸せないのがもどかしかったです.

19日 来年も宜しく

結局のところ,スタックした田口車はそのまま,SS6は開始されました.

競技の遅れを取り戻すためか,グループAは2分間隔,N,Jは1分間隔でスタートするはずのラリーカーは次々とコースに登場します.私の近くに居た人が時間を計っていたところ,約40秒に一台の割合で通過しているとのこと.

雨は相変わらず激しく降っており,全てのラリーカーがドライタイヤを履いているにも関わらず,私には理解できないスピードでコースを駆け抜けていきます.その度に「おお〜」というどよめきが起こります.コーナー脇に有るランサーエボリューション6を,まるで前からそこにある,岩や何かのように感じているのでしょうか,お構いなく全開で突っ込んでいって豪快にドリフトをきめ,走り抜けていくラリーカーもあり.そのせいなのか,観客を楽しませようとサービス精神が旺盛なのかは分かりませんが,コーナーでスピンしてしまうラリーカーも2台ほど有ったようです.

以降,ラリーは何事もなく進行し,トヨタヤリスがコースを通過して暫く経つとメディアっぽい方数名がコースを歩いて行きます.あれっスイーパー通のちゃうの?と思っていたらマーシャルが

「まだコースに出ないで下さい!」

「下でもう良いよって言われたけど」

とそのまま歩いていきます.う〜ん,何かようワカランけど…取り敢えずもう帰って良いようです,が,田口選手とランサーはどうなるの?とスタックしているランサーが見える場所まで移動します.

帰り道

雨は大凡止みましたが,全身ずぶぬれ.木々の下に居たことと,立ちっぱなしで居たため下半身はさほど濡れていないのが救いですが,カメラはしっかり濡れておりちょっと心配.レンズは黴びると大変なので.

「田口選手ってリタイアになるのかね.」

「どうやろ,やっぱりそうなんちゃう?」

「来年出来るんやろか?,あんな事有って」

「暴言は良くないよな〜」

などと言いつつ暫く歩いていると,背後から声とエンジン音が.何とスタックしていた田口ランサーがゆっくりと林道を走ってきます(後に雑誌で観客が手伝って脱出させたらしいと知りました).ゆっくりと走る田口選手に誰からともなく拍手が.私たちも,そしてその場にいた他の人達へも自然と拍手は広がり,ランサーの周りは拍手で覆われ,田口選手の健闘を讃えます.それに応えて田口選手は窓から手を振ります.

田口選手のリタイアは残念だったし(他にもリタイアした選手は居ますが),その後のピリピリとした,一触即発といういや〜な雰囲気も有り,正直「おいおい,ラリー中止かぁ?」など嫌な気持ちにもなりましたが,それ以上に,このラリーを楽しめたのは揺るぎない事実です.初めてのラリー観戦という事もあるでしょうが,本当に面白かったです.ほんっと直ぐそこを猛烈なスピードで駆け,くねくねとしたコーナーを素晴らしいテクニックで抜けていくんです.こりゃあもう凄いとしか言いようがないです.

「来年も是非開催して貰いたいな.そしたら絶対見に来る!」

と2phase氏と話しながら,ランサーの後姿を見つめていました.

番外

さて,ラリー初観戦のお話でしたが,ここで得た教訓というか,知識というか,次回はこんな事に注意しよう!てな事をかいつまんで書きたいと思います.

山の天気をなめるな!

すいません.私はなめていました.ちゅうか,数日前の天気予報では晴れであったので雨が降るなんてこれっぽっちも考えていなかったのですね.現地に着いてから天気予報で軽い雨が降ると言っていたのも特に気を留めなかったですし.ところがこれが雷鳴轟くなかなかの雨が降ってくれました.やはり絶対晴れると天気予報で言っていても傘や合羽など雨具は持っていった方が良いです.

(行楽用の折り畳み)椅子は持って言った方が良い!

ラリーの観戦自体は正味十数分です.今回は同じ観戦ポイントで4回のSSが行われたので非常にお得と言えますが,それでも朝9時前にはSSに入り,ラリーが終わる4時までSSの外にでることが出来ませんでした.つまり,その間ずっと立っているか,座っているか,転がっているかしか無いわけです.ラリーカーが走行している間は立っていてもさほど辛いとは思いませんが(アドレナリン出てますからね),待ち時間は辛いものがあります.それに林道脇のまさに林の中での観戦ですので,何気なく座ったら熊笹や枯れ落ちた木の枝がケツに刺さります.行楽用の折り畳み出来る椅子か,寝転がっても大丈夫なようにビニールシート(安モンでは直ぐに穴が空きます)等を持っていった方が良かったです.小さな脚立でも良いかも.写真撮影に使えるし.

帽子もね

今回の観戦では,SS2が始まる迄は太陽が容赦なく照りつける天気で,厚着していた服を脱いだ程です(朝晩は冷え込みますから上着は必須です).たとえ林の中でも木漏れ日で十分頭は熱くなります.それに雨が降っても頭が濡れるのを防いでくれます.帽子は必須でしょう.因みに私はこれも忘れました.

体調は整えて

今回ラリーが行われたのは,冬はスキー客で賑わうだけ有って標高1800mとかなりの高地でした.平素標高数メートルで暮らしている私は環境の変化に付いていけず,軽い頭痛,腹痛に悩まされました(頭痛の方は,2phase氏曰く,「それって高山病ちゃうの?」とのことでした…なんか不可抗力ですな).体調に自信のない方はそれ相応の準備をしておいた方がよいです.それに昼間は初夏の日差しであっても朝晩は写真にありますように霜が降り,水たまりは凍るほど気温は下がります.ここら辺の準備も大切です.

便所は並ぶ!!

並びます.どうしようもありません.草津SSでは入り口付近と中程に合計10ケの仮設トイレがありましたが,そんなんでは足りません.まず並んでしまうので,ぎりぎりまで我慢してから行くと酷い目に遭います.それにSS開始ぎりぎりで行くと,並んでいるために折角陣取った観戦場所に戻れなくなる可能性もあります.早め早めに行動した方がよいです.間違っても立ちションや野うピーは止めましょう.人だらけですから出来ないと思いますが,いい年こいたおっさんがなさるのは社会人としてどうかと思います.

まぁ,こんなところでしょうか.

今回の観戦は初めてと言うこともあって,忘れ物,これ持っていった方が良かった,スケジュールはもう少ししっかり立てておくべきだったなど,反省点は多くありました.しかしながら何をおいても一番驚いたのは観客の多さ!雑誌などによると19日,20日合わせて7000名が,あの狭いSSの観戦場所(観戦場所はSS内でも更に細かく規制されており,SS全域において観戦すると言うことは出来ませんでした.これは観客の安全,ラリーを円滑に進める上では仕方のないことだと思います.ここは日本ですし)に居たというのですから驚きです.私と2phase氏が居た19日の草津SSには2000名が居たようです.チャーターされた観光バスによって駐車場からSS駐車場までピストン輸送が行われたのですが,並んでもなかなかバスに乗れず,というのは言い過ぎですが,運んでも運んでも人は減らず,と言う感じでした.

で,今回ツアーで参加したのですが,やはり不自由ですね.ホテルからマイクロバスでSS駐車場へ移動するのですが,一台のバスで嬬恋SS,草津SS二つの指定駐車場である表万座駐車場,天狗山駐車場へ移動します.今回はまず表万座駐車場へ行き,その後に天狗山駐車場へ行きました.表万座駐車場へはスムースに行けたのですが,その駐車場で15分ほど待たされ(何か良く分かりませんが,駐車場の警備員とあーだこーだしゃべってました),その後天狗山駐車場へ着くと既に渋滞が始まっていました.そこで渋滞の最後尾まで回って更に時間をロス.そして,帰りには,アクシデントのためにラリーの終了が予定時刻よりも遅れたことと,大型バスによるピストン輸送待ちによって,帰りのマイクロバスの集合予定時間にピッタリに天狗山駐車場に着くという,なんとも余裕のないものになってしまいました.おかげでラリーグッズを買うこと叶わず.

ただ,ツアーだと,自分で宿を探さなくても済みますし(知ってる土地ならいざ知らず…),予定など特に細かく考えなくても指定された時間に指定された場所に行けば後は付いて回るだけで済みますから,楽は楽ですけどね.

今回は初めてのラリー観戦と言うことでツアーで申し込みましたが,来年(アルペンラリーが行われるならば)はツアーではなく,有給取って,時間に余裕を持って行きたいですね.


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