- Category palette -
海外


ヨールのある国、夜のない国


 17:Sytten叫び!

 
ホテルに着くと「Welcome! Orochi」の文字がTVに映っている。部屋自体は非常に狭い。ホテルというよりは、ビジネスホテルのシングルである。これで¥14000だから、やっぱ、高い!(そういえば、飛び入りでとったあのスタバンゲルの豪華なビクトリアホテル。クレジットカードの明細をみると、¥11322だった。なんと!一番安いではないかっ!!(その下に括弧でSホアミアトキオネとかかれているのは何だろう?呪文?いや、何か化けているんだとはおもいますが・・・今、分かった!スタバンゲルの(ノルディック表記の?)ような気がする・・・)ちょっと余談)。

 さて、調べてみると、わずか2区画先に国立美術館があることが分かる。そう、あのムンクの『叫び』があるところだ。特別興味があった訳ではないが、オスローでは観光の目玉だ。ミーハ根性丸出しで見に行くことにした。

 国立美術館は入場無料。つまり、ノルウェーが世界に誇る近代の画家、ムンクの『叫び』はタダで見ることができる。豊かさとは何か?。国民が大切に大切にしているそのお宝を世界中の人にタダでみせようという発想。そして、お金さえあれば、豊かであると信じている某国の人達。その思想の落差を実感する。大切なものは何なのか・・・深く深く考えさせられた。

 路地には大型観光バスが何台も路駐している。ここはオスロの団体旅行の拠点。ちょっと、やな予感。中に入ってその絵の多さに驚く。最初は順番通り見て行くのだが、なかなかムンクの絵が出てこないのでいらいらしてくる。あとでパンフレットを見ると、フロアは1−3Fまで、61に区切られていた。疲れるはずだ。

 ムンクの絵は24番目のセクションにあった。『叫び』を見たとき、思わず涙・・・なんてことは無かった。あぁ、たしかに、あの有名な絵だなという感動というよりも、納得であった。それにしても人がごった返していて、多いこと。しかも、おばさん達の日本語がバンバン飛び交っていて、美術館独自の持つ雰囲気が台無しであった。

 とはいえ、隣にあった「マドンナ」(後で知ったがこれも彼の有名な作品らしい)はよかった。その周りを何回も行ったり来たり、振り返ったりした。死神にでもとりつかれたかのような、彼女の表情は見るたびに違った想いを私に訴えかけてきた。

 美術館を後にする。ホテルのすぐそばだから、また、明日くれば好いだろうということになる。月曜だから少しは人も減るかもしれない・・・。天気はピーカン、歩くと少し汗ばむ。近所のコンビニでソフトクリームを買い、カールヨハン通りに面した緑地帯にある木陰のベンチに座る。となりは、おばあさんが2人でのんびりお話をしている。
そこへ若い女性が入ってきて「変わった組み合わせだな?」と思っていたら、そそくさとおばあさん達は席を立ってしまった。ふと、一瞬いやな予感。その女性は、

     「ここ、空いてます?」

と空きベンチがほかにあるにもかかわらず、私の隣に座った。頼みもしないのに自分の身の上話を始める。

    女「私は旅行をしていて、このオスロにきて、お金を落として、この先、
      旅を続けることができない云々・・・だから、あなたは私にお金を
      与えなくてはいけない・・・」

    お「・・・あなたの言ってることが分かりません」

    女「お金よ、お金!」

 ポケットから小銭を出して私に見せる。カチンときた。ふざけるな!。何も言わずにベンチを立った。どこの国に恵んでくれる人に、説教を垂れる乞食がいるんだ!
・・・と、ここにいるから仕方ない。こんなに態度のでかい乞食は初めてだ!!。優しい人が多いゆえなのか、とにかくむちゃくちゃ腹が立った。仕方なく歩きながらソフトクリームを食べる。不愉快極まりない。さっきの酔っ払い事件が頭をよぎる。スタバンゲルでお話をしたおばさんを思い出す。彼女がオスロと言う単語に不快感を抱いた理由が分かった。街のあちこちにはスプレーの落書き。見ようによっては、荒れたダウンタウン・・・。スタバンゲルにはそんなものひとつも無かったのに・・・。

 ひとまず、部屋にもどり、気を取り直し、作戦を練りなおすことにした。本来の予定なら、まだ、今ごろは、ベルゲン鉄道の中で今夜半、ここに着くはずだった。つまりオスロー見学は明日の予定だったのだ。

 そこでまず、月曜だと行けないところを探し、観たい順からリストアップしていくことにした。出てきたのは、月曜休館というムンク美術館だけだった。最寄の地下鉄名をチェックし出かける。

 美術館への最寄駅はOSLO-Sからわずか2つ。とはいえ、だいぶ郊外に来たなという雰囲気だ。人通りもまばらな中、地図を見ながら無事たどり着く。ただし、こちらは有料。でも中は広々として、できたて?と思わせるほど綺麗だった。広々と設計されている美術館の中には、そこらじゅうにベンチが置かれていて、座ったまま絵を鑑賞できるようになっている。実は、ここにも『叫び』がある。しかも一枚ではない。そう、ここにあるのは、版画なのだ。実はこっちが本絵(?)らしい。ちょっと拍子抜けする。

 自分の気に入った絵のそばのベンチに腰掛けてゆっくり鑑賞する。人もさほど多くなくくつろげる。でもでも、相変わらず、本音をいうと、花より団子、絵よりビールのおろちなのなのであった。というのは、美術館の外が芝生のガーデンパークになっており、館内でビールを買ってこの庭で飲めるのだ、ぐふふ。木陰をみつけ、まず一杯!

 直射日光さえさければ、ピーカンで実に快適。日本にいる連中は今ごろ、暑い暑いと騒いでるんだろうなぁ・・・と考えると余計愉快だったりする。ゆっくりとビールを飲んでこの地を後にする。もう、不快な過去の2つの事件のことなどすっかり忘れていた。単純明快。でもまだまだ、出来事は続くのであった。なにせ、夜のない国、昼間は長い。 

前へ   次へ