米国徴兵制度


ある日、食べ放題のレストランで、イラク戦争へ息子を送り出したというある夫妻に出会った。ご主人のロンさんは白人だが、奥さんは日本人だった。その息子はアメリカ育ちのアメリカ人として育ったが、実は、日本の国籍を今でも保持しているという。イラクへの米軍駐留軍に日本国籍者も参加していたという事実にはビックリした。その息子さんは日本と米国の二重国籍者で、米国陸軍に所属している。約一年間のイラク任務の後、無事帰任したそうだ。おそらく、他にも日本国籍者がいるに違いないと思う。

米国は現在、徴兵制度ではなく、志願制度を採用しているが、米国大統領および米国議会は、国の緊急事態、または戦時に軍隊の拡大が必要となった場合、いつでも徴兵制度を復活することが出来るのである。そのため、いつ徴兵制度が復活しても対応できるように、18歳〜25歳までのアメリカ市民、永住権保持者、米国に不法滞在している男性に対し、Selective Service System(SSS)という政府機関に登録を義務付けている。(学生ビザ等、一部のビザ保持者は除外。)徴兵制度が復活したときには、SSSの登録リストから徴兵することができる仕組みになっている。現在、90%近い若者がSSSに登録しているそうだ。

1973年に徴兵制が廃止されて以来、米軍はおもとしてマイノリティーや低所得者層出身の志願兵によって構成されてきた。そして、彼らを軍隊に志願させるため、学資の特典などの恩典を支給している。実際、米軍の捕虜奪還作戦で生還し、一躍全米に知られたジェシカ・リンチさんも、大学進学への奨学金を目当てに入隊している。彼女の出身地は失業率が全米平均の三倍近くにのぼっており、ジェシカさんの兄弟も軍に志願している。

政権を握る人々がイラク攻撃に熱心なのは、家族の誰かが兵士として戦場に行く心配がないためだといわれている。したがって、イラク戦争開戦以前には、徴兵制度復活を訴えて、白人政治家の家族からも兵士を出させることによって、開戦を慎重にさせることを提案した政治家もいた。

米国市民権を持たない住民も米軍へ志願することが出来る。とくに、米国市民権を取得することを目指しているグリーンカード(永住権)保持者が兵士になると、市民権申請をする時の審査期間が短縮される優遇措置があるのだ。おもに、ヒスパニック系や東アジア系などの永住権保持者からの軍隊志願が増えたそうだ。また、そのグリーンカードを取得するために、米軍へ志願することも出来るらしい。そのような兵士は イラク戦争では3万人以上いるといわれている。この中に日本人がいてもおかしくはないのではないだろう。米国市民権やグリーンカードという夢の実現に向けているそのような兵士達は、一般米軍兵士と比べても士気が高い。米軍にとってはいろいろな面で利用しやすい駒である。

イラクで死亡した米軍兵士の家族は、反戦、反政府を訴える人々がよくメディアに出ていることが多いが、ロンさん夫婦は、子供が軍隊に入隊したときから、いざというときの心の覚悟はある程度出来ている、と語っていた。

現在、イラク派遣に必要な兵士が不足するのではないかという危惧から、徴兵制の復活がより現実味を帯びてきている。とりあえず、純粋な日本人の私まで駆り出されることがないことを祈る。

ちなみに、このレストランでは、55才以上はシニアー割引を受けることが出来る。先月55才になったばかりのロンさんは、初めてこの割引を受けた。しかし、何を期待していたのか、身分証明証の提示を求められなかったことに対してはちょっと不快だったようだ。私はそんなにふけて見えるのかと言わんばかりだった。

志願兵を募集するアンクルサムの米軍ポスター

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