ホームページ


ケニヤへ!


KENIA!


MIDORAの事情


I fatti miei


BLACK MAGIC WOMANの翼
突然頭に蘇った初恋物語

最近ダンナがサンタナのCDを買ってきた。スペイン公演のライブだ。

昔の曲が続いて「BLACK MAGIC WOMAN」が始まると、私の意識は何やら形状しがたい不思議な感覚に襲われた。甘く切ない気持ちに包まれ、ワープして一挙に26年前に飛んだ。月日の流れの中で、それだけガラスの容器に守られて風化しなかった出来事の中に。


一目惚れしちゃった

当時学生だった私は遊園地のレストランで日曜日ごとにウエイトレスのアルバイトをしていた。そこで半年上の彼に一目惚れをした。

彼はとにかくカッコよかった。すらりとした長身で、ゆるい天然ウエーブのかかった柔らかい長髪。骨っぽい長い指でギターを弾く。バンドを持っていて、リードギターとボーカルを担当していると言っていた。北海道出身で、先祖のどこかで白人が混ざっているのか日本人離れをしたmixdのような風貌をしていた。

 

彼が気になって気になってそれが恋だとわかるのに、何ヶ月かかかってしまった。彼も私を満更でないような感じだった。すべてはうまく行くはずだった。

 

恋心は進み、週に一度日曜日にしか会えないのは辛くなった。彼がふともらした「また一週間待つのか」の言葉に勇気を得て、午後の授業がない水曜日にレストランへ出向いていくようになった。変だと思われないかと心配しながら。臆病な恋は気持ちだけ先行して実体が伴わなかった。


彼が好きだったレコード 

彼が好きだと言うジミ・ヘンドリクッスELECTRIC LADY LAND)とサンタナABRAXAS)のレコードを買って聞き込んだ。当時だからCDではなく黒い塩ビ版ね。

ジミ・ヘンドリックスのギターは「弾く」と言うより何か語っているようだった。強烈な彼の個性の叫びだった。2枚アルバムを全部聞くとくたびれた。ジミのケンカを買わなければいけないような感じがした。ジミが舞台にギターを叩き付けている映像を見た事がある。ジミにはギターの音だけではかったるくて仕方なかったのかも知れない。

 

サンタナのギターは哀愁とセクシーさが混ざった歌うようなギターだった。サンタナのギターのセクシーさは淫媚なものを精神の高まりに変えていくような感じを受けた。アルバムのイラストにある天使像がその象徴のように思えた。

デューラーの天使像

翼が欲しい

当時起きた突然の早すぎる友人の死
高校1年からつるんでいた彼女は成人式を待たずに逝った。ショックだった。死など身近にあっていいものではなかった。祖母の死を見ていたものの、友人の死はつるんでいた仲間に格別な印象を残した。この頃、内にある聖なるもの、生と死を越えた所にあるもの、精神の象徴としての天使像に惹かれていた。天使像を好んで描いた。翼はさらにその象徴だった。精神の自由な飛翔の象徴でもあった。それは生死にかかわりなく、言語を含む肉体によるコミュニケーションを越えた精神の交歓でもあった。もっと色々話し合いたかったが、すでに叶わぬ彼女との、私の気持ちを表現できない彼との、コミュニケーションの願望だった。そしてデューラーの展覧会で見た天使像のエッチングが心に触れて丸ペンで模写を始めたが、完成できなかった。

 

そんな翼の音に惹かれて私にはサンタナの方が心地よく、聞いて楽で、ABRAXASをしょっちゅう聞いていた。私の辛い恋心を癒してくれるような気がした。シャイな彼の代わりに甘い言葉を囁いてくれているような気がした。

恋に心をゆだねていいのだよ、と。

 

月日は巡って彼の誕生日、負担にならないよう安価で、且つオリジナルなものをと彼が好きだと言った両切りピースの青い缶を4つ買い込み、ラベルを剥がして私が描いたイラストを巻き付けた。喜んでもらえるのか、受けとってもらえるのか、不安で一杯だったが、亡くなった彼女が、わたしのようになったらもう何もできないのよ、と勇気を与えてくれるようで完成させ、渡した。一つはシマウマの模様、もう一つはジミのイラスト。彼はジミが大好きだった。「どうやって描いたの?」と嬉しそうに缶を手にした彼に満足だった。後の二つの絵は忘れた。


だめだーーーー 

ある水曜日、「今度給料が入ったら飲みに行こうねー」の約束通り、学校の帰りに寄って彼の仕事が終わるのを待ち、新宿東口にあったパブ、「クレイジーホース」へ飲みに行った。自分の着ているものが気に入らなかった彼は、屋台で白いインド風ジャケットを買って着た。それを見て心臓がとまりそうになった。その前日、白い服を着た彼と優しく抱き合ってそーーっと唇を重ねる夢を見たのだった。

私の頭はパニック!正夢?!そんな!こ、心の準備が。。。!

 

クレイジーホースではフィリピンバンドがサンタナを好んで演奏していた。BLACK MAGIC WOMANが妖しく切なく心の中に入って来る。ウイスキーとたばこと音とボーカルの肉声と間近に感じる彼の体温と夢が私の頭を翻弄した。亡くなった彼女が与えてくれた勇気はもうなかった。激しく動揺し、激しく動揺してる事に動揺した。なんだかギクシャクした態度しかとれず、抱き合う事も唇を重ねる事もなく、無事に?帰宅した。

スピーカー

 

私の心は恋に面と向かうには幼すぎた。この時から微妙に巧妙に彼から逃げ始めてしまった。心は追い求めているのに。相想うはずの恋が平行線のまま交差地点を見失った。幸せなはずの恋が二つの片思いのように重く苦しくなっていった。

 

彼が異動になり、バイトへ行っても会えなくなった。朝から晩まで彼の事を考えているのに。
彼と少しでもつながっていたいと、当時発足したローランズのカタログを取り寄せて、ロットリングペンで演奏機材を描写する作業を始めた。こうして描いている間は、彼の事を考えていても、頭の中に蓄積されないで、ペンの先から出ていくようで少し楽だった。

コード

私の進まぬ恋に業を煮やした友人が、「ウオー」来日公演の切符を2枚手に入れ、彼の仕事先に電話までして段取りをつけてくれた。約束の日、約束の喫茶店。彼は2、3本たばこを吸ってから「あ、今日行けないから」とだけ言った。私は崖から突き落とされて這い上がれなかった。理由なんか聞けなかった。もう駄目なんだ、と言う事だけわかった。そして這い上がれないでいるのに、痛い!助けて!と泣く事もしないで、何ごともなかったように、その日手に入れた、ウイスキーのコマーシャルで有名になった明治時代の絵本の復刻本を喜々として見せようとした。段ボールのケースからその本はなかなか出てこなかった。手がふるえていた。手入れして綺麗にピンクのマニキュアを塗った爪を彼がみつめた。

大事な本を傷つけないように、そっと出そうとしたのに、
本にかぶせてあったセロハンを爪の形にやぶいてしまった。

 

傷付いた心を癒してくれるのはABRAXASを聞いて、しなかった数々の事を後悔する時と、ELECTRIC LADYLANDを聞いて、私を大事にし過ぎて臆病だった彼をなじってジミにケンカを売る時だった。

 

人をこんなに好きになれるんだ、と実感した長い長い2年だった。

 

--------

ABRAXASもELECTRIC LADYLANDもローマに持って来ている。ターンテーブルの再生装置もある。でもかけた事はなかった。

26年もたって、CDで聞いて、こんなにはっきりと当時を思い出すとは。。。

アンプ

クレイジーホースの舞台の両脇に重なったアンプ、ライト、たばこの煙り、踊る人、グラスの中で溶ける氷。
空中に放った表現できなかった想い。

音霊のしわざってあると思う?

 

(2000年8月24日の泡) top

気に入った他人の泡→

究極のコミュニケーション

ホームページ

ケニヤへ!

KENIA!

MIDORAの事情

I fatti miei