「楽園を下さい」

オースティン作品を台湾の監督が映画化と話題になった「ある晴れた日に」、そしてアカデミー賞候補の「グリーン・デスティニー」(後者は未見)のアン・リー監督が南北戦争期のドラマに挑戦。 というわけで、この辺の時代の内戦、ゲリラ戦のあり方に興味がある以上見ておこうと思った次第。

「ある晴れた日に」は非常に好きな作品で、人物の所作や、小道具に至るまでに感じられた誠実で丁寧な作りに、この監督って真面目でいい人なんだろうなあ、という感想を持ちました。しかし「楽園を下さい」に関しては監督の暖か過ぎる眼差しみたいなものが、甘すぎると感じてしまったのです。もっと残酷で、重たく、破壊的なものを期待してたようです。

とにかくトビー・マグワイア演じる主人公の青年が絵に描いたような純粋無垢のいい子なんですよ。いい奴過ぎるきらいがあるのかも。可愛いから○なんですけど。

監督が描こうとしたのは結局さわやかな青春群像であり成長物語であるせいか、内戦の悲惨さ、矛盾というのは掘り下げられていない、あるいは敢えて描かれていないという印象を受けました。

別の映画評論家の評は全く見方が違っていたので、これは私の方が相当すさんでいるのかもしれない、という気もします。「バトル・ロワイヤル」でも、なんてさわかかな青春ドラマなんだ――、と感動していましたから……。

やはり壊れた人間が好きなのか、個人的には反北軍ゲリラから略奪、虐殺集団の首領に成り下がってしまう仲間のピット(ジョナサン・リース・マイヤーズ)に引き付けられました。(美形だしねっ)またアメリカ史に疎い私には、南北戦争が正規軍同士の戦いだけではなかったこと、南軍ゲリラに参加した黒人もいたという事実など、色々と発見もありました。

後味のいいお話です。

余談ですが友人にこの映画を見に行く、と言ったら「ホ○映画だから?」と聞かれ面くらいました。ある映画紹介のサイトで、なぜかおすすめのホ○映画、として紹介されていたそうです。たしかに男同士の友情がメインに据えられているけど、その手のツボにははまっていませんでした。なんで私が観たいというと「ホ○映画」だと思うかなー?

ちなみに「プリンス・オブ・エジプト」も、回りの人間には「兄弟ホ○映画」として認識されているようです。こちらはちょっと納得。(笑)


「パトリオット

うっかり見損なってしまった要チェック作品なのですが、DVDを購入した友人が自分のサイトで絶賛。曰くメル・ギブソンはふくろう党のジャン・シュアンに似ているはずだと言い張る私(←かもしれないと言っただけなのだが……)がこの映画をどう見るのか興味があり、メルがカトガンでロングブーツ、民兵なので林の中でゲリラ戦と私の萌えどころ(←そんな奴だと思われているらしい)満載だとのこと。
でも私は「米国万歳」系は嫌い(←やはりそんな奴だと思われているらしい)なようなので是非とも感想が聞きたい、――というので今回ほぼ半年ぶりにこのHPの続きを作って貰いにいったついでにDVD鑑賞と相成ったわけです。

前置きが長くなりました。

メルの十八世紀コスプレと言えば、「バウンティ」(新作の方)もそうでしたっけ。しかし随分大昔に観たきりなので、すっかり忘れてしまいました。

さて、友人はこの映画を観て、最初から最後まで大笑いだったそうです。さっき本人に聞いたところ別に「絶賛」していたわけではなく、ストーリーには多々文句があったそうで、単に「受けていた」と言ったほうが良いでしょう。

で、今噂のDVDを鑑賞して納得。個人的にはメル(as ベンジャミン・マーチン)が十八世紀コスプレ、カトガンで登場しただけでもう花丸、五つ星!そして始めの方に登場した「アメリカン・ビューティー」の「隣のアブナイお父さん」、クリス・クーパーのコスプレ姿を見ただけで大爆笑。どこかの掲示板に、あのお父さんの先祖なのでは、という指摘があったそうです。(笑)

さて、この物語。非常に悲惨な話なのですが、不謹慎にもやはり笑いが出てしまいました。始めは武器を取るのを渋っていたベンジャミンが、ある事件をきっかけに突如武装するあたり。このときの豹変ぶりがすごいです。フランス語で歯まで武装している、っていう表現があるのですが、――君はランボーか?っていう感じ。

このあと息子たちと森の中で待ち伏せして、英国軍を襲撃するのですが、この辺り全く別のものを重ね合わせて観て萌えてしまいました。――というか結局前編ストーリーそっちのけでジャン・シュアンとふくろう党の面々を思い浮かべて喜んでいたわけです。

やっぱり、森や沼地で待ち伏せして正規軍を攻撃っていいですね。(意味不明)

しかし、最初の襲撃シーン、幼い息子たちとベンジャミン一人で兵隊二十人も倒せるものでしょうか?初めて人を撃つ子供たちの命中率もすごすぎるし、忍者なみに神出鬼没のベンジャミン、先込め式の銃をいったいいつの間に装填したのでしょうか?

血塗れで斧を振り回すシーンは、「ブレイブ・ハート」してましたよ。

民兵に加わったきたないおじさんたちも良かったですね。帽子とか服とか、どうみてもふくろう党みたいです。

画面はとても綺麗でした。しかし、やはりストーリーは感心できません。非常に残酷なシーンがあったかと思うと、無意味に平和でほのぼのしたシーンが延々と続き、緊張感が持続しないのです。たぶん監督は平穏な家族を破壊する戦乱の悲惨さを強調したかったのでしょうが、無駄なシーンが多すぎ。無駄な人死にも多いような気がします。

メイキングのコメントによると、色々含みを持たせて頑張っているようだけど、やっぱり「ゴジラ」、「インディペンデンス・デイ」の監督だなあと思ってしまいました。

フランス人の助っ人、ヴィルヌーヴ役のチェッキー・カリョはただそこにいるだけのエキストラみたいで、途中で急にいなくなっちゃうし、まるでエキストラ。

メイキングによると、彼はなんとラ・ファイエットがイメージキャラなんだそうです。

し・か・し……、全くどこがラ・ファイエットなんだっ!ラ・ファイエットはこんなにいい人なんでしょうか?他にも独立戦争に参戦したフランス貴族の将校は大勢いたのに……。キャラが立っていたのは最後の会戦を前に、盛装の軍服で決めて「オシャレに死にたい」とのたまうところ。あとは、ただフランス語が話せる人というだけの役柄。でもチェッキーは馬に乗るのが大好きだそうで、この作品ではさんざん馬に乗れてとりあえず満足だったのに違いありません。

英国軍の悪玉キャラ、ジェイソン・アイザックス演じるタービントン大佐(でしたっけ?)もタールントンという実在の人物がモデルで、映画に描かれたような残虐行為で知られた人物だそうです。「タールントンの縄張り」という警句があり、その縄張りに入ると生きて出ることはできない、という意味があるとのこと。メーキングで紹介されたタールントンの肖像を見ると、えらいハンサムではありませんか。

タービントンの方は、いかにもわかりやすい、お約束の悪役ぶりでした。

私は常々、最新のCG技術を駆使した十八世紀あたりの戦闘シーンを観たいものだと思っていたのですが、この映画では思った通り、CGで増殖した兵士たちが進軍し、隊列を組んで銃を撃つ場面はそれなりの迫力がありました。

――実は今、友人がセルゲイ・ボンダルチュクの「ワーテルロー」のビデオをかけてくれていて、それを観ながらこの文章を書いているのです。十年ぶりくらいに観た作品ですが、いやはや、すごいです。見渡す限り人、人、人。全部本物の人間なんですよね。騎兵の数も半端じゃないし、軍服の種類にしても桁が違います。本物の方陣をいくつもつくって、その回りを騎兵が旋回している場面なんかを、ヘリコプターから俯瞰で撮っているんですよっ!はっきり言って、やはりCGとは迫力に差があります。この作品はチェコの兵隊をエキストラに撮っているのですが、もう二度とこういう規模の戦闘シーンは撮れないでしょう。当時はギャラも安かったはずですし。

ここから先はちょっと脱線しますけど、「ワーテルロー」あらためで観ると俳優もすごくいい人を使っています。ロッド・スタイガー演じるナポレオンに退位を迫りにフォンテンヌブローの廊下をネイが闊歩していく冒頭シーンから、「うわっ、かっこいい!」とうなってしまいました。あと、ルイ十八世はオーソン・ウェルズが演じていたのね、とかウエリントン公役のクリストファー・プラマーがヴァンパイア顔の美形だったとか、(本物はこんなに良くないですよね)カンブロンヌが肖像画にそっくりだとか色々なことを思い出しました。

ところで、なぜウエリントンやピクトンは私服で戦場に出ているのでしょう???

いいかげん「パトリオット」に戻りましょう。「ワーテルロー」と比較するのは酷だとしても、最後の英国軍対民兵の戦闘シーン、また色々別のものを想像してエキサイトしてしまいました。あまりにもお約束なシーンといえばそうなのですが、旗を振りながら突撃するベンジャミンは素敵でした。私にとってこれは18cコスプレ姿で動くメルの姿をひたすら楽しむ映画なのでした。あとやはり最後の方のメル、クリス、チェッキーのおじさんスリーショットも何ともいえずいい味わいでした。

ベンジャミンと別れて帰国したはずのヴィルヌーヴですが、その後革命の嵐が吹き荒れるフランスでどのような道を選んだのでしょうか?「自由万歳!」などと叫んでいたので、ばりばりの革命派になったのではないかと考えるのが普通ですが、案外ラ・ルアリー侯爵のように過激な反革命の闘士になったのでは、などと想像してしまいました。

総合的にはよこしまな意味で非常に楽しめたので、たぶんDVDを買いに走ることでしょう。


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