
「OUTRIDER」96年8月号の巻頭特集と同じ入道崎にやってきた。 |
「ばらばらばらばらばら・・・・・。」
テントの屋根を叩く音で目が覚めた。
昨日の願いむなしく、どうやら外は雨模様らしい。
私は雨の中のライディングが嫌いなので、
ふて寝を決め込み、雨が止んだら出発しようと、
再び床についた。
・・・・・ばらばらばらばら・・・・・。
寝ようと思うのだが、この音が気になって寝付けない。
仕方ないので、
テントの中で荷物のパッキングを済ませて、
メットを被り、雨合羽姿でテントの中から
這い出る私でした・・・(笑) |
|
昨日の夜に男鹿半島に着いたので、観光すらまだしていない・・・。
だから、この半島の先端「入道崎」を目指した。
ここは雑誌「OUTRIDER」96年8月号の巻頭特集にて、斎藤純氏が訪れている。
氏が夕焼けに染まる入道崎を眺める写真に、ツーリングの醍醐味が凝縮されてるような気がして、
訪ねてみたい場所のひとつだったのだ。 |
|

男鹿半島は「なまはげ」の故郷なのです。 |
しかし、雑誌のように澄み切った空ではなく「雨模様」
雑誌の中では
「入道崎、眼前にに広がるのは、ただ水平線のみ」
と書かれているが・・・(涙)
その姿に呆然と立ち尽くしていると、
近くにいたみやげ物屋のおばちゃんに話し掛けられた。
「昨日みたいに晴れていればいい所なんだけれどもね」
・・・くぅ〜!昨日のトラブルさえなければ・・・。
「いや、でも一度はどうしても来てみたかった
ところですから、いい所には変わりないですよ」
と、精一杯の強がりが心と裏腹に出てきた(笑) |
|

前後左右全てにおいて水田が広がる
「八郎潟」にて |
寒風山を過ぎて八郎潟にたどり着いた。
確か小学生の時の社会の授業で、ここの事を
「日本で2番目に大きな湖を埋め立てて水田を作った」
位の事を覚えている。 |
|

八郎潟の中心にあるモニュメント
北緯40度と東経140度の交会地点。
同緯度の世界の都市の名前が看板に記されていて
北京と同じ北緯に位置していることに気付く。
こんなに「北」まで来たんだなぁ・・・。 |
実際に目の当たりにする、この光景は想像を遙に
上回る大きさだった・・・。
頭の中では2番目に大きいと分かっていても、
想像と現実は、こんなにも違う。
果てしない程、遠くまで続く水田の姿を見入ると、
ふと思った。
こんなに大きな水田を作っておきながら、
政府の減反政策によって、無駄が露呈された事を。
目の前に広がる、とてつもなく大きな無駄遣いに、
ただただ呆然と眺めつづける私だった・・・。
|
|
雨は一際厳しく降ってくる。
R7は能代より東にスイッチ、そして「忠犬ハチ公」のふるさと大館を過ぎて「十和田大館樹海ライン」へ。
山を登るにつれて、降りしきる雨はどんどん体温を奪っていく。
そして標高を上げていくごとに廻りは霧が立ち込めていて、視界も奪われていった。
視界2mすらおぼつかなくなってくると、
自分が下っているのか、右に曲がっているのか、それとも左なのか・・・全ての感覚が麻痺してくる。
なにもかもわからなくなってきて、「ひょっとしてこれは夢の中なのか???」
とまで思えてくるのだ。
かろうじて見えるセンターラインのオレンジ色だけを頼りに、時速20kmの走行は続いていった。
ついでに自分のバイクの音以外になにも聞こえなくなってくると、いよいよ自分との戦いになる。
「なんでこんな辛い思いまでして、いったいどこに向かうの?」
「どっかの宿に飛び込んで、残りの金を裕福にゴージャスに全て使い切っちゃう?」
「このままUターンしてそのまま帰っちゃう?」
帰る事まで思いつめた頃、いきなり視界が広がりだして、目の前に十和田湖が姿を現した。
霧に囲まれた十和田湖はなんとも形容しがたい程、神秘的に見えた。
今まで思いつめていた事がウソのように晴れ渡って行き、ツーリングってこういう瞬間がいいよな。
とまで思う私って・・・相当単純に思える(笑) |
|

「奥入瀬渓谷」
まるで「もののけ姫」の森の木霊が
そこの岩の上にでも歩き出しそう・・・。
|
そして「十和田おいらせライン」を下る頃、ようやく太陽が顔を覗かせた。
この道は緑がとても濃く、光を浴びるとその色はいっそう緑を濃くし、輝いた・・・。
十和田湖から流れ出る「奥入瀬川」その緩やかな流れに沿ってこの道は流れていく・・・。
川の流れに沿って走るのは非常にここちいい。
その色鮮やかな小道をゆっくりじっくり走るつもりが、感極まって、つい、アクセルを捻りがちに・・・。
「あ”ら?」
気がつくとジャ○コ七戸店に辿り着いてしまった(汗)
ここでは友人の「榎戸」が新入社員として、この年の春から頑張っている。
今晩の宿のオーナーです(笑)
「ルンペンがやってきたのかと思ったよ!」
半年振りに再会したというのにつれない言葉だな、と思ったが鏡に映る自分の姿を見て、納得。
手はグラブの染料が雨で濡れて染み付き、真っ黒け・・・。
湿気を帯びてぺったんこの髪の毛・・・。
雨水が浸透してビチョ濡れの衣服・・・・・・・・。
まぁ、どしゃ降りの雨の中、山中を250kmあまり走り抜いてきたのだ、無理も無い。
「ナハハハハハ・・・・。」
力無く笑ってごまかす私だったのだ。
9・1 十和田市 榎戸邸 泊

|