8月21日 アクアダクトと反乱

朝靄に覆われる運河。

翌朝も全員6時前に起床、7時に出航。6つのロックを下る。ここら辺りからロックの間隔が広くなり、次のロックが見えないこともしばしばである。が、イギリス人達は歩くのがよほど好きなのか、ロック操作をしている家内と娘を手伝い、「後は私達がやっておくから、あんた達は次のロックまで歩きなさい」と命令するのである。私はそれを聞いて、ボートを進めるのだが、あまり速くボートを進めると、ロックの手前でボートを舫う必要がある。いちいち舫うのは面倒なので、ゆっくりボートを進めるのだが、丁度家内と娘が次のロックの水門を開けた時に到着させるのは結構難しい。

ロック操作を手伝ってくれたおじさん(失礼!)。このようにお尻で水門を開け閉めするのが正しいやり方。おじさんの左手に持っているのがパドル開閉のためのハンドル。足下に時計の文字盤のように見えるはは、滑り止めのためのブロック。

船というのは走っていて船であって、止まってしまうと桶と変わらない。つまり、水面で止めておくのは非常に難しいのである。わずかな風や、水流の影響をまともに受けてしまうからである。何トンもある鋼鉄製のボートをひとりで岸に繋ぎ止めておくのも体力が要る。あるボートでは無線機を持っていて、ロック操作隊がボートに向かってロックの状況を報告し、ボートの方ではその報告を受け、適切な速度でボートを進めるという作戦をとっていた。

さて、6つのロックを下るといよいよエドストーンのアクアダクト(運河橋)である。これからいよいよアクアダクト、という時になって急に雲行きが怪しくなり、とうとう雷鳴まで聞こえてきた。アクアダクトの上で雷に遭遇したのでは生きた心地がしないので、手前でボートを停泊させ、1時間ほど雷が去るのを待った。

エドストーンのアクアダクトは長さ約500メートル、アクアダクトの下には鉄道と道路が走る。アクアダクトの片側にはトウパス(昔は馬、今の人の歩く道)があるが、もう片方は柵も何もない。このためボートに乗っていると、高さ20メートル程下にある地上を直に見下ろすことができる。周囲に遮るものは何もなく、360度のパノラマを展望することができる。私は周りの風景に見とれてボートをアクアダクトの壁にぶつけてしまった。

エドストーンのアクアダクト。運河の右側に見えるのがトウパス。運河より低くなっているのは、馬が高所恐怖症だったためか?

アクアダクトを抜け、あと数時間で目的地であるストラットフォードに着くという時になって、家内と娘が反乱を起こした。ストラットフォードに着くまでには、もう16ロックを下らなければならない。もうそんな体力はないという。バウンティ号の船長のように船から降ろされては大変と、しぶしぶ同意し、ウィルムコートで停泊することにし、ストラットフォードまでは翌日電車で行くことにした。
 

カナルボートの屋根に座りスケッチする娘。

ボートを舫い、ひと休みしていると、通り過ぎようとするボートがホーンを鳴らす。昨日お世話になった Siesta 号である。私達は疲れたので電車で行くことにしたと伝えた。残念ながらこれ以降、彼等と再び出会うことはなかった。この日の夕食は近くのパブに行く。


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