運河について

早朝の運河は靄に包まれる。

まず、運河というものについて説明します。運河とは、船で人や貨物を運ぶために作られた人工の川です。しかしながら、自然の川のように流れがあると船の操作が難しくなるため、基本的に運河に流れはほとんどありません。このため、運河は地図の等高線にできるだけ沿うように作られています。

日本で運河というと、東京の隅田川や大阪の道頓堀を想像してしまいますが、これらは基本的に川をベースに作られているため、そこからの景色は全て見上げることになってしまいます。ところがヨーロッパの運河は斜面の中腹を通っていることが多く、運河の上にも下にも牧場や畑を見ることができ、眺めは大変素晴らしいのです。圧巻は運河の橋「アクアダクト」で、運河が橋となり、眼下に畑、道路、鉄道を見ることができ、360度の大パノラマを展望することができます。逆に、トンネルとなって山を抜けることもあります。

エドストーンのアクアダクト。運河の下に線路が見える。船でこんなに高いところを行くのは妙な感じ。船首の鯉のぼりは日本から持って行った。

アクアダクトやトンネルは運河を水平に保とうとした結果ですが、実際には稀です。高低を避けることができない場合、多くは「ロック」と呼ばれる水門により高低差を乗り越えていきます。運河の100年に渡る長い歴史の中で様々なロックが考案されてきましたが、最終的には船を入れるだけの間隔で設置された2つの水門で構成される形式が標準になりました。

上流からロックを下る場合、2つの水門で区切られたロック内の水位を上流と同じにし、上流側の水門を開けてから船をロックの中に入れ、水門を閉めます。ロック内の水位を下流側と同じにしたら下流側の水門を開け、船を出します。ロック内の水の出し入れは、上流側、下流側のそれぞれにパドルと呼ばれる弁を操作します。つまり、下流側を閉め、上流側を開ければロック内の水位は上昇し、反対にすれば下降します。

ロックというと日本人には馴染みが薄いのですが、宇宙船の「エアーロック」はその元になったロックより耳にした人が多いと思います。宇宙船のエアーロックも運河のロックも、対象が空気か水かの違いだけで、基本的なアイデアは同じです。

イギリス運河

イギリス運河の特徴は、幅7フィート(約2メートル)の船を基準に作られています。一方、船の最大長は70フィート(約21メートル)もあります。このように非常に細長い船なのは、馬で曵き易いようにという理由なんだそうです。イギリスの運河船は「ナローボート」とも呼ばれていますが、これはその形状に由来しています。

フランスやドイツのロックの多くは機械で自動的に開け閉めされますが、イギリス運河のロックは基本的に手動です。これはイギリスの運河では実際に貨物が運搬されていないため、効率化する必要がないこと、運河の幅が狭く手動でも操作が可能なため、と考えられます。

ドイツ、ネッカー川のロック。現在も大形の貨物船や客船が通行する。 水門は鋼鉄製で油圧により遠隔操作される。 水門奥の建物は、このロックを監視、操作するためのもの。 水門に向かって右側に信号が見える。
ロンドンのカムデン・ロック。この運河はロンドンとバーミンガムを結ぶグランド・ユニオン運河で、昔はイギリスの大動脈であったと推測される。にもかかわらず、水門は木製で手動であり、監視人はいない。

運河は基本的に地図の等高線に沿って作られていると書きましたが、その結果、高低差が激しい場所では、ロックが複数、連続することになります。ロックがなければのんびりと優雅な船旅となりますが、ひとたび連続ロックの領域に入り込むと、次々に現れるロックに体力も時間も消耗します。また、体力を消耗するのはロックだけではありません。場所によっては運河の上を渡る人や車が通る橋が、跳ね橋となっていて、それも手動で操作する必要があるからです。


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