
|
2001年の5月の末から半月ほどかけて、ドイツと日本に行ってきた。実は、今回の日本行きで人生初の「世界一周」を成し遂げた。 つまり… ダブリン ↓ フランクフルト(ドイツ) ↓ 関空(大阪) ↓ 九州の某ローカル空港 ↓ 羽田(東京)・成田(千葉) ↓ ニューヨーク(アメリカ) ↓ ロンドン(イギリス) ↓ ダブリン ね?ちゃんと、地球を西から東に一周してるでしょ?何でこんなばかなことをしたのか、話せば長くなるのですが、まあ、お付き合いください。 前にも数回書いた通り、うちのアパートには数人の住人がいる。で、その中の一人が、ひでかす(仮名)という名の日本人(本人から、「全然仮名になってないやんけ!」とクレームが来たが、無視)。で、彼、実は某アメリカの航空会社に勤めており、偶然この時期日本に帰省してアメリカ経由でダブリンに戻る彼と一緒に飛べば、私もかなり破格の値段で旅行ができるというわけ。 とはいえ、この話に最初おいらは乗り気ではなかった。彼と一緒に飛ぶと確かにキロ当たりの運賃は安いがアメリカの航空会社利用となる以上、当然アメリカ経由となる。つまりシベリア回りに比べて距離が倍近くなるため、実は結局シベリア回りの格安航空券と値段は変わらなくなる。で、距離が倍になれば当然時間も倍かかる。シベリアまわりの12時間も閉口するには充分なのに、その倍となったら、もはや生死にかかわる問題。ところが、ひでかすは、とんでもない殺し文句でおいらを誘惑したのだ。 「ボクと飛べば、ファーストクラスで旅ができるかもよ」 ファーストクラス!ああ、なんて甘美な響き。おいらの一生のうちでは決して乗れないであろう別世界。エコノミーとは雲泥の差のすばらしいシートと、贅を尽くした食事、ついでに美しいスッチーさんのスペシャルサービス(←何か激しく誤解してますね)。そんな体験ができるなら、アメリカだろうとインドだろうと行ってやろう!と、USITに行きダブリン−関空の格安片道航空券を購入。日本からダブリンの帰りはひでかすとアメリカ経由で飛ぶことにした。 ダブリン−フランクフルト間、およびフランクフルト−関空間は言うまでもなくエコノミークラス。ひでかすが、わざわざおいらのためにベジタリアンミールを注文してくださった(嫌がらせか?)以外は取り立てて書くことはなし。というわけで、話は一気に帰りに飛ぶ。 今回のように、航空会社に勤める人間の家族や知人等が、格安で旅行するチケットを「コンパニオンチケット」というらしい。で、この、コンパニオンチケット、安いだけの理由があって、予約は一切できない。当日、席が空いていれば乗れる。そりゃそうだ。航空会社だって、まともな運賃を払うお客の方が大事に決まっている。ま、考えてみれば、国内線の「スカイメイト運賃」みたいなもんだね。 で、日暮里でひでかすと待ち合わせをして、京成線の特急で一路成田へ。道々ひでかすが言うには、この日(金曜日)のフライトは実に混んでおり、乗れるかどうかわからないとのこと。かなりの数のオーバーブックがあるというのだ。なんだか空港到着前にして、おいらのファーストクラスの夢に暗雲が漂う。 オーバーブックについて説明したい。世界中のどこの航空会社も、実際のキャパシティ(定員)以上の数のチケットを販売する。というのも、われわれ貧乏旅行者の(一緒にするなって?)チケットの多くは、予約の変更はできない。それに対し、ビジネスクラスやファーストクラスの多くのチケットは、他の便への振替や、また、返金すらできるものもある。ま、高い金を払えばそれだけの利点があるということでしょう。 こうなると、当然予約をしながら空港にやってこない客というのが必ず存在する(専門用語でNo Showというそうな)。で航空会社としてはこの空港に来ないであろう客の数を見越して、定員よりも多い数のチケットを売る。空で飛ばすよりはいいもんね。ところが、まれにNo Showの客が少なく、定員以上の客が空港に来たりする。そうすると、航空会社はホテルなどを用意して次の便に一部の客を振り替えるか、または他社の便に振り替えたりする。このような状況で一番先にあぶれるのはコンパニオンチケットで飛ぼうとしてるおいらのような人間。 閑話休題。話を成田に着いたおいらたちに戻そう。で、ひでかすの事前の調査では、アメリカ行きの飛行機は軒並みオーバーブックしておりその中で唯一乗れそうなのがおいらたちの狙う成田−ニューヨークの最終便。ちなみにこれを逃すと、おいらたちは家に帰らなければいけない。まさに1発勝負状態。 で、祈るような気持ちでカウンターに行くと、この便はなぜか、ファーストクラスとビジネスクラスがすでに一杯で、エコノミークラスなら何とかなるだろうとのこと。この瞬間、おいらのファーストクラスへのはかない夢は愛川欣也によって「はい消えたー」と潰されてしまった(古いね)。 で、このカウンターで搭乗券はふつう貰えない。搭乗口で一番最後の客が乗り終わり、それで空きがあるという状態になって初めておいらたちは搭乗できるのだ。まったく立場が狭い。 で、出国審査を受け、搭乗口へ。空港に着いたのが遅かったのと、出国審査が長引いたことで、もうすべての客は搭乗した状態。そこでおいらたちがもらった搭乗券にかかれていた座席番号は…エコノミークラスのものだった。 「こんなことならおとなしくシベリア経由で帰ればよかった」と大ブーイング中のおいらをひでかすは、「ニューヨーク−ロンドン間ではファーストクラスに乗れる…と思う…から」となだめる。 おいらたちが乗ったのは、最新鋭のB777の後ろから2列目の席。こればまたよく揺れた。聞けば、前方の方の席よりも尾翼に近い後方の席の方が特に左右方向に揺れるんだそうな。というわけで、尾翼の真下のおいらたちの席は、途中でテーブルの上のウオッカのダイエットコーラ割がこぼれるほどよく揺れた。エアフランスでパリーストックホルムを飛んで以来の最悪のフライトだった。そういえばあのフライトも一番後ろのほうの席だったなー。 で、本当に、狭く、つらいエコノミークラスで12時間という拷問に近い長さの時間を過ごす。この最新鋭のB777にはエコノミークラスにもパーソナルテレビがついており、せめて映画を楽しもうと思ったのだが、エンジン後部ゆえの雑音と、ぼろいイヤホンのおかげでほとんど聞き取れず。眠ろうとしても、狭くて眠れない。ああ、悲しいかなエコノミークラス。 で、ようやくニューヨークに着。時差のおかげで、金曜日の夕方6時に出たのに、ニューヨークについたのは金曜日の午後。日付変更線を生まれて初めて超え、狐につままれたような気分になる。入国審査を受け、手荷物を受け取り、空港の建物の外でひでかすはタバコを吸い、そのまま空港に戻る。そう、おいらが初めてのニューヨークで見たものは、ひでかすのタバコを吸う姿のみ!自由の女神もマンハッタンもミュージカルも何も見なかった。これがおいらの初めてのアメリカ体験だなんて、あまりに情けない。 で、チェックインカウンターに行くと、状況は絶望的とのこと。おいらたちが成田を経つ時点ではまだ各クラスとも空席があったのだが、どうもこの便の前の便が非常に混んでおり、乗れなかった客があぶれてきたらしい。機材はB767、つまり、200人ほどの定員の小さな飛行機に30人がオーバーブックしている。そりゃ素人考えで見ても乗れんわな。 とはいえ他の選択はないので、搭乗口でぼーっと待つおいらたち。ファーストクラスの夢はどこへやら、乗れなかったら空港に泊まろうか、などと情けない言葉が交わされる。搭乗口の前にできていた乗客の列が機内へ続くブリッジに消える。が、まだおいらたちは呼ばれない。ああ、このまま、ファーストクラスどころか、ニューヨークの空港で1泊する羽目になるのか。 ひでかすはもろに不機嫌だったが、一方のおいらは至って平静。おいらの人生の経験上、「ここ一番」という時に、おいらはとんでもない強運を発揮するのだ。まあそう信じることができる能天気さで、いろんな問題を乗り越えてきたことは事実だと思う。 定刻まであと10分。そろそろ呼ばれるかなー、という頃。搭乗口の職員が突然日本語で、 「Snigelサーン、イラシャイマスカー」と呼ぶ。 さあ、判決は?エコノミークラスか?はたまた空港で1泊か?? そのおいらの背より20センチは高いだろう黒人男性職員、おいらたちに2枚の搭乗券をくれる!ということは、乗れるのだ!次の瞬間、ひでかすが、突然「おおお」と叫ぶ。 そこに書かれていた座席番号は「1C」と「1E」 そう、ファーストクラスのチケットをゲット!! アホ二人(おいらたちのことねん)はその職員に耳から耳への笑顔(満面の笑顔ね)を浮かべ、飛行機へとつながるブリッジへ。 そして、いざ機内へ。おおお、機内最前部のファーストクラスのシートが二つ空いている。この会社のB767の場合、エコノミークラスのシートが、2-4-2配列(左右の窓のほうに各2席、中央に4席ということ)に対し、ビジネスクラスのシートは2-2-2。そしてファーストクラスは2-1-2。単純計算すれば、ファーストクラスの席の横幅は、エコノミーの1.5倍近くということになる。 そしてシートピッチ(前の席との間隔)は、前の席にどんなにがんばっても足が届かない、前の席のシートポケットにある雑誌等にはベルトをしている限り手が届かない。 別の例えをあげると、エコノミークラスの場合、窓際の人がトイレに立とうという時、通路際の人は、席を一度立たねば通れない。ビジネスなら通れるけど、ちょっと通路際の人に気を使ってもらわないといけない。それに対しファーストクラスは、通路際の人に気兼ねなく席を立てる。これが違いだろう。 というわけで、おいらは2-1-2の中央の席を、ひでかすはその右の席をゲット。 実は、まだ安心してはいけないのだ、ドアが閉まるまでは。というのも、後からちゃんとしたチケットを持った人がやってきて、「悪いけど、お客さん来たから降りて」と言われる可能性があるのだ。実際にそれで、一度乗った飛行機から降ろされたかわいそうな人をおいらは知っている。 そんなわけで、ウェルカムドリンクのシャンペンをしっかりもらいつつも、おいらの視線はどうしてもドアの方に行く。 …はたしてドアは閉まった。こうして9回の裏の大逆転で、おいらたちはまんまとファーストクラスのシートをゲットしたのでした。 どうもおいらたちふたりに専属のスッチードさんがつくらしく、40くらいであろう、豊富な経験を感じさせるなかなか男前のスッチードさん(作者にそっちのケはないので念のため)が、シャンペンをどんどん注いでくれる。…ということは離陸しないのだろうか?というのも、ウェルカムドリンクは、おそらく安全のためだろうけど離陸の際に一度回収されるのだ。 結論から言うと、おいらたちの飛行機は1時間遅れで離陸した。なにやら、トイレに若干の問題があったのと、飛行場がやたらと混雑していたらしい。とはいえ、広い席でシャンペンを優雅に飲んでいたら、そんなことはまったく気にならない。 で、機は定刻より1時間遅れで離陸。しばらくすると、おいらたちに機内食のメニューが配られる。ああ、知らなかったよー、おいらが、いつも揺れるエコノミークラスの狭いテーブルで、チキンかビーフか悩んでいるときに、金持ちどもは揺れないファーストクラスで、こんなにいいものを食ってたのか!(単にひがみ) 頃合いを見計らって、別のお局スッチーさんが、おいらたちに何が食べたいか聞いてくる。そう、選択の余地があるのだ。エコノミークラスのように、 "Can I have chicken please?" "Sorry chicken is all gone!!" なんて言われて、食べたくもないビーフをつつく羽目になる、ということはあり得ないのだ。 そして、真っ白なテーブルクロスがテーブルに敷かれ(そこまでするんだねえ)まずは、ビーフカルパッチョから。…うまい。よく見ると、ナイフとフォークも銀製だぞ。以下、サラダに、ダックにと、高級レストランのディナーよろしくフルコースで出てくる。で、デザートに、アイスクリーム。これがおいしかった。 その後は、パーソナルビデオでビデオ鑑賞。驚いたことに、まず、ヘッドフォンの音がよく、しかも、機内が静かなので、映画が楽しめるのだ。エコノミークラスでは、まったく楽しめなかったのに…。で、一眠りした頃には、もう到着間際。再びおいしい朝食をいただき、8時間のフライトは、本当にあっという間に終わってしまった。 正直に書くと、実は、これがおいらのアッパークラス初体験ではないのだ。数年前、某イギリスの航空会社のロンドン−成田間のフライトで、ビジネスクラスで飛んだことがある。この時も、まったく疲れなかった。エコノミークラスと雲泥の差を感じたのだった。 ちなみに、このニューヨーク−ロンドン間をファーストクラスで飛んだ場合、大体80万円くらいなんだそうな。で、エコノミークラスなら、うまくすれば3-4万で飛べるはず。とすると、20倍の値段ということになる。さすがに80万は払えないけど、ある程度の割増でビジネスクラスやファーストクラスに乗れるなら、それは払う価値はあると思う。ああ偉くなりたい、などと、アホなことを考えてしまうのでした。 そして、ロンドンはヒースロー空港に着いたのは現地時間の午前10時30分。もはや、時差ぼけも何もない感じ。今、何日の何曜日なのかもわからない。で、二人でロンドンで時間をつぶし、夜のRyanairのフライトで、Gatwick空港からダブリンへ。 この区間はこの区間で信じられないフライト。信じてもらえるかどうか、何と運賃は1ポンド(180円)なのだ。ただし、昔の成田空港のように(あるいは関空は今も)、「空港使用税」は含まれていないので、それを含むと、運賃は14ポンド、(2500円)にはねあがる。…はねあがるというのは、あまり適切な表現ではないかも。何せ、東京―大坂間に匹敵する距離の運賃が2500円なんだから、文句は言えない。 なんでこんなに安いかというと、それは、この会社の特徴。航空券の値段は、見事なまでに需要と供給のバランスによって決まる。クリスマス前後のくそ忙しい時など、同区間の運賃は、90ポンド(16000円)暗い間で平気ではねあがる。 当然サービスは、ひどい。…というか、ない。コーヒー一杯1.5ポンド(270円)をふんだくるのだ。これ以上は書かないけど、ブルジョワジーから大貧民に再び成り下がって帰ってきたのでした。ちゃんちゃん。 |