第二十九回 街道をゆく(極私的東京編)
幡ヶ谷から京王線に乗り分倍河原、そして南武線に乗り換えて立川と来て、中央線にて日野にやってきました。立川市や国立市とは多摩川で区切られるようにして、そこを甲州街道がタスキがけするように横断しています。
駅の西には、日野自動車があります。地味な町ですが、古い建造物を意図的に保存するという、町のコンセンサスが出来上がっているんでしょうか? 蔵がそのまま現存していたりする結構面白い町なのです。
お品書き
第一回『浅草』篇
第二回『聖蹟桜ヶ丘』篇
第三回『和田堀公園』篇
第四回『権田原』篇
第五回『参宮橋』篇
第六回『桜上水』篇
第七回『大蔵』篇
第八回『門前仲町』篇
第九回『西原』篇
第十回『お台場』篇
第十一回『高尾山』篇
第十二回『分倍河原(前編)』篇
第十三回『分倍河原(後編)』篇
第十四回『渋谷区本町』篇
第十五回『初台』篇
第十六回『善福寺川緑地』篇
第十七回『九品仏』篇
第十八回『等々力渓谷』篇
第十九回『笹塚』篇
第二十回『幡ヶ谷』篇
第二十一回『代々木』篇
第二十二回『谷中』篇
第二十三回『巣鴨』篇
第二十四回『雑司ヶ谷』篇
第二十五回『明治神宮外苑』篇
第二十六回『光が丘公園』篇
第二十七回『立会川(品川区)』篇
第二十八回『高井戸・浜田山』篇
第三十回『日野橋(前編)』篇
第三十一回『日野橋(後編)』篇
第三十二回『夢の島マリーナ』篇
第三十三回『京王永山(前編)』篇
第三十四回『京王永山(後編)』篇
第三十五回『根津』篇
第三十六回『石神井公園』篇
第三十七回『表参道(同潤会アパート)』篇
第三十八回『京王多摩センター』篇
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甲州街道も笹塚や八幡山あたりに較べると心無しか道幅が狭く、車がなかった時代、つまり江戸時代の街道を想像させてくれます。そのせいか、日野の駅舎は昔の茶屋を彷佛とさせた作りになっています。司馬遼太郎『街道をゆく』をさながら愉しむ、インタラクティブな方もいることでしょう。
しかし、駅前にあるめぼしい店がフレッシュネスバーガーだけというのが、南武線を引き込んでいる隣の立川駅とは決定的に違うウィークポイントです。
また、一見何もない町なので、本当に何もないと思って素通りしてしまうと古い家屋には気付かないままという結果になる可能性も大いに秘めています。
こうなってしまうと、駅前のパチンコ屋の屋上に大きなゴリラがしがみついてぶら下がっていることを発見するのは、もはや至難の技といっていいでしょう。
一方、このような江戸時代頃の雰囲気を匂わせる街並は、例えば青梅駅周辺の西分町あたりなどにも、そこかしこに感じ取ることができます。正直いって、谷中あたりのせいぜい戦前ころの建築物など、とても薄っぺらに感じられてしまうほどです。
学術的にも密かに注目を浴びており、国文学会の散策では「古き良き日本の街並を感じたいのなら青梅か日野へ」というのは、もはや常識となっています。
これら東京の西部に位置する郊外へ出かけるたびに、意外な文化的価値を見つけることは、新鮮な面白さがあり、昨今の下町フィールドワークブームにも一石を投じるかも知れません。