Die Anfa"nge von unserem Leben in Deutschland




 日本ビールの中で最もフェイバリットなキリンビールから出ている発泡酒と向かい合っている。今日はコンビニ弁当を肴に(太りそうだなオイ)ビールを呑みながら、ずいぶんとご無沙汰だったHPの更新をすることにしたのだ。


 発泡酒も弁当も、苦労してドイツのその営業時間の短い日曜&旗日は休みの愛想の悪いそして高くて不味くてよく当たる(サルモネラ)ところを駆けずり回ってわざわざ調達してきたものでは、ない。いま東京に、帝都に、いる。素晴らしいもので、日本ではコンビニにさえ行けばよっぽどの田舎でもない限り24時間体制でビールも、弁当も、つまみも、現金さえも手に入れることができて、また、それがドイツで手に入る同等品よりよっぽどましだ。





 日本に帰ってきてもう一月になるのか。しかし今、私の手元にはドイツに帰る為の航空券は無い。そう、二年に及ぶドイツ生活は終わったのだ。今日、晴れて江戸川区民になれたことを示す住民票が届いていた。ドイツの二年も、帰ってきて過ぎた一月も、共に怒涛の、日々。





 今、私には「東京」と言うブラックホールをさえ連想させる重力空間が、口をあけてすべてを呑みこんでいるのが見える。そこには地下鉄のホームに漂う生暖かくすえた空気、次から次に帝都の中空を、東海道の起点たる日本橋の上空を、高架ををぎしつかせながら走り去る車の群れ、人類がさまざまに枝分かれした言葉を取得する羽目になった倣岸の塔の子孫の森、そしてその底辺を蠢きながらそして舌打ちしながら鉛天を見上げる人々が、そう、日本ともアジアともその母体から地中深く遊離して、行き先をまったく感知することなく走りつづける魔都、トーキョー、が私を淫靡に誘惑しながら、堕としてくれんものと下着をちらつかせている。




 ドイツ、いやヨーロッパのまとっている深い豊かなローブ、それの裾に接吻することさえできなかった、とトーキョーのもたらす淫靡な愛撫に耐えながら私は思う。彼女はいつも、私が追うと牡牛に駆って波涛を越えていってしまうのだ。一人私をおいて。

 脳をとろかす悦楽の中で、その最後の朦朧とした意識の中で、私は呼びかける。ヨーロッパよ、おまえは私に一指も許すことは無かったが、汝のその貞淑な声も、愁えた瞳も、熟れた唇も、一瞬だけでも俺のものだったと思っていても良いですか、と。


 ヨーロッパという名の娘よ、クックスハーフェンという名の港よ、オルデンブルグと言う古都よ、そして今までこの拙ページに来ていただけた心やさしき諸兄よ、どうぞ今は私を眠らせてくれ。私は今しばらく、トーキョー、と言う花魁の極上の膝枕であなたたちを想っていても、いいですか?。






 「ドイツ生活(初心者)のページ」は今日から暫しその鼓動、そもそも冬眠する熊のそれのように非常にゆっくりとした鼓動ではあったが、を停止する。私はまずトーキョーと、かつてその母親であった日本を、その肉体をその吐息を閨房にこもって堪能したい。僕はただの埋もれし若者(?)のひとりとして、普通のただの平凡で無能で安月給とりな砂浜の砂よりも多い日本人の一人として、数年を過ごしたい。しかし私の愛する人々よ私を愛してくれた奇特な貴女よ僕はいつかまた、あなたの元へと帰ってくる。かならず。それはこんなに愛してしまったのだから。



 私の愛してやまないヨーロッパよ。貞節な青を象徴に持つヨーロッパよ。俺はおまえがそんなにも貞淑であることも、しかしその一方で、淫靡な漆黒のスリップを、挑発的な朱のガーターを纏っていることすらも知っている。ヨーロッパよ、次は私の毒牙からは逃げられない、今はそのスリップを、せいぜい洗濯しておきたまえ。



 ア・デュー。

 HISATANE


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