Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring

今更説明は要らないかもしれませんが、日本でも大ヒットのピーター・ジャクソン監督による「指輪物語」の第1部の実写映画です。 映画はどういうわけか「指輪物語」ではなく「ロード・オブ・ザ・リング」という邦題になっています。

実は初めて「指輪物語」の実写映画が作られるという噂を聞いた時、ほとんど期待していませんでした。 というのは、あの壮大なスケールの小説を映像化できるわけがない、とたかをくくっていたからです。 初めてラルフ・バクシ監督のアニメ版「指輪物語」を見た時、そんなにピンとこなかったのも一因かもしれません。

しかし指輪ファンとしてはやはり気になるところ。英語のファンサイトや映画の公式サイトを覗いてみると、 どうやら監督や製作スタップ達は熱狂的な原作のファンとのことで、ますます期待は募ります。公開初日の2001年12月19日、さっそく観てまいりました。

ど肝を抜かれました。

映像の美しさ。そのリアルさ。あれほど自分の目で見てみたかった中つ国が今、 スクリーンに映し出されているのです。ガンダルフ役のサー・イアン・マッケランの味のある演技は本当に素晴らしいです。イライジャ・ウッドの目の表情が素晴らしい!台詞がないシーンでもフロドの心情が痛いほど伝わってきます。レゴラス役のオーランド・ブルームの動きといったらとても優雅で、見事にエルフになりきっています。ケイト・ブランシェットのエレガントな動きや視線!ガラドリエルの怖さと優しさを実に上手く演じていると思います。

涙が止まりませんでした。

恥ずかしい話、観終わってからトイレの個室にこもってさんざん泣きました。

もちろん、すべてにおいて納得がいっているわけではありません。原作とは登場人物の設定が変わっていたり、 端折られたシーンや追加された設定があったり。不満だらけの原作ファンの気持ちもわかります。 「アルウェンの役割を変えて出番を増やしたのはいかにもハリウッド的ではないか」 「売れるために話の筋書きを変えたんだろ」という声を聞いたことがあります。

でも、原作と違っていても、仕方がないと思います。なぜなら、これはあくまでもジャクソン監督達が「映画として」最適な表現方法の中で思い描いた指輪物語の世界だからです。 サルマン役のクリストファー・リーがテレビのインタビューで次のようなことを言っていました。

「映像化するにあたって原作とまったく同じ筋書きにするのはまず不可能だ。それよりも、 原作の持つエッセンスをいかに上手に抽出するかが大切だ。」

ジャクソン監督と製作者一同は、本当に素晴らしい偉業をやってのけたと思います。

原作ファンとしては、自分が思い描いている指輪物語の世界観をこれからも大切にして、ジャクソン監督達が表現する指輪物語の世界観を「映画として」楽しみたいと思います。結局のところ、活字と映像という全くことなる表現方法は異なって当然だと思うのですよね。

個人的な能書きはこの辺にして、せっかくですので「イギリスに住んでいる指輪マニアの日本人」 としての視点から、この映画について述べてみたいと思います。


1、ビルボの誕生パーティ

いきなりメリーとピピンがやってくれますね。ガンダルフの花火を盗んで打ち上げるという、原作にはない設定ですが、 これはこれでいい味を出していたのではないかと思います。ガンダルフに見つかって2人が皿洗いを手伝わされるシーンがありますが、「洗い方がイギリス式だ・・・」と、少しショックを受けました。 イギリスではシンクにお湯を張って洗剤を入れてため洗いするのが主流ですが、どういうわけか泡がブクブクついた食器をすすぎません。泡がついたまま、ふき取るか乾燥するまで待ちます。このシーンをよく見ると、画面の手前に積んである洗い終わったであろう食器の山に泡がついています(と私には見えるのですが、どうでしょう)。

この洗い方、個人的にすごく嫌なんで私は普段しっかりすすいでいますが・・・。他の国ではどうなのでしょうか。

2、ピピンの英語

訛ってます!いい具合に訛ってます!!ピピン役のビリー・ボイドはスコットランドのグラスゴー出身です。ホビットのアクセントは、グロスターシャーなど西イングランドのアクセントに倣ったそうですが、私の耳には、ピピンの英語はそのままスコットランドのアクセントに聞こえてしまいます。 厳密には「グラスゴー訛り」と言うべきなのでしょうが、 残念ながらイングランドに住んでいる私には、スコットランド各地の訛りの違いがわかりません。 なので、誇り高きスコットランド人には十把一絡げで申し訳ないのですが、「ピピンのスコットランド訛り最高!」 と言わせて頂きます。

知人に「生まれも育ちもグラスゴー」という人がいて一度会ったことがあるのですが、 彼女の英語はバリバリのグラスゴーアクセントで、私など「はい?」と何度聞きなおしたことか。

私が気がついた範囲で書くと、スコットランド(グラスゴー)訛りは、「エイ」の音を 「イー」のように発音するのが特徴の一つです。なので「レイン(rain)」「グレート(great)」はそれぞれ「リーン」 「グリート」 くらいに聞こえます。

「チキン・ラン」という映画がありましたが、その中で「マック」という名前のスコットランド出身のメンドリが、バリバリのスコットランド英語で話しています。アメリカ出身のオンドリが彼女が喋るのを聞いて、 「今のは英語かい?」なんて言うシーンがあるほど、その訛りに慣れていない人には同じ英語でも聞き取りが難解なようです。日本でも、訛りや方言に関しては同じことが言えますね。

3、ホビットの食生活

風見が丘でフロド以外の3人のホビット達が火を起こして食事を作ってしまうシーンや、 9人の旅の一行が休息を取っている時、サムがフロドに食事を差し出すシーンがありますが、ベーコン、ソーセージ、 ベイクト・トマトとこれはまさにイングリッシュ・ブレックファスト。 これはイギリスでホテルに泊まったことのある方なら一度は食されたことがあるのではないでしょうか。

 ベーコン、ソーセージ、ベイクトビーンズ、マッシュルーム、ベイクト(もしくはグリルド)トマト、フライドエッグ(目玉焼き)、 チップス(フライドポテト)など、朝からお皿に山盛りの豪勢な(胸焼けしそうな)メニューです。 これにさらにトーストやフルーツ、紅茶やコーヒーがつくわけなので、かなりのボリュームです。

これはあくまでも「伝統的な」朝食なので、全ての一般的な現代イギリス人が朝っぱらからこのような食事を しているわけではなく、トーストだけ、シリアルだけ、という人が多いと思います。 何かと忙しい朝、そんなに時間をかけてたくさん食べていられませんよね。

でも、よくテレビのドラマなどで、お昼にトースト、ベーコン、ベイクトトマト、ソーセージ、 フライドエッグなどを食べるシーンが出てきます。イギリス人には慣れ親しんだメニューなのでしょう。こう思うと、ホビット達の食生活はそのままイギリス人に引き継がれているのかもしれません。

4、アメリカ人俳優のアクセント

イライジャ・ウッド、ショーン・アスティン、リヴ・タイラーなどは生粋のアメリカ人ですが、 上手にイギリス英語のアクセントで喋っているなと思いました。インタビューなどでは 皆さん普通にアメリカ英語で話しています。特にショーン・アスティンの英語は私にとって 「とってもアメリカ人の英語」に聞こえ、リヴ・タイラーの喋り方は何となく舌足らずで可愛らしい印象を受けます。

一口にアメリカ英語と言っても、さまざまなアクセントや方言があるのでしょうが、アメリカ英語にとんと疎い私には 「アメリカの英語は十把一絡げにみんなアメリカ英語」に聞こえてしまいます。 でも「指輪物語」の世界はやはりイギリス英語の方がしっくりくると思うので、この配慮は嬉しいです。 もしアメリカ英語で喋っていたら、まったく違った印象の映画になっていたでしょう。ちょっと想像がつきません。


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