【第14話】ブラジルのコーヒー

ブラジルといえばコーヒーの国です。さぞかし美味しいコーヒーが楽しめるのではないかと期待するのは人情ってものです。ところがです。一説によるとブラジルで産出されているコーヒーで良質なものはほとんど外貨獲得のため輸出されてしまい、国内に残っている豆はカスばかりという話です。しかし、味そのものについて私は多くは語りません。ブラジル人にとっては、それが当たり前のコーヒーの味なのですから。

ただ、最初はそれを口にしたときすごく違和感がありましたし、2年経った今でもやはり違和感は消えません。ただ、喫茶類に関してはほかにはほとんど選択肢がないので仕方無しに飲んでいるという感じです。ちなみに私、家に帰ればもっぱら日本茶です(笑)。

ブラジルではコーヒーの出し方が変わっていて、器は大きくてもせいぜいショットグラスくらいの大きさです。普通は、お猪口かと思うような小さいカップに入ってきます。なんだこりゃ?エスプレッソのようにくいっと呷るようにして飲むのだろうかと思ったら、違った。・・・こ、濃すぎる。顔に近づけた途端にむせるようなコーヒー豆の匂い。ここまで来るとちょっと品がないんじゃないかと思えるような濃厚さに少し眉をしかめたりして・・・。そして、・・・あ、甘すぎる(涙)。多少苦いのは我慢しても良い。しかしこの甘さにはさすがに参ってしまいました。子供の頃はともかく、成人してからはコーヒーにも紅茶にも一切砂糖を入れたことのない私には想像を絶する甘さです。これだけ甘いのにどうして液状なのだろう?冷めたら水あめのようにどろどろと固まり出すに違いない、そう思えるような甘さでした。

そのときは一日かけて飛行機に乗ってサンパウロについたばかりだったので、胃が本調子ではありませんでした。おかげで、コップの半分も飲まないうちに強烈な胸焼けが襲ってきました。

「コーヒーのお代りが欲しかったら、ここで入れて下さいね」
会社で出てくるコーヒーは、作り置きしてタンクのようなものに入れて保温してあるようでした。ああここでコーヒーを入れて、砂糖は自分の好みで入れたらいいのだと思いました。ところが、その次の言葉にはあまりに驚愕して思わず手にしたコップを落としそうになってしまいました。
「あ、砂糖だったら最初から入ってるから」

え?・・・こんな甘いものが最初から作り置きされてるって?? ・・・ってことは、もしかして、これが当たり前のコーヒーなのか??? いったいこいつらの味覚はどうなってるんだ?

だいたいお茶なんてものは口直しで口の中をさっぱりさせるために飲むものだ。それなのに、どんな食べ物よりも甘い口汚しのためのお茶なんて・・・。お茶の国日本から来た私は、このたしなみ方がどうしても許せません。

ところで、料理屋などで食後のデザートの後に出てくるコーヒーはブラックで出てきます。チャンスとばかり、私はブラックコーヒーにチャレンジすることにしました。ところが・・・苦すぎる。まるで薬みたいでした。わざわざ濃く作って砂糖をたくさん入れるくらいなら薄めに作って砂糖も少なめにした方がさっぱりしているしからだにも良さそうな気がするのだが・・・。私は日本のファミリーレストランで出てくるような、カップの底が見えるような薄いアメリカンコーヒーがこのときほど恋しいと思ったことはありませんでした。

そういえば、最近日本の某化学調味料会社がブラジルで合成甘味料を製造する計画だと新聞で読みました。つまり、ブラジルは砂糖大国なのです(笑)。コーヒーだけでなく、お菓子の甘さも我々の想像を超えています。レストランでデザートにショートケーキでも頼もうものなら、最初はその甘さで口が曲がるのではないかと思うほどで す(笑)。こんなものを食べつづけていては肥満や糖尿病にかかるのを手をこまねいているようなもので、それでも甘いものが食べたいという需要に応えるべく、こうして巨大な合成甘味料市場が形成されてしまったわけです。どんな高級レストランでも、コーヒーが出るときには必ず本当の砂糖と一緒に合成甘味料も出てきて、客はどちらかを選べるようになっているほどです。

さて、話はまた会社に戻ります。少し慣れてくると、湯沸し室には砂糖入りコーヒーのタンクの他に二つのポットが置いてあることに気づきました。一つは、砂糖なしコーヒー。もう一つはマテ茶です。

砂糖なしコーヒーのポットがある由来は、先代のうちの社長が糖尿病の恐れがあると医者に警告されたため、砂糖を止めて甘味料を使うようになったために特別に少しだけ作ってあるとのこと。まあ、ちょっとくらいならわかりやしないだろうということでそのポットからコーヒーをカップに7割がたそそいで、お湯で薄めて飲みました。・・・う、うまい(涙)。久しぶりにコーヒーらしいコーヒーに出会えたような気がしてうれしかったです。現地従業員には、そんな飲みかたするのは日本人だけだといわれましたが、大きなお世話だと思いました。

もう一つのマテ茶のポットは、寝坊した従業員がそれでサンドイッチを口の中に流し込んでるのを見て発見しました。ブラジルではじめて見る紅茶系統の色をしていました(笑)。コーヒーよりは紅茶が好きな私は、それを見つけると早速自分も試して見ました。・・・なんだこりゃ。甘すぎるじゃないか。こんなに甘かったらお茶の味どころか、砂糖の味しかしないじゃないか。良くこんなものを飲みながら物を食って体が悪くならないなと思いました。(マテ茶というのは日本では「ダイエット効果のあるハーブティーの一種」として紹介されているのだ。しかし、この砂糖の量はダイエット効果を打ち消すのに十分過ぎる量だった)

そういえば、床屋にいったときの話(日本語の床屋ではなく、いわゆるバーバーですが)。日系人の経営するカット屋さんなのですが、待ってる間コーヒーかお茶を入れてくれるというので、私は迷わずお茶をくれといいました。そしたら、その後の一言で私は凍り付いてしまいました。
「砂糖はお入れしましょうか?」

これは実際はポルトガル語で聞かれたんだけど、私はまさかここで「砂糖」という単語が出てくるとは思わなかったんで、一瞬自分が何をたずねられたのかわからなくなってしまいました。後で知ったところによると、結構そういう飲み方をする人が多いらしいということでしたが。

だいたいこいつらは何でもかんでも砂糖を入れればいいと思ってる。コーヒーや紅茶にはもちろん入れる。緑茶も、気に入らないがまあいいとしよう。許せないのは、オレンジジュースにも入れる人がいる。オレンジジュースは人によるらしいが、そう私に教えてくれた御当人がパイナップルのジュースには必ず入れるもんだとのたまう。(事実、調査の結果(笑)、スーパーなどで売られているパック入りのいわゆる果汁100%ジュースの場合、オレンジジュース以外は当たり前のように砂糖入りであった。)油断しているとスイカにも平気で砂糖をつける。書いてるうちにますます腹が立ってきます。

結論。ブラジルでお茶として一番安心して飲めるもの、日本人の味覚にあう飲み物はミネラルウォーターしかありません。(しかし、それにしても炭酸入りが結構流通してるので、油断は出来ません)あとは高いけど日本食料品店にでもいって緑茶を調達してくることです。

ちなみに、紅茶は普通のスーパーではリプトンの黄色いティーバックしか売っていませんでした(^^;)




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