『フランス10日間徒然日記』 2000年5月21日(日)記

  
第6号
 
2日目の1―――布に畳とはこれいかに?/バスティーユ近辺そぞろ歩き の巻
  
2000.8.19 発行
  
 朝

 朝7時起床。ポケット・ピカチュウのアラームで目が覚める。
※Attention! ポケット・ピカチュウとは、万歩計機能がついたこども用ゲーム機器のことです。時計もついています)

 パリに来てから気付いたのだが、今回はわたしも銀(ぎん)も目覚まし時計を持ってきていなかった。ケータイのアラームを使うという手もあるが、8晩も電源入れっぱなしじゃ、わたしのケータイは日本に帰るまでにバッテリーがあがってしまう(銀のピッチはこの旅行の直前に洗濯機に沈んでその使命を終えていた。合掌)。
 どうせパリではたくさん歩くだろう、と思って、歩数稼ぎのために持ってきたポケット・ピカチュウであったが、こんなところで役に立つとは。使えるヤツじゃ。

 カーテンを開けて空を見たら曇っていた。下を通りのぞきこむと、道路に雨が降ったあとが残っている。あんまり天気はよくないらしい。

 しかし、今日は旅行を楽しむのだ。
 昨日はいろいろあってさんざっぱら落ち込んだが、せっかくの10日間の休暇(有給6日使用)を無駄にしてたまるか。貧乏性はこういうところにこそ発揮されるべきなのだ。

 気合いを入れて起き上がり、銀を起こして朝食の準備。レタス、ハム、マスタード、マヨネーズ、チーズを使ってサンドウィッチを作る。
 サンドウィッチを作っていて気付いたが、なんとマスタードもマヨネーズもチーズもモノプリ[MONOPRIX]のプライベート・ブランド製品(※デパートやスーパーが独自に開発・製造している製品。流通経路が短いので値段が安価)だった。
 うーむ、おいしいから問題ないけど、こんなところには無意識のうちに貧乏性が発揮されているのが、我ながらなんとなくイヤ。

 ちなみにこの朝のサンドウィッチは、ちょっとマスタードがききすぎていて辛かった。次回からは、わたしの分のサンドウィッチはマスタードの量を控えよう。 

 リュ・トルソーからリュ・ド・フォーブール・サンタントワーヌへ

 食後、ふたたび外を見たら、今度は雨が降っていた。上海で買った三つ折りの傘を持ってきているからあわてることはないけど、最近、わたしの旅行はよく雨が降るな、と思う。

 雨が降っているので、今日は雨を気にしなくてすむ美術館に行くことにする。
 とりあえずパリに来たばっかりだし、思いっきりおのぼりさんモードで攻めようということで、ルーヴル美術館[Muse´e du Louvre]行き決定。手荷物をまとめる。
*「e´」はアクセント記号付きの文字という意味です。
  「´」はアクサンテギュといい、「e」のみにつきます

 部屋には時計がなかったので、テレビの時刻表示を時計代わりにしようと思ったのだが、こちらのテレビ番組はほとんど時刻表示がなかった(テレビ本体の時計機能はあったが、番組は表示されない)。えー、なんで?

 日本では朝の出勤時間帯は、ほとんどのテレビ番組で画面の左上隅に時刻を表示しているので、わたしはテレビでニュースを見ながら時刻を確認するくせがついている。
 そうか、今まで気がつかなかったけど、あのテレビ番組の時刻表示ってどこの国でもやっているものではないんだな。不覚。
※Attention! でも、韓国で見た朝のニュースではやっていたような気がする)

 地図やらなんやらをバッグにつめこみ、8時半過ぎ、ようやく部屋を出る。
 日曜日のルーヴルは、朝早く行かないとすごく混むって聞いてるけど、この時間で大丈夫かな?

 エレベーターで0階に降りると、チェックアウトの客でフロントは混雑していた。よって手の空いているフロントの人がいない。
 どうやって鍵を預けよう、と一瞬悩んだが、フロントのカウンターの右端に鍵を入れる箱が設置されていた。こりゃ便利、と鍵を預けて外へ。

 そしてホテルの外に出ると――寒いっ!
 何なんだ、この肌を刺すような寒さは?
 もう5月だというのに、なぜこんなに寒いんだ?

 パリは、まあだいたい東京と同じくらいの気候だろう、と勝手に思い込んでわたしは来たのだが、そんなことはぜんぜんなかった。
 ひー、さむっ。1か月から1か月半くらい、東京よりも季節が遅れているんとちゃう?

 街をゆく人々をよく見ると、みんなまだ余裕で冬物コートを着ていた。中にはダウンを着ている人もいて、あなたそりゃいくらなんでも、という感じ。
 5月とは言っても、まだちっとも初夏という風情じゃない。はー、まいったな。薄着で出てきちゃったよ。
※Attention! 今年の5月は特に寒かったようです)

 しかし、いまさら上着を取りに部屋へ戻るのも面倒くさい。美術館に入れば暖かいだろう、と期待してバスティーユ[Bastille]の駅へむかう。

 ホテル前のリュ・トルソー[Rue Trousseau:トルソー通り]を抜けて、リュ・ド・フォーブール・サンタントワーヌ[Rue du Faubourg St-Antoine:フォーブール・サンタントワーヌ通り]で右に曲がる。

 この通りは昨日も車で通ったが、本当に道の左右に家具屋が多い。この日は日曜日で、ほとんどの店が閉まっていたはずだが(朝早いせいもある)、店内が見えるシースルー(中が見える)・シャッターの向こうには、アンティークっぽいものから現代的なものまで、いろいろな種類の家具が見えた。

 そんなふうにのんびりと店の中をショーウィンドウ越しに眺めながら歩くうち、「畳(たたみ)」という漢字をでっかくプリントした白い布を張ったソファを発見。なんだ、ありゃ?

 その店の中をさらによく見ると、その他にも四角い行灯(あんどん)や、マットレスの代わりに畳を張ったベッドとかもある。
 どうやら日本っぽい家具を集めて売っている店らしい。
 しかし、布張りのソファに「畳」はないだろう、「畳」は。なんか許しがたいぞ。

 他にもいろいろな漢字が書かれたクッションやらふとんやらのグッズがあったはずだが、その漢字がなぜそこに、というわたしにはなかなか連想しづらいものが多かったので、残念ながら思い出せない。

 しかし、この店のものと思われる公告は地下鉄の駅構内でけっこう見たので、この家具は意外と売れているのかもしれない。

 さらに道を歩いていくと、こんどは歩道沿いの石造りの建物の壁からとうとうと水が出続けているところがあって、ひとりの男の人が、身をかがめてその水を直接飲んでいた。井戸か?

 近付いて見てみると、水は地面から7、80cmくらいの位置の壁にはめこまれた、黒く円いブロンズ製(らしい)ライオンの彫刻の口から流れ落ちていた。
 その傍らには、舟のオール(櫂)みたいな形をした案内板がたっている。どうやらこのライオン型出水口と水の解説らしい。

 地が黒い案内板には、赤い文字で「Histoire de Paris - La fontaine Trogneux」と書いてある。よくわからんが、ようするにこれはパリの歴史的な名所のひとつで、何とかの泉らしい。
*「ヒストワール・ド・バリ ラ・フォンテーヌ・トローニュ」か?
 

fontaine
ライオンの口から水が。
飲めるというのがまた驚き。
histoire
この案内はパリのあちこちで見かけた。
フランス語が読める人には便利。

 ふうん、東京にもこういうのあるけど、なるほど、パリにもあるわけか。さすが歴史のある街だ。
 細かい説明も書いてあったが、もちろん読めるわけがない。ほっほーと感心だけしてその場を後にする。

 そしてバスティーユ広場到着。
 さて、いよいよメトロ初体験である。

おわり

  
 ● 今回のフランス語 
 
cafe´ ・・・「e」の発音

 このコーナーは、フランス語を話せるようになろう! なーんて高望みではなく(笑)、せめて地下鉄の駅名くらい読めるようになろう! という、非常に志の低いコーナーです。

 でも、ものの本によると、フランス語は英語よりも綴りの読み方が決まっているので、覚えてしまうと簡単なんだそうです。ふーん、って感じですね。

 ま、「聞く話す」よりもまず「読み書き」から入るってところが、いかにも受験英語で育てられた世代ってところでしょうか。

 しかしわたし、大学では第2外国語としてドイツ語とフランス語のどちらかしか選択できなかったので、ドイツ語を選択していたんですけどねえ(もちろん全然覚えてない。授業料が無駄だったな。親に申し訳ない)。
 まさかいまさらフランス語にかかわるなんて、全然予想していませんでした。

 で、通常のフランス語入門なんかだと、あれこれ章立てして解説していくんだと思うんですけど、このコーナーはあくまでも「駅名を読む」(しかもカタカナ読み!)が目的なので、そんな系統だてたことはいたしません。刹那的・場当たり的にいきます。

 そこでまず最初に取り上げるのが、「cafe´」です。
 ホントは第4号でやるつもりだったのですが、本文がちょっと長かったので今号での登場となりました。
 今回はせっかくカフェを取り上げるので、例もカフェのメニューからあげます。

                          

 ま、「cafe´」って普通に日本人にも「カフェ」って読めると思います。
 わたしは、現地の人が「キャフェ」って発音していたので、それをまねして「キャフェ」って言ったら通じなくって、フランス人に「カフェ」と言い直されましたけどね。どっちなんじゃいっ(^_^;)。

 話がそれましたが、問題なのは「e」の発音です。

 「e」の読み方はおおまかにわけると4つあります(厳密にはもっと細かい)。
 1つずつやろうかと思ったのですが、まとめて覚えた方がよさそうなので今回で全部やっちゃいます。

 で、まず最初の法則が、

___________________________
1.アクセント記号付きの「e」は「エ」と発音する
 ※「e´」、「e`」、「e^」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
*「´」…………アクサン・テギュ[accent aigu]
*「`」…………アクサン・グラーヴ[accent grave]
*「^」…………アクサン・スィルコンフレックス[accent circonflexe]

です。これはわかりやすいですね。

 「cafe´」[カフェ:コーヒー]もそうだし「the´」[テ:紅茶]もそうです。

 しかし、

_________________________
2.単語末尾の「e」は発音しない
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そうなのです。

 というわけで、「cre^pe」を例にとると、

  ・cre^=「e^」は「エ」と発音する
  ・pe=最後の「e」は発音しない

なので「クレープ」となります。
 おなじ理由で「bie`re:ビール」も「ビエール」。

 カフェ・オ・レの別の言い方、「cafe´ cre`me」の「cre`me」も、「e`」は「エ」と読んで最後の「e」は発音しないから「カフェ・クレーム」。

 チーズ入りのサンドウィッチは「Sandwich fromage」と書いてありますが、この「fromage」も当然「フロマーゲ」ではなく「フロマージュ」。

 パンに目玉焼きがのっている「Croque madame」は、それぞれ最後の「e」が落ちて「クロック・マダム」。「salade:サラダ」は「サラドゥ」。

 ジュースのリンゴやオレンジは、「pomme:リンゴ」=「ポム」、「orange:オレンジ」=「オランジュ」。お菓子の「tarte:タルト」は「タルトゥ」。

 これらが載っている「carte:お品書き、メニュー」は「カルトゥ」です。

 そしてさらに覚えておかないといけないのが、ちょっとわかりにくいんですけど、

_________________________
3.子音+「e」は「ウ」と発音する
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 よって、「menu:お品書き、定食」は、音節で区切ると「me-nu」なので「m+e」となって、この「e」は子音+「e」=「ウ」になりますから、「menu」=「メニュ」でなく「ムニュ」になります。

 また、「demi:生ビール」も同様に「de-mi」なので「ドゥミ」。

 そして最後にもうひとつ、

_________________________
4.「e」+子音は「エ」と発音する
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 例としては、「omerette:オムレツ」は音節で区切るとたぶん「ome-rette」(もしくは「ome-ret-te」)なので、

  ・最初の「e」は → 子音+「e」で「ウ」
  ・中央の「e」は → 「e」+子音で「エ」
  ・最後の「e」は → 単語末尾の「e」は発音しない

を合わせて「オムレットゥ」。

 食べ物じゃないけど、「merci:ありがとう」も「mer-ci」なので「e」+子音だから「エ」となって「メルスィ」。「metro:地下鉄」も「met-ro」で「メトロ」。

 上記の順番を無視してまとめると、下記のようになります。

+--------------------------------------------------+
発音しない ・・・・・単語末尾の「e」
「エ」と発音・・・・・「e´」、「e`」、「e^」
            「e」+子音
「ウ」と発音・・・・・子音+「e」
+--------------------------------------------------+

                          

 ふう、今回は長くて大変でしたけど、これだけでけっこうフランス語を読めたような気になりません?
 次回はもう少し短めにやりたいと思います。

※「r」の発音ってのが、フランス語ではだいぶ難しいらしくて、ら行の音には聞こえないそうなんですけど、今回は全部はぶきました。
※ちなみにこのコーナーでは質問は受け付けてません。勘弁して下さい(笑)。
※このコーナーは不定期です。

 

 ● 今回のおこづかい帳 
 
今回はなし

小計:0F
合計:128.39F(約2,016円)+16,360円

(※レートは2000年5月当時、1F=15.7円で計算しています)

 

 ● 編集後記 
 
 はい、リュ・ド・フォーブール・サンタントワーヌ沿いの風景リポートでした。

 フォーブール[faubourg]の意味は「郊外」と第3号に書きましたが、あとで本を読みましたら、これは大昔の、まだパリという地域の定義が狭かった頃のルーヴル宮殿の郊外という意味なのだそうです。

 こんなにパリの中心に近いのに、何で郊外なんだろう? と不思議だったのですが、そう理由を聞くとなるほどですね。だから、パリ市内には「フォーブール・何とか」通りがあるようです。

 それではまた次号でお会いしましょう。

 


2日目の1――布に畳とはこれいかに?/バスティーユ近辺そぞろ歩き の巻

2日目の2――階段を昇って降りて/息切れしつつもメトロ初乗車 の巻

2日目の3――安いは必ずしも得ならず/ルーヴル美術館到着 の巻

2日目の4――年寄りの冷や水とは?/フランス彫刻・ギリシャ美術 の巻

2日目の5――何ゆえコーラがこんなに高いっ!?/ふたりだけでカフェに初挑戦 の巻

2日目の6――100メートルを突っ走れっ!?/グランド・ギャラリー の巻

2日目の7――適切な絵画管理とは?/フランス絵画 の巻

2日目の8――バラビュスに乗っておのぼりさん気分 の巻

1日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 最終日 TOPへ

E-mail to : chihalu@geocities.co.jp
Copyright(C) 1999-2001 Office EST3