『フランス10日間徒然日記』 2000年5月23日(火)記

  
第20号
 
4日目の1――モンパルナスどたばた道中記 の巻
  
2000.11.8 発行
  
 モンパルナス駅[Gare de Montparnasse:ガール・ド・モンパルナス]へ

 午前6時、アラームが鳴って一発で起床。すぐさま銀を起こす。

 起きてすぐ朝食と電車の中で食べるお弁当作り。
 本日の目標は8時チェック・アウト、10時台にTGVでモンパルナス駅発、午前中にはロワール[Loire]川流域の街トゥール[Tours]着である。急がなくちゃ。
※Attention! TGV[テージェーヴェー]=Train Grande Vitesse:高速列車の略)

 冷蔵庫は空っぽにして行かなきゃいけない。チーズやハム、スモークサーモン、トマト、レタスはすべてパンの間にはさんでサンドウィッチにする。おかげで超豪華なサンドウィッチになった。
 

お弁当作り
お弁当作り
breakfast
こちらは朝食

 マスタードもマヨネーズも、捨てるのはもったいないのでパンに塗りたくる。それでも余った。貧乏症なふたりは当然捨てられない(笑)。
 さすがに生卵を原材料にしているマヨネーズはヤバいが、マスタードは防カビ効果のある食材だから大丈夫だろう、ということで、モノプリの袋に入れて厳重にしばり、スーツケースの中へ。
 腐らずに待ってろよ、マスタード。またパリに戻ってきたら使ってやるからな。

 初日に買ってきて、結局食べきれなかったリンゴは銀のデイバッグに詰める。お腹が空いたら食べてしまえばいい。
 昨晩買ったフルーツ・ヨーグルトは根性で食べきる。あああ、なんでこんなに買ったんだか。

 食事後、ざざざっと身支度をすませ、ふとんをひっくり返して忘れ物チェック。すべてが万端なことを確認して部屋を出る。
 時刻は8時10分。ほぼ予定通りだ。
 

部屋からの眺め1
部屋を出る前、銀が撮った窓からの眺め
部屋からの眺め2
こんな風景でした

 スーツケースをひきずってフロントへ降りると、ツアーのチェックアウト客で混雑していた。カウンターには白髪の黒人男性がひとりだけ。忙しそう。
 しかし、こっちも急いでるんじゃー、と思いつつフロントのカウンターにキーを差し出しながら「I'd like to check out now.」(チェックアウトしたいんですけど)と言うと、フロントの男性はめずらしそうにわたしたちを見、すぐ近くにいた旅行代理店の添乗員らしきフランス人に「あんたの客か?」というようなことを訊いている。ちゃうちゃう(違う違う)とフランス人と一緒になって首を振ると、ようやく男性はチェックアウトの処理を始めてくれた。

 旅行会社に宿泊費はタダにしてもらったが、食器のレンタル料は自分持ちのはず。予想通り食器のレンタル料100F(約1,570円)ちょっきりを請求された。現金で払ってとっとと外へ出る。さあ、これからAさん(ちはるの知り合いの知り合い)のオフィスへスーツケースを預けに移動だ。

 ホテルの外に出ると、昨日帰ってくる時に見た通りの向かいにある小学生が群がっていたホテルが、泊まり客である小学生に占拠され、大騒ぎになっていた。窓という窓をすべて開け放ち、入れかわり立ちかわり外をのぞきこみ、わいわいきゃーきゃーと騒がしい限りである。壁中に穴を開けて顔をのぞかせているネズミの大群みたいだ。

 ふだんなら微笑ましい光景だが、もしかするとこいつらのせいでわたしたちがパリに宿を見つけられなかったのかもしれないと思うと、心穏やかにになれない。
 くっそー、お前らのせいでー、とやや大人げなく小学生を心の中で罵る。

 移動手段としてはバスを考えていたので、リュ・ド・フォーブール・サンタントワーヌ[Rue du Faubourg St-Antoine]沿いのバス停へとりあえず出る。
なぜバスかというと、パリの地下鉄は階段が多くてエスカレータが少ない(というかほとんどない)ので、スーツケースを持っての移動は大変だと思ったからだ。

 その点、バスなら1回乗っちゃえば楽だし、空(す)いてたし、と思いバスに決めた。
 そしてマクドナルドがある交差点でバスを待つ。しかし、どういうわけかなかなかバスが来ない。
 昨日はもっと短い間隔でバスが来ていたと思ったけど・・・
 とりあえず時間に余裕があるのでおとなしく待つ。
 

Rue du Faubourg St-Antoine2
リュ・ド・フォーブール・サンタントワーヌ。
バス待ちしている時に撮りました。
 
Rue du Faubourg St-Antoine1
こちらもフォーブール・サンタントワーヌ街。
通りの角にマクドナルドがある。
そうとはわからないほど街に溶け込んでる。

 歩道はそんなに広くないので、通行人のじゃまにならないよう、まだ開店していない店先のショーウィンドウに荷物と自分の身を寄せてバス待っていた。
 すると、ふと自分の左肩に重みを感じた。それが本日最初の事件だった。

 何だ? と思って上着の左肩を見たら、なんと鳩のフン。
 うおおおおっ! なんてこったい、朝っぱらからっ!

 反射的に上を見上げたら、店の軒先に鳩がとまっていて、「ふんっ」ってな顔で(シャレじゃないです)わたしを見下していた。あきらかにわたしをバカにした態度。
 畜生っ(確かに)、てめえ、わざとやったなっ!

 でも、復讐よりも先に服をきれいにしなくちゃっ(汗)。

 ウェットティッシュを出し、自分じゃうまく拭き取れそうになかったので銀にやってもらう。その間に鳩は姿を消していた。
 んもー、何が平和の象徴だよ。あの根性悪っ!

 焼き鳥にして食ってやる、と思ったが、わたしの身近には鳩を食わせる料理屋はない。しかし、「エジプトは鳩料理、有名だよ」と銀が言う。
 フランスの恨みをエジプトではらすのも何だが、いずれにせよいつか食ってやる、と心に誓った。

 そんなこんなでわたわたしたが、それでもバスはやってこない。まさか今日はバス運休とかないだろうな?
 バス停で待ち始めて、すでに20分ほどが経過している。
 もしかしてヤバいか? という考えが脳裏をかすめた頃、ようやくバスがやってきた。だが、ほっとしたのはほんの束の間。何しろ、バスの中はスーツケースをのせるどころかわたしたちがのるかどうかも怪しいほど満員だったのだ。
 うそっ。昨日はがらすきだったのに?

 何にせよ、これではとても乗れない。あきらめて1台見送る。
 けれども、その15分後にやってきたバスもやはりめちゃくちゃ混んでいた。
 これはダメだ。バスはあきらめてメトロで行こう。

 急遽計画を変更し、銀とふたり、がらがらとスーツケースを押してバスティーユ[Bastille]駅へと移動する。そして苦労しながらスーツケースを持って階段を降り改札へ。

 それぞれ1枚ずつカルネを用意し、まずはわたしが改札を通過しようとした時に本日ふたつ目の事件は起こった。
 なんと、押して通ろうと思っていたスーツケースが大きすぎたためにターンスタイルにひっかかって回ってしまい、スーツケースだけががっこんと先に自動改札の向こうに行ってしまったのだ。ひーっ、そんなあっ!!

 あわててわたしも後を追おうとしたが、ターンスタイルにくいとめられえしまった。なぜなら、ターンスタイルが動かないのだ。そしてすでにカルネは自動改札の取り出し口に移動してしまっている。――ってことは、わたしが通るためにはもう1枚カルネが必要ってことか? そんな殺生な。

 助けを求めようと思って駅員さんを見たが、ちょうど別の乗客の相手をしているところだった。第一、助けを求めようにも、なんて言えばいいんだ?

 それよりもスーツケース!
 あんなでかくて重いものを、この階段のアップダウンが続く地下鉄構内で盗む酔狂な泥棒もそうそういないとは思うが、油断はできん。

 「お前、先に行ってわたしのスーツケースを確保しておけっ!」と、銀をせかして改札を通させる。銀のスーツケースは中型だったので、まったく問題なく通過。無事、わたしのスーツケースは保護された。
 ああ〜〜。まったくもうっ、なんてこった。

 どーっと疲れを感じながらも、新たなカルネでわたし本人も自動改札を通過。
 嫌いだっ、パリのメトロなんて。
 その思いは、ホームに行くためにスーツケースを持ち上げながら何度も何度も階段を昇り降りさせられるたびに強まっていくのであった。

 さんざん苦労して、8時55分、メトロ乗車。目的駅で無事下車。Aさんのオフィスに着いて荷物を預けられた時には、本当にほっとした。
 もっともその前に、2階にあるオフィスに行くために、エレベータに乗ってうっかり「2」のボタンを押してしまい、3階に連れ去られて「降ろしてくれーっ!」と悲鳴をあげていたけど(本日の事件3 笑)。
※Attention! フランスは日本の1階が0階に相当するので、階数表示が1つずつ日本人の認識とはずれます→第3号参照)

 さあ、これからモンパルナス駅に行ってTGVだ、と思っていると、Aさんが「この本、持って行く?」とミシュランから出ているロワール地方のガイドブック(もちろん日本語版)を差し出してくれた。
 ありがたいっ! すごく助かるです〜。
 礼を言って、もちろんがっちり借りていった。

 ちなみに、この時点でわたしたちが持っていたその他のロワールやトゥール関連の資料は、まずわたしが図書館でコピーしてきた1999年版(2000年版がなかった)のトーマス・クック(Thomas Cook)ヨーロッパ時刻表のパリ→トゥール間の時刻表が1枚。

 もともと、パリ→ブロワ[Blois]間の列車を調べるためにコピーしてきたのだが、ブロワはパリからトゥールへ在来線で行く際の途中駅なので(この場合はオーステルリッツ[Austerlizt]駅から出発する)、同じページにパリ→トゥール間を走るTGVの時刻も載っていたのだ。
※Attention! 正確じゃありませんが、下記のような路線になっています)
※Web版Attention! 間違えるといけないので、トゥールに行く方は必ず第22号の編集後記を読んで下さい)

            <在来線ルート>
           オーステルリッツ駅発

           ●パリ―――→●オルレアン
           |        ↓ 
  <TGVルート> |      ●ブロワ
  モンパルナス駅発 |     /
           |    /
           ↓   〆
           ●トゥール

 
 去年のものなので今年正確に使うわけにはいかないが、多少目安にはなるだろう(実際には2000年もたいして時刻は変っていなかった)。でも、まさかフランスで役に立つことになるとは思わなかった。
 ただし、この時刻表は英語の記述のみ。

 それと、同じくトーマス・クックに載っていたフランスの主要鉄道路線図のコピーが1枚。これはただ単にフランスの主要な都市が載っていて便利そうだったので、たまたまついでにコピーしてきたものだった。

 後は、図書館でガイドブックからコピーしてきたロワールの城の説明部分が何枚か。城へは列車で移動して駅から歩いて行くつもりだったので、駅周辺の地図がほしくてコピーしてきた。そのなかには幸いトゥールの地図も入っていた。これも、まさか使うはめになるとは思ってもいなかった。

 よって、まともな本の形をしているのは、Aさんに借りたミシュランの緑本だけになる。
 これらの資料をデイバッグに詰め込んで、9時45分、いざモンパルナス駅へ。ああ、荷物がないって楽。

 しかし、TGVってどうやって乗るんだろう? TGVに乗るつもりが全然ない状態でフランスに来たから、まったく予備知識がないんだよね。
 事前予約しなくて大丈夫だったんだのかなあ。うーん。

 不安を抱えながらもメトロに揺られ、10時15分頃、わたしたちはメトロのモンパルナス駅(TGVの発着駅とは建物自体が異なる)に到着した。

 さあ、TGVのモンパルナス駅をさがさなくちゃ!

おわり

  
 ● 今回のフランス語 
 
Tours ・・・「ou」の発音と「u」の発音

 「Tours:トゥール」は、今回わたしたちが向かったロワールの城めぐりの拠点として超有名な街です。読み方がわからんうちは、わたしは「ツアーズ」とか適当に読んでました。

 まあ、今となれば「単語末尾の子音は読まない」(※第7号参照)の法則を適用して「s」を読まないことはわかりますね。

 で、今回は母音の「ou」の発音です。

                          

 第3号の本文中で、「ボンジュール」の「ウ」の発音が中国語の唇を丸く突き出した「ウ」の発音によく似ている、なんて書いたのを、憶えてらっしゃる方はいますか?

 まあ、そういうわけなので、「ボンジュール」は「Bonjour」と書きますから、次のような法則が成り立ちます。

_________________________________
「ou」は「ウ」と発音する
  ※日本語の「ウ」とはやや異なり、唇を丸く突き出して発音する
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ふーん、そうなんだ。じゃあ、普通の「u」の発音の立場はどうなっちゃうんだろう、と思ってましたら、「u」は「ウ」と発音しないんですね。正確には、唇は「ウ」の形のまま「イ」と発音します。
 これはちょっとカタカナで表記するのはむずかしいですが、便宜上だいたい下記のように書かれています。

_________________________________
「u」は「ユ」と発音する
  ※唇は「ウ」の形のまま「イ」と発音する
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 なんで今回に限ってこんなに細かく発音の説明がしてあるかというと、この音、両方とも中国語にあるので、わたしにも違いがわかるからなんです。中国語を勉強している人はピンときたでしょ?(笑)

 全然違う音なので、よければおぼえておいてやってください。

                          

 このふたつで以下の駅名が読めるようになります。まず、

「ou」は「ウ」と発音するを知っていると読めるのが、

 ・地下鉄3号線の「Bourse」=「ブールス
 ・地下鉄8号線の「La Tour Maubourg」=「ラ・トゥール・モーブール
 (※「au」は「オ」と発音する→第19号)
 ・地下鉄9号線の「Porte de St.-Could」=「ポルト・ド・サン・クール
 ・地下鉄13号線の「La Fourche」=「ラ・フールシュ

などなど。

「u」は「ユ」と発音するの例は、

・地下鉄4号線の「St.-Sulpice」=「サン・シュルピス
・地下鉄7号線の「Buttes Chaumont」は、「But-tes」と音節が分かれるので
        「ビュッテ・ショーモン」(ビュット・ショーモンと表記する本もある)

 以前出てきた10号線と13号線が交差する駅の「Duroc」は、第10号では「ドゥロック」と紹介しましたが、これに照らしあわせると「デュロック」の方がふさわしいですかね。

 また、同じように以前出てきた2号線の「Victor Hugo」の「Hugo」は、「ヒュゴー」と発音したくなりますが、フランス語では「h」を読まない(※第19号参照)から「ユゴー」となります。

 では、今回はこれにて。

※このコーナーは不定期です。

  

 ● 今回のおこづかい帳 
 
     チップ:10F(付け忘れ分含む、割り勘)
 食器レンタル代:50F(割り勘)
カルネ(回数券):27.5F(割り勘)

小計: 87.5F
合計:632.87F(約9,936円)+16,360円

(※レートは2000年5月当時、1F=15.7円で計算しています)

 

 ● 編集後記 
 
 はい、モンパルナス道中騒動記でした。

 後で考えたら、スーツケースは縦でなく横にして自動改札を抜ければあんな目に合わなくてすんだんですよね。でも、あの時はバス待ちに30分以上も費やしてしまったあおりで焦っていて、そんなことちっとも思い付きませんでした。
 その後も自分の浅はかさは棚にあげて、「それにしたって、パリのメトロの自動改札は幅が狭くて不便だよ」とぶつぶつ文句いってましたしね(笑)。

 TGVはその後調べましたが、全席指定なんですけど、事前に予約しなくても空席があれば発車直前に行っても乗れます。事実、わたしたちはそうして乗りました。
 料金は次号でてきますが、季節などによって多少上下するようです。まあ、興味のある方は目安にしてください。

 それではまた次号でお会いしましょう。

 


4日目の1――モンパルナスどたばた道中記 の巻
4日目の2――TGVに乗るぞっ!/出発前、20分間の攻防 の巻
4日目の3――神様、Help!!! の巻
4日目の4――その街の名は「Poitiers」 の巻
4日目の5――今度こそトゥールへっ! の巻
4日目の6――トゥールの宿々はわたしたちを笑顔で迎え入れてくれるか? の巻
4日目の7――バラ窓三昧、サン・ガシアン聖堂 の巻
4日目の8――美しい広場/トゥールあちこちめぐり の巻
1日目 2日目 3日目 5日目 6日目 7日目 8日目 最終日 TOPへ

E-mail to : chihalu@geocities.co.jp
Copyright(C) 1999-2001 Office EST3