『フランス10日間徒然日記』 2000年5月28日(日)記

  
第53号
 
9日目の1――ついにフランス最終日/気合をいれてオルセー美術館へ の巻
  
2001.5.10 発行
  
 冷蔵庫一掃とチェック・アウト

 朝5時半起床。
 外を見たら暗かった。雨でも降っているみたいだ。

 銀に訊いたら、夜中に雨が降っていたという。
 天気悪いのかな? と思ったが、しかし、6時過ぎには晴れていた。変な天気。

 食欲はない。だが、今日はホテルをチェック・アウトする。冷蔵庫内を空にしなくてはならない。

 無糖で超まずかったヨープレイトのヨーグルトは、2日前に買ってまだ残っていたヌガー[Nougat]味のアイスクリームにかけて食べる。
 このアイスはホーム・サイズで2リットルくらいあったが、結局ほとんどわたしが食べた。うまかった。

 朝食のメインは四角いパンにマスタードとマヨネーズを塗って、マッシュルームのソテーをはさんだサンドイッチ。美味。コーヒーも飲む。
 何だかんだ言って、最終的にはかなりの量を食った。

 あまった材料でお弁当のサンドウィッチを作る。
 昨日買ったバゲットはほとんど残っていたので、それの腹をかっさばき、ゆで卵、さらし玉ねぎ、チーズ、スモークサーモンをはさむ。うむ、豪華。

本日の朝食
朝ごはん。アイスも食べる。
お弁当
彩りはイマイチだけど、
具的には豪華なサンドイッチ

 これをサランラップでくるんでそれぞれのリュックへ。
 美術館の見学が終わったら、セーヌ川の川岸でピクニック気分で食べる予定。

 食事が終わって7時頃から荷造り。
 全部荷物をつめこんでも、わたしのスーツケースは片面ががらがらだった。
 荷物の重ささえ気にしなくていいなら、もっとお土産買いたいくらいだ。

 身支度を終え、部屋の中のチェックを済ませて8時には部屋を出る。
 フロントで「Check out please」。特に何もなかったので「もう行っていいよ」というそぶりをされたけど、こちらはスーツケースを午後まで預かってほしいのだ。

 「Can I keep my suitcase here?」(スーツケース、預かってもらえますか?)と訊くと、横20cm×縦10cm×厚さ1cmほどのでーっかくて重いプラスチック製キーホルダーがついた小さな鍵を渡された。
 そして「Baggage room(荷物室)はここの裏だから」と言われる。
 それって、勝手に自分で入れろってこと? ふうん、セルフ・サービスなのか。

 まあ、別にそれはそれでよかったので、スーツケースをがらがら押しながら奥の部屋へ。
 すると、フロントの女性がわたしに「デポジットの時に渡した紙をください」と声をかけてきた。

 あ、やべっ!
 チェック・インでデポジットの時に取られたクレジット・カードのコピー、破ってもらってないじゃん!

 あわててチェック・インの時にもらった紙を渡すと、かわりにクレジット・カードのコピーをくれた。
 危ねー。あのままわたしたちがチェック・アウトしてたら、このコピー、残ったままだった。

 わたしもうっかりしていたが、何かいまひとつ対応のしっくりこないホテルだった。

 さて、荷物室。ごくごくフツーの倉庫。
 すでにいくつかのスーツケースが置かれている。勝手にわたしたちがこんなところに入ってしまっていいんだろうか? 盗難の心配とかないのかな?
 疑問に思いながらも自分たちのスーツケースもそこに置く。
 
 荷物を置いて部屋を出た後、この鍵はどうするのだろう? と悩む。
 そういやわたしたち、荷物の預かり証とかそういう類(たぐい)のものをもらっていない。
 この鍵がその代わりなんだろうか? と銀と考えたが、持ち歩くにはでかすぎる鍵、というかキーホルダーだ。

 よくわからないながらもフロントに戻って鍵を返すと受け取ってくれた。
 ということは、やはりこの鍵は持ち出すものではないのか。

 普通、ホテルのフロントに荷物を預けると、フロント係の人が荷物をどこかにもってってくれて、請け出す時はこれを提示してください、と引き換え証のようなものをくれるものなのだが・・・
 あたまの上にいっぱい疑問符を表示しながらホテルを出る。
 まあ、きっとなんとかなるだろう。

 オルセー美術館[Muse´e d'Orsay]へ

 ホテルの外に出ると寒かった。
 空はパリの中心方面とラ・デファンス方面で全然色が違い、ラ・デファンスは青空が広がっているのに、パリの中心部は紫がかった雲がたれこめている。

 その空の中間あたりにある飛行機曇の上を、うすい雲がものすごいいきおいで移動していく。まるで台風の日の空みたいだ。
 今日もパリは天気がころころと変わりそうだった。

 オルセー美術館への交通手段は、昨日コンコルド広場から戻ってくるのにも使った73番のバスにする。これはラ・デファンス方面からだと都合のいいことに終点がオルセー美術館なのだ。

 わたしたちがいたホテルからパリ市街部に向かうバスに乗るには、車道とメトロを超えて向こう側に渡らなくてはならない。
 さいわい、73番のバスはこちら、という案内板が出ていたので、それにしたがって歩いて行く。だが、それはすぐに後悔した。
 なぜならここは方向案内が不得手なフランスだからだ(笑。くどい。でも真実)。

 方向案内にしたがえば、簡単に向こう側に渡れるのだろう、と思っていたが、なんやわたしと銀はえっらい苦労をした。どういうわけかセーヌ川のほとりも歩かされたような。

 方向案内を信じず、素直にいつも使っているメトロの駅を通過して向こう側に行けばよかった、と激しく後悔する。

 それでもどうにかバス停に到着。
 さて、何分おきくらいにバスが来るのかな、と時刻表を見ようとした瞬間、ふと「まさかこのバス、日曜日(今日は日曜日)は走ってないってことはないだろうな」という考えが頭をよぎる。

 すぐに銀に確認させたら、悪い予感は当たるもので、73番のバスはdimanche(日曜日)は運休。
 んもー、踏んだり蹴ったりである。

 あきらめてメトロで移動。オルセー美術館は地下鉄12号線のソルフェリーノ[Solfe´rino]駅で降りるとよい、とガイドブックに書いてあるので、メトロを乗り継いでソルフェリーノ駅で下車。

 駅から地上に出ると、「オルセー美術館はこちら」という標識が出ているが、その標識がまたどの道をさしているのかさっぱりわからない。

 結局、わたしと銀は標識を信用せず、オルセー美術館に向かっているらしい人々の後にくっついていった。するとちゃんと美術館に着いた。
 フランスは、方向案内に頼らない方がずっとスムーズに目的地に行ける。

 オルセー美術館の中へ

 オルセー美術館に着くとちょうど9時だった。
 しかし、すでに美術館の前には長蛇の列っ! すんごくたくさんの人が入場を待っている。

 9時になっているにもかかわらず、列はまだ前に進まなかった。どうもあまりにもたくさん人がいるため、チケット売り場に入場制限がかかっていたようなのだ。
 9時6分くらいになって、ようやく列が動いた。わたしたちは9時10分をだいぶまわったあとに入れた。
 料金は日曜日なので、おとな一人30F(約471円。ふだんは40F:約628円)。

オルセー美術館日本語版案内
オルセー美術館日本語版案内。
でも、これだけを参考に見てまわるのはほぼ不可能。

オルセー美術館の
チケット

 中に入ると、おお、さすがオルセー美術館はもともと駅舎だっただけあって広い&ゴージャスっ!
 高い高いカマボコ型の天井が、とっても開放的で美術館をより広く見せていた。

オルセー美術館内
アーチとは、なぜこんなにも美しいのだろう

 ところで、パリの鉄道の駅というのは、東京から来たわたしなどからみればとても変わっている。

 東京なら、東北や上越、関西、九州と日本のあらゆるところへ向かう列車が東京駅に集中し発着するが、パリではリヨンからスイス方面に向かう東南路線はリヨン駅から、ル・マンやトゥールに向かいスペイン国境まで行く大西洋路線はモンパルナス駅から、ユーロトンネルを経由してイギリスまでつながる路線は北駅から、ドイツに向かう路線は東駅から、と全部バラバラだ。

 しかも、すべての駅がパリの中心部からちょっと離れている。

 列車でフランス国内を移動しようとする者にはちょっと不便だが、戦争の時に一気に列車でパリ中心部まで攻め込まれないから便利なのか? とか考えてみる。
 まあ、飛行機ががんがん飛び交うこの時代にそれは関係ないか。

 何にせよ、このオルセー駅はかつては唯一パリ中心部に列車で入ってこれる場所だったわけだ。

 中に入ったが、とりあえず日本語パンフレットをもらったりクロークに荷物を預けたりしていると、あっという間に9時20分になった。
 その後見学を始めたが、展示品があまりにもたくさんありすぎて、どれから見ればいいのか全然わからない。

 これがパリ2日目でまたその後も訪れる予定がある美術館ならそれもOKだが、何しろ今日は最終日で、オルセー美術館に次に来れらるのはいつだかわからない状況である。

 心残りを残さぬよう能率よく見よう、ということになり、オルセー美術館の主要作品を解説しているガイドブックを売店で買うことにする。

 美術館は9時から開いてるが、売店は9時30分から営業開始。ちょっと店が開くのを待たされたが、ほどなく開店。『オルセー美術館 ポケットガイド』の日本語版をGet。35F(約550円)

 この本では全部で82点の作品を解説している。まあ、3時間くらいしか見学できないわたしたちには手ごろだろ。

 そしてようやくわたしたちはオルセー美術館の中を歩きはじめた。

おわり

  
 ● 今回のフランス語 
 
エリズィオン[e´lision](エリジョンとも)

 最初、「エリズィオン」という言葉を見た時には、「なんだこりゃ? リエゾンの誤植か?」と思いました。
 そしたら、今回も出てきた「Muse´e d'Orsay」の「d'」のような部分をエリズィオンというのだそうですね。

 おお〜、そんなものがあるとは知らんかった。

 あれこれ言うよりはさっさとまとめたほうがいいので、まずエリズィオンとは何ぞやとその法則から。
___________________________________
エリズィオン:
 ある特定の単語において、次に続く単語が母音または無声の「h」で始まる
 場合、末尾の母音「e」を省略すること

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 無声も何も、「h」って発音しないじゃん、って感じですが、ちゃんと無声か有声の区別があるんですって。

___________________________________
エリズィオンするのは下記の10個の単語

 ・je → j'  [わたしは]
 ・me → m'  [わたしを、わたしに]
 ・te → t'  [あなたを、あなたに]
 ・se → s'
 ・ce → c'  [それ(=it)]
 ・le/la → l'[定冠詞、三人称単数]
 ・de → d'  [不定冠詞]
 ・ne → n'  [否定詞]
 ・que → qu'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ただし、「もし〜ならば」をあらわす「si」は「il」(彼は)と「ils」(彼らは)の前に来た時だけエリズィオンして、「s'il」、「s'ils」になります。
 フランスに行ったら絶対使う「s'il vous plai^t」(=please)はこの典型的な例ですね。

 エリズィオンした場合の注意事項もあります。

___________________________________
省略した意味のアポストロフィ「'」をつける
発音上も「e」を省略する

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                          

 いくつかの駅名にもこのエリズィオンが現れます。
 まず、以前「oy+母音」=オワイ)、「ay」=「エイ」、「uy」=「ユイ」の時にも出てきた、

・地下鉄7、9号線の「Chausse´e d'Antin La Fayette
          =「ショッセ・ンタン・ラ・ファィエット

 その他、

・RER−C号線の「Pont de l'Alma」=「ポン・ドゥ・ルマ
・地下鉄10号線の「Porte d'Auteuil」=「ポルト・ドートゥイユ

などなどなど

                          

 というわけで、「Muse´e d'Orsay」はカタカナ読みすると、「ミュゼ・ルセイ」(ミュゼ・ドルセー)(※母音+s+母音は濁る&「ay」=「エイ」)なのでした。

 今回は以上です。

※このコーナーは不定期です。
 

 ● 今回のおこづかい帳 

 
オルセー美術館:30F
ポケットガイド:35F3299.72

小計:65F
合計:3299.72F(約51,806円)+16,360円

※レートは2000年5月当時、1F=15.7円で計算しています。
 

 ● 編集後記 
 
 はい、チェックアウトの模様とオルセー美術館道中記でした。

 フランスでは、日曜日は走っていないバス路線とかがあるんですよね〜。
 日本じゃ本数は少なくなるけど、日曜日だって走っていると思うのですが。
 まあ、メトロがあるからいいんだけど、バスの方が眺めを楽しめるので残念でした。

 オルセー美術館で買った「ポケットガイド」は、比較的時間に余裕がある人向けの本のようです(3時間あればOKだったかな?)。
 もっと時間がない人には、さらに簡略版のガイドがあるので、それを買うといいかもしれないですね。

 何にせよ、この美術館も半日程度じゃ全然見てまわれませんでした。

 それではまた次号でお会いしましょう。
 


9日目の1――ついにフランス最終日/気合をいれてオルセー美術館へ の巻
9日目の2――へろへろしながらオルセー美術館見学 の巻
9日目の3――はじめ悪けど終わりよければすべて良し/
                 どーにかこーにかランスから帰国 の巻
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