★ 弓削神宮と弓削神社 ★


熊本のとあるところに弓削神宮と弓削神社という二つの社があります。

弓削というとあなたは何を想像されますか。たぶんあなたの頭の中に浮かぶのは あの巨根の怪僧、弓削道鏡ではないでしょうか。とりあえず巨根の怪僧と書きましたが実際には諸説があります。高僧であったという説もあり、歴史書が失脚した人物を良く書くわけが無いといわれると確かにそうかなとか思ったりします。例外は神様にその後上り詰めたかの菅原道真公ぐらいですね。

陰謀を張り巡らして自分を失脚させたライバルにその後たたりで復讐しなかった道鏡が女帝をたぶらかして出世したということにされて、だったらさぞかしいい道具(^_^;)を持っていたんだろうということで巨根伝説が出来たとしても不思議ではありません。まちがいなくその方が面白おかしく聞こえます。いずれにせよ事実は遠い時の流れのかなたに押しやられてしまいました。
道鏡が政変に敗れ去り失脚した後は下野国(栃木県)に流されてそこで亡くなったという説が 一般的です。しかしこの熊本にある二つの弓削の名を持つ社には別の物語があるのです。
弓削神宮由来によると道鏡が失脚した後この地を訪れて、そこで藤子姫という妖艶華麗な女性を見初めて夫婦となり、藤子姫の献身的なもてなしと交合よろしきをもって、あの大淫蕩をもって知られる道鏡法師がよき夫として安穏な日々を過ごしたとなっています。
この物語の真実がどうかはともかく、弓削神宮の御祭神は藤子姫様、弓削神社の御祭神は道鏡法皇となっています。そして道鏡を奉っているということはご神体は当然アレですね。

私が弓削神宮を初めて訪れたのはGWのツーリングのときでした。ネットで熊本のあたりに 変わった神社があると聞いて探してみたのです。
そして見つけた神社は一見普通のたたずまいでした。一見はね。でも良く見ると。。。(^_^;)
神社の横にある水呑場にもしっかりと生えています。生えているってナニが?ってすっとぼけないで下さいね。もちろんマツタケではありません。ここまで来るともう感動物でした。

浮かれ気分で神宮の左側に入ってみると納められた奉納品がこれでもかというぐらい納めてありました。陽もあれば陰もある。大きな小さなものとあれこれ。そしてなぜか一部のものというよりほとんどのものに釘が打ち付けられている。ふーん、これまた変わっているなぁ。
そしてお守りを買うために神宮の方をお呼びして、いろいろ話を聞いたところ、こちらにお祭りされているのは藤子姫様で、男神様は川向こうに別の神社があると聞きそちら(弓削神社)のほうにも行くことにしました。
弓削神社の方は道端にある本当に小さな神社といったたたずまいですが、やはりご神体は例の物でした。ただ説明の看板とかを見ているとこちらでは道鏡との関係について少々引き気味なのがうかがわれました。
ちょっと複雑な思いなんでしょうね。まぁわからないではないなぁ。
でも面白いものが見られたと楽しい気持ちでその場を立ち去ったのでした。
そして後日、なにげなくネットを調べていたときでした。背中に冷たいものがぞくぞくっと走ったのは。。。
私の頭の中では陰陽は生命、豊穣の象徴だったのですが、ここはそんなに甘い場所ではなかったのです。ここのご利益として浮気封じというものがあるのです。
つまりあの釘は。。。そういうことだったのか。奉納した方々はどのような思いであの釘を打ったのだろう。まさに頭から冷や水をぶっ掛けられた思いでした。
再びこの地を訪れたのはその年の大晦日でした。
弓削神宮は初詣への準備で紅白の幕が引いてありました。そしてGWに訪れたときには黒かったご神体が本来の木の色に変わって水呑場のものも赤から天然の色に変わっていました。

そして奉納殿には相変わらず釘を打たれた絵馬と陽物が山積されている。うーん。。。
そしてその中でふと見つけた一本の陽物、それには「浮気をするな」という文字とまだ錆の無い真新しい釘が刺さっていました。。。
この方はどのような気持ちで釘を打たれたのでしょう。きっと憎しみだけではこのようなことはできないでしょう。

嫉妬から人が鬼となる話はないわけではありません。いえ、むしろポピュラーといっていいでしょう。
道成寺で清姫は鐘の中の安珍を焼き殺しました。源氏物語で六条の御息所は何人ものライバルを呪い殺しました。
そしてそれは愛深きがゆえにこそでした。それがほんのちょっとうまくいかず心の中に渦巻くエネルギーの行き場が変わっただけなのです。恋しているときの狂おしさはきっと誰でも経験していることだと思います。たとえそれがその後実ったにしろ、別れたにしろ。。。

そう、この釘の一つ一つこそ愛がほんの少し姿を変えたものなのです。そう考えるとなにやらやるせない気持ちになるのは私だけでしょうか。あなたはどう思われます?



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