サルバドール(ブラジル、バイーア州)での日々。

 2002年9月4日(水) 天気:晴れ

レストラン「イエマンジャ」にムケカを食べに行った。ムケカとは、バイーア州の郷土料理で、シーフードをココナツミルク、デンデオイル(ヤシ油)、コリアンダーなどの香辛料で煮込んだ料理。

最近、私はムケカに懲り始めた。だんだんクセになってきたのだ。本当はあまり外食をしないようにしているのだが(アレルギー体質なので)、ムケカだけは別。どうしても試してみたい。

レストラン「イエマンジャ」のムケカは有名で、ガイドブックなどでもいちおし、週末は30分〜1時間待ちだそうだが、うーん...私には、ちょっとしょっぱかったぞ。この間食べたレストラン「ソヒーゾ・ダ・ダダ」のムケカの方がおいしかった。店も小さくて落ち着ける。

ちなみに値段は、「イエマンジャ」も「ソヒーゾ・ダ・ダダ」も30ヘアルくらい。(2人前。約1200円。)必ず、ライスとファロファ(芋の粉)とピロン(シーフードのだしを芋の粉でピューレ状にしたもの)がついている。1人当たりの値段は、私が横浜に住んでいた頃大好きだった「信楽茶屋」のラーメンと同じくらいではないか!?ますます、やめられなくなってきた。

次は、どこのムケカを食べようかなー。ラーメンが食べられない寂しさを、ムケカで埋める今日この頃。





 2002年9月6日(金) 天気:晴れ

ブラジルで「学級崩壊」は日常だ。集中力が5分と続かない。先生の話を少し聞き、飽きてくると、みな、好き勝手なことをやりだす。おしゃべりする人、横になって寝る人、歌い出す人、踊り出す人、ふらりとどこかに行ってしまう人、ケンカを始める人・・・。

そこで、ブラジルの授業は「参加型」となる。先生が毎日、志向をこらし、全員が参加できるような授業を創っていく。ゲームあり、発表会あり、皆で歌をうたったり、踊ったりしながら授業を進めていく。先生はまるでアーティストだ。全身全霊で熱く語りかけ、場を盛り上げる。そーしないと、誰も授業を聞いてくれない。

そんなことをしているうちに、みんなとても仲良くなってくる。先生と生徒も心が通じてくる。

先生が「最後の授業の日にアヴァリアソン(評価)をしなければいけない。」と言った。なかなか授業についていけない私は焦った。「どうしよう。もっと頑張って参加しなくくちゃ!」「恥ずかしがらずにポルトガル語をどんどん話さなくちゃ!」と自分に言い聞かせた。

そして、授業の最後の日、アヴァリアソンを行った。でも、それは「生徒」のではなく、「先生」のアヴァリアソンだった。授業で何を学ぶことができたか、先生の授業の進め方はどうだったか・・・等。

なーんだ!そうだったのか!そうだよねー!!

もう随分昔の話だが、私は学校が大キライだった。授業中、居眠りすれば叱られ、遅刻すれば叱られ、テストでは評価され、内申書には「無口で引っ込み思案。協調性がない。」などと書かれた。これってヒドクない?

日本で「学級崩壊」が起こると、「最近の子供は忍耐に欠ける」とかなんとか、みんな深刻な顔をして語りだす。

子供は元気いっぱい。いつでも遊んでエネルギーを爆発させていたい。じっと座って先生の話しを聞かなくちゃいけないなんて、拷問みたいだ。あまりにも一方的。「学級崩壊」はごく自然な現象なんじゃないだろうか。

日本の教育システムで受けた心の古傷を、地球の裏側で、ブラジル人に癒してもらってる。



2002年9月9日(月) 天気:晴れ ときどき 雨

ブラジルでは、10月6日に
大統領選挙が行われる。街には、選挙のポスターが溢れ、ラジオやテレビでも盛んに宣伝が行われている。ブラジルで選挙は「義務」だそうだ。18歳以上の人は皆投票しなければならない。候補者一人一人には番号がついていて、番号で投票するようになっている。

近所で ルーラ(大統領候補の一人)の演説&フェスタ(お祭り)をやるというので見に行った。夕方6時から始まる予定だったが、8時過ぎに行ってもまだ演説は始まっていない。”イレ・アイエ”(ブロコ・アフロ)が演奏をしている。でも、広場は人がいっぱいで、音響も悪く、一体何を演奏しているのかわからない。本当にイレ・アイエなのかどうかもわからない。とにかく人が多すぎる。

9時を過ぎてもルーラが現れる気配はない。回りの人はみな音楽に合わせて踊ったり、ビールを飲んだりしている。このノリは、ブラジルがワールドカップで優勝したときと変わらない。この人たちは、結局お祭りが好きなだけなのではないか?私は一緒にフェスタを見に行ったブラジル人に聞いてみた。「ここに集まったほとんどの人は、音楽とお祭り騒ぎのために集まっているように見えるけれど・・・。」すると、彼女は「そうだ。」と答えた。

(後からわかったのですが、この日は10万人集まったそうです。ほんとかな?)


番号ついてます。
2002年9月16日(月) 天気:晴れ

ムケカの他にも、ハマっているものがある。「アサイ」だ!

「アサイ」は、アサイヤシの実で作った飲み物(食べ物?)で、小豆色でクリーム状の健康飲料。軽食やジュースを売っているお店で飲むことができる。通常、アサイの実とバナナとガラナ・シロップをミキサーにかけて作る。このガラナ・シロップというものの正体がよくわからない。ガラナ以外に何が使われているのか。アサイ事体は甘みがないので、このガラナ・シロップで甘みをつけている。

初めてアサイを見たときは、ドロドロしているし、色も黒っぽいくて、マズそうに見えた。「あれだけは、試したくない」と思っていた。でも、みんな何だか、すごくおいしそうに飲んでいる。朝、どんぶり山もりのアサイを食べている人もいる(どんぶりやカップに入れて食べるアサイは、シリアルをかけてスプーンで食べる)。そんな様子を見ているうちに、私もアサイへの抵抗感がだんだん薄れてきた。

近所のお店で、アサイを試してみた。「ウッ、ウマイ!!」 あー、こんなにおいしいんだったら、もっと早く試せば良かった!アサイ中毒になりそう。

アサイには鉄分やカルシウムが多く含まれているそうだ。飲んだあと、爽快感がある。日本でも流行るかも。小豆色なので、和風デザートのようにも見える。

今まで試したアサイの中で一番おいしかったのは、近所の自然食レストラン「RAMMA」のアサイだ。どんぶり一杯3ヘアル(約120円)。

これが「アサイ」。
2002年9月18日(水) 天気:晴れ

アマゾンを知らない日本人はいないが、「マタ・アトランチカ」を知る人は少ないだろう。私も去年まで知らなかった。

「マタ・アトランチカ」とは、大西洋沿森林地帯のこと。多種多様な動植物が棲み、その多くはこの地にのみ生息し、しかもその多くが絶滅の危機にさらされている。そう、ここは「ホットスポット」なのだ(絶滅しかかっているさまざまな生物が棲んでいる場所。世界で25カ所が指定されている)。その中でもマタ・アトランチカは、ホッテスト(最重要)なスポットのひとつだそうだ。

16世紀にポルトガル人がやって来て以降、この500年の間に、マタ・アトランチカの93%が消滅した。すでに7%しか残っていない。にもかかわらず、ここには非常に珍しい様々な生物が生き残っている。

「マタ・アトランチカの破壊に歯止めがかかり始めた。」というニュースを雑誌で読んだ。地球環境に関して、悲しいニュースが続くなか、ほんのちょっとだが、明るいニュースだ。もちろん、問題が解決したわけではないのだが。

ブラジルには、アマゾンやマタ・アトランチカ、セハード(もう一カ所ホットスポットがある)など、21世紀の地球にとって、かけがえのない宝物が存在している。ブラジル人は、これらの素晴らしい宝を誇りに思っているが、それをどう守っていくかに関しては、自信がないようだ。今のペースで開発が続いたら、あと50年でアマゾンはなくなってしまう、とみな言っている。

確かに、これは、ブラジルの人たちだけで、解決できるような問題ではないだろう。人類は本当に知恵ある存在なのかどうか、神さまに試されている、その最前線がここにあるのかもしれない。


2002年9月19日(木) 天気:雨

サルバドールの男は皆、パンデイロが叩ける。パンデイロひとつあれば、場を盛り上げることができる。サンバを踊ることができる。パンデイロというひとつの打楽器の中に、いろいろな打楽器の要素がつまっている。


「これって、タンバリン?」という声が聞こえてきそうだ。でもこれは、タンバリンではなくて、「パンデイロ」。日本のタンバリンとどこがどう違うのか、細かいことは知らない。が、とにかく全然違うのだ。

あるコンサートでミュージシャンがパンデイロを叩いているのを見た。めちゃくちゃカッコイイ!この世にこんなカッコイイ楽器が存在していたなんて。あんな「タンバリン」みたいなのが、こんなに粋な楽器だったなんて。私はショックを受けた。そのミュージシャンはパンデイロを自在に操り、様々なリズムと音を出し、一人でその場の空気を変幻自在に変えていた。魔術師みたいに。後から、彼の名はSUZANOだと知った(ブラジル音楽を好きな人はみな、知っているらしい)。

私は、SUZANOの催眠術からまだ覚めぬうちに、楽器店へ。そして、このパンデイロを100ヘアルで買った。枠は木でできていて、皮がはってある。私もSUZANOみたいにカッコよくパンデイロが叩きたい。

家に帰り、パンデイロを叩いてみると、SUZANOのような音は全く出ない(あたりまえか)。道端でお兄さんたちが叩いているのとも似ても似つかない。私はがっかりした。

ここでくじけてはいけない、とパーカッションの先生にパンデイロを教えてもらうことにした。先生の真似をして叩いているうちはいいのだが、家に帰るともう忘れてしまっている。しかも、左手が死ぬほど痛い。10分も叩いていると左手が疲れてきて、パンデイロが石のように重く感じられる。なんでこんなに重いんだ。右手もいろいろな叩き方をしなければならない。それが結構、面倒くさい。ちっとも思うように上達しない。

そして、あっけなく挫折した。きっと私と同じ道を辿った人はたくさんいることだろう。

やっぱり、もう一度頑張って挑戦してみようかな。

カッコよさの影には、気の遠くなるような修練が隠されていることが、よくわかった。パンデイロが上手に叩ける人、私は尊敬します。


2002年9月23日(月) 天気:晴れ

美大に通っている友人がスペインに留学することになり、送別会に出席した。
「ところで、いつスペインに出発するの?」
「今日。」
えーっ!?それは随分忙しい。ちょうど彼と同じ年齢だった時に、私もスペインに住んでいたのでなつかしくなった。そこで、
スペイン語をしゃべろうと思ったのだが・・・、全然出てこない。スペイン語をしゃべっているつもりが、いつのまにか、ポルトガル語になってしまう。似過ぎているのだ。アミーゴはアミーゴだし、セニョールもセニョールだし。似ているかと思うと、結構違うところもあったり。ややこしい。

とは言え、どちらかの言葉ができれば、もう一方をおぼえるのは楽だ。スペイン語を知っていれば、とても便利。人生を楽しく過ごすことができる。

スペイン語は、様々な国で使われている。メキシコ、キューバ、コスタリカ、アルゼンチン、ペルー、ベネズエラ、コロンビア、ボリビア、エクアドル、チリ、パナマなどなど、楽しい国ばかり。文化的にも白人、インディオ、黒人の文化がミックスされ興味深い。豊かな自然にも恵まれている。人々も陽気で個性的だ。最近は、アメリカでも結構スペイン語が通じるようになってきている。世界でスペイン語を話す人の数は、約3億6千万人いるらしい。

しかもスペイン語は、ポルトガル語にもイタリア語にも似ている。お互いに勝手にそれぞれの言葉をしゃべっていても70パーセントか、それ以上は通じるだろう。

とにかく便利だ。その上、すごく簡単!日本人にとって発音しやすい。

日本の学校で最初に習う外国語は、英語だが、英語って発音がすごーく難しいと思う。それで、語学がキライになってしまう人も多いのではないか。最初に習うのがスペイン語だったら、日本人の外国語ギライも変わるかもしれない。
「オラ!ケ・タル?」
なんていう方が、授業もリラックスしてできそうだ。「ベサ・メ・ムーチョ」を歌ったり、サルサを踊ったりしながら勉強すれば飽きない。上級者向けには、ガルシア・マルケス、オクタビオ・パス、イザベル・アジェンデなど素晴らしい作家が揃っている。ラテンアメリカには才能ある作家がたくさんいて、ノーベル文学賞もたくさんとっているし、読み切れない程、名作がある。

旅行するにも便利だ。ヨーロッパ、アメリカでも結構使えるし、ラテンアメリカほぼ全域で使うことができる。マヤのピラミッドもある。イグアスの滝やギアナ高地、アタカマ砂漠、アンデス山脈、インカ帝国の遺跡、南極近くのパタゴニア、アマゾンのジャングルなどスリルに溢れた旅ができる。しかも、日本人にとっては物価も安い。

私はスペイン語を憶えたおかげで、随分楽しい思いをさせてもらっている。



おもしろい人生を送りたい人には、スペイン語はお勧めですよ(おもしろい、というより、波瀾万丈と言った方がいいかもしれないけど・・・)。

2002年9月27日(金) 天気:雨

昨日から、2日間ずっと
が降り続けている。やんだのはほんの一瞬。日本の梅雨みたいにしとしと降る雨じゃなく、ばしゃばしゃと降り続けている。このまま、雨が降り続けて2度と晴れないんじゃないかと思う程、たくさん雨が降っている。

街のつくりが悪いので、あちこちに池みたいな水たまりができる。そこを車やバスがすごい勢いで走っていく。側にいると大変。全身びしょ濡れになってしまう。

サルバドールは、私が生まれた街、横浜みたいに丘があって、海がある。起伏があるので、街の低い部分には水がたまってしまう。雨がたくさん降るとバスも来ない。でも、誰も気にしていないみたい。雨だから、しょーがないね。


2002年9月30日(月) 天気:晴れ

9月6日の日記に、授業中にゲームをする、と書いたけれど、それには実は、罰ゲームがついている。ゲームに負けるとマイナス1ポイント。マイナス5ポイントになると、罰ゲームが待っている。罰ゲームにあたると、みんなの前で歌を歌ったり、踊ったりしなくてはいけない。

負けるわけにはいかない。

みんなの前で腰を振って踊らなくちゃいけないなんて、絶対にイヤだ。その上、男の子がふざけて、スルド(太鼓)をたたくスティックを踊っている人の足の間に立てたりする。

そんな事体は、絶対に絶対に、避けたい!

この間、マイナス5ポイントになったジャクソンは、女装をさせられて、表通りを歩くことになった。(一体なんで、そんなことをしなくちゃいけないんだ?)

パーカッションの練習でも、間違えてみんなと違うタイミングで太鼓をポンと叩いてしまったりすると、マイナス1ポイント。みんな、間違えないように全神経を集中させる。それでも、やっぱり間違える。間違えてしまった人は、必死で抗議する。「ほんのちょっとズレただけだ!」とか「間違えたのは私じゃない!」とか。当然ケンカになる。毎日必ず1回はケンカになる。

神経を集中するおかげで、夜はぐっすり眠れる。あー、明日もまた、熾烈な闘いが待ってるゾ。



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